俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

「……ここか」
ぴたりと足を止め、上を見上げる。
池の上を浮かぶ球場のような施設に向かい、階段が真っ直ぐに延びている。
登ってこい、ということか。
「随分、余裕だな……」
待ちかまえて居るであろう存在に向け、悪態をついてから一段ずつ階段を登る。
その一段一段が、反逆への一歩。
長きにわたり夢見た場所が、もうまもなくに迫っている。
そう考えると、胸の高鳴りが止まらない。
"こんなこと"から始まった、自身の野望が叶うときが来たのだと。
長く、そして短いときだったと。
様々な思考が、揺れる。
頭の中を渦巻くさまざまなものをまとめながら、一歩、また一歩と階段を登る。
そして、ようやく階段の終わりにさしかかってきたあたり。
開けた空間が、彼の目に映る。
飛び込んできた景色は、想像していなかった景色だった。

赤、赤、赤。
一面を塗りたくるように広がったそれは何か?
嗅ぎ慣れた臭い、どろっとした液体、四散するそれ。

そこに広がっていたのは、血だった。

しかし、初めにはこんなおびただしい血は流れていなかったはずだ。
精々完全者が見せしめに殺した男、カルロス一人分ぐらいしか無いはずなのに。
今、開けたこの場所の一面すべてに、赤が広がっている。

もう一歩、もう一歩と足を進めるごとにその正体が分かる。
よくよく目をこらせば、赤の周りには小さな固まりが落ちている。

――――肉だ。

旧人類を狩っていたからこそ、わかる。
赤を作っていたのは血ではなく、細々に引きちぎられた肉だった。
ようやくたどり着いた広間の第一歩目が、地面とは違う感触だったのはこれが原因か。

「一体、何が」
抱えていた少女を落としながら、彼はそう呟く。
すると、怒号に近い叫び声が広間に響いた。
声の方へ視線を移せば、自分と同じ電光兵士と、自分たちをいつも見下していた聖堂騎士が怒りに狂っている。
怒りの先には、足を組んで玉座に座したまま動かない完全者。
聖堂騎士が超速で肉薄し、剣を振るう。
電光兵士が超速で肉薄し、拳を振るう。
が、そのどちらも完全者を傷つけるには至らない。
振るっていたはずの剣も、拳も、完全者に当たる前に。

爆発して、砕けて、散っていったからだ。

それを操る、者ごと。

言葉を、失う。
一体何が起こったのか、理解できなかったから。
足を組んだまま微動だにしない完全者が、一体どうやって二人を爆破させたのか?
頭を悩ませている間にも、数多の聖堂騎士と数多の電光兵士が完全者に向かっていく。
けれど、一撃たりとも彼女に届くことはない。
爆発、爆発、また爆発、赤い花火が咲き誇るばかり。
当の完全者は小指の一本も動かしていない。
一体、何が起こっているというのか。

しばらく、呆けているうちにコトは終わったらしい。
足を踏み入れたときよりも一層濃くなった赤の中に、彼はぽつりと立ちつくす。
「――――この体は、ヴァルキュリアの物だ」
ふと、聞こえた声に振り向くと、そこには先ほどまで遠くで玉座に座していた完全者の姿。
一体、いつの間に? と疑問を抱くと同時に、完全者の言葉の意味を噛みしめる。
「あの時、奴が"神の現実態"に倒されたとき、転生を試みた。
 我の力の方が、奴より上回っていたというだけだ」
神を、取り込んだというのか。
確かに、エヌアインとの闘いで戦神ヴァルキュリアはその力を弱めたという。
けれど、本当にそれだけで、この女に乗っ取られてしまうものなのだろうか?
「まあ、確かにすばらしい素体だ。力は溢れんばかりに沸き出してくる。
 今、見ていたように貴様等の命を奪うことなど、容易いコトだ」
片手を握っては開き、ニヤリと笑う。
今し方繰り広げられた惨劇、それは確かに彼女の手によって齎されていた光景だ。
他者を、何もかも圧倒する力。
「なぜ――――」
「この殺し合いを開いた、か?」
直感的に繋がった言葉の先を、告げられる。
そう、今のような殺戮劇が繰り広げられるのならば、この殺し合いの意味がない。
彼女の目的は、旧人類の"救済"。
その力があれば、それは容易いことだろうに。
「……確かに、我のこの力があれば、こんな七面倒なことをせずとも人類を救済ってやることができるだろうな。
 だが、全ての人類を救済ってやるまで、我の救済は終わらぬ。
 ありとあらゆる人類を救済うため、この殺し合いは開かれた」
電光兵士が問いかけようとしていた事のその先の先まで、彼女は口を開く。
けれど、口を開けば開くほど、その言葉を理解することは難しくなっていく。
「……どういう事だ?」
「まあ、分からんだろうな」
思わず零れた言葉に、完全者は憎たらしく笑う。
「我の力では、あまりに強大すぎるのでな。貴様等と戦っても"蹂躙"にしかならぬ。
 それでは、成り立たぬ。我の望みは成り立たぬのだ」
わざとらしくマントを広げながら、手を掲げて完全者は語り続ける。
「旧人類独特の怒り、悲しみ、闘争、気と気のぶつかり合い。
 同等のレベルだからこそ起きるそれらから得られる、闘いの力が必要だった。
 我の望みを叶えられるのはそれしか無かった故に、この殺し合いは開かれた。
 力のある者、力のない者、ある程度は無作為に選んだ。
 力のない者が力を手にしようとする姿、力のある者同士が闘いに耽る姿、そこにある悲しみ、怒り、力。
 それが起こることが、我の望みへの鍵となる」
完全者の語る事、人類の救済のその先の望み。
それが何なのかは、全く見当もつかない。
小さく舌打ちをしてから、電光兵士は次の問を投げる。
「……ではなぜ、手下を皆殺しにした」
「フン、闘気は既に極限近くまで満ちた。あと少し足りない物を補っているだけに過ぎん、それは――――」
答えと同時、どこに潜んでいたのか知らないが、一人の聖堂騎士と一人の電光兵士が完全者の背後から襲いかかる。
「深い、絶望と」
完全者は振り向くことすらせず、笑う。
「己を見失う、狂気」
死角のはずの背後の攻撃を、確認もせず。
「それは、蹂躙によって齎される」
ただ、笑うだけ。
それだけで、襲撃者二人は爆発する。
「そのために丁度いい木偶人形を使おうが、我の勝手であろう?」
電光兵士を見るその顔は、どこの誰よりも狂っていて。
そして、美しい笑顔であった。
「……許せねえ」
怒りに震えた声は、電光兵士の背後から聞こえた。
この広場にたどり着き、暫く完全者の話を聞いていた男、ブライアン・バトラー。
その顔には怒りが浮かび、拳は小刻みに震えている。
「何を怒っている? むしろ光栄に思えば良いではないか」
そんなブライアンの姿を見てもなお、完全者は笑う。
「旧人類が死滅する"終わりの日"の糧になり、その瞬間を見届けられるのだからな」
仰々しく両手を広げ、完全者はそこにいる者たちを挑発する。
「さぁ、どうする? それでも、今のを見ても、我と戦うというのか?」
ブライアンの拳を作る力が増し、爪が少し食い込んで皮膚を裂く。
けれど、何もできない。
まず、己の首には命を握る首輪がある。
そして何よりも、今の力を見せつけられた上で挑むことなんて、出来ない。
殺されるとわかっているのに挑むのは、バカのする事だとわかっているから。
生きてこそ、生きて勝ちを掴まなければいけないからこそ。
ブライアンは、完全者に襲いかかることが出来ない。

「ク、ククク……」
その時、突然隣の電光兵士が笑い声を上げ始めた。
片手で顔を押さえつけ、髪を掻き上げるような仕草と共に、笑い続ける。
「どうでもいいな……」
その様子にブライアンは不思議な感覚を覚え、完全者は笑みを消して電光兵士を睨み続ける。
「俺の目的ははじめからただ一つ」
先ほどの完全者のように両手を横に広げ、電光兵士は語り続ける。
「完全者ミュカレ、貴様を――――」
そして、すうっと息を吸って、完全者を指さし。
「殺すッ!!」
弾丸のように駆けだし、右足を大きく振るう。
「ほう、その力……ははっ、そういうことか」
ぶぅん、と風が切れる音を電光兵士の背後で聞き、完全者は笑う。
一時も目を離していなかったというのに、いつ動いたというのか。
それを考えると同時に振り向きざまに拳を振るうが、当たらない。
その拳を振るった直後に、完全者が背後にいるから、当たらない。
「良いのか? 我を殺すのならば、そんな"手抜き"では当たらんぞ」
クククと笑いながら、見下ろすように電光兵士を嘲る。
挑発に動じることなく、電光兵士は静かに完全者を睨む。
一般の電光兵士ならば、自分の身が瞬時に溶けて無くなってしまうレベルの高速稼働を始める電光機関。
だが、この電光兵士の体は溶けない。溶ける訳がない。
彼の身体に宿っているのは、血と、肉と、心。
自らの望みを叶える為の力を手にするまでは、絶対に溶けない、折れない。
そして、完全世界が開いていく。
完全者を殺す、たった一つシンプルな目的に向け。
電光兵士は、己にある全てを、力に回す。
「Sterben!!」
今までとは違う、全身全霊を込めた攻撃。
風にも、音にも、雷にも、光にも到達せんとするその一撃。
たった一撃、それで全てを終わらせるために。
彼は、光となる。

そして、すれ違う瞬間が迫る。

その時を前にして、完全者は。

銃剣を、振り抜いた。

ズレる、世界。

崩れ落ちるのは。



――――電光兵士。



赤い軍服に、斜めの一閃。
それを抱きながら、電光兵士は眠りにつく。
もう動かない、もう何もすることは無い。
先に砕けて散っていった、仲間たちと同じ末路。
野望も、夢も。

そこにはない。

完全者は通り過ぎていった死体を振向くことなく、銃剣を振るう。
剣先についた血を飛ばして銃剣から手を離すと、銃剣は音もなくどこかへと消える。
「つまらん」
吐き捨てた一言は、感情も何も籠もっていない。

男はただ、見ていることしか出来なかった。
一人の人間を背負ったまま、短時間のようで物凄く長い時間を。
ただ、見つめているだけ。

その時、からんからんと軽い音が響く。
足元を見ると、そこには先ほどまで自分達の命を握っていたはずの首輪の残骸が、転がっていた。
「さて、貴様等はどうする?」
そこで、完全者は問う。
「ここで我に逆らって死ぬか」
丁度起きた少女に。
「ここで何が起こるかを見届けるか」
現世に留まれる時間は少ない男に。
「選ぶ権利を、やろう」
そして、"勝つ"ためにここに来た男に。

選択を、迫る。

【エレクトロ・ゾルダート(エヌアイン捜索部隊)@エヌアイン完全世界 死亡】

【D-4/スタート地点(高原池)/1日目・夜中】
【クーラ@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:首輪解除
[装備]:ペロペロキャンディ(棒のみ)
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況] 基本:K'達を探す

【ブライアン・バトラー@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:首輪解除
[装備]:シャベル
[道具]:基本支給品、GIAT ファマス(25/25、予備125発)
[思考・状況]
基本:夢と未来を掴み、希望を与えられる人間になる。
1:"勝つ"

【結蓮@堕落天使】
[状態]:動けない、アドラーを押さえつけてる、首輪解除
[装備]:アコースティックギター@現実、ザンテツソード(9/10)@メタルスラッグ、エネミーチェイサー(38/40)@メタルスラッグ
[道具]:基本支給品
[思考・状況] 基本:分からない、けど、アドラーには腹が立つ
※アドラーに転生されて無理矢理蘇生させられました

【アドラー@エヌアイン完全世界】
[状態]:九割死んでる、結蓮に寄生してる感じ
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況] 基本:完全者の邪魔をし、全ての叡智を手に入れる。
※死んだ結蓮の体に無理矢理転生しました、どれだけ転生していられるか、再び他の体に転生できるかは不明
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081:閉幕 -完了-
時系列順
083:救済への階段
投下順
078:ぼくたちにできること
結蓮
アドラー
ブライアン・バトラー
077:死神の逆位置、人々の誰そ彼
クーラ・ダイアモンド
エレクトロ・ゾルダート(エヌアイン捜索部隊)
救済

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