政治経済法律〜一般教養までをまとめます

  • 市民社会の選挙
 選挙権の拡大も比例代表制の採用も社会の統合過程を改善するうえで特に見るべき成果を上げなかったといえるが、その最大の理由は、普通選挙制が確立されたことによって選挙における統合機能が変質したことに求められる。選挙権が制限されていた市民社会においては、政治に参加しうる人々が限られていたために、政治的緒利害の間にはかなり高度な同質性が保たれていた。有権者はだいたいにおいて有産者であり、それぞれの地方における有力者であったから、彼らの利害の間に高度の同質性が見られたのは当然である。このように利害の同質性が存在する場合には、政策を巡る対立は必ずしも重要な意味を持たず、むしろ人物を巡る対立のほうが重視される。その意味では、選挙を通じて指導者を選出するという政治方式自体が、市民社会に最もよく適合した方式であったといえる。
  • 選挙機能の変質
 選挙権が拡大された時期には、市民社会の性格にも重大な変化が生じていた。市民社会では、わが国の小作農のような無産農民や都市労働者、さらに場所によっては商人、職人、小農のような小所得者などには選挙権が与えられていなかったが、それは論理的には国民代表制の考え方によって正当化されていた。中央議会の議員は当然こうした選挙権を持たない人々の利害をも代表しているとみなされたからである。しかし社会の複雑化に伴って利害の対立が複雑化してくると、国民代表の擬制(ぎせい)は有効性を持たなくなり、この擬制を維持するためにも、あらゆる階層の人々に選挙権を付与しなければならなくなった。こうして普通選挙制の確立とともに、あらゆる利害に議会での公式の発言権が認められるに至った。したがって、ここでは有権者相互間での同質性も失われているといってよい。それゆえ、普通選挙制が確立されるとともに、選挙は相対立する利害の闘争の場となり、人物の選択よりも政策の選択が決定的に重要な意味を持つことになった。党派の対立も主として異なった立場をとり、異なった政策を掲げる党派の間の対立となり、それぞれの党派の間を区別する一線も固定されたものになったのである。

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