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1918年に第一次世界大戦が終結すると、各地にて民族自決の動きが高まるようになった。それはイラクでも例外ではなかった。そして、1932年にイラクはイラク王国として独立。1945年4月に締結されたベルリン講和条約をきっかけに、1939年に即位していたファイサル二世が率いるイラクは、英国から完全な独立を遂げた。しかし、中立の立場でもあった国王は親米派からも親蘇派からの攻撃が行われていた。

そしてついに、1956年12月26日、バグダードの王宮内にてクルド人の執事がしかけた爆薬によりファイサル二世は爆死。死体は黒焦げになっており、現在はバグダード郊外の墓地に埋葬されている。
ファイサル二世の暗殺から一週間が経過した頃、ついに国内のクルド人がイラク北部にて蜂起を開始。その他マルクス・レーニン主義者やバグダード中央政府など、約数百個の雑多な勢力による内戦が勃発。この内戦はマルクス・レーニン主義者、クルド人勢力、バグダード中央政府の三勢力が休戦協定を結んだことにより事実上終結した。
爆炎の前で笑い合う二人の少女

1963年9月23日、マルクス・レーニン主義者が率いるイラク革命人民政府が20年間の休戦協定を破り、クルド解放民族戦線へと武力行使を開始。クルコンの事実的な首都であったアルビールへと爆撃機が到達。クラスター爆弾やナパームの空爆により最終的にアルビール市民232,600人が死亡した。バグダード中央政府は人民政府の武力行使から数ヶ月後、内戦における中立を宣言。人民政府とクルコンの戦争が始まった。
1963年から順次配給制となったイラクでは、このような写真が撮られていた。

ソビエト連邦や中国、PMCなどの東側諸国から小銃や戦闘機、戦車、人員などのレンドリースを受けていた人民政府は1964年8月1日にユーフラテス作戦を実行。双方はイラク東部のユーフラテス川にて衝突。川に有刺鉄線や地雷原、塹壕などの総距離約400kmの防衛線を築いていたクルコンは、そのまま防衛戦を開始。その結果約2年間膠着する結果となった。
1966年9月21日、クルコン軍は反抗作戦を開始。2年間の攻撃により消耗していた人民政府はいとも簡単にクルコン軍により殲滅され、1967年1月12日、クルコン軍は人民政府の首都であるクウェートへと攻撃を開始。そして1月23日に首都を占領。これにより人民政府は降伏。人民政府の書記長であったムハンマド・カルリを銃殺刑に処したことで、第二次イラク内戦は終結した。
1965年に撮影されたムハンマド・カルリの写真。

休戦協定締結時の国境

1964年8月21日~1966年9月21日

クルディスタン軍反抗作戦開始。1966年11月1日

クウェート市占領。1967年1月23日

人民政府降伏。クルディスタン共和国へと合併

1966年に人民政府を併合したクルディスタン共和国は、1970年7月12日、ついにバグダード中央政府への武力行使を開始した。まずクルディスタン軍は、人民政府から鹵獲したT-55やRPG-7などの東側の武器を利用しバグダードへの攻撃を開始。これに対しバグダード中央政府軍は応戦を続けたものの、ついに1971年12月23日にバグダードは陥落。バグダード中央政府は1972年2月1日にアルビール講和条約を締結し、バグダード中央政府はクルディスタン共和国に併合され消滅した。

廃墟と化したバグダード

1972年3月20日に選挙が行われた結果、クルド人民党のアフマド・ルアス政権において抑圧的な独裁政権が展開。現在の分割統治システムを形成したのもルアス政権での出来事である。
ルアス政権への不満は徐々に高まりつつあった。そしてついに1976年12月1日に国内の民主派軍人や政治家、ウラマーは国内の最大都市バクダートにおいてクーデターを開始。
クーデター時のバグダードで撮られた写真。市民が戦車を囲んでいる。

当時のバグダード蜂起の中には後に大統領となるバルガード・ムスタファもいた。これはバグダード蜂起と呼ばれた。ルアスはクルディスタン共和国の首都であったアルビールへと移動を開始した。国内の重要都市においては民主派が政権を確保していたが、イラク北部においては未だに強固な軍事力によってクーデターは鎮圧されていた。だが12月26日に転機が訪れる。それはアルビールにおける市民のクーデターであった。アルビール市街地において軍人や民間人が入り交じった約20万人が大統領官邸前を包囲しており、ついに五日が経った12月31日にクーデター軍は官邸に攻撃を開始。官邸は数時間で崩壊し、ここにルアス政権は崩壊した。政権を掌握した民主派たちは臨時裁判を開始し、アフマド・ルアスには1月11日にバグダード裁判所において死刑が宣告され、2月1日に銃殺刑に処された。

選挙が1977年4月20日に控えていたイラク政府は様々な政党が結成された。古くは1947年に結成された汎アラブ主義のバアス党、内戦時の人民政府の思想を継いだ人民党、現在の与党であるクルド国民党、クルコンの兵士たちが加盟しており、全クルド民族の解放を目指すクルド民族党などが結成されたが、クルド国民党が68パーセントの支持を得て与党に。クルド国民党の総裁であったバルガード・ムスタファは大統領へと就任し、さまざまな政策を打ち立てた。主に周辺諸国との外交や、アメリカ、中国、ソビエトとの外交、新たな憲法の作成などを開始。これは主に油田外交と呼ばれ、82年にはOPEC（石油輸出国機構）にも加盟。国連大使や首相のポストにもムスタファ家の家族が参入し、国内の民主派からは「家族での政権独占は民主主義の根幹に欠けている」「アラブ人を大統領に就任させろ」との声も出たが、大統領は以下のように返答した。
「ではなぜあなた達は生きている？我々の外交がなければトゥルキエやイランの傀儡国と化していただろう。そこは理解して頂きたい」
1987年には選挙が行われたものの、57%でクルド国民党が勝利。クルド国民党は未だ与党の座についており、国内のアラブ人や民主派からの不満は高まっている。

イギリス委任統治領の元、1925年に憲法が制定され、両院制の議会を設置。1932年にイラク王国が発足したことにより正式に国会となった。しかし1956年に発生したイラク内戦により議会は事実上廃止となった。16年経過し最終的に内戦が終結し、クルディスタン政府の元で統一されたことにより新憲法が1972年に制定され、議会も設立された。しかしアフマド・ルアスによる独裁体制となっていたクルディスタンに対し民主派は不満を抱き、軍と協力しクーデターを行い、1977年5月1日にクルド国民党の元で民主的な新憲法が制定され、現在までその憲法が続いている。

• クルド国民党 / KNP

政治的思想は中道右派・ナショナリズム。1977年に結成。1994年現在イラクの与党となっている政党。総裁はバルガード・ムスタファ。議席数は上院で142、下院で212。

• バアス党

政治的思想は左派・汎アラブ主義。1977年に結成。1994年現在は野党第一党である。総裁はサッダーム・フセイン。議席数は上院で73、下院で172。

• 人民党

政治的思想は左派・共産主義・平和主義。1958年に結成され、1977年に合法化。1994年現在は野党第二党である。総裁はアブドゥッラー・オジャラン。議席数は上院で62、下院で142。

• 全クルド民族主義党 / PKN

政治的思想は右派・民族主義。1977年に結成され、1986年にクルド共和党と協力関係を締結。総裁はクルディート・アルラトゥ。議席数は上院で46、下院で122。

• クルド共和党 / KRP

政治的思想は右派・保守主義。1979年に結成され、現在はPKNと協力関係を結んでいる。総裁はアディリータ・ヒトラン。議席数は上院で6、下院で13。

クルディスタン軍を参照