マウサネシアへの留学��
最終更新：
kosyoubaru 2022年08月30日(火) 22:45:01履歴
前回：マウサネシアへの留学��
ピピッ…ピピッ…ピピッ…
早朝、彼の祖国では絶対に聞くことの無いような電子的な音が部屋に響く。
鳥のさえずりではない。目覚まし時計の機械的で、耳に慣れないように設計された音は、ヒロ・カハナモクを起こすには過剰なほどだった。
「起きなければならないのか……」
ヒロは、改めて自分がラピタ王国ではなく、マウサネシアに居るということを痛感した。
ラピタ王国には時計が普及しておらず、起きたい時間に適当に起きて、適当に出勤していたからである。
そんな環境で育ったヒロにとって、時間通りに、起きたい時間よりも早く起きるということは、ちょっとした苦行なのだ。
。oO(準備しなくては……)
ヒロは着替えると、朝食を食べに向かうことにした。
マウサネシアのビジネスホテルのレストランというのは、読者が想像するビュッフェのような豪華なものではない。
むしろ、学校や企業の食堂そのものであり、レストランではなく、質素な食堂なのである。
。oO(フォーは昨日食べたし……このAメニューはやめておこう……)
ヒロが選んだのはBメニュー。ご飯主体の内容となっているようだ。
ちなみにCメニューは芋主体なのだが、ラピタで散々食べてきたので暫くは避けようと思う。
。oO(これも初めて見るものだな……)
まずは白いご飯(ジャバニカ米)とハマというマウサネシアの川魚の塩焼き、煮た野菜。
そして朝から辛いものはマウサナ人も敬遠するのか、辛さが控えめなバージョンのハイゴニアン(正確には、ハローニアンと呼ぶらしい)だった。
。oO(やはり、何を食べても美味だ……)
何故マウサネシアの料理は美味しいのだろうか。
尤も、ラピタ王国の料理が不味いとは言っておらず、むしろラピタ王国の料理も素晴らしいものだということは分かっていたし、自慢もできる。
しかし、料理の数ではマウサナ料理の方が圧倒的に多いし、美味しさでも勝っているような気がしてならない。
。oO(やはり、積み重ねてきた歴史と、人口の多さか…)
周囲のマウサナ人たちの話に耳を傾けてみると、世間話や、男○器やAVに関する下ネタ、お店の評判などが聞こえてくる。
ラピタ人は奴隷から王侯貴族まで話好きであるが、マウサナ人もまた、なかなか話すのが好きな種族なのだろう。
「えー困ったなぁ」
「まじ？珍しいねぇ」
しかし不意に1部のマウサナ人が困り始めた。一体原因はなんだろうか。
しかしながら内容の詳細までは聞き取ることは出来ない。多くのマウサナ人が同時に会話しているのだから当たり前だ。
周囲を見回しても特に異常は無かったので、とりあえず部屋に戻ることとした。
「線路内動物侵入で運転見合わせだって！？」
テレビを見ると、目的の路線の運休情報がテロップ表示されていた。
「うーん困ったなぁ……」
ヒロは今日は大学に赴き、そこで国家主席と面会することになっているのだ。
おそらく別件のついでなのだろうが、なぜ自分のような、単なる小国の留学生に会ってくれるのか不思議でならない。
プルルルル……
「電話だ……」
ヒロは部屋に置かれた固定電話の受話器を取った。
「もしもし、どなたでしょうか……」
『ヒロ・カハナモクさんですよね？』
「そうですが……」
『こちらマウサネシア連邦共和国、国家主席秘書委員会です』
国家主席秘書委員会というのは、国家主席のスケジュールを調整したり、車や飛行機を手配したりして国家主席の活動をサポートする機関だ。
ラピタに訪問していたマウサナ人曰く、国家主席への性的なサービスも行っているというが、真偽は定かではない。
「どういったご要件で……」
『電車止まってるのは知ってますよね？なので、車を手配しました』
「え、本当ですか！？」
『国家主席は忙しいので、時間に余裕がありません。準備が出来次第、ホテルの自家用車乗り場で黒い車を探してください。』
「わかりました」
こうしてヒロは、まさかの政府機関側からの迎えが来るという思わぬ待遇を受けたのである。
「よろしく。私が運転手兼、あなたの案内人ですよ〜」
「よろしくお願いします」
「タメ口でいいですよ、貴方はお客さんですから」
「いえ、招かれてるのはこちらの方ですから」
。oO(半分同性とは分かってても、やっぱりその短さは気になってしまうな……)
その運転手兼案内人は、相変わらずマウサナ人らしい服装をしていた。
どうやらマウサナ人の服装というものは、政府機関だろうが民間企業だろうが関係ないようだ。
「線路内動物侵入って、どれくらいの頻度なんですか？」
「あー貴方はまだスマホ貰ってないんでしたね。本当にあそこまで長時間止まるのは滅多にないんですよ〜」
「動物って、何が侵入したらそんなことになるんですか？」
「野生の象の群れらしいですよ。」
「象の群れ？追い出せないんですか？」
「野生でも、都会の象は私たちに慣れてるから、近寄ったりしても逃げないんですよ。だから暴力に訴えるしかないんだろうけど、象は神聖な動物だから、そんなこと出来ませんよね〜」
「なるほどそういう……」
「えーと、あったあった。見て、中継してますよ」
複線の線路の上に、象の群れがウロウロしている。どうやら子供の象も居るようだ。
そして、マウサナ人が数人、象の前に集まっており、象に対して何やら色々と話しかけているようだ。
「この人たちは、一体何を……」
「象を説得しているんですよ」
「言葉が通じるんですか？」
「多分通じないと思います」
「いや、言葉は通じなくても、心は通じるかもしれません」
ヒロはラピタ人である。
彼がスカセバリアル出身なら鼻で笑ったかもしれないが、伝統的な価値観の中で育った彼にとっては、心が通じるという価値観は当たり前のことであった。
「しかし車の量が思ったより少ないですね」
「都市では、みんな公共交通機関を使うんですよ」
「え、どうしてですか」
「車よりも鉄道の方が安上がりだからです。ここでは車を持ってなくても、問題なく生活できるんですよ」
「なるほど……」
「まあ、稀に今日みたいな事件も起こりますがね」
「普段は、そんなに急ぐ必要ないんですよね？」
「もちろんです。会社でも学校でも、電車が遅れたら最悪休んでもいいんです」
国立ジャヤカラタ大学にて
国立大学とは言っても、それはカーリスト諸国のような古典様式ではなかった。
むしろ、機能性を追求したオフィスビルのような校舎が、いくつも連なっており、この光景には圧巻された。
。oO(学校一つ取ってもこのサイズか……隣国、恐るべし……)
(未完)
ピピッ…ピピッ…ピピッ…
早朝、彼の祖国では絶対に聞くことの無いような電子的な音が部屋に響く。
鳥のさえずりではない。目覚まし時計の機械的で、耳に慣れないように設計された音は、ヒロ・カハナモクを起こすには過剰なほどだった。
「起きなければならないのか……」
ヒロは、改めて自分がラピタ王国ではなく、マウサネシアに居るということを痛感した。
ラピタ王国には時計が普及しておらず、起きたい時間に適当に起きて、適当に出勤していたからである。
そんな環境で育ったヒロにとって、時間通りに、起きたい時間よりも早く起きるということは、ちょっとした苦行なのだ。
。oO(準備しなくては……)
ヒロは着替えると、朝食を食べに向かうことにした。
マウサネシアのビジネスホテルのレストランというのは、読者が想像するビュッフェのような豪華なものではない。
むしろ、学校や企業の食堂そのものであり、レストランではなく、質素な食堂なのである。
。oO(フォーは昨日食べたし……このAメニューはやめておこう……)
ヒロが選んだのはBメニュー。ご飯主体の内容となっているようだ。
ちなみにCメニューは芋主体なのだが、ラピタで散々食べてきたので暫くは避けようと思う。
。oO(これも初めて見るものだな……)
まずは白いご飯(ジャバニカ米)とハマというマウサネシアの川魚の塩焼き、煮た野菜。
そして朝から辛いものはマウサナ人も敬遠するのか、辛さが控えめなバージョンのハイゴニアン(正確には、ハローニアンと呼ぶらしい)だった。
。oO(やはり、何を食べても美味だ……)
何故マウサネシアの料理は美味しいのだろうか。
尤も、ラピタ王国の料理が不味いとは言っておらず、むしろラピタ王国の料理も素晴らしいものだということは分かっていたし、自慢もできる。
しかし、料理の数ではマウサナ料理の方が圧倒的に多いし、美味しさでも勝っているような気がしてならない。
。oO(やはり、積み重ねてきた歴史と、人口の多さか…)
周囲のマウサナ人たちの話に耳を傾けてみると、世間話や、男○器やAVに関する下ネタ、お店の評判などが聞こえてくる。
ラピタ人は奴隷から王侯貴族まで話好きであるが、マウサナ人もまた、なかなか話すのが好きな種族なのだろう。
「えー困ったなぁ」
「まじ？珍しいねぇ」
しかし不意に1部のマウサナ人が困り始めた。一体原因はなんだろうか。
しかしながら内容の詳細までは聞き取ることは出来ない。多くのマウサナ人が同時に会話しているのだから当たり前だ。
周囲を見回しても特に異常は無かったので、とりあえず部屋に戻ることとした。
「線路内動物侵入で運転見合わせだって！？」
テレビを見ると、目的の路線の運休情報がテロップ表示されていた。
「うーん困ったなぁ……」
ヒロは今日は大学に赴き、そこで国家主席と面会することになっているのだ。
おそらく別件のついでなのだろうが、なぜ自分のような、単なる小国の留学生に会ってくれるのか不思議でならない。
プルルルル……
「電話だ……」
ヒロは部屋に置かれた固定電話の受話器を取った。
「もしもし、どなたでしょうか……」
『ヒロ・カハナモクさんですよね？』
「そうですが……」
『こちらマウサネシア連邦共和国、国家主席秘書委員会です』
国家主席秘書委員会というのは、国家主席のスケジュールを調整したり、車や飛行機を手配したりして国家主席の活動をサポートする機関だ。
ラピタに訪問していたマウサナ人曰く、国家主席への性的なサービスも行っているというが、真偽は定かではない。
「どういったご要件で……」
『電車止まってるのは知ってますよね？なので、車を手配しました』
「え、本当ですか！？」
『国家主席は忙しいので、時間に余裕がありません。準備が出来次第、ホテルの自家用車乗り場で黒い車を探してください。』
「わかりました」
こうしてヒロは、まさかの政府機関側からの迎えが来るという思わぬ待遇を受けたのである。
「よろしく。私が運転手兼、あなたの案内人ですよ〜」
「よろしくお願いします」
「タメ口でいいですよ、貴方はお客さんですから」
「いえ、招かれてるのはこちらの方ですから」
。oO(半分同性とは分かってても、やっぱりその短さは気になってしまうな……)
その運転手兼案内人は、相変わらずマウサナ人らしい服装をしていた。
どうやらマウサナ人の服装というものは、政府機関だろうが民間企業だろうが関係ないようだ。
「線路内動物侵入って、どれくらいの頻度なんですか？」
「あー貴方はまだスマホ貰ってないんでしたね。本当にあそこまで長時間止まるのは滅多にないんですよ〜」
「動物って、何が侵入したらそんなことになるんですか？」
「野生の象の群れらしいですよ。」
「象の群れ？追い出せないんですか？」
「野生でも、都会の象は私たちに慣れてるから、近寄ったりしても逃げないんですよ。だから暴力に訴えるしかないんだろうけど、象は神聖な動物だから、そんなこと出来ませんよね〜」
「なるほどそういう……」
「えーと、あったあった。見て、中継してますよ」
複線の線路の上に、象の群れがウロウロしている。どうやら子供の象も居るようだ。
そして、マウサナ人が数人、象の前に集まっており、象に対して何やら色々と話しかけているようだ。
「この人たちは、一体何を……」
「象を説得しているんですよ」
「言葉が通じるんですか？」
「多分通じないと思います」
「いや、言葉は通じなくても、心は通じるかもしれません」
ヒロはラピタ人である。
彼がスカセバリアル出身なら鼻で笑ったかもしれないが、伝統的な価値観の中で育った彼にとっては、心が通じるという価値観は当たり前のことであった。
「しかし車の量が思ったより少ないですね」
「都市では、みんな公共交通機関を使うんですよ」
「え、どうしてですか」
「車よりも鉄道の方が安上がりだからです。ここでは車を持ってなくても、問題なく生活できるんですよ」
「なるほど……」
「まあ、稀に今日みたいな事件も起こりますがね」
「普段は、そんなに急ぐ必要ないんですよね？」
「もちろんです。会社でも学校でも、電車が遅れたら最悪休んでもいいんです」
国立ジャヤカラタ大学にて
国立大学とは言っても、それはカーリスト諸国のような古典様式ではなかった。
むしろ、機能性を追求したオフィスビルのような校舎が、いくつも連なっており、この光景には圧巻された。
。oO(学校一つ取ってもこのサイズか……隣国、恐るべし……)
(未完)
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