学校では教わることのない日本の自虐史観を省いた歴史を年表にまとめたもの。

●第三回 昭和十年十月七日午前十一時於大臣室
亜、一、太田記
十月七日午前十一時蒋大使広田大臣を来訪、丁参事官の通訳にて大要左記会談(約三十分)をなせり

一、多田司令官の声明問題
蒋大使より多田司令官過般の声明内容は中華民国の統一を破壊し且内政に関する重要なる点に触れ居り支那側としては官民共に之に驚き重要視し居る処右声明は果たして日本政府の意見なりや承知致度しと質問せるに付
大臣より右声明なるものの内容に関しては新聞にて見たる以外詳細承知せざるも右は「声明」として発表せられたるものにも非ざる趣なり又最近の日本新聞に依れば当初本件を多田司令官の声明として発表せる天津の新聞は右が所謂声明に非ざることを正誤せる趣なりと述べたるに蒋大使は之を諒承せり

二、「対支政策」問題
蒋大使より先日御話したる件(第二回会談録参照※省略)に付御意見を伺い度しと述べたるに付
大臣より先般御話の次第に関して其の後各方面とも協議したるが本日は右相談の結果を卒直に御話致すべしと前提し

(一)日本は東亜の平和維持を最も顧念し居る処右は単に日支両国間の諒解のみならず満洲国を加えたる日満支三国間の諒解提携に依り始めて達成せらるる次第なるが之が為には先ず日支間に真の親善関係を確立すること肝要なりと思考する処日本官民に於いては支那側にては常々欧米
   の勢力を利用して日本を牽制する傾向ありと疑い居るを以て所謂以夷制夷の態度を改められ度此の際支那側に於いて尠くとも排日殊に貨排斥、排日教育等を全然止めると共に更に進んで積極的に日支提携の実を挙ぐる様一層努力すること
(二)日満支三国の関係調整の為には支那側に於いて此の際満洲国の承認を断行すること最上なるも支那側としても対内其の他の関係上正式承認を困難とする事情あるべきを以て若し承認困難なるに於いては差当り満洲国の独立という既存の事実を無視することなく之が存在を事実上
   黙認することに依り少なく共満支接壌地域たる北支に於いては日満支三国間に事実上充分なる経済的文化的提携の出来得る様すること
(三)赤化勢力の侵播は単に支那に取りてのみならず日満両国延いては東亜全般に対する脅威なるを以て之に対抗する為日満支三国間に虚心坦懐、共同の方策を相談すること

の三点は日支提携の為の絶対必要条件にして先日御話の支那側三原則なるものも右三条件に付日支間に話合出来たる後始めて御相談にも応じ得べく又右に関する開談も其の効果を期待し得る理なりと告げたるに
蒋大使は

(一)排日取締に関しては今後実際国民政府の局に当たる者に付見られ度(暗に同大使の外交部長就任を意味せるやに察せられたり)
(二)満洲国の独立を事実上認むべしとの御意見に関しては自分限りで決定し返答するを得ざるに付何れ本国政府へ申達すべし
(三)赤化勢力に対する共同方策の点に関しては果たして直ちに其の実行の必要ありや又其の方法及び地域等に付ては尚種々考究を要する点多かるべし

尚自分は二十日乃至二十五日頃には帰国すべきに付夫れ迄の間に更に数回御訪問の上意見の交換をなすことと致度しと述べたり

●第四回 昭和十年十月二十一日
蒋大使は丁参事官をして中国政府の回答(二十日付日支別紙参照)を朗読せしめたり依って大臣は第一点に対する回答中に排日排日貨を停止すると共に積極的に日支提携の実を挙ぐることに言及し居らざることを糺したるに蒋大使は右は過日会談の際既に同意したるを以て特に言及せざるものなり
更に大臣は第二点に付

(一)今後中国は満洲に対し政府間の交渉を為し得ずとある処右は現情と何等異なる処なきに非ずや尚諸外国は未だ満洲国を正式に承認せざるも通信其の他経済的には各種の取極を為し且つ現に交渉進行中なるものあるに中国は此等をも満洲国とは交渉せざる
   意なりや又
(二)満洲国に対し平和的以外の方法を用いて変端を惹き起こすことを為さずとある処右は従来は武力に依って満洲国の変更破壊を企図したるが将来は平和的方法に依って所謂失地を回復することあるやの意を暗示するものとも認めらるる処果たして然るや又
(三)関内外人民の経済連絡を保持するとある処同字句は関外人民は依然中国人と見做し居れる意なりや
(四)前回本大臣は経済連絡の外文化連絡のことをも話し置きたるが此点は如何

と資したるに対し蒋大使は

(一)の点に就きては明確なる答えをなさず只既に満洲国と郵便電信鉄道等の交渉をなせりと答え
(二)の点に対しては必ずしも斯かる意味に非ず中国の満洲国に対する考えは以前よりも一歩進んで居ると思うと答え
(三)の点に就きては関外人を中国と見る意味に非ずと言い
(四)の点のことは前回既に同意せりとの意味を漏せり

次に第三点に関し大臣は屢々申述べたるが如く日本は東洋の平和と発展とを常に顧念し之が保持促進に努力し来れるものなり従って東洋の平和を攪乱し其の発達を阻害する赤禍の防止に付ては重大関心を有す貴国に於ける赤禍の脅威殊に西北地方竝に蒙古方面に於ける赤禍の事態に対しては極めて重要視せるに反し貴国側に於いては「目下の処赤禍は既に心配するに足らざる状況にある」と為すは赤化運動に関し日本と全然其の所見を異にするものなり
最近四川の赤軍を漸次陝西省、甘粛省、乃至内蒙方面に駆逐し其の禍山西省に及ばんとするやの情報あり右に対し日本の一部に於いては蒋介石軍が殊更に中国内の赤軍を内外蒙に追い入れ延いて満洲国に対し多大の不安脅威を感せしめんと計るものなりと観察し居る向きもあり、更に又駐露顔大使其の他中国要人がソ連と提携して日本に当たらんとするの計画を進めつつありとすら伝えられ斯くては赤禍に対する貴我両国の観察は雲泥の相違なりと伝えたるに対し蒋大使は右は何れも事実に非ずして中央の剿共軍は赤軍を包囲し之を殲滅せんとの戦略に出るものにして或は青海方面に遁入することはあり得べきも北方に出て満洲国の脅威となるが如きことなかるべし又顔大使等がソ連と提携を企て居るが如きことは全然虚報なりと述べたり
右に対し大臣は青海方面は人畜稀にして衣食不充分なる等の関係より見て多数の赤軍が同方面に遁入することなかるべしとの趣旨を述べ尚「北辺一帯の境界地方に於ける赤化防止に就きては中国側提出の三大原則を完全に実行したるならば」云々とある点を指摘し中国側三大原則には幾多の問題あり之を実行したる後と言えば何時のこととなるや知れざるが中国の考え方は斯かる意味なりやと資したるに其の返答は甚だ曖昧なりき
次に大臣は今回中国側の回答に依れば曩に貴大臣より申出でられたる中日親善基本条件たる三原則の完全実行を条件とし其の後中国は初めて我方申出の三点を応諾すべしとなし居る様なるが果して然らば当方の考えと正反対にて何時解決を見るやも知れず一体中国側に於いては実際如何なる方法にて問題を解決せんとせらるる次第なりやと言えるに蒋大使は右三原則中の各項の実行を条件とするものに非ざるも先ず以て右三原則の趣旨を認めらるるに於いては貴方申出の三点と共に話合を進め得る意なりと答えたり
次て大臣は貴方答復に依れば上海塘沽両停戦協定の即時廃止を希望し居る処右協定廃止後果たして日支両国関係如何中国側は漫然之が廃止を行い得るものと考え居らるる次第なりやと述べたるに
蒋大使は只日本が大国として進んで中国に好意を示し之を廃止せらるるに於いては支那民心に多大の安定を与え対日依存の念を深からしむるものと認め日本が其の撤廃を敢行せんことを希望するものなりと述べたり

●中華民国二十四年十月二十日付書物写(丁参事官より非公式に借用の上写しを作成せるもの)

蒋大使の広田外相に対して伝達したる中国政府の回答
本年十月七日貴大臣閣下が本年九月七日本大使の提出した諸条項中の日華親善基本前提条件たる三大原則に対して「其の通りに為す可しと認める」ことを表示せられた本大使がそれを聞いて欣慰の至りに存じます今もう一回本大使の提出した三大原則を申上げます

一、日華両国は互いに相手国の国際法上に於ける完全の独立を尊重すること即ち日本帝国が中華民国に対し一切の不平等条約例えば租借地居留地領事裁判権等皆廃除すること軍隊軍艦等は対手国の許可なくして対手国の領地領水に停泊駐屯或は通過せざること
  此の外国法上独立国家の国際法上に於いて有す可き凡ての権利及び義務は日華両国が互いに享有し又遵守すること
一、日華両国は今後真正の友誼を維持すること一切の非友誼行為例えば統一の破壊、治安の攪乱、対手国に対する誹謗或は破壊其の他非友誼的性質を帯びる一切の行為は皆対手国に対して施さざること
一、日華邦交は今後正軌に回復すること今後日華両国間一切の事件及び問題は皆平和的外交手段を以て解決に従事すること外交機関以外のものの行動或は任意的圧迫手段は即時停止すること

而して十月七日貴大臣閣下から下述三点を提出して中華民国政府の同意を求められた

一、中華民国は今後夷を以て夷を制する政策を絶対に抛棄し再び欧米勢力を借りて日本を牽制せざること若し以前の様に口頭だけ親日を唱え暗に欧米と連絡すれば中日親善の実現は不可能である
二、日華満三国の関係は常に円満に保持することを以て中日親善の根本前提と為すこと此の目的を達する為には先ず中日両国が互いに親善関係を結ぶことを要する日本方面に在っては中華民国が満洲国に対して正式承認を為せば始めて中華民国の誠意あることを
  認めることが出来るが中華民国方面に在っては或は即時に正式承認を為す能わざる事情有るかも知れず兎に角中華民国が満洲国存在の事実に対して尊重する必要がある第一、満洲国と其の近接せる華北地方の間に争いが起こらせない様にする方法
  第二、満洲国と其の近接せる華北地方との間に密接の経済連絡を保たせる方法を見出すことが必要である
三、中華民国は赤化の防止に関して有効の方法を日本と協商すること中華民国を赤化する運動の源は某国に在りて北から南へ進展するから中華民国北辺一帯の境界地方で赤化防止に関して日本と協議する必要がある

本大使が既に貴大臣閣下の御意見を本国政府に報告しました本国政府の回答は次の如くであります

若し日本帝国が中華民国の提出した日華親善基本前提条件たる三大原則を完全に実行すれば中華民国は日本帝国に対して下に述べる意思を表明する
広田閣下の提出せられた第一点に関しては中華民国は原来夷を以て夷を制する考えは無いこれまで日華両国間の紛糾は凡て両国の親善関係を樹立することが出来ないから起こったのである今親善関係を実現する為中華民国が其の他各国との関係事件に付いて決して日華両国の関係をして不良の影響を蒙らせず殊に消極的には日本帝国を排除し積極的には日本帝国を妨害する意味が有ることを含ませない日本帝国に於かれても其の他各国との関係事件に付いて中華民国に対して同様の方針を取られることを希望する
広田閣下の満州国に対して承認することが出来ないことを諒解せられたから今後中華民国は満洲に対しては決して平和的外交以外の方法を用いて変端を惹引することを為さず且関内外人民の経済連絡を保持する方法を講ず
広田閣下の提出せられた第三点に関しては中華民国が赤化防止に対して数年以来既に最大の努力を尽くし其の削除に従事する為重大の犠牲を惜しまなかった今は赤禍は既に心配するに足らない状況に在る中華民国北辺一帯の境界地方に於いて如何に防備するかに至っては若し日本帝国が中華民国の提出した日華親善基本前提条件たる三大原則を完全に実行したならば中華民国が自己の主権と独立を妨害しない原則の下に日本帝国と有効の方法を協議するだろう
上に述べたことは広田閣下の提出せられた三点に対する答復である本年九月七日蒋大使が中華民国政府を代表して広田閣下に対して提出した一切の条項を日本帝国が必ず実行し満洲問題を除いて一切九・一八以前の状態に回復するを要す上海停戦協定塘沽停戦協定竝に本年六月間華北事件の日華両国軍人間の商議等は孰れも中華民国をして其の領土内で十分に主権を行使することが出来ず従って時に発生する所の紛糾を鎮圧することが出来なくならしめる計りで徒に日華両国間のようやく好転し始めた感情の融和を傷つけるのであるから日本帝国の即時にこれら協定及び商議を撤銷し以て中華民国地方秩序の安寧と日華関係の根本改善を誤られることを切望する
以上は本国政府の日華親善実行に関する意見であって本大使が之を貴大臣閣下に対して伝達する光栄を有します


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