【R-18】男性同士の催眠術/マインド・コントロールを描いた日本語小説です。成人向け内容です。

DEEP TOWN 1



作:TAKE

・ [Prologue] 


「自分は何も覚えてないんです!」
開きかけたドアの向こうから、男の悲壮な声が響いた…。

かまわず、ドアを開いて顔をのぞかせると、
小さな取調室の中に対面して座っている二人の男が見える。

「ご苦労様です。」俺の顔を見ると立花は立ち上がった。

向こう側に座っているのは、顔見知りの顔だった。
俺は、後ろ手にドアを閉めるとゆっくりと取り調べ机に向かった。

「おいおい、どうしてお前が…。」
俺は、見知った男の顔を見下ろしながら頭をかいた。

「源さん、自分は本当に何も…。」
俺の顔を見ると男は、うっすらと涙を浮かべてそう訴えると
拳を机に叩きつける。

男は、駅前交番に勤務している2年目になる巡査だった。
名前は「榊 弘一」。
父親が、幼いころに殉職していたが、その父を慕って
警察官の道を歩んだ親子二代の真面目を
絵にかいたような男だった。
俺は、榊の親父さんと一緒に組んでいた。
親父さんの殉職を榊自身に伝えたのは俺だったのだ…。

事件は、昨夜起きていた。
制服姿の榊は、パトロールの最中で駅から少し離れた
公園で発見された。

帰りが遅いことが気になり、無線で呼び出したが返事がないので
探しにきた同僚に見つけられたのだ。

その時奴は、拳銃を男の眉間に当てたまま男とまぐわっていたらしい。

俗に、その手の男たちが集まる公園らしいのだが、そこで榊は、
拳銃を使って、制服姿でレイプをしていたのだ。

発見されたとき、榊はまるで何かに取りつかれたように
獣のように荒い息を吐きながら、涎を垂らして、腰を一心不乱に
動かしていたらしいのだ。

取り押さえに入った同僚の腕を振りほどこうとして、
同僚は、顎に全治一週間のけがをしていた。

その時に、天に向けて発砲した拳銃の音を聞いたとたん
榊は、気を失ったようにそこに崩れ落ちたらしい。

そのまま、今朝方まで意識を失って、意識の回復とともに
取調室に連れてこられたらしいのだ。

・ [疑惑] 


俺は、榊の前に腰をかけた。
榊は、机の上に置いた拳を堅く握りしめているらしく、
肩が小刻みに震えていた。

悔し涙だろうか、奴の頬を一筋流れた。

俺は、立花に榊と二人だけにしてくれるように頼むと
人払いをした。

「どうしたよ、榊…」
それが、俺の精一杯の問いかけだった。

「わからないんです。自分がなんでここにいるのかさえ」
少し、嗚咽混じりに榊は答えた。

「しかし、お前が実行犯であることは事実だ。何があった」

「昨日…」榊は、ポツリとポツリと記憶の糸を辿るように話し始めた。

「自分は、いつものように巡回に出たんです…。」
記憶の糸は、まだ不完全のようだが榊は必死で手繰り寄せている。

「それで、公園の辺りを通りかかって…。それで…。」
公園に行ったところまでは覚えているようだが、そこで記憶の糸は切れていた。

そこからは、どうしても思い出せないというより思い出そうとすると
激しい頭痛が起きるらしいのだ。

頭を抱えて、机に伏している榊の肩を叩くと俺はふと思ったことを榊に聞いた。
「最近、疲れているんじゃないのか?」

榊は、顔をあげると
「源さん、自分は親父のようにはなれないんでしょうか。」
そう、ポツリとつぶやいた。

「どうした急に…。」

「親父は、自分の誇りでした。そんな親父に憧れて警察官になりました。」
榊は、堰を切ったように続ける。

「でも、自分は親父のようにはなれない。それで、最近プレッシャーで
軽い鬱のようになっていたようで、カウンセリングに行ってたんです。」

榊は、視線を机に落とすと、独り言のように吐き出した。

「カウンセリング、お前大丈夫なのか…」
確かに榊の親父さんは、優秀な刑事だった。
足で情報を探す、昔ながらの刑事だった。
難解な事件を幾度も解決したがそれをまるで鼻にかけない寡黙な男だった。

「はい、その先生のところに行った後は、とても気持ちが落ち着くんで」
榊は、さっきとは打って変わって、柔和な表情を浮かべる。

「薬ももらってますし、お香も…。」

「お香?」
俺は、不思議に思って聞いた。

「はい、気分が落ち着くって言われて、アロマだとかなんとか」
榊は、何を思い出しているのだろうか、表情がいつもとは変わってくる。

「それは、どこの病院だい?」
俺は、続ける。

「病院じゃないんです。個人事務所というか、個人がやっているんですよ」
俺は、何だか不安を感じ始めていた。

「榊、そのお香とやらは今どこにある?」
何か腑に落ちない、俺の直感が告げている。

「部屋にあります。どうしてですか。」

「立花!」
俺は、立花を呼ぶと、すぐにそのお香を榊の部屋まで取りに行くように指示した。

・ [噂] 


俺は、戻ってきた立花に榊の言っている香を、調べてもらうように指示すると
現場に向かった。

表向きは、警官の威嚇発砲事件として処理されていた。
さすがに、拳銃レイプという訳にはいかず、報道操作がされていた。
まぁ、それでもゴシップ誌はそう言うわけにもいかなかったようだが…。

現場は、そういう噂では有名な公園だった。
いわゆる男同志が出会う場所というやつだ。

夜になると、木々が生い茂った公園の奥の方で、男たちが徘徊するらしい。
すでに、夕暮れを迎えていた公園には、妙に目を泳がせている男がチラホラと伺えた。

「おっさん、どうだい?」不意に、男の声がした。
振り向くとそこには、20代の前半だろうか、やけに肌を露出させた格好の図体のでかい男が立っていた。
男は、やけに馴れ馴れしく話しかけてくる。

俺は、ジャケットのポケットから、手帳を男だけに見えるように見せた。
手帳を目にしたとたん、男は顔をひきつらせてその場を離れようとしている。
俺は、その手をひっ捕まえた。

「聞きたいことがあるんだ」
「ひぃ」男は、なんとも情けない声を出した。

「大丈夫だ、協力してくれれば捕まえやせんよ」
俺は、男に告げた。

その言葉に幾分男は安心したのか、「な、なんだよ」とぶっきらぼうに答えた。

「このあたりで、レイプ事件があったのを知ってるか?」
俺は、単刀直入に話し始める。

「あぁ、ホモ同士のかい。ここんところやけに増えてるみたいだぜ。」
男は、訝しそうな顔で答える。

「増えてる?」俺は、予想外の答えに驚いた。
「あぁ、この前はおまわりがレイプしてたってもっぱらの噂さ」
そこまで、言って男はしまったという顔を見せる。

「いやぁ、あの…」取り繕う男に、俺はにやりと笑いかけると
「知ってることを話してくれよ。」とドスの効いた声で低く言い放つ。

「いや、一昨日だったか、警官が拳銃使ってレイプしてたって噂だけだよ」
男は、あまり深入りしたくないのだろう、他人事のように話す。

「この辺じゃ、有名なのか?」俺は、言葉を返す。

「ああ、掲示板に書き込まれてたよ。その前も何回かそんなレイプまがいの事件があって、
でも、どいつもこいつもなんかに憑かれてたみたいだって噂さ。」
男は、どうやら噂好きのようだ。

「それで」俺は、さらに突っ込む。

「なんでも、それまでは大人しかったのに、急に豹変すって話だぜ。」
「でもって、相手を押し倒すとそこからはまるで獣の交尾のようらしい」
男は、自慢げに話す。

”榊の時に似てるな。しかし、そんなに頻繁にあるのになんで話にあがらんのだ”

「でも、男にレイプされたって訴える奴もいねぇだろ。だからメディアじゃ取り上げないみたいで」
「もっぱら、俺たちの掲示板なんかの話のネタ止まりさ。まぁ、そんなのを喜ぶ奴らもいるしな。」

”なるほどな、確かに女がレイプされたって訳じゃないから、事件にはならんか。”

「ところで、お巡りさん。」男は、やけに馴れ馴れしくなる。
「俺とやらない?」そういって、俺の手を握り始めた。

「悪いな、そういう興味はないんだ。」俺は、やんわりと断る。

「チッ」男は、つまらないという風を見せて、その場を立ち去った。

”連続レイプ事件、しかもそのほとんどが榊の様に異常を示している。”
俺の勘が、何かを告げている。

その時、携帯が鳴った。
「立花です、例の香の解析が終わりました。署に戻ってもらえますか。」

俺は、すでに夜の帳を下ろし始めた公園を後にした。

・ [凶暴化] 


署に戻ると立花はすぐに駆け寄ってきた。
「これが、分析結果です。」立花から書類を受け取って目を通す。

ありきたりの成分が並んでいる。

「特に不審な成分は見つからなかったようです。」
立花は、事務的にそう告げた。

「俺も歳かな」俺は、頭をかきながらひとりごちた。

「で、榊は…。」俺は、榊の様子を聞いてみる。

「相変わらずですよ。全く覚えていないの一点張りで。」
立花も閉口した様子だった。

「ふぅ」俺は深い溜息をつく。
しかし、なぜあの真面目な榊が拳銃でレイプまがいのことなど…。

仕方ない、改めて榊に聞いてみるか。
俺は、立花を連れて取調室に向かう。

「うわぁ」

廊下を曲がれば取調室という時に
突然、廊下に声が響いた。

急いで廊下を曲がると廊下には、異様に目を光らせた榊が、
まるで何かに取りつかれたように、口から涎を垂らしながら、
取り調べていた柊に向かって歩を進めていた。

柊の制服は、胸元がはだけているように見えた。
どうやら、取り調べ室で何かあったらしい。

「とまれ!」立花が榊に声をかける。

柊は腰が抜けてしまったのか、その場を動くこともできない様子だ。

榊は、立花の静止などお構いなしに柊に近づく。

「とまれ!」再び立花が制止する。
と同時に拳銃を抜くと榊に向ける。

榊の目にはまるで拳銃など見ていないようだ。
止まることもなくゆっくりと柊に近づく。

「止まれ!!」立花の声が一段と大きくなった次の瞬間
榊が柊に飛びかかった。

「やめろ〜!」柊の声が廊下に響く。

榊は、人間ではないかのような怪力で柊のズボンを引き裂いた。

「急げ!」俺は、立花に声をかけると二人に駆け寄る。

ズボンと一緒にパンツも破られたのか柊の下半身は露わになっている。

「ひぃぃ」柊が、声を上げる。
立花が榊の後ろにわまって榊をはがいじめにしようとするが、逆に投げ飛ばされてしまう。

「やめろ!榊」俺は叫ぶ。

騒ぎを聞いて、署員たちが集まってきた。

「ぎゃぁぁ」柊の声が廊下にこだまする。

榊が柊の大切な場所を力まかせに握りつぶしているらしい。

「助けてぇ…。」柊の情けない声が、消え入りそうになる。

次々に、抑えに入ろうとする署員を榊は、人間とも思えない力で振りほどいていく。

「ぎゃぁぁ」柊の断末魔がこだまする。

”天に向けて発砲した拳銃の音を聞いたとたん榊は、気を失ったようにそこに崩れ落ちたらしい…”

俺は、銃を取り出すと天井に向けて空砲を撃つ。

瞬間、榊は気を失ってその場に崩れ落ちた。

その顔は、とても安らかないつもの榊に戻っていた。

・ [逃亡] 


「一種の催眠状態のようですね。」
医者の口からは予測していた言葉が出てきた。

「やはり」俺は、榊の寝顔を見下ろしながらつぶやいた。
署の中で暴れた榊は、突然気を失った。

そして、そのまま病院に運ばれてきたのだ。

「人間の潜在意識に直接働きかけてあるきっかけで人格を操ったりすることができるというのを
聞いたことがあります。」
医者は淡々と話を続ける。

「いつもは大人しい人間は突然凶暴になったり、逆に凶暴な人間は犬のように従順になったり…」

「そんなことが本当にできるんですか。」疑念をぶつける。

「さぁ、そう言う話を聞くことはありますが、実際に体験したわけではないですし。」
医者は、そう言うと「お大事に」と付け加えて病室を出た。

”公園で突然男をレイプし、署内でまるで猛獣のように暴れまわる”
確かに、榊を知っている人間は誰も想像できないことだ。

しかし、どうした…。榊…。
そっと榊の額に手を当てる。

突然、榊の眼が開いた。
「源さ・・ん ・・・」
榊が弱々しく話す。

「大丈夫か…」俺は榊の顔を覗き込んだ。

「俺、怖い。俺の中に何かがいて・・」榊は、そう言うと俺の腕にしがみついてきた。

「どうした」子供のように泣きじゃくる榊の頭を撫でる。
「俺が俺じゃなくなっていくんだ、どうにもならないんだ。」俺の腕にかかる力が徐々に強くなる。

「榊…。」俺は、違和感を覚えた。
次の瞬間。

眼の前を拳がすり抜けた。
俺は、勘で状態を後ろにそらすと、榊から腕を引き抜く。

みるみる榊の顔が変わっていく。
さっきまで、子供のようだった榊の顔は、次第に鬼のような形相に変化していく。

ガシャーン。
榊の投げた花瓶が壁に砕け散る。

「どうした、榊」俺は榊に声をかける。

「どうしました。」駆け付けた医者の声に榊が反応した。

振り返った瞬間、榊の身体が一瞬宙に浮いたかと思うと、榊の手は医者の股間を捕らえた。
「グフッ」医者の眼が、白黒する。

「やめろ」俺は拳銃を構えた。

榊は俺の存在など目に入らないように、その場に座り込んだ医者の白衣を力任せに引き裂く。
医者の胸板が露わになる。

「榊!!」俺は、拳銃を構えたまま榊に近づく。

榊の手は、医者の首を掴むとそのまま上に持ち上げて、今度はズボンを引き裂く。
幾筋かの血の跡と共に医者の下半身が露わになる。

医者は完全に気を失って、その身体はまるで死んでいるかのようにだらりと垂れさがる。

「くそっ」俺は、榊に向かって最後の警告をした。
「榊、今すぐそいつから離れろ!」

一瞬俺の方を向くと榊は医者を俺に向かって投げつけた。

俺は、医者を避けるわけにもいかず、何とか身体で受け止めた。

ニヤリと榊の顔が歪む。
榊は、医者の血で汚れた病院のパジャマのままで病室を出て行った。

俺は、医者をその場に寝かせると榊の後を追って廊下に出た。
しかし、そこには榊の姿はなかった…。

・ [遭遇] 


それから、3日が過ぎていた。
病院から姿を消した榊の行方はいまだにつかめずに、俺はイラつきを募らせていた。
立花は、そんな俺の八つ当たりの被害を受けて、今日も榊を捜して奔走していた。

俺は、榊の行方を捜して榊の部屋を訪れようとしていた。
その道のりで、携帯が鳴りだす。

立花の定時連絡だろう。
俺は、携帯を取り出す。

液晶画面には、見覚えのない番号が表示されていた。
「もしもし…」俺は、いかにも不機嫌といった風で電話にです。

「椿さんの携帯ですか」落ち着いた男の声が受話器から聞こえる。
「ああ、そうだが、あんたは?」俺は、面倒臭そうに答える。

「いやぁ、あなたの探している方を見つけたので、ご連絡をと思って」
男の声は、抑揚のない平坦な調子で俺に告げた。

「探している…。榊か!榊の場所を知っているのか!」
俺は、受話器を持ち直すと声を荒げていた。

「ええ、榊さんの居場所を知っていますよ。」
男の声が変調した。少しとぼけたような笑いを含む。

「どこだ!あんた誰だ!」
俺は、矢継ぎ早にまくしたてる。

「まぁ、まぁ、そう焦らずに。」
男の声はいたって平静に話す。

「私は、榊さんの主治医です。彼は、3日前に私の元にやってきてそのまま眠ってしまって」

「主治医?あんたが、榊のカウンセリングをやってたとかいう男か」

「ええ、そうですよ。」
男の声は、相変わらずの平坦な調子に戻る。

「で、榊は無事なのか。」
榊の居場所が分かったことで俺は、少し平静を取り戻し、榊のことを尋ねる。

「体はなんどもないですよ。ただ、精神的にかなりお疲れの…。」

「今、どこにいる。すぐに迎えに行く。」
俺は、男の話を遮ると再び声を荒げた。

「私の病院ですよ。住所は…」

男の住所を手帳に走り書きすると、「すぐに行く!」とだけ告げて俺は電話を切り、
タクシーを拾った。

男の診療所までは、そう遠くない距離で、タクシーで5分ほどで着いた。

喧騒とは少し離れたいかにも金持ちが好きそうなマンションの前にタクシーは止まった。

俺は、エントランスをくぐると男の部屋番号を押す。
何度かの呼び出し音の後に、男の声がインターフォンから帰ってくる。

「椿だ!」俺は、インターフォンに告げる。
間もなく、自動ドアが開く。

エレベーターを待つのももどかしく、俺は、やっと到着したエレベーターに乗ると男の告げた階を押す。
エレベータが開くと、高台のマンションからは町が一望できた。
部屋番号を辿る。

部屋は、廊下のいちばん奥。
と言っても一部屋がでかいのだろう、このでかさで、部屋は4つ程度しかなかった。

表札は出ていない。

ピンポーン。インターフォンが、音を立てる。
ガチャリ。ドアが開くと大柄な男が顔を出した。

「わざわざ、ご足労を…」男が言い終わらないうちに、俺はドアを開くとそのまま、玄関へと入り込む。

靴を脱ぎ散らかすと、男の部屋に入っていく。

「おやおや」男は、少しあきれ顔に、俺の後をついて部屋に入ってくる。

ソファの上には、榊が寝息を立てていた。

俺は、榊のそばによると榊の身体を揺り動かす。

「おい!榊!起きろ!起きるんだ!」
男の存在など気がつかぬ風で俺は榊を起こしにかかる。

「だめですよ。彼は今深層に入っている。」
男は、優しげに話す。

俺は、一瞬男を睨みつけると再び榊を見る。

「あなたは、激しい気性の持ち主ですねぇ。」男は、悪びれもせず俺に告げる。

「ほっておいてくれ!」俺は男を見た。

一瞬フワッとした感触が、身体を駆け抜ける。

「うぅっ」軽いめまいが襲う。
榊に気を取られて気がつかなかったが、部屋の中に立ち込める甘い香りが俺の鼻孔をくすぐる。

「はて、いかがされましたか。」男は、ゆっくりと俺に近づいてくる。

「いや、なんでも…」めまいはどんどん強くなり始める。
俺は、片膝をつくと身体を支えるのが精いっぱいになり始めた。

「さぁぁあ、どぅぅぅうしまぁぁしたぁぁ。」男の声が間延びするように耳に届く。

「うぐぅぅ。」全身が鉛のように重くなり始める。

「あなぁぁたもぅぅ、ねむぅぅりぃぃなさぁぁあぁいぃぃ。」
男の声がまるで耳の中でこだまするように響く。

ねむぃい…。意識がどんどんと遠のいていく。

どさっ。
俺はそのまま、床に倒れこんだ。

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