FFシリーズ総合エロパロスレのまとめ

私たちの初めての出会いも、あまりいいものとは言えなかったと思う。
彼女の存在を知ったときから、なんとなく、嫌な予感はしていた。
でもそれはあくまでも「なんとなく」の範囲内であって、漠然で、気に留める必要もない感情だった。
だから、私が彼女を嫌いとか、憎いとか。
そういう話では全く、ない。
でも私は気付いてしまった。
私の中には、とても綺麗とはいえない感情が眠っていて、彼女に向けられていた事を。


そして、2度目の出会いを果たした今、その感情は静かに、目覚めようとしていた。




こちらの世界に帰って来た私の姿を見た彼らは、皆驚いた表情で私を迎えてくれた。
無理もない。最後にあったときの私は、まだ10歳にも満たない子供だった。
生死すらもわからないまま離れ離れになってしまった少女が、いきなり自分たちと同世代にまで成長して戻って来れば、驚きの表情のひとつやふたつ、浮かべたくもなるだろう。
彼らは変わっていなかった。
変わったのは私。それは理解できる。
でも、昔の彼等と今の彼等では、受ける印象がどことなく違う。
大きくて、大人で、私を守ってくれて、頼れる存在であったはずなのに、なんだか、今は。


その日はとても静かな夜だった。
静かで静かで、泣きたくなる夜だった。
「セシル、」
小さな声で、彼の名をそっと囁く。
冷え切った夜が、少しだけ柔らかく煌く。
白魔法はもう使えなくなってしまったけど、私だけの、秘密の、とっておきの優しい魔法。
彼を癒してあげることが出来なくなってしまった事は残念だけど、今は彼を慰めるのは私の役目じゃないことはわかるから、むしろ逆に白魔法が使えなくてよかったなとも思う。
私は貴方の名前を呟いて、深く目を閉じることしか許されない。
貴方にとっても私の名前が貴方を守る存在になればいいのに!
昔あこがれた宝石たちは、今は輝きを失ってしまっているけど、セシル、貴方だけは今もかわらず私の宝物。
むしろ今のほうが、よりあなたの価値が際立ってわかるの。本当よ。
自ら先陣を切って戦うセシル。
瞼の奥にいるセシル。
優しいセシル。
私を守ってくれるセシル。

「綺麗になったね、リディア」
再会した夜、あなたはそう言って微笑んだ。

暗黒騎士のセシル。
村を焼いたセシル。
おかあさんんを、ころした、セシル。
わたしをまもってくれるセシル。

「……ぅ…っ……っ…」
いつの間にか、涙があふれていた。
どうして?
きっとどんな理由をつけた所で、最後は貴方が好きだからという結論に行き着くのであろう。

セシル!
貴方が今、優しく声をかけ、抱きしめてくれたらどんなにいいんだろう。
苦しい。気付いてほしい。そう思うのは私の我侭なのかな?
私はシーツの上で、胎児のように縮こまり、頭までかぶった柔らかな毛布をギュっと握り締めた。
自分の世界に閉じこもり、ひたすらに朝がくるのを待った。
「…リディア?・・・大丈夫?」
頭上から降ってきたのは優しい声。
それは、私の恋焦がれるあの人を、私にとても近い感情で想う彼女、ローザのものだった。
それを知覚するの事は、彼への想いで心がぐちゃぐちゃになった私にとってもとても簡単。
理由も同じく簡単なこと。この小さな部屋には私と彼女しかいないのだ。
パーティの中で女性は私たち二人だけなのだから、当然なことだ。
「具合が悪いの?それとも悪い夢でも見たのかしら?」
私を気遣う彼女のそれは、まるで小さな妹を心配する姉のよう。
事実、彼女は私に対してそのような目で見ているのだろう。
昔と同じ、あの頃のままで。
でも現実は違う。何も知らない小さな少女ではないのだ。
ローザが私を無知な妹のように見ている事と少し似て、私は彼女を少し見下したところがあるかもしれない。
彼女は何もわかってはいない。
彼女を突き動かすのは全て彼への想い。
それだけ、それだけしか考えていないのに、彼女は彼の愛情を獲得することができる最も近い位置にいる。
そして、ローザ自身はその事には全く気付いておらず、周りもそんな彼女を悪く思うことはない。
周りが見えない彼女には、私がローザにとって……そう、陳家な言葉で言い表すのなら、「恋のライバル」とも言える存在になり得る事など、全く思ってもいないのだろう。
ローザは私など気にかけていない。
なのに、こうやって私を気遣うフリをする。
気遣うフリだとも気付かずに、美しい愚鈍さで、「優しいお姉さん」を演じてみせる。
私は、きっと、ローザを強烈に意識している。せざるを得ない。
本当は、気にしたくもない、でも、しない訳にはいかない。
彼女の優しさも、美しさも、昔のそれとは全くもって意味が違う。
「…待ってて。なにか暖かい飲み物、持ってきてあげるわ」
一向に応答を見せない私に対して、あくまで「優しいお姉さん」を崩さない。
彼女が部屋を出て行き、ドアが閉まったのを確認して、私はゆっくり身体を起こした。
涙はもう乾いていた。
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