俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

目が覚める。
見慣れない土地の、見慣れない場所で。
命を握りしめる首輪と共に。

意識を失う前に聞いた言葉。
生き残りたければ、この場にいる人間を殺せ。
要約するとそんな台詞だったか。
その意味を頭の中でクルクルと回し、一呼吸おいてから笑う。

何だ、いつも通りじゃないか。



「HEY! ちょっとぐらい俺の話聞いてくれてもいいんじゃねぇか?」
紫を基調としたパーカー、紫の帽子を逆にかぶるすらっとした長身の黒人が声を張り上げる。
男の声の先には、涼しい顔をして歩き続ける一人の女軍人がいた。
足を止める気配を全く見せることなく、男の声を背に受けながら足を進め続けていた。
男が足を早め、女軍人の足の進む先の少し前へと移動する。
「YOYOYO! 澄まし顔してスルーかい?」
「あなた、民間人ね?」
しつこくまとわりつく男に対し、表情を崩さずに女は冷たく言い放つ。
「おっと、俺はそんな一般人じゃないぜ! 何せあのザ・キング・オブ・ファイターズにも出場したラッキー・グローバー」
「巻き込まれてしまったのは同情するけど、今は自分の身を守ることを考えなさい」
前に立ちふさがる男、ラッキー・グローバーに対してその一言を添えて横を通り抜ける。
「格闘に少し自信があるからといって、どうにかなるほどあの女は甘くないわよ」
女軍人、鼎は知っている。
とはいっても、断片的な情報ではあるが。
完全者ミュカレ、かつて全世界に向けて宣戦布告をした人物。
直接相見えることは無かったものの、その力は十分知っているつもりだ。
今回の殺し合いも、何かしらの目的があって開かれたものだろう。
その目的を探ると同時に、被害を最小限に食い止めることが求められる。
目の前の男のように、一般人が巻き込まれているのならば、その安全は確保しなければならない。
故に、彼をこの戦いに巻き込むわけにはいかなかった。
そういう話が通じる人間ならば、良かったのだが。
「そうじゃなくって! 一緒にあのガキンチョを分からせに行こうぜって言ってんだよ!」
「それなら尚更ね、あなたのような人間が立ち向かっても返り討ちにあうだけ。完全者は私が何とかするからあなたはどこかに隠れてなさい」
どうにも彼はあのミュカレ討伐に一役買いたいらしい。
しかしどうみても一般人、ないしそれに毛が生えた程度の彼ではミュカレどころか道中で返り討ちになるのが目に見えている。
どこから沸いてくるのか分からない自信は、時にその本人の首を絞めることになる。
事が済むまで自分の命を守ることを最優先に行動してほしい、そう願っているだけなのだ。
「Huh? そういうアンタはあのガキンチョをなんとかできるってのかよ。俺からすればその方が信じられねえな」
見方を変えれば人を見下ろした態度ともとれる鼎に対し、ラッキーはその実力を疑った。
仮にもKOF出場の彼をここまで一蹴できる、それなりの実力があるのだろうと踏んだ。
「いいわ、そこまで言うなら連れていってあげる。
 ただし、私と戦って勝つことができれば、ね」
小さなため息と共に、腰に手を当てて鼎が答える。
ラッキーは心の中でガッツポーズをとりながら、どのように攻めるかを考えていた。
「ヘッ、上等だぜ!」
その言葉と同時に、ラッキーの体が残像を纏う。
流れるように地面を滑り、瞬時に鼎の背後へと向かう。
それから右手に気弾を作り上げていき、地面へと叩きつけて気の柱を立てる。
彼の、自慢の必殺技。
「ヘルバウッ……なッ!」
それが、いともたやすく受け止められる。
鼎のとった妙な構えに、光の柱は吸い込まれるように無力になったのだ。
その吸い取った力の一部を働かせ、鼎は全身を用いて空気を瞬間的に振動させる。
圧縮された空気がラッキーの体へと直撃し、ふわりと巨体が浮いてから、ゆっくりと落ちた。
攻勢防禦、常人が知り得ない攻守一体の構え。
背後なら隙だらけだと踏んだラッキーの策は、その力を利用されて吹き飛ばされる事になった。
「……分かったかしら、おとなしく安全な場所に隠れてなさい」
冷徹かつ手短に鼎はラッキーへと告げる。
当のラッキーは、いつぞやに受けた屈辱に似たような光景を思い出し、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
鼎は振り向かず、その場を黙って立ち去っていく。
ラッキーは、その後を追わずに倒れ伏したままである。
鼎の姿が見えなくなるまで、ずっと、ずっと、地面に寝転がっていた。

ラッキーのまとわりつきから逃れ、ようやく一人の時間ができた鼎は現状の整理を始める。
あの全世界にテロを仕掛けた完全者が、今度は一部の人間を集めて殺し合いを仕掛けている。
自分やその他の人間を知らぬうちに連れ去る事のできる技術があるのならば、その技術で人類を抹殺すればいいだけのこと。
それをわざわざ殺し合いという手口をとっているのには、何か特別な理由があるはずだ。
いったいどんな理由でこのふざけた遊技を開いているのかは分からないが、読み切れない部分は多くある。
まずはできるだけ被害を少なくしつつ、彼女の目的を知ることが求められる。
いずれはこの計画の中断まで持ち込むための、下準備を今からしておく。
鼎は、情報を求めて歩き出す。



ここで、既に彼女は一つのミスを犯していた。
一般人を巻き込まず、被害を最低限にすると言っておきながら、ラッキーをあの場に放置してきたことだ。



大きく寝そべっていたラッキーが、ゆっくりと起きあがる。
鼎が消えていった方向を少しだけにらみ、服に付いた埃を手で軽く払う。
「なんだよ、E−THAI HO−DIE言いやがって……」
足元に空き缶でもあれば、け飛ばしていただろう。
やりきれない怒りと悔しさをぶつけることすらかなわず、ラッキーは足を進めようとした。
そのときである、彼の視界に一人の少年の姿が映った。
ヘビィ・D! とはまた違う特徴的髪の毛、青色のパーカー、ほぼ土気色の肌。
その目が虚空を見つめていると分かったとき、ラッキーは手を伸ばした。
「おい、ボウズ」
そこから先は、声がでない。
いや、出すことはできなかった。
ラッキーが口を開いた瞬間に、少年の姿が消え、次に気がついたときには首をカッ切られていたからだ。
命乞いをする余裕すら与えられず、吹き出していく血を見つめることしかできずに、ラッキーは力無く倒れていった。



彼は、殺し屋だ。
幼くして殺しのノウ・ハウを全てたたき込まれ、今やEDENの大人が彼に畏怖するという状況すら作り上げている。
そんな彼が、殺し合いに巻き込まれた。
ならば、やることは単純だ。
人を、殺す。

今まで通りの生活で、今まで通りやってきたことをすればいい。
それだけである。
それを理解しているのか、いないのか。
どちらにも取れて、どちらにも取れない不思議な笑みを浮かべながら。
少年、ルチオ・ロッシはラッキー・グローバーの死体を後にした。

【ラッキー・グローバー@THE KING OF FIGHTERS 死亡】

【H-3/中央部/1日目・朝】
【鼎@エヌアイン完全世界】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:現状把握、被害を最低限にして事件解決。

【H-3/やや南部/1日目・朝】
【ルチオ・ロッシ@堕落天使】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(2〜6)
[思考・状況]
基本:…………ケッ
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008:ミッドナイト・シャッフル
時系列順
010:火星人以下の意思疎通能力
投下順
始動
044:状況は開始されている
ルチオ・ロッシ
038:おたんじょうびおめでとう
ラッキー・グローバー
救済

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