政治経済法律〜一般教養までをまとめます

  • 選挙の意義
 現代社会において、国民が意思を表明し、このことを通して国民を政治的に統合する主要な手段は選挙である。国民の多様な利害は選挙によって表明され、選挙によって選ばれた代表者の討論と多数決とによって社会の統合が図られる。選挙は、社会の中の利害の対立を議会の中の利害の対立に置き換える主要な機会だといってもよい。そして、社会における利害の対立を議会の中に忠実に反映されるためには、平等な選挙権が人々に与えられる必要がある。その意味で、選挙権の拡大は、近代社会の政治的発展に伴う当然の結果であった。労働者を中心とする諸勢力が経済的・社会的諸困難を政治的に解決しようとして参政権を要求したことが、選挙権の拡大を実現させた理由の一つであることは否めないとしても、同時にそれが近代社会の統合を図るための必然的要請であったことを無視することはできない。選挙権の拡大は普通選挙権の実現という形で行われた。その結果、19世紀前半においてはほとんどの国で制限選挙制がとられていたのが、19世紀の後半から20世紀に入ると、多くの国で普通選挙制がとられるようになった。
  • 普通選挙権の成立
 こうした普通選挙制の確立は、一般に大きな期待と不安とで迎えられた。しかし、実際は普通選挙制も議会の勢力分野に著しい変動はもたらされなかったといえる。その結果、民主政治推進の方策として普通選挙制の実現に努力してきた人々は、今度は既存の選挙制度に欠陥を見だし、民衆の意思が正確かつ公正に代表される制度として比例代表制を主張するに至ったのである。だが、こうした主張も結局は現実の推移によって敗北せざをえなかった。比例代表制が最も理想的に制度化されたのはワイマール(ヴァイマル)共和国であったといわれるが、この国の議会は絶えず小党分立に悩まされ、ひいてはそれが政治の不安定化をもたらす有力な原因とされた。ワイマール共和国の崩壊とナチズムの台頭は、もちろん多くの複合的な力が作用した結果ではあるが、それらの力の一つが比例代表制であったことは否定しえない。選挙権の拡大と選挙制度の合理化も、必ずしも社会の秩序と安定とを促進する要因とはならなかったのである。

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