日本の歴史年表

昭和十五年十月二十五日閣議決定

世界新秩序の進展に伴う経済圏発生の必然性竝に日独伊三国条約に基づく皇国の蘭印に於ける優位を確認し共存共栄の大局的立場に基づき速やかに蘭印と経済的緊密化を図り以て其の豊富なる資源を開発利用し皇国を中心とする大東亜経済圏の一環たる実を挙げしめんことを期し、差当り左記要領により施策するものとす

一、
蘭印経済をして欧米経済ブロックに依存せる状態を清算せしめ大東亜経済の一員たる立場を取らしむること
二、
現在邦人の経済的活動を阻害する諸種の制限的措置を撤廃又は緩和し邦人の経済的活動を他に優先して自由活発ならしむる如く努むること
三、
皇国の必要とする重要物資を可及的に大東亜圏内にて確保し以て英米より資源的独立を図るため蘭印に対し共同開発を提議すること
要すれば適当なる島嶼地域の租借又は買収をなすこと
四、
皇国の必要とする重要物資の供給確保に関しては先に蘭印側の保障を取り付けたるも更に此れ等物資の種類及び数量の増加につき蘭印の同意を求むること
尚進みては重要物資特に蘭印の世界的独占商品たる錫、ゴム、規那等を皇国の指導による貿易管理の実現に務むること
五、
共存共栄の実を挙げるため可及的土着民の収益となる蘭印産農産物の買付をなし土着民の購買力を培養す
これが為蘭印側に於いては可及的我が国の要請に応ずる如く農業を誘導すること
六、
皇国製品の対蘭印輸出増進につき特に協力提携を求むること
七、
将来他の大東亜諸地域を併せ皇国を中心とする大金融圏の設定を目標とし、蘭印との新金融関係の設定に付ても之が一環たらしむる如く努むるものとす、但し蘭印自体は之を円地域となすことを目的とせざること
蘭印に於ける為替管理を皇国の指導下に置く如く努むること
差当り蘭印に於ける為替管理の運用を邦人に対し寛大ならしむると共に蘭印の銀行等をして本邦に対しクレジットの設定其の他極力金融上の便宜を供与せしむること
八、
交通及び通信に関しては大東亜全局の指導的地位を確保する一環として左の特殊権益の設定に務むること
（イ）沿岸貿易権、不開港入港権及び港湾設備の経営及び利用権
（ロ）海底電線の陸揚げ及び運用権、国内通信事業経営に対する参加権その他の通信権
（ハ）定期航空路の新設及び航空保安施設の設置権
九、
水産業に関しては南方に確固たる地歩を建設するため漁船の増加、漁獲物輸入港制限の撤廃、漁業根拠地の設置、其の他水産業の経営に伴う権益の獲得に務むること
十、
蘭印に於ける第三国権益に対しては新規の設定を許さず又既存のものにして皇国の発展に障害となるが如きものは之を駆逐するが如く努めしむること
十一、
蘭印の対内外経済政策の樹立及び実施に参与し皇国との経済的提携を指導強化する為蘭印側に邦人を加えたる経済建設委員会、其の他適当なる機関を設けしむること
貿易、金融、税制、関税、第三国との経済協定、企業、交通、通信等に関しては右機関への諮問を要するものとす
差当り、在蘭印邦人輸入商を経済省の諮問委員会に参加せしむること
十二、
蘭印に関する新聞其の他刊行物の対日悪論議に対し徹底的なる取締を要求すると共に邦人の新聞発行に対する自由を確保せしむること
十三、
在住華僑の援蒋抗日態度に対しては蘭印当局の厳重なる取締を要求すると共に一方その経済的地位に鑑み大局的立場より華僑の組織及び資力の利用を策すること
十四、
皇国の経済的発展を期する為、土着有力者を皇国に招致し又は皇国の真姿を宣伝正解せしむる等諸般の処置を講ずること
十五、
経済施策は大東亜共栄圏確立の大局的立場に立脚することとし皇国の利益伸長と土民と講和する如く努むること