学校では教わることのない日本の自虐史観を省いた歴史を年表にまとめたもの。

(昭和十一年一月二十一日)

帝国の外交問題に付きまして茲に最近の経過を述べ、且つ所見を開陳するを得ますことは、私の光栄とする所であります。
近時帝国の国際的地位は益々向上し、其の責任を愈々重大を加えつつあるのでありますが、幸いに真の世界平和の確保に貢献せんとする帝国の意図は漸次世界に徹底し、特に帝国が東亜の安定の為に専心努力致して居りますことは、各国も之を認識するに至りまして、我が善隣関係の確立が実現を見んとして居りますことは、誠に慶賀に堪えぬ所であります。
先ず我が盟邦満洲国が、年一年進歩発達を遂げつつありますことは、大いに喜ばしきことであります、のみならず帝国との関係に於きましては、一層緊密の度を加えるの状況でありますから、帝国は同国に於いて有する治外法権を漸進的に撤廃し、且つ之に応じて満鉄附属地に於ける行政権をも漸次に調整することとして、以て満洲国の独立発展に寄与せんことを期して居るのであります、帝国と満洲国との緊密不可分の関係は、曩に建国の際成立したる共同防衛等の外、更に経済方面に於きましても、両国が相寄与するの当然なるに顧みまして、茲に日満経済共同委員会の設立を見るに至ったのであります、此の新興満洲国の厳然たる存立と、其の健全なる発達とは、真に東亜安定の前提条件でありまして、更に進んで其の目的を完全に達成する為には、同国に於いて其の国際的地位を更に向上せしむると共に、其の接壌諸国との善隣関係を益々増進することに努力せねばならぬと思うのであります、換言しますれば、一方日満支三国の関係を調節し他方日満「ソ」三国の関係に善処する為、最大の努力を払わなければならぬ次第であります
先ず日満支三国の関係に付て見まするに、其の関係は次第に改善せられつつあるのでありますが、未だ常道に復して居ると言うことは出来ないのであります、仍って此の三国の関係を更に一歩進め、之を完全に平常化して、以て東亜安定の基礎を一層鞏固にするの必要なるを痛感するのであります、是に於いて帝国政府は慎重審議を経まして、確定的の対支方針を樹立致したのであります、此の方針は大体次の三つの趣旨より成って居るのであります
其の第一点は日支両国の関係の根本的調整に関するものでありまして、即ち支那は如何なる形に於いても是までのような非友好的行為及び政策を執らず、又単に消極的に斯かる行為及び政策を執らざるのみならず、日支両国は進んで親善提携の実を示すべく積極的に協力を行うようにしようと言う趣旨であるのであります、日支両国が互いに対立することは、双方に取り不為めであることは勿論、東亜の大局より申しましても、到底忍ぶことの出来ぬ所であります、若し支那にして帝国に対し日友誼的行動に出で、又は徒に第三国を利用するの常套手段を用い、以て東亜の安定に逆行するが如きことがありますならば、それは真に遺憾に堪えざる所であります、併ながら若し支那に於いて此の点に付き十分覚醒し来ります場合には、帝国は支那の発展の為に有形無形の支援を為すの用意あることは勿論であります、帝国としましては、従来如上の大局的見地より隠忍自重して、支那側の自省を促し、且つ東亜に於ける其の責任に対する自覚を誘い、以て其の対日政策の転向を俟って居ったのであります、支那側に於きましても漸次此の大局を看取しまして、約一年前より日支関係改善の意思を表示し参ったのであります、帝国政府は曩に第六十七回議会に於いて、隣邦に対する不脅威不侵略の根本政策を闡明しまして、更に其の機会を利用しまして、両国の国交を常道に復し、両国の利害の調整を進めんと努力致した次第でありますが、此の点に関しては遺憾ながら今日まで未だ十分の成果を見なかった状況であります、抑々日支の関係を完全に常道に復します為には、支那と満洲国との関係をも常軌に上せなければならぬことは当然であります、就中日満支三国の各種の利害が直接接触して居ります北支方面に於いては、特に其の必要を感ずること大なるものがあります、然るに支那側が未だ北支と接壌せる満洲国を承認して居らないと云う事実に加うるに、北方に於ける長き間の地方的特殊の伝統に基因致しまして、北支方面に於いては一時相当不安の空気を見たのでありますが、是も最近に於いては御承知の通り、河北、察哈爾二省に於ける冀察政務委員会の設立に依りまして、形勢は大いに緩和致した次第であります、以上の通り単に日支の直接の関係のみならず、日満支三国の関係を同時に調整しなければ、どうしても其の安定を得ることがむつかしい訳でありますので、此の目的を達成せんとするのが我決定方針の第二の点であります、即ち日満支三国の関係を完全に調整する為には、先ず支那が満洲国の存立を承認し、是と国交を樹立し、進んで双方利害の関係を調和して行かなければ、根本的には解決は出来ない訳であります、従って一日も速やかに其の時機の到来を望む次第でありますが、それ迄の期間に於いても、北支に於いて何等か日満支三国の関係を悪化させないような、手段方法を執るの必要があると云う趣旨であります、今日支那の直面致して居りまする困難の最も大なるものは、共産主義の運動と思われます、而して東亜の不安定は赤化運動の正に乗すべき点でありまして、支那の如きは其の辺境地域は勿論、内部の社会組織に於いても甚だしく其の脅威を受けて居りまして支那に於ける赤化分子の跋扈は想像以上と思わるるのであります、抑々赤化運動の危険は東亜に限らるる訳ではありませぬが、東亜の天地は今日特に其の活躍を見て居るようであります、是に於いて吾人は東亜の安定、否、世界の安定の為に此の東亜に於ける赤化運動を防止し、支那を其の危険より免れしむると云うことは、単に隣邦支那の為のみならず、各国共通の重大事でなければならぬのであります、是が今回決定致しましたる方針の第三点でありまして、即ち帝国は赤化防止の為に支那と種々の協力を行いたいと云う趣旨であります
以上の三点は帝国政府の確定方針でありますけれども、実は特に新たなる考案ではありませぬ、一に東亜安定の大目的を達する為の当然なる基礎的観念に過ぎないのでありまして、随て其の精神は東亜に国を成すものの共通の方針と謂っても差支わないのであります、支那政府も此の点は十分諒解しまして、既に右三原則に賛意を表し、更に進んで最近に至って右三原則の趣旨に則り、日支親善提携の交渉を開くことを提議して参ったのであります、帝国政府は固より之に異存はない次第でありますが、最近支那に於ける学生の排日運動の如き、直ちに右原則の趣旨に反するが如き事態が発生致して居りますことは遺憾なことであります、併せながら是等の事態も遠からず支那政府の措置に依って是正せられ、茲に良好なる空気の下に交渉が開始促進せられんことを期待して、支那側の申込に賛成し、支那政府の交渉開始の準備完了の通報を俟って居る次第であります、若し此の交渉が漸次に進んで参りますならば、茲に日支関係の根本的調整の基礎が出来ることと信ずるのであります

次に日満「ソ」三国の関係に付きましても、帝国政府は常に平和親善の確立に向かって努力して参ったのでありまして、北鉄買収交渉の成立致しましたことは、三国に跨る多年の障碍を排除し得たものでありまして、又元来帝国は満洲国の為には共同防衛の責任を持って居ります関係上、満洲国と隣接国との政治上軍事上の関係は、自動的に帝国に直接の影響を及ぼす訳でありますから、此の意味に於きまして日満「ソ」の三国関係に対しましては特殊の注意を要する所であります、満洲国と「ソ」国との間に於きましては、其の長い共通の国境線に於きまして、国境の不明確なる地点もありますので動もすれば紛争を生ずるのであります、是等に対しては紛争解決を目的とする混合委員会の設定が問題となって居りますが、満洲国政府としましては先ず国境の曖昧なる点を明確ならしむことの必要を主張して居るのであります、唯茲に日満「ソ」三国の関係に於きまして、特に吾人の寒心に堪えざることは「ソ」国が其の辺境植民地である東部「シベリヤ」に過大なる軍備を整えつつあることでありまして、是は直接満洲国民は勿論、我が帝国民に対し多大の刺戟を与えつつありますので、此の点に付きましては折に触れ「ソ」国当局の深甚なる考慮を求めて居る次第であります
客年十二月九日以来倫敦で開かれました海軍軍縮会議は、帝国政府の大いに重要視して居った所でありますが、今回帝国全権は遂に同会議より脱退するに至りましたことは御承知の通りであります同会議に於ける帝国政府の根本方針は、一昨年の倫敦予備交渉の当時に申上げました所と異ならぬ次第でありまして、客年の十月に英国政府より会議開催の準備を進むる為に、建艦宣言案及び質的軍縮問題に関しまして帝国政府の意向を求めて参りましたのでありますが、其の際の回答中に帝国政府の見解と致しまして「真に世界の平和を維持促進するの方法は、各国が相互に其の生存と必然的需要とに十分なる考慮を加えると共に、他方各国間に不脅威不侵略の事態を招来せしむべき徹底的の軍縮を行うことを主とせなければならぬ、大国は此の見地に基づきて率先して之に努力し、平和促進に邁進することを要するのである、帝国政府の海軍軍縮に対する根本主張は、正に此の徹底的に軍縮をすると云うことに外ならない」と云う旨を特に明らかにして置いた次第であります、今次会議に於きまして、帝国全権は此の精神に基づきまして出来るだけ低き共通最大限度を定むると共に、攻撃的性能を有する主力艦、航空母艦の廃止及び甲級巡洋艦の大縮減を行わんことを提議したのでありました、然るに帝国全権の努力にも拘らず、我方の公正妥当なる根本主張は各国の容るる所とならず、又各国の提案も我方の根本主張と合致せざることが明らかとなりましたから、せめて会議に於いて協定として、纏め得べき事項は之を纏めて、円満に会議を終始せしめんことを務めた次第でありますが、是亦各国の認むる所とならなかった為に、遂に帝国全権は会議より脱退するの已む無きに至ったのであります、現今世界の情勢を見まするに、各所に於いて不安と葛藤がありまして、各国は寧ろ軍備の充実を図らんとする傾向がありまして、是が為に軍縮の精神は阻害せられ、徹底的に軍縮を行わんとする帝国案の容認せらるるに至らなかった一因となったと思うのであります、併せながら帝国政府は軍縮条約の有無如何に拘らず、不脅威不侵略の精神を尊重するものでありまして、何等軍備競争を誘発せんとするが如き意志はないのであります、且又世界平和の為に軍縮事業に協力せんとする素志に何等変更はないことは勿論であります
斯く軍縮会議が遂に決裂に相成りましたけれども、日本帝国と致しましては、同会議に出席して居る主要海軍国に対する和親政策には少しも変更を認めないのであります、特に英米両国とは、帝国は伝統的、歴史的親善の関係にあるのでありまして、日米両国は太平洋を東西に隔てたる地理的関係に於いて活動に各々其の分野のある以上、両国の間に衝突などは起こり得ない訳であると思うのであります、又英国とは世界各方面に亙る政治経済上の利害の錯綜に付きまして能く其の調節を図り、伝統的親善関係を維持して行くべきことは当然のことと信ずるのであります、英国自治領との間は益々友好の関係を増進し、通商交通も密接となりつつあるのであります、濠洲に対しましては曩に「レーサム」外相の親善使節に答える為出淵大使を特派し、「ニュージーランド」をも訪問せしめ、同方面と帝国との親交増進に努めて参ったのであります又帝国は南洋方面に対しましては、一に経済通商の発展を期しまして、平和親善の関係を増進せんことを望んで居る次第であります、此の意味より致しまして、最近新たに成立しました比律賓連邦の円満なる発展を衷心より希うものであります
帝国の対外貿易が年々増加進展を続けて居りますことは、国内の生産力の発展と共に洵に人意を強うする次第であります、此の趨勢は輸出入双方に亙って居る状況でありまして、真に貿易国との間に共存共栄の実を挙げて居るのでありまして、各国間の貿易の健全なる発達は、世界経済の振興、国際和親の促進上缺くべからざるものでありますことは今更言うを俟ちませぬ、然るに拘らず多くの諸外国が依然として国際通商の自由を阻止するが如き、各種の制限措置を採って居りますことは甚だ遺憾であります、元来原料品の供給と製品販売市場との確保は、現代国家、殊に我が国の如く人口多く、資源に乏しき国に取りましては、其の経済的の存立上必須的条件であるのであります、是が為には通商自由の回復に依り、不必要なる貿易の制限措置が撤廃せられ、門戸の開放せらるることを必要とするのでありまして、国際政局の安定も亦之に依って始めて達成せらるるものと考えられます、徒らに障壁を高くし、益々世界を狭隘にし、紛争軋轢を繁くして参りますことは、真に文明の逆行に外ならないのであります、世界至る処人と物との交通を自由にして、資源の開放及び利用の均霑を実現するに於きましては、茲に初めて自由と信頼との空気は自ら醸成せられ、世界の平和は著しく増進せらるること疑いを容れぬのであります、帝国政府は此の見地に立ちまして、関係諸国との間に、彼我相互の利害調節を目的として友好的の交渉を行い、出来得る限り各国との通商を増進するよう、努力致して居る次第であります、客年中不幸加奈陀産品に対しまして我が通商擁護法を適用するに至りましたけれども、其の後両国の間に完全に妥協が付きまして、我が真意の徹底を見、茲に通商擁護法の適用が廃せられましたことは、洵に喜ばしきことであります

近時世界の有力なる政治家にして、恰も自己の意見を以て他を支配せんとし、之に聴従せざるものは平和の破壊者なるが如くに唱道するものがあるのを見まするのは遺憾であります、真に自国の任務を自覚し、更に又他国の立場をも理解し、且つ之を尊重するに於いて、始めて世界に対する平和を口にする資格を有するのであります、他国の立場を理解し之を尊重することは、他国の文化を理解し尊重することに依って、之を達成し得る場合も多いのであります、帝国は固有の文化に加うるに、夙に欧米各国の文化を輸入して、之を消化し、斯くして今日の地位を完成して参ったのでありますが、今日と相成りましては更に進んで我が文化を他国に紹介して、東西文化の融合を期し、以て各国間の理解を進むると共に、世界の文化に貢献し、人類の平和と幸福とに資せねばならぬと考えるのであります
以上述べ来りました通り、帝国の国際関係に於ける前途は極めて複雑多岐でありますが、併せながら其の間に我が国際的地位は次第に向上発展に向かって居りますので、私共は深く国際連盟脱退に関する御詔書の御趣旨を奉体致しまして、外は愈々信を国際に敦くし内は官民各々其の職責に淬励し、協戮邁往、以て、此の世局に処せねばならぬと思うのであります


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