俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

「ここまで走ってくれば大丈夫そうね」
K'達が戦闘している場所からしばらく離れた場所で、シェルミーは担いでいたラピスをゆっくりと下ろす。
炎と炎のぶつかり合い。
片や草薙の炎と模倣の炎が混ざった黒い炎。
片や草薙の炎とオロチが混ざった白い炎。
膨大なエネルギー同士のぶつかり合い、何も起こらないわけがない。
「……手を貸さなくていいの?」
傷を抱えたラピスが、シェルミーに問う。
余波に巻き込まれたくないとはいえ、片方は人殺しに躊躇いのない人間だ。
K'と協力して、倒しておいた方が良かったのでは? と純粋にラピスは思う。
まあ、傷だらけの自分がどこまで力になれるかは未知数だが。
そんなラピスの問いにシェルミーはフフッと笑いかけ、わざとおどけて答えてみせる。
「男の世界って、下手に近寄るとダメなのよねーっ。
 当の本人同士以外、ケジメがつけられないのよ。
 だ・か・ら、下手に刺激しないで、やらせとけばいいのよ」
そう、これはK'とネームレスの問題でもある。
当人以外が首を突っ込んで解決するのは、野暮と言うものだ。
つけるべきケジメは、本人達につけさせる。
他人の介入など、必要ないのだ。
「……ま、もしナイト様がやられちゃったら、そのときはこのプリンセスが相手してあげようかしらね♪」
「プリンセス……」
「何か言った?」
「いや、べつに」
見えない瞳の奥から恐怖を感じたと同時に、懐に入れておいた携帯端末が鳴動する。
手元に近づけて画面を覗いてみると、一人の修道服の女が映っていた。
それを見たシェルミーの顔が、少しだけ強ばったのをラピスは見た。

禁止エリア。
この殺し合いを加速させるための措置。
どうやって首輪が爆発するかは分かっていないが、二時間後には黒塗りのエリアに死が待っている。
海を泳いでわたるつもりなど無かったが、この島からは出られないと言うのが二重の意味になった。
人間を中央に集め、短期決戦を促しているのだろうか?
完全者の考えは読めない。

名簿。
一通り目を通したがラピスの知り合いは多くはない。
シェルミーは知り合いが多いが、オロチの一族であった以上、悪い印象を持たれている人間は多い。
今、二人には心の底から信頼できる仲間は隣の人間しかいないと言うことだ。

シェルミーは考える。
といっても禁止エリア、招かれた人間、完全者の思惑などではない。
先ほどの映像に"彼"がいたことだ。
姿形はほぼ別人とはいえ、あの気迫は間違いなく"彼"だ。
"彼"が"彼女"になっていたことはこの際もうどうでも良いとして、問題はなぜ"彼"がそこにいたのか、ということだ。
時空間の捻れ、それにより起こった過去へのパラドックス。
自分以外にも作用していることは分かっていた、だから答えは一つしかない。
"彼"の死も捻れたのだろう、"彼"という存在ごと。

「……シェルミー?」
初めて見せる真剣な顔つきに、ラピスは思わず問いかけてしまう。
「だいじょぶ?」
「……うん、ちょっと、ね。昔の知り合い、思い出しちゃって」
「へぇー」
あまり優れない表情、これもまたシェルミーが初めて見せる表情。
それを珍しがるわけでもなく、ラピスは純粋に問いかけを続けていく。
「彼氏?」
「ばっ! 誰があんなのと付き合うのよ!! 息苦しくって仕方ないったらありゃしない!!」
顔を真っ赤にし、全力で否定するシェルミー。
照れてそっぽを向くのも、彼女がこの殺し合いで初めて見せる表情だ。
一人の人間、喜怒哀楽を持った普通の人間。
オロチという力がなければ、本当にそうにしか見えない。
「……まっ、それはともかく、よ。
 アイツがそこにいるなら、この殺し合いの目的もちょっと見えてきたかもしれないわ。
 本来なら私はそっちに加担しなきゃいけないんだけど……」
切り替えるように話を切りだし、重い言葉を続ける。
アイツ、はおそらく先ほどの修道服の女だろう。
けれど"彼氏"という問いかけに否定していたのが、ラピスには気になる。
シェルミーの知っているのは"彼"で、放送に映っていたのはその"彼"が"彼女"になった姿だとでもいうのか。
細かいところは分からないが、だいたいはそう言うことなのだろう。
そして"そっち"とはつまり、この殺し合いを主催する側だ。
なれば、あの女もオロチの一族と言うことになる。
この殺し合いの後ろに、オロチの何らかの話が絡んでいるのは確定的のようだ。
「……正直ちょっとうんざりなのよね、この宿命。
 だから、もう一回手に入れた人生ぐらい自由に謳歌する。
 定めも何にも誰にも縛られずに、ね」
そう呟く瞳には、少しだけ憂いがあった。
一族としての宿命、それを課さねばいけない定め。
二度目の人生では、そんなものはもうないと思いたいというのもあるのかもしれない。
"本当の姿"の片鱗を見た気がして、ラピスは思わず黙り込んでしまう。
「もしかしたら、こんなんだから殺し合いに巻き込まれちゃったのかもしれないわね、アハッ♪」
重い顔になっているのを察したシェルミーは、いつも通りに明るく振る舞う。
そう、オロチの宿命も、同胞が何を考えているのかも今はどうでもいい。
今果たすべきは、完全者の討伐、それだけなのだから。
「行きましょう? 禁止エリアの近くでいつまでもふらふらしてるわけにはいかないわ」
二度目の人生を謳歌するために、シェルミーもまた、"前"を向く。

【H-8/南東部/1日目・日中】
【ラピス@堕落天使】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:一本鞭
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:首輪解除から完全者をシメる、そんでこの場から脱出。
1:シェルミーととりあえず行動。改竄された歴史に興味。

【シェルミー@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:右手首負傷(支障なし)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:生を謳歌するため生き残る、襲われれば容赦はしない。完全者にお仕置きをする。
1:定めには従わない。
2:ラピスと行動。
[備考]
※ゲーニッツの存在を把握しました
Back←
062
→Next
061:明るく楽しく元気よく
時系列順
063:私と誰か、貴方と私。
投下順
053:中間試験 科目:自我
ラピス
070:脱走開始
シェルミー

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Menu


資料、小ネタ等

ガイド

リンク


【メニュー編集】

管理人/副管理人のみ編集できます