日本の歴史年表

一月三十一日付在京米国大使公信第八七四号要領
以書翰啓上致候陳者米国政府は支那に於ける現下の紛争の当初より累次日本政府に対し支那税関保全の維持竝関税収入の確保に付極めて現実的なる関心を有する旨を及び通報たるものに有之候米国政府は日本官憲に於いて税関行政の権威を毀損し税関業務を妨害し又は外債竝賠償金の償還及び行政費の支弁を継続する税関の能力を阻害するが如き行動を執らず又之を容認せざるよう屡々勧説致候
本国政府は現行関税率及び手続きの持続方に関する保障を含む一定の保障を日本政府より受くるの希望を表明致したるものに有之候
米国政府は最近支那に於ける代表者より北平に於ける臨時政権は北支に於ける対外輸出入貿易に属する一定の貨物に対する支那関税率を変更せしめたる旨の情報を入手致候本国政府は中華民国政府のみ合法的に支那関税率を変更し得る権威なりと思考し北平に於ける臨時政権に依る此の不法なる専断的僭奪行為に付日本政府の注意を喚起し臨時政権の所為は行政竝税収入の両方面に於いて支那税関の保全に由々しき悪影響を及ぼすやも知れず税率の改訂は支那各港税率統一の原則を破壊するものなることを指摘せざるを得ざるものに有之候
日本政府は米国及び其の他諸国政府と共に支那税関行政の保全に付古くより確立せられ能く認められたる利害関係を有し米国政府は支那税関保全の尊重に対する其の真摯なる希望は日本政府も同じく抱懐し居れる所なりとの確信を表示致候関税率を改訂せんとする北平に於ける臨時政権の処置は税関の保全に対する重大なる脅威に有之候臨時政権の創設及び所為に付日本政府は回避し能わざる責任を有し之等所為が税率改定の場合に於けるが如く外国政府の利益に影響するものなるに於いては夫等政府は何等申入れを為すに当たり日本政府に対し之をなすの外なきものに有之候
従って米国政府は臨時政権に依る政権の攝収に何等合法性若しくは妥当性を認めざる旨竝に日本政府が臨時政権の当局者に対し及ぼし得べき抑制を行使せざりしを深く遺憾とし居れる旨日本政府に対し申述ぶるの余儀無之候現存の事態に鑑み米国政府は税率の改訂が対支貿易及び関税収入に依る外債及び賠償金の償還を含む米国の権利及び利益に対し及ぼすことあるべき悪影響に関しては日本政府を責任者と考うるの余儀なき次第に有之候
右通報申進旁本使は茲に閣下に向かって敬意を表し候　敬具