学校では教わることのない日本の自虐史観を省いた歴史を年表にまとめたもの。

十二月六日 東郷大臣発

一、
帝国政府はアメリカ合衆国政府との間に、友好的諒解を遂げ両国共同の努力に依り太平洋地域に於ける平和を確保し以て世界平和の招来に貢献せんとする真摯なる希望に促され、本年四月以来合衆国政府との間に両国国交の調整増進並びに太平洋地域の安定に関し誠意を傾倒して交渉を継続し来りたる処、過去八月に亘る交渉を通じ合衆国政府の固持せる主張並びに此の間合衆国政府及び英帝国の帝国に対し執れる措置に付茲に率直に其の所信を合衆国政府に開陳するの光栄を有す

二、
東亜の安定を確保し世界の平和に寄与し以て万邦をして各其の所を得しめんとするは帝国不動の国是なり。曩に中華民国は帝国の真意を解せず不幸にして支那事変の発生を見るに至れるも帝国は平和克復の方途を講ずると共に戦禍の拡大を防止せんが為終始最善の努力を致し来れり。客年九月帝国が独伊両国との間に三国条約を締結したるも亦右目的を達成せんが為に外ならず
然るに合衆国及び英帝国は有ゆる手段を竭し重慶政権を援助して日支全面和平の成立を妨害し東亜の安定に対する帝国の建設的努力を控制せるのみならず或は蘭領印度を牽制し或は佛領印度支那を脅威し帝国と此等諸地域とが相携えて共栄の理想を実現せんとする企図を阻害せり。殊に帝国が佛国との間に締結したる議定書に基づき佛領印度支那共同防衛の措置を講ずるや合衆国政府及び英国政府は之を以て自国領域に対する脅威なりと曲解し和蘭国をも誘い資産凍結令を実施して帝国との経済断交を敢えてし明らかに敵対的態度を示すと共に帝国に対する軍備を増強し帝国包囲の態勢を整え以て帝国の存立を危殆ならしむるが如き情勢を誘致するに至れり。右に拘らず帝国総理大臣は本年八月事態の急速収拾の為合衆国大統領と会見し両国間に存在する太平洋全般に亘る重要問題を討議検討せんことを提議せり。
然るに合衆国政府は右申入れに主義上賛同を与え乍ら之が実行は両国間重要問題に関し意見一致を見たる後とすべしと主張して譲らず

三、
仍って帝国政府は九月二十五日従来の合衆国政府の主張をも充分考慮の上米国案を基礎とし之に帝国政府の主張を取入れたる一案を提示し論議を重ねたるが双方の見解は容易に一致せざりしを以て現内閣に於いては従来交渉の主要難点たりし諸問題に付帝国政府の主張を更に緩和したる修正案を提示し交渉の妥結に努めたるも合衆国政府は終始当初の主張を固執し協調的態度に出でず、交渉は依然澁滞せり、茲に於いて十一月二十日に至り帝国政府は両国国交の破綻を回避する為最善の努力を尽くす趣旨を以て枢要且緊急の問題に付公正なる妥結を図る為前記提案を簡単化し
(一)両国政府に於いて佛印以外の南東亜細亜及び南太平洋地域に武力進出を行わざる旨を確約すること
(二)両国政府に於いて蘭領印度に於いて其の必要とする物資の獲得が保障せらるる様相互に協力すること
(三)両国政府は相互に通商関係を資産凍結前の状態に復帰すること、合衆国政府は所要の石油の対日供給を約すること
(四)合衆国政府は日支両国の和平に関する努力に支障を与うるが如き行動に出でざること
(五)帝国政府は日支間和平成立するか又は太平洋地域に於ける公正なる平和確立する上は現に佛領印度支那に派遣せられ居る日本軍隊を撤退すべく又本了解成立せば現に南部佛領印度支那に駐屯中の日本軍は之を北部佛領印度支那に移駐するの用意あること
等を内容とする新提案を提示し同時に支那問題に付ては合衆国大統領が曩に言明したる通り、日支間和平の紹介者と為るに異議なきも日支直接交渉開始の上は合衆国に於いて日支和平を妨害せざる旨を約せんことを求めたるが、合衆国政府は右新提案を受諾するを得ずと為せるのみならず援蒋行為を継続する意思を表明し次て更に前記の言明に拘らず大統領の所謂日支間和平の紹介を行うの時期猶熟せずとて之を撤回し遂に十一月二十六日に至り偏に合衆国政府が従来固持せる原則を強要するの態度を以て帝国政府の主張を無視せる提案を為すに至りたるが、右は帝国政府の最も遺憾とする所なり。

四、
抑々本件交渉開始以来帝国政府は終始専ら公正且謙抑なる態度を以て鋭意妥結に努め屡々難きを忍びて能う限りの譲歩を敢えてしたるが、交渉上重要事項たりし支那問題に関しても協調的態度を示し合衆国政府の提唱せる国際通商上の無差別待遇原則遵守に付ては本原則の世界各国に行われんことを希望し且其の実現に順応して之を支那をも含む太平洋地域に適用する様努力すべき旨を表明し尚支那に於ける第三国の公正なる経済活動は何等之を排除するものにあらざることをも闡明せるが更に佛領印度支那よりの撤兵に付ても情勢緩和に資するが為前述の如く南部佛領印度支那よりの即時撤兵を進んで提議する等極力妥協の精神を発揮せるは合衆国政府の夙に諒解する所なりと信ず
然るに合衆国政府は常に理論に拘泥し現実を無視し其の抱懐する非実際的原則を固執して何等譲歩せず徒らに交渉を遷延せしめたるは帝国政府の諒解に苦しむ所なるが特に左記諸点に付ては合衆国政府の注意を喚起せざるを得ず
(一)
合衆国政府は世界平和の為なりと称して自己に好都合なる諸原則を主張し之が採択を帝国政府に迫れる処世界の平和は現実に立脚し且相手国の立場に理解を持し相互に受諾し得べき方途を発見することに依りてのみ具現し得るものにして現実を無視し一国の独善的主張を相手国に強要するが如き態度は交渉の成立を促進する所以のものにあらず。
今般合衆国政府が日米協定の基礎として提議せる諸原則に付ては、右の中には帝国政府として趣旨に於いて賛同に吝かならざるものあるも合衆国政府が直ちに之が採択を要望するは世界の現状に鑑み架空の理念に駆らるるものと云うの外なし。
尚日、米、英、支、ソ、蘭、泰七国間に多辺的不可侵条約を締結する案の如きも徒に集団的平和機構の旧構想を追うの結果、東亜の実情と遊離せるものと云うの外なし。
(二)
合衆国政府今次の提案中に「両国政府が第三国と締結し居る如何なる協定も本取極の根本目的たる太平洋全域の平和確保に矛盾するが如く解釈せられざることに付合意す」とあるは合衆国が欧州戦争参入の場合に於ける帝国の三国条約上の義務履行を牽制せんとする意図を以て提案せるものと認めらるるを以て右は帝国政府の受諾し得ざる所なり。
由来合衆国政府は其の自己の主張と理念とに眩惑せられ自ら戦争拡大を企図しつつありと謂わざるを得ず。合衆国政府は一方太平洋地域の安定を策し自国の背後を安固と為しつつ他方英帝国を援け欧州新秩序建設に邁進する独伊両国に対し自衛権の名の下に進んで攻撃を加えんとするものなるが、右は太平洋地域に平和的手段に依り安定の基礎を築かんとする幾多の原則的主張と全然矛盾背馳するものなり。
(三)
合衆国政府は其の固持する主張に於いて武力に依る国際関係処理を排撃しつつ一方英帝国等と共に経済力に依る圧迫を加えつつある処、斯かる圧迫は場合によりては武力圧迫以上の非人道的行為にして国際関係処理の手段として排撃せらるべきものなり。
(四)
合衆国政府の意図は英帝国其の他の諸国を誘引し支那其の他東亜の諸地域に対し其の従来保持せる支配的地位を維持強化せんとするものと見るの外なき処東亜諸国が過去百有余年に亘り英米の帝国主義的搾取政策の下に現状維持を強いられ両国繁栄の犠牲たるを甘んぜざるを得ざりし歴史的事実に鑑み右は万邦をして各其の所を得しめんとする帝国の根本国策と全然背馳するものにして帝国政府の断じて容認する能わざる所なり。
合衆国政府今次提案中佛領印度支那に関する規定は正に右態度の適例と称すべく佛領印度支那に関し佛国を除き日、米、英、蘭、支、泰六国間に同地域の領土主権の尊重並びに貿易及び通商の均等待遇を約束せんとするは同地域を六国政府の共同保障の下に立たしめんとするものにして佛国の立場を全然無視せる点は暫く措くも東亜の事態を紛糾に導きたる最大原因の一たる九国条約類似の体制を新たに佛領印度支那に拡張せんとするものと観るべきものにして帝国政府として容認し得ざる所なり。
(五)
合衆国政府が支那問題に関し帝国に要望せる所は或は全面撤兵の要求と云い或は通商無差別原則の無条件適用と云い何れも支那の現実を無視し東亜の安定勢力たる帝国の地位を覆滅せんとするものなる処、合衆国政府が今次提案に於いて重慶政権を除く如何なる政権をも軍事的政治的且経済的に支持せざることを要求し南京政府を否認し去らんとする態度に出でたるは交渉の基礎を根底より覆すものと云うべく、右は前記援蒋行為停止の拒否と共に合衆国政府が日支間に平常状態の復帰及び東亜平和の回復を阻害するの意思あることを実証するものなり。

五、
要之今次合衆国政府の提案中には通商条約締結、資産凍結令の相互解除、円弗為替安定等の通商問題乃至支那に於ける治外法権撤廃等本質的に不可ならざる条項なきにあらざるも他方四年有余に亘る支那事変の犠牲を無視し帝国の生存を脅威し権威を冒涜するものあり、従って全体的に観て帝国政府としては交渉の基礎として到底之を受諾するを得ざるを遺憾とす。

六、
尚帝国政府は交渉の急速成立を希望する見地より日米交渉妥結の際は英帝国其の関係国との間にも同時調印方を提議し合衆国政府も大体之に同意を表示せる次第なる処、合衆国政府は英、濠、蘭、重慶等と屡々協議せる結果特に支那問題に関しては重慶側の意見に迎合し前記諸提案を為せるものと認められ、右諸国は何れも合衆国と同じく帝国の立場を無視せんとするものと断ぜざるを得ず

七、
惟うに合衆国政府の意図は英帝国其の他と苟合策動して東亜に於ける帝国の新秩序建設に依る平和確立の努力を妨害せんとするのみならず日支両国を相闘わしめ以て英米の利益を擁護せんとするものなることは今次交渉を通じ明瞭と為りたる所なり。斯くて日米国交を調整し合衆国政府と相携えて太平洋の平和を維持確立せんとする帝国政府の希望は遂に失われたり。
仍って帝国政府は茲に合衆国政府の態度に鑑み今後交渉を継続するも妥結に達するを得ずと認むるの外なき旨を合衆国政府に通告するを遺憾とするものなり。


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