FFシリーズ総合エロパロスレのまとめ

 何時から走り続けているのか、それすらも思い出せなくなっていた。
 吹きつける雪片は鋭く、無数の矢尻の如く突き刺さってくるが、それでも立ち留まることなく走り続けた。
 延々と続く瓦礫の谷。
 少しでも速度を落とせば、自身も廃材の波に埋もれてしまう気がした。
 焦りから足並みが早くなる。
 残骸を蹴散らし、廃油の泥濘を踏み潰し、吹雪の只中を突き進んでいく。
 主のいない鞍の冷たさが、重く被さってくる。
 霞む遠景にその姿を探し、強風の中に薄れた匂いを求めた。
 四つの蹄がひび割れようとも、前へと踏み出すことを止めはしなかった。
 失いたくない。
 追い駆けねば。
 渇望ばかりが沸き立ち、吹雪の只中で燃え上がる。
 凍てついた関節が、氷塊を弾き、砕ける音がした。
 身体の中心で、何かか急速に温度を失っていくのを感じていた。
 苦しい。
 冷たく鋭いものが、内部から身体を引き裂こうとしている。
 極寒の闇に、温もりの記憶が霞んでいく。
 そして、遂には、何もわからなくなった。

 常宵のヴァルハラ。
 目覚めた世界は、見慣れた平常の姿を保っていた。
 黄昏の海までを見渡す神殿の見張り場に立ち、オーディンは、眼下の世界を見据えていた。
 先刻まで己を苦しめていた極寒の悪夢は、名残一つ残すことなく消え失せていた。
 海岸線に打ち寄せる波も、曇天に漂う雲も、全て不変のままであった。
 ただ、オーディンの心中には、今もなお酷く焦がれ、深く掻き毟った傷跡のようなものが刻まれていた。
 激情の正体が何であったのか、最早それを知る術はない。
「……オーディン様?」
 思考の狭間から呼び戻され、オーディンは声の方を見やった。
 右手側の足元に、丸々とした白い物体が、背中の翼を羽ばたかせながら、落ち着きなく宙を浮遊していた。
「ラ、ライトニング様の様子を見に行ってきて欲しいクポ、そろそろ起きる時間なのに、今日に限って遅いクポ」
 モーグリはそう言い、ぎこちなく言葉を続けた。
「申し訳ないクポ、モグは寝室に入るなと言われているクポ……ご無礼、お許しくださいクポ……」
 騎士王の顎飾りが静かに揺れるのを見たモーグリは、そのまま頭を下に一回転しそうな角度で一礼し、神殿内 へ踵を返していくオーディンの背中を見送った。
 主であるライトニングの寝室は、宮殿の奥まった場所にあった。
 純白の天蓋に覆われた広間。
 オーディンは身を屈め、張り渡された薄絹の下を潜り抜けるようにして、部屋の中心に向かった。
 半円を柔らかく歪めた形の寝台の中、幾重もの薄布で包まれて眠る主の姿があった。
 ライトニングは身体を横に崩し、薄紅色の髪をクッションの上にたなびかせている。敷布の端からは、小さく整った指先が覗いていた。
 寝台の前で膝を着き、オーディンは寝息を確かめるように、顔を近付けた。
 連日の戦いの疲れだろうか、少しばかり薄くなった頬に、血の気の色は少ない。
 肩を隠している薄布を除ける。現れた素肌に、余計な付属物は一切触れていなかった。
「あ……」
 唇が動き、瞼が震えた。
 微睡の彼岸から戻ってきたばかりのライトニングは、身体を反転させ、迎えに現れた使者の顔を見上げる。
「……オーディン」
 色の薄い唇が、騎士の名を呼んだ。
 差し伸ばされたライトニングの手を、黒鋼の指が受け入れた。
「どうして」
 オーディンの指に触れながら、ライトニングは言葉を続けた。
「どうして、来てくれなかった?」
 待っていたのに。
 会いたかった。
 ライトニングは指を引き寄せ、自身の頬に当てがった。
 底の方から、滲み出るように現れる感情があった。
 主の唇が言葉を紡ぐ度に、オーディンの胸に残された傷の正体が、混沌とした激情の姿が、はっきりと浮かび上がってきたのだった。

 身構える隙もなかった。
 ライトニングは、巨大な手に両肩を押さえ込まれていた。
 二の腕を掴み、上半身を拘束する。
 少しでも指に力が入れば、人間の骨など、簡単にへし折られてしまうはずだ。
「……っ! は、放せ!」
 圧力で寝台が深くたわみ、ライトニングは、その底に沈められた。
 腕に食い込む黒鋼の指は冷たく、突然の仕打ちに、自分が何をされているのかも確認出来なかった。
「よせっ! 何をするん……! うぅ……っ!」
 オーディンの手は、主の腕を掴んだまま、力を緩めようとしなかった。
 巨体の影が、ライトニングの視界を塞いだ。
 肢体に押し当てられる熱塊の感触。
 彼がしようとしていることを理解した瞬間、衝撃がライトニングの心臓を凍りつかせた。
 指戯もなしに突き付けられた怒張が、固く閉じた内股を割って、窄まったままの陰裂をえぐろうとのたうっている。
 行為の後、肌に痣の一つさえ残すことを嫌っていた彼が、理不尽な欲望を振りかざし、主人を辱めようとしているのだ。
 冷たい恐怖が、鋭く胸を貫いた。
「やめろぉっ!!」
 ライトニングは、拳を騎士の胸に叩き込んでいた。
 腕を逆流する衝撃に、軽い痺れを覚えた。
 オーディンの動きが止まった。
 それと同時に、乱れた呼吸のせいで、上下を繰り返すライトニングの腹に、体温とは別の熱がじわりと広がっていく。
 半ば力尽きたように、彼は吐精していた。
 両膝の間で力なく頭を垂れる、萎みかけた巨茎から漏れ出た白濁には、半透明の固形物が混じり、より汚物
めいて見えた。
 その様を目にした瞬間、全ての恐怖は怒りに変換された。
「退け! オーディン!」
 両腕で騎士の胸を突き離し、裸体のまま寝台を飛び下りた。
 臍から下へ垂れ落ちる濁液を敷布で拭い、足元に叩き付けた。
「お前は……! お前は何を……何をしようとした!」
 床に膝を着き、深く首を下げるオーディンの前に立ち、ライトニングは、立て続けに怒声を上げた。
 血流が沸騰し、顔が鍋底のように熱くなっているのを感じた。
「この……はっ、恥知らずがっ!」
 振り上げた右手で、俯いた騎士の頬を打つ。
 兜飾りが僅かに音を立てたが、オーディンは面を伏せたまま、身動ぎひとつ起こさなかった。
 ライトニングの守護者となって以来、彼に攻撃の手を向けるのは、初めてのことだった。
「……どうしてだ」
 全身を駆け巡っていた怒りの熱は、何時しか滴の形になって、ライトニングの頬を伝い落ちていった。
「どうして……あんなこと……」
 絆を裏切られた悲しみが、拭った傍から込み上げてきた。
 嗚咽に言葉がかすれる。
「……オーディン」
 瞼裏に蘇るのは、寝台で彼の訪れを待ち望んでいた、自身の姿。
 望んでいたのは、力尽くで穢されることではなかった。
 ただ、傍らに居て欲しかっただけだった。
 唯一の、最愛の存在から受けた悪夢の如き仕打ちは、孤独を抱えた心を深く傷付けるのに十分なものだった。
 不意に、ライトニングの視界が暗くなった。
 肩に触れる布の感触。重みと肌触りから、それが彼のマントであることは、直ぐにわかった。
 オーディンは主の頭上にマントを広げ、そのままライトニングの身体を包み込んだ。
 引き寄せられた腕の中で、ライトニングは、何度も剥き出しになった騎士の胸を殴り続け、腕を蹴り上げて抵抗した。
「やめろっ! 放せ! わからないのか!?」
 彼の胸は、大きくて、温かくて、心地良い場所だった。
 だが、今は、そうではなかった。
 逃げ出すべき、冷たい絶望の場所だった。
「オーディン!!」
 打ち下ろした腕が震え出し、それ以上、ライトニングがオーディンを責めることはなかった。
「……怖かった」
 つかえたものを吐き出すように、ライトニングは言葉を口にした。
「お前が、急にあんなこと……するから……」
 まだ、涙が止まらない。
 嗚咽を堪え、身を縮ませるライトニングを抱きながら、オーディンは寝台を背に座り込んだ。
 肩を縮こませて震える主を、オーディンは胸元に引き寄せ、振り乱した髪を指で整え始めた。
 涙が静まるのを見計らって、緩く円を描く髪の上に、ゆっくりと唇を重ねる。
 主人への情愛と忠誠を示す、最も単純な感情表現の方法だった。
 ライトニングは、自らも頬に触れる騎士の指に唇を寄せ、オーディンの謝罪に答えた。
「……済まない。私も、少し取り乱し過ぎた」
 漸く、互いの間に漂う空気が緩み始めていた。
 張り詰めた緊張は徐々に解け、重ね合った手にも、かつての温もりを覚えるようになった。
「それに……お前も男だ。たまには、そういうこともある……」
 常に冷徹なはずのオーディンが、今日に限って我を忘れるほど乱されたのには、自分にも原因があるはずだ。
 少なからず、ライトニングは、そう考えていた。
 無自覚に彼を刺激していたに違いない、と。
「さっきのでは、まだ足りないのだろう?」
 視線を下げ気味に、彼を促す。
 実際、視野の隅に見え隠れしているそれは、確実に力を取り戻しつつある状態になっていた。
 ライトニングは、抱擁の腕を緩めようとしない騎士をいなし、床に背を着けさせるよう促した。
 上体を起こして唇を重ね合い、オーディンに背を向けて腰の上に座り直した。
「やはり、大きいな……」
 目の前には、脈動に首を揺らしながら、角度を上げつつある青黒い豪槍があった。
 少しは慣れたつもりではいたが、光のある場所で見るのは初めてで、やはり緊張してしまう。
 自らの下腹にそれを引き寄せ、濁液の名残に濡れた胴を撫でてやると、繰り返し触れる毎に膨張し、熱が増していくのを感じた。
「これは、私からの償いだ……」
 そう呟いた唇は、僅かに蜜の艶やかさを帯びていた。
 
 誰一人として、神殿の静寂を乱す乱入者を止めることが出来なかった。
 喉笛目掛けて躍り掛かったゴルゴノプスは、携えた大剣の一薙ぎで落ち葉の如く払い除けられ、必死の覚悟で立ち塞がったアーリマンが、哀れ蹴り飛ばされて壁に激突する。
 暗雲にも似た黒髪をなびかせ、紫紺の影は奥へと歩みを早めるばかりだった。
 混沌の剣士――カイアスは、群がる護衛の獣らを打ち倒し、目的の存在を求めて神殿を探索し続けた。
 神殿を守護する女神の力により、在る筈の気配は空に掻き消されていた。
 迷宮の回廊を彷徨い続けていたが、遂に最も奥の間へと辿り着き、カイアスは、確信を持って足を踏み入れた。
「女神の騎士よ、決着をつけよう!」
 天蓋を切り捨て、踏み込んで行った先で目にしたものは、およそ女神の騎士とは掛け離れた姿だった。
 カイアスは、己の視界に映るものを見て、暫し直立し、沈黙した。
「ぁっ……馬鹿っ、止めろっ……!」
 白羽の甲冑を纏った戦乙女――ライトニングの薄紅色の髪から覗き見える頬は更に赤く染まり、辛うじて剣を構えるものの、その動きは熱病に浮かされているかのようだった。
 ぎこちなく膝立ちで身構える騎士の両脚を、巨体の僕、オーディンが手で持ち支えている。そのように見え
たが、違っていた。
 ライトニングは巨人の腰を跨ぐ格好で尻を浮かせ、横へ流れる前垂れの奥では、女の腕程もあるオーディンの肉茎が直立し、見え隠れする暗部の亀裂に切っ先を突き立てていたからだ。
「んぅ……! は、離せ! 敵の前だぞ! うっ、あうぅ……ん!」
 身を捩じらせ、ライトニングは巨人の手を振り解こうとするが、オーディンは力を緩めるどころか、両の太腿を一層強く掴み、逸物を最奥に向けて突き入れていた。
 下から揺さ振られる度に、濡れ滴る淫蜜の音と、抑えられぬ愉悦の声が広間に響いた。
「駄目っ! 駄目ぇっ! オーディっ! 駄目えええぇっ!!」
 絶叫の瞬間、オーディンは主の身体を抱え上げた。
 秘部から引き抜かれた巨茎が跳ね上がり、脈動と共に圧縮された欲望を放出した。
 白濁の飛沫の一つが、粘性のある音を立てて、カイアスの足元に落下した。
「あっ! あ、あぁ……っ!」
 絶頂に傘の開き切った、青黒い馬根から吐き出された濁液は、虚脱しながらも手を伸ばし、それを止めようとするライトニングの甲冑と髪にも降り掛かり、強かに汚した。
 僕の手によって広げられた両膝の奥では、今し方まで咥え込んでいたものの巨大さを物語るかの如く、淡緋色の秘裂が丸く大きな口を開き、白く濁った涎を花弁の端から垂れ流していた。
 欲望を解き放ったばかりだというのに、オーディンは従うべき主人であるライトニングの抵抗を無視し、次の行為に向けて余韻に震える肌を愛撫し始めていた。
 美しき戦神は、最早、巨人の愛玩人形でしかなかった。
「み、見るなぁ……!」
 敵に痴態を晒してなお、快楽の行為から逃れられずにいるライトニングの姿に、カイアスは、沈黙から一転し、堰を切ったように笑い出した。
 艶劇に劣情を覚えるよりも、ことの馬鹿馬鹿しさの方が勝っていたのだ。
「無様だな! 女神の騎士よ!」
「く……っ!」
 羞恥に顔を紅潮させ、食いしばる歯を見せて口元を歪めるライトニングに、カイアスは背を向けた。
「……興が削がれた。出直すことにする」
「ま……待て! んぅ……馬鹿っ! 放せっ!」
 背後では、まだ僕の巨人と取っ組み合う声が聞こえる。
「いい加減にしろ……っ! ……この、……馬鹿種馬がぁ!」
 上擦った叫び声の後に、金属質の殴打音が続いた。
 カイアスは、振り返ることなく、広間を後にした。

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