学校では教わることのない日本の自虐史観を省いた歴史を年表にまとめたもの。

※旧字体は新字体に、カタカナ表記はひらがなにそれぞれ改めています。

電信 ニューカッスル発 三十八年八月二十六日   
   東京着      三十八年八月二十七日
小村全権委員

桂外務大臣

第一〇四号
本日午後三時本員等は露国委員と会見し互いに腹蔵なく意見を交換するの目的を以て秘密会議を開き先ず前回の会見に於いて提出したる妥協案に対し露国政府の意見は如何と問いたるに「ウィッテ」は軍費賠償を含有する考案は
如何なる形式のものと誰も到底同意すること能わずと言えるに付然らば薩哈嗹に付いては如何と重ねて問を発したるにウィッテは薩哈嗹に付いては自分一己の考にては何等か解決の方法あるやも計られすと誰も既に満洲に於いて双方意見の一致
を得たる事項に付いても露国国内に強力なる反対ありて政府も之を無視すること能わさる状況なるが故にこの上軍費賠償を諾することは到底不可能なりと言えり
依て本員は我妥協案は交譲和協の精神より成り日露両国共に恥辱を受けたりとの感を貽ささる様充分の注意を用いたるものなり然れども之に不同意とあらば前回にも述べたる如く若し露国委員に於いて他に適当の考案あらば欣然考量を加うべきが故に
提出せられよと述べたるにウィッテは他に考案なしと断言せるに付果たして然らば談判は不調に帰し其当然の結果として戦争継続となるの外なし蓋し本員等は露国が戦争継続の力を有することを認むると同時に日本も又之を有するが故に必要とあらば
元より之を継続するの外なきも右は両国の為とならざるを以て妥協案を提出し互いに譲歩して円満なる終局を見んことを希望せるなりと述べたるにウィッテは自分等両人も願わくば妥協を遂げんとの目的を以て種々努力を尽くしたるも前述の如く
満洲に於ける譲歩すら反対あるの有様にして殊に露国軍隊は是迄不運を重ね来りたるが機運一転し今一戦せば必ず名誉を回復すべきを確信せり自分は軍事上の知識に乏しきを以て右の判断の当否を知る能はざるも僥倖は双方にあるが故に或は当たらずとも
言うべからず兎に角軍隊はこの際平和を締結することは絶対的に反対し若し露国外務省に於いて自分等の尽力を賛助することなかりしならんには此の談判は夙に終局を告げたるならん斯くの如き事情なるを以てこの上談判を継続するも効果を奏するの見込みなく
就きては可成速に之を終結するを寧ろ得策なりと思考す要するに最早自分等の力を以て左右すること能はざる事情となり事終に茲に至れり然れども日本全権委員に於いても平和の為に充分尽力せられたることは之を認むるが故に互いに悪感情を懐くことなくして
相分れんと言えり
依りて本員は之に対し貴下等の位地は余等も充分之を了解し且貴下等が平和の為に充分尽力せられたることをも同じく余等の認むる所なり既に貴下等に於いて斯くの如く断言せらるる以上最早解決の途なしと思考するも余等は最終の会合として今一回会合を
催すを得策と思惟す而して其の際前回提出したる妥協案に付露国政府の回答を正式に通せられたしと述べたるにウィッテは今一回会合することには異議なくその時露国政府の意見を公然述ぶべしと答え結局月曜日午後三時に再び会合することとして
本会議に移れり前回の議事録に記名して直ちに散会せり

電信  ニューカッスル発 三十八年八月二十六日
    東京着      三十八年八月二十七日

第一〇五号
講和談判の経過は前数回の電報を以てご承知の如く今日に至りては最早疎通の途之なきに至れり蓋し本員等に於いては出来得へくんば露国と和協を遂げ平和回復に至るの目的を以て最初我要求条件提出に際しても頗る注意を用い逐条討議に於いても譲歩し得へき文は
譲歩したるのみならず適当の時機に於いて艦艇引渡及び海軍力抑限の二条件を撤回すべきことを宣言し尚進んで難問題たる薩哈嗹割譲と軍費償還問題に付妥協案を提出し談判を妥結に帰せしめんと勗めたり然るに露国は右の二問題に付いては固く自説を執りて
少しも譲歩の意を示さず其の間ご承知の如く大統領に於いても各種の方面に対し極力斡旋の労を執られたるも露国をして反省せしむるの効なく却て其の決意を強固ならしめたるの感あり蓋し露国皇帝に於いては大統領の第一回親電に対し既にご承知の如きことを
断言せられたる以上第二回親電も同様無効にして又本日秘密会議に於けるウィッテの言に依りて察するも露帝の意志変更の望みは全然断へたるものと認めざるを得ず惟うに露帝は「リネウィッチ」の報告等により満洲軍の優勢にして戦運を一転するの望みあることを
確信しこの際平和を為すの意志は之なきに至りたるものと見るの外なし然るに右の二問題は当初よりして世上の最大注意を惹き余も又最後数回の談判に於いて専ら右の二問題に付き争い来りたるが故に今に於いて之を拗棄するは帝国の栄辱に関する大なるを以て
若し大体妥協案の如くにして纏らば可なるも然らずんば談判を断絶するの外最早取るべきの途之なしと思考す
就きては次回の会見に於いて妥協案に対する露国政府公然の回答を受け之に対し帝国の位置を明白ならしむる為一の宣言をなし即ち帝国委員は談判の当初より常に交譲和協の精神を以て之に処し幾多譲歩を重ねたる後終に薩哈嗹及び軍費問題に付いても妥協案を
提出し人道と平和との為円満に談判の終局せんことを図りたるも露国は頑然之を拒絶したるが為帝国に於いても不得己談判を終了すべく従て戦争継続の責任は一に露国に在る旨を宣言し以て談判を断絶すべく蓋し右以上談判を延長するの途は之なくに付一旦破裂の
上は本員等は直ちに当地を引上ぐべく如此せは或は之が動機となりて形勢の一変を見ること萬之なしとも限らざるに付当地引上げ後は紐育に赴き局面の発展を見るべき考なり終に臨み本員等は今回の談判に於いて深く帝国政府の主旨の存する所を体し不肖ながら
微力の及ばん限りを尽くしたるも不幸にして事ここに至る就きては甚だ遺憾なるも最早ここまでにては解決の方法之なくに付不得己最後の手段を取ることに決心致したる次第なるにより右御了察の上本員等が取るべき手段に付ては予めご承知あらんことを請う
尚本日秘密会議の概要は金子男を経大統領に内報し置きたり

東京発  明治三十八年八月二十八日 桂外務大臣
小村全権宛

 貴電第百四号及び百五号に関し帝国政府は閣議及び御前会議に於いて慎重凝議の末陛下の聖断を仰ぎ結局下文の如く廟議を一決せり
抑抑露国が妥協案を絶対に拒絶したる今日に談判継続の至難なるは政府の深く了する所なるも軍事及び経済上の事情を熟慮し且貴官等の折衝により既に開戦の目的たる満韓に関する重大なる問題の解決したるに鑑み仮令償金割地の二問題を拗棄するの己むを得ざるに
至るも、この際講和を成立せしむることに議決せり、然れども先ず償金問題を拗棄し割地問題を維持することは談判上従来我の執りたる態度に照らしこの際の機宜に適したる歩武なりと思考するに付貴官等は次回の会合に於いて左の如く提議せらるべし
 露国政府が両国全権委員の発議に係る妥協案を是認するに至らざるは帝国政府の深く遺憾とする所なり、然れども帝国政府は人道及び文明の大義に重きを置き且日露両国真正の利益に顧み最後の譲歩として露国に於いて帝国の樺太占領の既成事実を確認するの
条件を以て軍費償還に関する我要求を全然撤回すべし貴官等に於いて右提議を為すに当たり深く帝国政府の真意を體し仮令露国委員に於いて飽くまで其の主張を固執する場合に至るも貴官等は之を以て直ちに談判を不調に帰せしめず、一面大統領に説き平和の為
最後の努力として我に対し割地要求の撤回を勧告せしめ我に於いて人道及び平和の為之に応ずることに取計らはるべし、万一大統領に於いてこの上居中斡旋を拒むが如き場合に於いては不得己貴官等は帝国政府最後の譲歩として自ら要求の撤回を提出せらるべし、
之を要するに帝国政府は今回の講和の機会を逸せず飽くまで和局の完結を計るの決意を懐くが故に貴官等は充分に趣旨を體し之が尽力せらるべし

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