学校では教わることのない日本の自虐史観を省いた歴史を年表にまとめたもの。

十二月一日御前会議決定

十一月五日決定の帝国国策遂行要領に基づく対米交渉遂に成立するに至らず
帝国は米英蘭に対し開戦す

総理大臣説明
御許しを得たるに依りまして本日の議事の進行は私が之に当たります
十一月五日御前会議決定に基づきまして、陸海軍に於いては作戦準備の完整に勉めまする一方、政府に於きましては凡有る手段を尽くし全力を傾注して、対米国交調整の成立に努力して参りましたが、米国は従来の主張を一歩も譲らざるのみならず、更に米英蘭支連合の下に支那より無条件全面撤兵、南京政府の否認、日独伊三国条約の死文化を要求する等新たなる条件を追加し帝国の一方的譲歩を強要して参りました、若し帝国にして之に服従せんが帝国の権威を失墜し支那事変の完遂を期し得ざるのみならず、遂には帝国の存立をも危殆に陥らしむる結果と相成る次第でありまして、外交手段に依りては到底帝国の主張を貫徹し得ざることが明らかとなりました、一方米英蘭支等の諸国は其の経済的、軍事的圧迫を益々強化して参りまして、我国力上の見地よりするも、又作戦上の観点よりするも到底此の儘推移するを許さざる状態に立ち至りました、事茲に至りましては帝国は現下の危局を打開し、自存自衛を完うする為米英蘭に対し開戦の止むなきに立ち至りましたる次第であります

支那事変も既に四年有余に亙りましたる今日、更に大戦争に突入致すことと相成り、宸襟を悩まし奉ることは洵に恐懼の至りに堪えぬ次第でございます
然しながら熟々考えまするに国力は今や支那事変前に数倍し、国内の結束愈々固く、陸海将兵の士気益々旺盛にして、挙国一体一死奉公、国難突破を期すべきは私の確信して疑わぬ所でございます就いては別紙本日の議題に付て、御審議を願い度いと存じます。尚外交交渉、作戦事項其の他の事項に関しましては、夫々所管大臣及び統帥部側等より御説明申上げます

外務大臣説明
本日は主として十一月五日御前会議以後に於ける日米交渉の経過に付御説明申上げますが其れ以前即ち十月末に於ける交渉の状況を極めて簡単に要約致しますると米側は国際関係の基礎として
一、一切の国家の領土保全及び主権尊重
二、他国の内政不干渉
三、通商上の無差別待遇
四、平和手段に依るの外太平洋に於ける現状の不変更
の四原則を堅持し之が適用を強要せむとし、尚帝国の平和的意図に関し疑惑を表示し、支那に於ける駐兵に異議を唱え、通商上の無差別原則を無条件に支那に適用すべしと主張し、又三国条約問題に付ても之を事実上死文たらしめむことを求め、交渉は之が為難関に逢著し遂に停頓せる次第であったのであります
斯くの如く両国の見解対立を来したる所以のものは、米国が国際関係処理に付其の伝統的に堅持する原則的理念を強硬に固執し、東亜の実情を顧みず之を其の儘支那其の他に適用せんことを主張し居ることに起因するもので、米側にして右の態度を改善せざるに於いては、本交渉の妥結は極めて困難なりと認めたのであります
然し乍ら現内閣としましても公正なる基礎に於ける日米国交調整を計るを妥当と認め、帝国として能う限りの譲歩を試み以て日米衝突回避に最後の努力を傾けることに致したのであります。即ち右の見地より当時交渉の主要難点たりし三国条約に基づく自衛権の解釈、通商無差別原則竝に支那及び佛印よりの撤兵の三問題に付従来の帝国提案即ち九月二十五日案を緩和し、(一)三国条約に基づく自衛権問題に付ては米側が自衛権の観念を不当に拡大せざることを言明せしめ其の場合我方に於いても同様の言明をなすこととし、(二)無差別原則に付ては右原則が全世界に適用せらるるものなるに於いては右が支那にも適用せらるることに異議なきこととし、(三)撤兵問題に付ては支那事変の為支那に派遣せられたる日本軍隊は北支満彊の一定地域及び海南島に関しては日支間平和成立後所要期間駐屯すべく、爾余の軍隊は平和成立と同時に日支間協定に従い撤去を開始し、治安確立と共に二年以内に撤兵を完了すべく又佛印に付ては領土主権の尊重を約し、佛印に派遣せられ居る軍隊は支那事変解決するか又は公正なる極東平和確立するに於いては直ちに之を撤去すべしと修正することとし、右は十一月五日の御前会議に於いて御決定を得ました次第であります

政府は右の御決定の次第に基づき野村大使に対し事態急迫せる此の際破綻に瀕せる日米国交の局面を転換する為には本案に依り急速妥結するの外なく、帝国は難きを忍びて最大限の譲歩を敢えてしたるものなるに鑑み、米国側も猛省して太平洋平和の為我方と協調せんことを切望する旨申入れ方訓令致しました。爾後交渉は華府に於いて行われたるが東京に於いても右交渉を促進する意味に於いて本大臣も屡々在京米英大使と折衝を遂げました。而して野村大使は七日ハル国務長官との会見を手初めとし、十日ルーズベルト大統領十二日及び十五日ハル長官と会談を重ね、鋭意交渉進捗に努力する所がありました、此の間政府は時局の重大なるに鑑み外交上十全の努力を試みんが為、五日来栖大使を米国に急派することとし、同大使は十五日華府到著十七日より野村大使を援助して交渉に参加致しました。交渉は当時既に酣にして米側は七日以来我方に対して幾多の点に付質疑を提出し帝国の真意を探らんとする様子を示しました。米側は夙に所謂ヒトラー主義の打倒を標榜し、帝国に対し武力政策の抛棄を要求して居りましたが、三国条約との関係に於いて帝国の政策に対し依然疑惑を抱き居りしものの如く、今回も帝国の平和的意図に付前述の八月二十八日帝国政府の平和的意図の声明に付再確認を要求すると共に、日米協定成立せば帝国は三国条約を保持するの要なかるべく右は消滅若しくは死文となることを希望する旨反覆力説致しました。通商無差別原則に付ては我方の提案せる「全世界に適用せらるること」云々の条件除去を希望し、米国が由来自由通商回復の為努力し来れる次第を強調致しました。同時に米側は別に「経済政策に関する共同宣言案」なるものを提議越し、両国協力して全世界に通商自由の回復を計ること、日米通商協定の締結に依り正常通商関係を回復することの外、支那に於いては経済財政通貨に関する完全なる統制権を支那政府に回収すべきこと列国協同下に支那の経済共同開発を行うこと等を提案致しました。

尚又支那よりの撤兵問題に付ては特に深く之を論議せず唯永久乃至不確定期間の駐兵に対し難色を示すに止まりましたが、帝国が平和政策を採るに於いては米国に於いて日支直接交渉周旋の用意ある次第を申出ました。政府は右に対し八月二十八日の帝国の平和的意闡明に関し米側が確認を希望する点は九月二十五日付我提案中に包含せられ居り、従って現内閣も其の趣旨に於いて之が確認に異議なきこと、又通商上の無差別原則に付条件を付したるは我方に於いては同原則が全世界に一律に適用せらるるを希望し、右希望の実現に順応して支那に対しても同原則の適用を承認すとの意味合いなること、共同宣言案に付ては右が支那の現実を無視し殊に支那共同開発の提案は支那国際管理の端緒となる惧れあるを以て受諾し難きこと、及び米側の日支和平周旋申入れには異議なき旨回答せしめたのであります。来栖大使は此の段階に於いて交渉に参画せるものでありまして、野村来栖両大使は十七日大統領と、十八日、二十日、二十一日、二十二日、二十六日と引続きハル長官と会見を重ねたのであります。然るに十七日、十八両日の会見に於いては大統領は日米和平を希望する旨を述べ、支那問題に付ては干渉も斡旋もする意図なく単に紹介者たらんと欲するものなりと言い、他方ハル長官は帝国が独逸と提携し居る限り日米交渉は至難なるを以て、先ず此の根本的困難を除去する必要ありと縷々力説し、双方論議を尽くせるも難関は依然として三国条約、無差別原則及び支那問題に在ること明らかとなりましたので、二十日に至り我方は従来交渉の基礎たりし案文が宣伝的色彩に満ち居たるを簡略化し、且意見容易に一致せざる無差別原則問題を除去し、更に三国条約問題は先方よりの提案に俟づ趣旨を以て是又一応我提案より除去し、尚又支那問題は主として之を日支直接交渉に移すの趣旨を以て米側に於いては単に日支和平妨害を差控えしむることとする新提案を提出致させました。即ち同案の内容は左の通りであります

一、日米両国政府は孰れも佛印以外の南東亜細亜及び南太平洋地域に武力的進出を行わざることを確約す
二、日米両国政府は蘭領印度に於いて其の必要とする物資の獲得が保障せらるる様相互に協力するものとす
三、日米両国政府は相互に通商関係を資産凍結前の状態に復帰すべし米国政府は所要の石油の対日供給を約す
四、米国政府は日支両国の和平に関する努力に支障を与うるが如き行動に出でざるべし
五、日本国政府は日支間和平成立するか又は太平洋地域に於ける公正なる平和確立する上は現に佛領印度支那に派遣せられ居る日本軍隊を撤退すべき旨を約す
  日本国政府は本了解成立せば現に南部佛領印度支那に駐屯中の日本軍は之を北部佛領印度支那に移駐するの用意あることを闡明す

右に対し米側は帝国が三国条約との関係を明らかにし平和政策採用を確言するに非ざれば援蒋行為停止は困難なり、大統領の所謂紹介者たらんとの提案も日本の平和政策採用を前提とするものなる旨を述べましたが、之に対し我方は米側申出の趣旨に基づき大統領の紹介に依り日支直接交渉開始せらるるに於いては、和平の周旋者たる米国が依然援蒋行為を継続し、平和成立を妨害するは矛盾なるを指摘し米側の反省を要望致しました。然るに其の後も米側は日米両国が夫々東亜及び西半球に於いて指導的立場に立つに異議なく親善裡に太平洋協定を結び度しと述べ乍らも支那に付米国は蒋介石援助打切りを応諾せざるのみならず、三国条約に関する従来の主張を固執反覆し、更に譲歩の色を示さなかったのであります

此の間米国政府は英濠蘭及び重慶代表と協議する所あり、二十二日ハル長官は右諸国は日本が平和政策を採ること明確とならば通商常態復帰を実行し得べきも、差当り漸進的に之を行う意図の如く、又南部佛印よりの撤兵のみにては南太平洋方面の急迫せる情勢を緩和するに足らずとなし居れりと述べ、更に大統領の日支間橋渡しは時機未だ熟せずと思考する旨を洩らすに至りました然るに米国政府は其の後も右諸国代表と協議を重ねつつあったのでありますが、二十六日ハル長官は両大使に対し二十日の我新提案に付ては慎重研究を加え関係国とも協議せるも遺憾乍ら同意し難きと述べ、米側六月案と我方九月案との調節案なりと称して第一所謂四原則(但し第四項は紛争防止の為の国際協力及び調停に変更せらる)の確認を求むると共に第二別に両国政府の採るべき措置として

一、
日米両国政府は英帝国、蘭、支、ソ、泰と共に多辺的不可侵条約の締結に努む
二、
日米両国政府は日、米、支、蘭、泰国政府との間に佛印の領土主権を尊重し佛印の領土主権が脅威さるる場合必要なる措置に関し即時協議すべき協定の締結に努む
右協定締約国は佛印に於ける貿易及び経済関係に於いて特恵待遇を排除し平等の原則確保に努む
三、
日本政府は支那及び佛印より一切の軍隊(陸、海、空及び警察)を撤収すべし
四、
両国政府は重慶政府を除く如何なる政権をも軍事的、政治的、経済的に支持せず
五、
両国政府は支那に於ける治外法権(租界及び団匪議定書に基づく権利を含む)を抛棄し他国にも同様の措置を慫慂すべし
六、
両国政府は互恵的最恵国待遇及び通商障壁低減の主義に基づく通商条約締結を商議すべし(生糸は自由品目に据置く)
七、
両国政府は相互に資産凍結令を廃止す
八、
円ドル為替安定に付協定し両国夫々半額宛資金を供給す
九、
両国政府は第三国と締結し居る如何なる協定も本協定の根本目的即ち太平洋全地域の平和確保に矛盾するが如く解釈せられざることに付同意す
十、
以上諸原則を他国にも慫慂すること

等の各項を包含せる案を爾今交渉の基礎として提案致しました、右に付両大使は其の不当なるを指摘し、強硬なる応酬をなしましたがハル長官は譲歩の色を示さなかった由であります。越えて二十七日両大使が更に大統領と会見せる際には大統領は今猶日米交渉の妥結を希望すと述べ乍らも去る七月本交渉進行中日本軍の南部佛印進駐を見たる為冷水を浴せられたるか、最近の情報に依れば復々冷水を浴びせらるる懸念あるやに考えらると云い、暫定的方法に依り局面打開を計るも両国の根本主義方針が一致せざれば一時的解決も結局無効と思う旨を述べた趣であります
然るに右米側提案中には通商問題(第六、七、八各項)乃至支那治外法権撤廃(第五項)等我方として容認し得べき項目も若干含まれて居りますが、支那佛印関係事項(第二、三項)国民政府否認(第四項)三国条約否認(第九項)及び多辺的不可侵条約(第一項)等は何れも帝国として到底同意し得ざるものに属し、本提案は米側従来の諸提案に比し著しき退歩にして且半歳を越える交渉経緯を全然無視せる不当なるものと認めざるを得ぬのであります要之米国政府は終始其の伝統的理念及び原則を固執し東亜の現実を没却し而も自らは容易に実行せざる諸原則を帝国に強要せむとするものにして、我国が屡々幾多の譲歩を為せるに拘わらず七か月余りに亙る今次交渉を通じ当初の主張を固持して一歩も譲らなかったのであります

惟うに米国の対日政策は終始一貫して我不動の国是たる東亜新秩序建設を妨害せんとするに在り、今次米側回答は仮に之を受諾せんが帝国の国際的地位は満洲事変以前よりも更に低下し、其の存立も亦危殆に陥らざるを得ぬものと認められるのであります。即ち

一、
蒋介石治下の中国は愈々英米依存の傾向を増大し帝国は国民政府に対する信義を失し日支友誼亦将来永く毀損せられ延いては大陸より全面的に退却を余儀なくせられ其の結果満洲国の地位も必然動揺を来すに至るべく斯くの如くにして我支那事変完遂の方途は根底より覆没せらるべく
二、
英米は此等地域の指導者として君臨するに至り帝国の権威地に墜ちて安定勢力たる地位を覆滅し東亜新秩序建設に関する我大業は中途にして瓦解するに至るべく
三、
三国条約は一片の死文となりて帝国は信を海外に失墜し
四、
新たにソ連をも加え集団機構的組織を以て帝国を控制せんとするは我北辺の憂患を増大せしむることとなるべく
五、
通商無差別其の他の諸原則の如きは其の謂う所必ずしも排除すべきに非ずと雖も之を先ず太平洋地域にのみ適用せんとする企図は結局英米の利己的政策遂行の方途に過ぎずして我方に於いては重要物資の獲得に大なる支障を来すに至るべく

要するに右提案は到底我方に於いては容認し難きもので米側に於いて其の提案を全然撤去するに於いては格別右提案を基礎として此の上交渉を持続するも我が主張を充分に貫徹することは殆ど不可能と云うの外なしと申さなければなりませぬ



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