俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

一人の電光兵士が、死んだ。
時を同じくして、とある場所で一人の男が笑みを浮かべていた。
現世にはいない、けれど確かにいる一人の男。
結蓮の中に住まうアドラーは、次とない好機を手にしようとしていた。
「おい、結蓮」
アドラーは、結蓮の意識に語りかける。
表に出てくることは出来なくても、彼の意識に語りかけるくらいは出来るのだ。
「貴様の生命エネルギーを少し俺に寄越せ」
「お断りよ」
ストレートな問いかけは、即座に却下される。
もちろん、アドラーもその返答が返ってくることは読めていたので、その理由を述べる。
「貴様の体から出て行くのに、この俺のエネルギーだけでは足りんのだ」
「だからって、死人から奪うことないじゃないの」
今、アドラーの生命エネルギーは非常に弱い。
結蓮から出て行く課程で使い切ってしまうほどには、弱り切っている。
本来、転生はエネルギーのロスなどほぼ無くできるはずなのだが、ここではどういったわけかそうもいかない。
生きている人間に転生でもしようものなら、転生先の強い意志に押さえ込まれるなり弾き飛ばされるなりして終わりだ。
故に、死にかけやら弱りかけの人間ないし生命にしか転生が出来なかった。
その課程でもエネルギーのロスが起こっているのは理解しがたいことなのだが……。
それはともかく、アドラーは本題に入る。
「今し方死んだ木偶の体を奪えば、少なくとも今貴様が持っている兵器よりはヤツに立ち向かえる」
たった今、完全者に斬り伏せられて死んだ電光兵士。
ほぼ全ての生命エネルギーを力に変換して一撃を放ったため、その体に魂など欠片も残っていない。
強化された肉体のおかげか、完全者の斬撃も胸に傷を付ける程度ですんでいるのがポイントだ。
もし、あの体に再び生命エネルギーを吹き込むことが出来れば。
アドラーは再び"アドラー"として戦うことが出来るだろう。
「それに、お前も見ただろう。あの女はそんな兵器一つでどうにかできる存在ではなくなっている。
 ……クーラを守るなら、この俺に力を貸せ」
そしてもう一つ、たった今見た現実を突きつける。
まだ、戦う相手が電光兵士だったならば近代兵器も役に立ったかもしれない。
けれど、戦う相手は変わった。
この殺し合いを支配する悪魔、完全者へと変わった。
自身が先ほど苦戦した電光兵士を、あんなにも簡単に殺してしまう存在を相手に。
死にかけの男が近代兵器を握りしめたところで、何もできないのだ。
重々わかっている現実、守りたくても守れない現実。
それを心の中で何度も何度も噛みしめながら、結蓮は結論を出す。
「ねえ、アドラー。私はあなたのことがすっっっっごく嫌いよ」
まず、吐いたのは心の底から絞り出した皮肉。
「でも、言ってることも一理ある。
 あれを見せられちゃ、勝てっこないわよね」
そして、アドラーの言っていることへの理解。
「この兵器は、ブライアンでも使える。けれど、電光機関……だっけ? を使えるのは貴方ぐらいしかいない。
 ……悔しいけど、任せるしかないわね」
最後に示したのは、受け入れの姿勢。
自身の存在が誰かを守れる力になるのならば。
今にも死にそうな男が、何かの力になれるのならば。
その力となる方が、幾分かいい。
「守りきれなかったら、一生呪ってやるんだから」
最後にもう一つだけ、釘を刺すように皮肉を言う。
「フン、まあ見ていろ」
言葉と共に、スっと力が抜けていく。
結局、啖呵を切ってみたはいいけれど、何も出来なくて。
少し悔しいけど、仕方がない気もする。
じわりじわりと視界が、白に染まっていく。
そして、白が少しずつ失せていって、色を取り戻していって。
見覚えのあるカウンター、薄暗い店内に、柔らかな酒の香り。
カランカランとシェイカーの音が響く。
音の方を向けば、いつもの光景。
それを見て、結蓮は何だか嬉しくなって。
ふふっ、と小さく笑みをこぼした。



手にした力。
するりと結蓮の体から抜け出し、完全者の後方に倒れる電光兵士へと向かっていく。
転生とは言ってしまえば概念の移動、人間が目視することは出来ない。
時間にしてしまえば、たった数秒の出来事。
人類が関知することは、出来ないはず。
「のう、アドラー」
けれど、彼女は違った。
「貴様は違和感を感じなかったのか?」
丁度、横を通り過ぎる辺り、まるでその存在を認識しているかのように語る。
「普段出来る転生が上手く行かぬこと、普段よりも消耗が激しくなっておること、そして……他者の自我を押し込むことが出来なくなっていること」
感じていなかったわけではない違和感を口に出され、アドラーは少し気分を損ねる。
転生を操る以上、自分がその違和感を抱いていないわけがない。
いったいこの女は、何を伝えたいのか? と考えていた矢先だった。
「まあ、貴様が大馬鹿者だったことに感謝しよう」
完全者は、すれ違いゆくアドラーに対して。
振り向かずに笑いながら、そう言ったのだ。
「なッ……!?」
同時に感じる、生命エネルギーの乱れ。
転生途中のエネルギーは何者にも干渉することは出来ない。
そのはずなのに、なぜエネルギーが乱れるのか。
「なんだこれはッ! おいっ! やめろッ! 貴様ァッ!」
アドラーの心が、命が、魂が、削がれていく。
まるで何かに吸い寄せられるように少しずつ、けれど確実に。
理解できない事象に、アドラーは出せない声を荒げていく。
「ふざけるな、認めぬ、俺は、俺は認めんぞぉぉぉぉっ!!」
叫び続けてなお、生命エネルギーの損失は止まらない。
長らく忘れていた、死の恐怖。
同時に彼の目に映ったのは、大蛇の大きな大きな口だった。



かしゃん、と結蓮の握っていた近代兵器、エネミーチェイサーが地面に落ちる。
何事か、とブライアンが落ちた兵器を見ると同時に、しがみついていた結蓮がするっとブライアンの背から落ちていく。
その光景を見たクーラも、結蓮をこの場に運んできたブライアンも、同時に理解する。
結蓮はもう、いない。
「丁度良いときに来たな」
そんな悲しみに明け暮れる間もなく、完全者は口を開く。
背後から感じた人の気配に振り向くと、そこには四人の男女が、特にクーラと同年代の少女が鬼の形相で完全者を睨んでいた。
「よく来たな……この殺し合いを生き延びし者たちよ」
先ほどまでブライアンの目の前にいたはずの完全者は、途端に距離をおき、玉座に腰掛けたまま笑う。
その態度に怒りを表した少女が、一直線に駆けだしていく。
「だが、貴様等には我の望みの為にもう一働きしてもらう」
それを気にすることなく、完全者は言葉を続け、指を鳴らす。
ふ、と広場の中央に現れた、ゲーニッツとはまた違う修道服を身に纏った女。
その女は、まるで死んでいるかのようにぴくりとも動かない。
「さあ、足掻け」
完全者の声に呼応するように、修道服の女の体がびくりと跳ねる。
そしてゆっくりと空へと舞いあがり、間もなくして目映い閃光を放つ。
アメフトのトッププレイヤーも。
氷の力を植え付けられた少女も。
炎の力を植え付けられた少年も。
遺跡発掘や探検が好きな少女も。
孤独を拒み続けた神の現実態も。
圧倒する力を求める悪の帝王も。
みな、等しくその光に包まれた。



転生するにおいて重要なこと。
それは転生の技術も必要だが、そのほかにも重要な要素がある。
言ってしまえば、転生されるのに向いている体というのがあるのだ。
魂を下ろしても、その吸着が弱ければろくに扱うことは出来ない。
逆に弱ってしまった自分の意志が、元の人間の意志に負けてしまうことだって珍しくはない。
そして、ごく希にどんな魂でも吸着し、その力をふんだんに振るうことが出来る体の持ち主がいる。
一部の地方では十種神宝の一つ「死返玉」とも言われることがある。
かつて、完全者ミュカレがカティの体を借りていたとき、彼女は敗れ去った。
だが、それはただの敗北ではない。
勝てるはずの戦にわざと負けたのだ。

何故か? 単純な話である。

自我がある程度弱く、それでいて他者の魂を受け入れやすい器が洗われたからだ。
信仰心は、時に人の心を弱くする。
完全者ミュカレが、その要素を見逃すはずがなかった。

こうして、ミュカレはカティの体を捨て、一人の修道女の体に転生した。
ある種の賭に、彼女は勝ったのだ。

そして時は過ぎ、増幅された力を手にした彼女は、神の体を乗っ取ることを決行した。
その際に、今の素体である修道女の肉体を、魂を封じ込めたまま眠らせておいたのだ。



そして、今。
神を信じ続けた一人の女の体に。
神が、舞い降りる。
「我の血を引きし者よ」
白く光る閃光の中、揺らめく不思議な声が響く。
「ぐあッ……」
「うわ、何っ、コレっ!」
そのうち、完全者に向かっていった少女ラピスと、生きることを決めた少年ネームレスが、頭を抱えてうずくまり始める。
脳味噌を直接揺さぶられているかのような衝撃、絶え間なく続くサイレンのような頭痛。
立っていることすら難しい痛みに、思わず倒れ込んでしまう。
「目覚めよ」
続いた一言と同時に、光が失せていく。
変わっていたのは、そこにいた者たちを三つに分断するかのように裂けた地面。
さらに先ほどまで立っていたはずの場所まで、変わっていて。
白く輝く女から少し離れた場所で、二人がうずくまっている。
「「があああああああああああああああああ!!」」
やがて、獣のような咆哮が広場に響き渡る。
それは、これから始まる一つの戦いの始まりだった。



白と黒、見たこともない炎。
身を焼かんと迫ってくるそれの奥、彼女は一人の男に被る姿を思い出していた。
「K'?」
それは、いつも側にいた男の姿。
組織を抜け出してから、はじめはギクシャクしていたけれど、少しずつ打ち解けていった男。
「違う、でも、K'と同じ……」
目の前の少年は、彼とは全く違うはずなのに、どこかに彼を感じてしまう。
それは、彼が片手につけている赤いグローブが彼の者と似ているからか。
いや、それだけではない。
男の放つ白黒の炎から、彼の気配を感じているのだ。
「クー……ラ? イゾ……ルデ……」
「……ッ!?」
攻撃を繰り返す男の口から漏れた言葉。
それは、自分の名前と知らない誰かの名前。
どうして、自分の名前を知っているのか?
どうして、彼はK'と同じグローブをつけているのか。
どうして、白い炎からK'を感じるのか。
わからないことが、沢山ある。
だから、彼女は決める。
「待ってて、今、クーラが助けてあげるから!」
暴れ続けながら炎をまき散らす彼を、救ってやると。



「あー、くそっ、こん、にゃろっ!」
がら空きのブライアンの体にたたき込まれるはずだった拳は、すんでのところで止まる。
「おい、大丈夫か?」
「大丈、夫だったら! こんっなに、悶えってないって!」
傍目から見ても異常な姿、わかっていてもブライアンは問いかけずにはいられなかった。
自分の意志とは違う何かが、自分の体を動かそうとしている。
彼女は、それに抗っているのだろう。
「これ……押さえ、るのちょっ、と時間かかるな」
彼女が抗っていられるのは、契約してからまだ日が浅いからか。
それとも契約を結ばせたオロチの女が、彼女を守ろうとしているのか。
何にせよ、まだ人としての自我を保つことが出来ている。
「ねえ、お願いが、あるんだけ、どさ」
その自我が残っているうちに、彼女は目の前の男、ブライアンに願いを託す。
「あたしが、暴れ出したら、あたしをブ、ン殴って」
自分が暴れ出して、誰かを傷つけしまう前に。
ましてや、完全者の望みを叶えてしまう道具になってしまう前に。
自我を、取り戻すための願いをつなぐ。
「殺され、かけそ、うになっ、たら、あたしを、殺して、もいい」
もし、勝てなかったら。
その時は殺してもらおうとまで、決めていた。
少なくとも、あのくそったれのおもちゃになるくらいなら。
死んだ方が、マシだ。
「ちょっと待てよ!」
「ごめ、長くはせつめ、できなァァァッ!!」
詳細を問おうとしたブライアンの前で、少女、ラピスの体が大きく跳ねる。
こうしている間にも、彼女は彼女自身に流れる血と戦っているのだ。
体を支配する、覇権を手にするために。
「チッ……くそったれ!」
今は何も出来ず、ただ立ち尽くす。
けれど、ずっと何も出来ない訳じゃない。
結蓮が残した兵器を横に携えながら、ブライアンは少女のすぐ近くで、その姿を見守り始めた。



「……ほう、コレがオロチ。私がかつて手にした力の源流か」
「いかにも真打ち、って感じだね」
神々しく輝く白髪の女の体を見て、ルガールは笑う。
かつて自分が手にしようとして、そして内部から食い破られた力を前に、笑う。
オロチとは、地球意志の力。
招かれた時空のゆがみにより弱まった封印が、ふんだんにたまった闘気を鍵に解かれ、舞い上がる人々の魂を食らって蘇った。
完全者アドラーの転生に違和感があったのも、目覚めゆくオロチが魂を食らっていたから。
無論、それを知るのは完全者ミュカレただ一人なのだが。
「たぶん、隣を気にしてる余裕はないかな」
「まあ、そうだろうな」
両端で始まろうとしている戦闘を横目に、エヌアインは自分のグローブをはめ直す。
神を謡う戦乙女に続き、次は地球意志を謡う存在。
隣の男と協力しても、二人で勝てるかどうかは正直言って怪しい。
気を研ぎ澄まし、光り輝く女を睨む。
「行くよ」
「言われずとも」
そして、憎たらしくもこの場で一番信頼できる男に一声かけて。
勢いよく、飛び出していった。

始まりの地、そこで繰り広げられる三つの戦い。

それを目にしながら、完全者ミュカレは。

静かに、笑う。

【結蓮@堕落天使 死亡】
【アドラー@エヌアイン完全世界 死亡】

【D-4/スタート地点(高原池)/1日目・真夜中】
【アノニム(オロチ)@エヌアイン完全世界(THE KING OF FIGHTERS)】
[状態]:
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
基本:

【エヌアイン@エヌアイン完全世界】
[状態]:ダメージ(小)、首輪解除
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:『正す』以外の方法を知りたい
1:オロチの撃破
2:信じてみる

【ルガール・バーンシュタイン@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:首輪解除
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:世界支配のために完全者の撃破、そのための仲間を集める。抵抗する人間には容赦しない。
1:オロチの撃破

【ネームレス@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:全身火傷、ダメージ(小)、オロチの力により徐々に治癒中、暴走、首輪解除
[装備]:カスタムグローブ"イゾルデ"、K'の制御グローブ"クーラ"(勝手に名づけた)
[道具]:基本支給品×2、不明支給品1〜5(不律、K'、ターマ分含む)、ビーフジャーキー一袋
[思考・状況]
基本:――――
[備考]
K'が一度とりこんだオロチの血がinしたため、炎の色が白黒のマーブルになりました
左手にK'の制御グローブをつけ、血の記憶から知った「クーラ」の名をつけました
クーラ本人がこの場にいることはまだ知りません
左手が暴走し、K9999の技「力が…勝手に…ぅわあああ!!」が暴発する可能性があります
オロチの血による身体の活性化のため、現在のダメージは時間で回復していきます
オロチに血を暴走させられたため、制御が出来ずにいます

【クーラ@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:首輪解除
[装備]:ペロペロキャンディ(棒のみ)
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:K'達を探す
1:ネームレスを助ける

【ラピス@堕落天使】
[状態]:ブチ切れ、腹部裂傷、オロチと契約、血と格闘中、首輪解除
[装備]:一本鞭、ライター
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)
[思考・状況]
基本:完全者をシメる
1:血を押さえ込む
2:改竄された歴史に興味。
[備考]
※オロチと契約し、雷が使えるようになりました。
※おそらく、シェルミーの技が使えます

【ブライアン・バトラー@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:首輪解除
[装備]:シャベル
[道具]:基本支給品、GIAT ファマス(25/25、予備125発)
[思考・状況]
基本:夢と未来を掴み、希望を与えられる人間になる。
1:"勝つ"
2:ラピスを止める
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083
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082:新世界より
時系列順
084:人様ナメてんじゃねえよ
投下順
結蓮
救済
アドラー
ブライアン・バトラー
084:人様ナメてんじゃねえよ
クーラ・ダイアモンド
085:2K+2
081:閉幕 -完了-
ネームレス
エヌアイン
086:『New Welt』
ルガール・バーンシュタイン
ラピス
084:人様ナメてんじゃねえよ

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