【R-18】男性同士の催眠術/マインド・コントロールを描いた日本語小説です。成人向け内容です。

寄生水



作:くろねこ

寄生水(1)


"それ"に気づいたのは、山を降りる時だった。

その日も俺は、趣味の山歩きで県境の山に来ていた。
初夏の風が清々しい。
山頂で昼飯を食い終えると、しばらく休憩してから下山を始めた。

その途中で、何かの気配を感じて振り返った。
辺鄙な山のせいか、登山道には俺以外誰もいない。
小さな水溜まりに青葉が浮かんでいた。

「・・・気のせいか」
俺は再び歩き始めたが、またピタリと足が止まってしまった。
さっきからずっと視線を感じる。ぐるりと振り返ってみても、やはり誰もいなかった。
水溜まりが日光を反射してきらめいていた・・・水溜まり?
俺はそこで奇妙なことに気づいた。そういえば、水溜まりの脇を通り過ぎた覚えなんて無い。
さっきも、今も。そもそも他に、どこも地面は濡れてなんかいない。

「・・・・・・」
心なしか早足になりながら、俺は歩き続けた。
10分ほど歩いた頃だろうか。さすがに神経質すぎたか思って振り向くと、またあった。
同じ場所に、同じ大きさの水溜まりが。

「ッ・・・!」
何の変哲もない水溜まりだ。だが、その平然さにむしろ背筋がぞっとした。
俺はナップザックを背負ったまま小走りに駈け出した。
途中で振り返ると、決定的なものを見てしまった。
付いてきている。水溜まりがぐねぐねと蠢き、俺の後を追ってきていた。

「来んな!来るんじゃねえ!」
俺は走りながら怒鳴ったが、水溜まりは意にも介さない様子だった。
むしろ俺が気づいたことに気づくと、いっそう速度を上げて追ってきた。
恥も外聞もなく、俺は全力で駆けていた。ナップザックなんか背負っていられない。
俺は荷物を捨て、登山道を駆け下り続けた。

「はあっ、はあっ・・・!」
整備されているとはいえ、山道だ。
体力に自信のあった俺でも、しばらくすると息が上がってきた。
そろそろ撒けたかと思って振り向くと、思わず悲鳴が漏れた。
もう二三歩分の距離まで迫っている。

「あ゛っ!」
驚きと焦りで石に躓いた・・・と思ったときは手遅れだった。
景色がスローモーションのように流れた後、俺は砂利で強かに身体を擦ってしまった。
背後の気配が、ぴたりと止まった。
いつの間にか風もやみ、辺りは生温い空気が漂っていた。

「ひっぁ!?」
"それ"が俺の足に触れた瞬間、なぜか上擦った声が漏れた。
恐る恐る後ろを見ると、
まるでアメーバのように動く水の塊が、俺の足をくすぐるように弄っていた。
俺が不覚にも感じてしまったことに気づいたのだろうか。
ぐねぐねとはにかむように揺れると、"それ"は触手状に腕を伸ばしてきた。
服の中にゆっくりと侵入していく。

「うあっ、ァ・・・!」
"それ"が俺の肌を這いまわる。
まるで性的な愛撫のようだった。
慌てて服の上から抑えたが、
"それ"は指の隙間を縫ってどんどん胸の方に上がってくる。
主導権を女に握られた、一方的な性交のようだった。

「なんっ、なんだよぉ!」
"それ"が這った場所が、疼くように火照っている。
服の上から"それ"を押しとどめようとしていた指を、つい動かしてしまった。
むふっと鼻の穴が膨らむ。まるで性感帯のようになった肌がそこにあった。
思いっきりここで抜きたいという情欲と、
コイツはいったいなんなんだという恐怖で俺の顔が歪んだ。

「やばっ、ぁあ!」
いつの間にか、"それ"が俺の顎までたどり着いていた。
何をする気なのかはわかった。コイツは、俺の身体の中に入ろうとしている。
こんなんに入られたら、いったい俺はどうなっちまうんだ!?
口を閉じる暇もなく、間抜けに開いた俺の口に"それ"が入ってきた。
塩っけのある不思議な味が広がる。
意外なほどの旨みに、"それ"を思わず飲み込んでしまった。

「ぁあ゛ー・・・」
俺は安堵の溜め息を漏らした。
身体を強張らせていた緊張が、恐怖が、すうっと引いていく。
なんだか奇妙な感覚だった。俺の身体が、自分のものじゃない気がする。
俺は立ち上がろうとしたが、まるで立ち方を忘れたように腰を抜かしてしまった。
あれ?どうやって・・・立つんだっけ?

それどころか、感情さえ自分のものではなかった。
頭では異常な事態だと解っていたが、俺の心にあるのは喜びだけだった。
うれしい。ウレシイ。嬉しい。
俺の顔にだらしない笑みが浮かぶ。
この身体が手に入ったことが、嬉しくてしかたない。
自分の身体のはずなのに、そんなことを感じていた。

「はへっ・・・うへへ」
俺は四つん這いになると、堅くなった股間をズボンに擦り付けるように動かした。
あぁ・・・気持ちいい。もっと気持ちよくなりたい。
だが手を伸ばそうとして困惑した。
手って、どうやって使えばいいんだ?

知識としてはあるのだが、自分が今まで手を使ってきた実感がまるでない。
人間じゃない何かが、人間の知識を急に与えられて困惑しているようだった。
俺はふーふーと性的に興奮したまま、四つん這いで歩きまわった。

(あの木がいい)
俺はふらふらと白樺の樹に近づくと、交尾するときのように前足を持ち上げた。
そのまま抱きつくような態勢になると、スコスコと腰を降り始めた。
どうやら下着の中で変な方向を向いたまま勃起したらしく、
今すぐにでもチンポジを直したい気持ち悪さがある。
だがそんな簡単なこともできないまま、俺は無我夢中に腰を振りつづけた。

「お゛っお゛っお・・・あ゛ひっ!」
ペースなんぞ考えない単純な自慰で、あっという間に絶頂に達した。
股間がぐちょぐちょに湿り、不快なほどにベトつくが、何も出来ない。
口からもだらだら涎を垂らしたまま、俺は四つん這いで森の奥へ入っていく。
もっとだ。この身体を自分のものにするには、もっと俺たちを飲まなきゃいけない。

何かに憑かれたように獣道に分け入って行くと、
しばらくして小さな泉が眼に入った。俺の興奮が最高潮に達する。
そのまま泉に近づくと、顔を近づけてゴクゴクと水を飲み始めた。
・・・うめえ。一口飲むほどに、頭の奥が痺れてくる。
自分のものでない記憶がどんどん混じってくる。

長いくちばしで木の実をついばんでいた記憶。
冬ごもりに備えてウロにどんぐりを隠した記憶。
人里に降りて騒ぎになった記憶。

今までに泉にやって来た、山の動物たちの記憶だった。
みんな俺たちのものになったのだ。この体も、もうすぐ俺たちのものだ。

泉の水を飲むたびに、チンポがびゅくびゅくと精を散らす。
もっと水が欲しくなった俺は、ざんぶと泉に飛び込んだ。
泉も触手を伸ばし、俺をやさしく包み込んでくれる。
俺はケダモノのような奇声を上げながら、何度も果て続けた。

お久しぶりです


最近の部屋の賑わいに誘われて、いつの間にか寄生モノを書いていました。
話としてはここでちょうど区切れているのですが、
水を介した寄生拡大を書いてみたいので、もうちょっと続く予定です。

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