クラウディオス・プトレマイオス:自慢の一番弟子。
時代が異なるため直接会ったことは無いのだが、それでも「一番の弟子」だと頑なに譲らない。
実際、ヒッパルコスという人物の評価・功績は彼の自著『アルマゲスト』による所が大きく、多くの実績を纏め上げたのが他ならぬ彼である。
失われて久しいヒッパルコスの著作を証明する人物であり、その発見を元に宇宙の廻りを解き明かして「天文学」を形にした人物。
変わり者同士気が合うのだろうか。他人に興味を示すことのないヒッパルコスが唯一、「気に入ってる」と公言する人物である。
対等に言葉を交わし、有意義な答弁を行う事が出来るというのも気に入っている点で、もし出会えたならば聖杯戦争など放り出して持論をぶつけに行くだろう。
……そんな両者で唯一異なる点と言えば、ヒッパルコスは「自分」に重きを置いている、という部分。
彼は自分が天才ではないと己を評しており、自分の功績に関しても深い執着を持っていないが、ヒッパルコスの場合は真逆。
言葉で表すことはないが、ヒッパルコスは己を「賢人」と理解しており、だからこそ多くの研究を重ねたしその持論を臆すること無く言葉に出来た。
その一点こそが二人の賢人を分かつ要点である。尤も、価値観の衝突が起こるほどの違いではないようだが。
「んふふ。私はトレミーくんみたいな弟子を持って幸せだわ。
きみは自分を天才ではないと評するけれど……私は、きみを“賢人”と呼びましょう」
「だってね?私の理論をしっかり纏め上げて、凡人に分かりやすいように訳して広めるだなんて、そんなの賢人のそれじゃない?」
「“私の言っていることが理解できて、それを凡人に説明できる”。
だから私は、きみを賢人だと言うのよ。私に匹敵する天文の賢人……んふふ。不満?」
「にしても、トレミー……いいわね!すごいかわいい……んん。失礼。親しみやすいわ。
ここではトレミーくん、じゃなく……トレミーおじさん、と呼んだほうがいいのかしら?」
エラトステネス:対立する学者。
自著の中で彼を痛烈に批判していた……という情報だけが、哲学者ストラボンの『地理書』にて記されている。
彼もまた古代ギリシャを生き、天文学や地理学に大きな影響を与えた賢人だが……その功績を「不確定すぎる」と嫌っていた。
その上で彼の導き出した数値を天文学的法則や三角法に基づき修正したり、新たな観測方法を生み出したりしていた。
結果、ヒッパルコスは天文学だけでなく地理学にも影響を与えることとなったのだ。そんな功績の、ある意味では恩人と言える相手。
ヒッパルコスが人間味を顕にする数少ない人物であり、氏の貴重な「露骨に嫌な顔」を拝むことが出来る。
「え〜?彼も英霊になってるの?やだなぁ……嫌いではないけど。苦手なのよ、単純に」
「ふんっ。私のアストロラーベの方が、あなたの天球儀よりも優秀なんだから。べーっ!」
アリスタルコス:自身の築いた理論に相反する存在。
共にハービンジャーというクラスを与えられながら、抱いた功績は真逆。
「理論」を生み出した。「礎」を築いた。その学説は、後世の人物に拠って「真実」とされた。
辿った道は同じだった。ただその考えが―――「いつ認められ、訳されたか」の違いだけで。
やがてヒッパルコスの
天動説は覆されて、後に残ったのは彼の
地動説。
だが、それで彼が正しいと言えるのか?ヒッパルコスは愚者だったとでも言うのか?違う――――それは、違うだろう。
『逆だったかも知れない』。異なる存在でありながら、真逆の学説を打ち立てていながら。両者は表裏一体……背中合わせの『
ハービンジャー』なのだ。
「……正直、地球が動いてるなんて信じられない。私は、私の“科学”が間違っていないと信じていたもの」
「だから私は言葉として世に出した。そして……私の水準に達していた賢人が、その理論を正しいものだとして打ち立てた」
「でも……あなたの理論に、あなたの知識に追いつける人は居なかった。千年以上の時を経て尚、あなたの「知識」に達する人は現れなかった」
「……私とあなたの分水嶺は、きっとそこにあるんじゃない?」
「運命が違っていたら……あなたと相まみえていたのは、きっと…………」
「…………ねえ、星を見に行きましょう?」