ニルス・エドヴァルド・カタヤイネン。フィンランドの空軍軍人にしてパイロット。最終階級は中尉。
対ソ連戦にて戦果を挙げたエースパイロットの一人である。撃墜数は35.5機(0.5機は共同撃墜)。
マンネルヘイム十字勲章も受章した実力者……なのだが、一般には「不幸なパイロット」として有名な男でもある。
彼が見舞われたトラブルは大きく分けて10件!ではその記録をもう一度見てみよう!
1件目:米国から送られたブルーステルの初めての訓練。離陸の際にタキシングして着陸した途端片方の着陸脚が大破し、ついでに昇降舵をもぎ取られる。しかしそのまま離陸して編隊長にアドバイスされながら片輪着陸に成功。
2件目:初陣でソ連の爆撃機を見事撃墜。しかし最後に受けた弾丸でエンジンを損傷。着陸直前にエンジン停止。何とか不時着に成功した。
3件目:ソ連の戦闘機を二機撃墜し撃墜王の五機撃墜を達成するが、今度は燃料タンクを損傷。ガソリンを失いながらも帰投。
4件目:偵察飛行中に対空砲に被弾し出火。スロットルを慎重に操作してなんとか帰投。
5件目:貴重なブルーステルを修理してのテスト飛行。離陸直後にエンジントラブルに見舞われ着陸しようとするが、草に引っかかって転覆。カタヤイネンは無事だったがブルーステルは再び修理する羽目に。
6件目:あまりにも貴重な戦闘機を壊しまくる(12機撃墜したが被弾や事故は7回以上)ため爆撃隊に転属。エースなのに。繰り返し抗議したところ上官の機嫌を損ね今度は基地のハンガー掃除に左遷。エースなのに。
7件目:半年ぶりに戦闘機パイロットに復帰して強敵Yak-7を打ち倒すも、後の戦闘で翼に被弾した際に弾の破片が脛にめり込む。大量出血に耐えて着陸したら病院に直行した。
7件目おまけ:退院したと思ったら大人しくしてろと言わんばかりに一か月追加で休養を命じられる。が、この時出会った女性とカタヤイネンは結婚した。
8件目:新型のメルスの慣熟飛行。当然の如くエンジンが煙を吹く。この時は無事に着陸したが、一週間後の出撃時に強風に視界を遮られ、地面に激突し機体大破。だがカタヤイネンは生きていた。
9件目:この時期に10日で18機と飛躍的にスコアを伸ばす。シュトルモビク二機を撃墜した際に被弾。機体は壊れたがカタヤイネンは無事だった。
10件目:爆撃機の護衛で飛行中、主翼に対空砲火を受け破片がエンジンに混入。黒煙を吐き出すが途中で収まり、いつものように着陸しようとする。しかし気化したガソリンがコクピットに流れ込んでカタヤイネンは意識を失い、500km/hで胴体着陸。機体は木っ端微塵になりカタヤイネンも重傷を負った。病院で生死の縁を彷徨ったが、最後の不幸をカタヤイネンは乗り切り生還した。
その後彼はフィンランド最高の武功勲章であるマンネルヘイム十字勲章を受章し、77歳にこの世を去った。
撃墜と被撃墜、幸福と不幸に振り回された男の余生はとても穏やかなものであったとされている。