俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

ぶるるるるる、ぶるるるるる。
その音は、黙って歩いていた二人の男の足を止める。
素早く端末を手に取る二人、示し合わせたかのように息はぴったりと合っている。
気づいたマルコがニヤリと笑い、ゾルダートが露骨に顔をしかめる。

映る修道服の女、ゾルダートは知らないと言う。
もっとも、知っていても彼がそれを言うわけがないのだが。

続く情報確認、サクサクと必要な情報だけ頭に入れて端末を仕舞うゾルダート。
対照的にマルコは、その端末をずっと握りしめていた。

「……どうした」

ゾルダートはマルコに特に興味はないし、別にどうでもいい。
この男が動くことをやめるのならば殺すまでだ。
けれど、突如動きを止めた彼に、なぜかその一言を投げかけたくなった。
ゾルダートの言葉に反応し、マルコは前を向く。
その顔を見て、ゾルダートは思わず唾を飲み込む。
そう、それはまるで悪鬼が乗り移っているかのようで。
けれど、光り輝く天使のようにも思える。
少なくとも、人間が抱えることが出来るかどうか怪しい憎悪が、そこにあった。

「仲間が――――」

心を奪われかけていたゾルダートの心が、マルコの言葉で現世に戻る。
よく見れば、マルコの表情は普通の怒りに戻っている。
では、先ほど見たのは何だったのか。
本性の断片? それとも何かの作用か?

「仲間が、三人も死んだ」

仲間、仲間、仲間。
ゾルダートにとっては耳慣れない言葉が、頭の中で反響する。
仲間、それを奪われた者はこの男のようになるのだろうか。
怒りという感情は、人を悪鬼に変える力があるのか。

「絶対に許さねえ……!!」

静かに、けれど確かに怒りを燃やし、銃を強く握りしめる。

「仲間を失うと言うことは、そこまでなのか」

そんなマルコに、ゾルダートは興味本位で話しかける。
ゾルダートには仲間はいない、そもそもゾルダートは"兵器"として生み出されたクローンがほとんどだ。
仲間意識など無きに等しく、ただ旧人類を狩り、"時"を待つ。
限られた時間を、感情などと言う下らぬ要素で費やしている暇はないのだ。

「当たり前だ。仲間は多かったとしても、その一人一人はかけがえのない一人だ」

冷ややかに問うゾルダートに、感情を込めてマルコは答える。
人間は、人間だ。
だが、人それぞれの個性があり、体のつくりがあり、性格があり、持ち味がある。

「"そいつ"が死んだら、代わりなんて居ないんだよ」

同じ人間など、この世に二人としていないのだ。
たとえば、「マルクリウス=デニス=ロッシ」という男はいるかもしれない。
マルコと同じ服装の男もいるかもしれない。
マルコと同じくらいプログラミングに興味のある奴がいるかもしれない。
けれど、それらすべてを兼ね合わせて持っているのは、マルコただ一人だけなのだ。

「お前らだって、そうじゃないのか?」

返される問いに、ゾルダートは鼻で笑う。

「命の短い俺たちは、そんなことをに費やしている時間などない」

そう、時間は限られているのだ。
こんなやりとりをしている時間だって、本当は惜しいくらいだ。
首輪が解除できない、そうと分かった瞬間にこいつを殺してやるというのに。

「でも、お前はお前じゃねーか」

歩きだそうとするゾルダートを、マルコの声が再び止める。

「顔が似てようが、同じ体してようが、誰かのクローンだろうが、お前はお前だろ!
 それとも何だ!? 私が死んでも代わりはいるものってか!?
 それは"お前"じゃなくて、"誰か"だろうが!!」

気づけば、声が荒くなっていた。
かつては敵対した関係の兵士同士だというのに、マルコは言葉を止めない。

「良いかクローン野郎、これだけは覚えとけ」

そして、ビシリと指を指して告げる。

「人間ってのは、ひとりぼっちなんだよ。
 けれど、たった一人だからこそ、集って力を発揮する。
 同じ人間なんて、一人もいないからな」

クローンなど皆同じ、誰が出ようと同じ。
そう思っているであろうゾルダートの考えを正すように。
より強めの声で、告げる。

「……フン」

その言葉を背に浴びながら、ゾルダートは歩みを続ける。
分かっている、"自分"が一人しか居ないことぐらい。
自分は、エルンスト・フォン・アドラーではなく、エレクトロ・ゾルダートなのだから。

だから、だからこそ。
時間が足りない。
自分が自分であると、確立するためには。

焦る気持ちを隠すように、ゾルダートは再び黙って歩き出す。
そして、マルコも隣につくように歩く。



「悪魔の再来」と呼ばれた男の死体を見つけるのは、この少し後の話である。

【F-8/中央部付近/1日目・日中】
【エレクトロ・ゾルダート(エヌアイン捜索部隊)@エヌアイン完全世界】
[状態]:健康だがやや消耗
[装備]:電光機関
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本:全参加者及びジョーカーを撃破後ミュカレを倒し、先史時代の遺産を手に入れる。
1:首輪入手まではマルコに協力
2:首輪を入手すればマルコに情報の提供
3:その後は……

【マルコ=ロッシ@メタルスラッグ】
[状態]:怒り
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)、小冊子、アノニム・ガードの二丁拳銃(二丁一組、予備弾薬無し)
[思考・状況]
基本:殺し合いの打破
1:一刻も早く首輪サンプルを取得
2:その後、得た電光機関の知識を元に解除に挑戦
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063
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062:明るく楽しく元気よく
時系列順
065:見えない目覚めの刻
投下順
064:月に叢雲、華散る嵐
055:ネゴシエーター
マルコ=ロッシ
070:脱走開始
エレクトロ・ゾルダート(エヌアイン捜索部隊)

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