俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

「邪魔をするなら容赦はしない」
「それは俺の台詞だ、道を阻むのならばここで死んでいけ」
ぶつかり合う視線、互いが互いを敵だと認識しあっている。
理由としてはごくごくシンプルなものだ。
「自分の歩く先に相手がいたから」
たったそれだけである。
だが、たったそれだけの理由でも、彼らを突き動かすには十分すぎる理由だ。
自分の人生の弊害は取り除く、それだけなのだから。

互いに譲るという考えはさらさらない。
自分の歩いていた道に相手が現れただけのこと、相手に道を譲る理由など何もない。
それでも立ちはだかるというのだから、相手を潰すだけである。
それを認識した両者が、瞬く間に戦闘の態勢へと入る。

自由を侵されることを酷く嫌い、何者にも束縛されることのない自由を好む漆黒の天使の羽。
宿命に苦しめられながらも、往年の宿敵を追い続ける咎を背負いし者の蒼い炎。
両者が同時に放たれ、両者共にぶつかり合って弾ける。
それが、開戦の合図。

炎がかき消された事を認識する前に、赤髪の男が黒い天使へと飛びかかっていく。
その勢いを全て乗せながら、空間を抉りとるように炎と共に腕を振り下ろす。
引き裂いたのは、虚空。
すんでのところで気がついた天使が一足先にその場から飛び退いていたからだ。
すかさず、赤髪の男は標的をその目に捉えて走り出す。
一気に距離を詰めようとしている赤髪の男に対し、天使はその場に屈んだまま動かない。
刻一刻と、天使を切り裂かんと一本の腕が迫る。
突進する脅威に対し、その目をまっすぐと向けたまま、天使は屈み続けた。
瞬間、目を見開く。
勢いよく地面を蹴り上げ、片足がまるで何かをなぞるように放物線を描いた。
だがその蹴りも男を退けることは叶わず、その体の一部を掠めるだけに終わってしまった。

互いが互いに、次の一手を思考する。
目の前の障壁を、確実にぶち壊すための一手を。
両者の思考が同時に結論を導き出し、反射的に体を動かしていく。
そして今にも憎き相手に飛びかからんとしたその時。
「ストップ」
両者の間に、冷たく響く声。
赤髪の男の眉間に照準を合わせた銃と、今にも天使の喉を切り裂かんと迫るナイフ。
その二つを携えた一人の女が、二人の間に割って入るように現れた。

「……何のつもりだ」
「何のつもりもクソも、こんな所で殺し合ってどうすんのって話よ。
 だからそんなことしてないで、ちょっと私の話を聞いてほしいと思うんだけど?」
ナイフの切っ先も銃の照準も一切ズラすことなく、乱入者の女軍人は赤髪の男の問答に答える。
二人の戦闘に乱入した理由を簡潔に述べながら、その場にじっと留まる。
女の答えと同時に、赤髪の男の手に青い炎が灯る。
「下手に動くと額の風通しが良くなっちゃうわよ」
銃の引き金に手をかけなおし、金属音を立てながら警告の一言を釘を刺すように放つ。
このまま銃弾が放たれれば、女の言うとおりに赤髪の男の額にぽっかりと風穴があくだろう。
「そんな玩具で俺をどうにかできるとでも思っているのか?
 貴様が引き金を引くよりも早く、貴様の息の根を止めてやる」
青い炎は男の手の上で燃え上がったまま。
両者共にその場に固まったまま、相手の方を睨みつけている。
後少し、力を込めればこの銃から銃弾が飛び出すといった所まで来たとき、赤髪の男の炎が掻き消えた。
「……フン、まあいい。
 今は京を殺すことが先だ、この殺し合いの場で奴を殺すのは誰でもない、この俺だ。
 俺の邪魔をした件については目を瞑ってやるが、次はないと思え」
赤髪の男は女軍人を一睨みした後、くるりと背を向けてどこかへと歩きだした。
幸福でも逃走でもなく、目的のための譲歩。
赤髪の男の姿が見えなくなるまで、女軍人と黒い天使は微動だにせず、その光景を見つめていた。



「ったく、噂通りの盲目っぷりね」
赤髪の男が去ったことを確認し、女軍人は一息ついて力を抜く。
八神庵、オロチを封印した三種の神器のうちの一人。
太古の昔にオロチと契約を結んだ先代の影響と諸々が積み重なり、草薙京を憎み続けている。
実際に会ってみれば、情報以上に情報通りの人物。
銃で脅したぐらいでは会話に応じることなどあり得なかったのだ。
ならば、もう一人の存在。
ナイフで動きを止めていたはずの、黒い天使へ対話を試みようとする。
「それで、聞きたいことがーーっと!」
返答は、天高く舞い上がるサマーソルトキック。
女軍人の力が抜けたのを見計らい、屈みから華麗に技へと転じたのだ。
すんでの所で避けることに成功したものの、この黒い天使が彼女と対話してくれそうにないことは、誰の目にも明らかだ。
「俺の自由は誰にも邪魔させない」
「ちょっ、待て!」
その一言を言い残して、本物の天使のように飛び去っていく。
止めようと思っても、間に合わない。
そのまま、黒い天使は羽ばたき去っていく。
「……うーん、さすがに手段を間違えたか」
見届けた後に女軍人、笠本英理は頭を掻く。
どうみても一触即発の状況、あのまま見ていれば二人のうちのどちらかは死んでいたこと確実だ。
片方はオロチと関わりの深い三種の神器の八神庵。
片方はあのEDENで名を馳せる第四区画の黒い翼。
どちらからも聞きたいことはあった、故に僅かな希望を手に二人の戦闘に割り込んでいった。
収穫は、ゼロだったが。
「仕方ない、他の誰かを当たるしかないか……」
あの少女の言うとおり、殺し合いに乗じるつもりはない。
この殺戮の転覆を謀るには、戦力と情報の両方が必要である。
人間は宇宙人にも地底人にも勝った。
新人類だかなんだかしらないが、この状況、ひいてはあの少女に負ける要素などは無いと言い切ってもいい。
そう、人間同士が協力できるなら。
「みんなは……まあ考えるまでもないか」
かつてエリと共に戦ってきた仲間。
エリが単身宇宙人にさらわれたときに、危険を省みずに宇宙人の母艦に突撃してきた命知らずで頼もしい仲間。
この場であの四人が勢ぞろいすれば、きっとこの事件も解決できるだろうと彼女は確信している。
「上等よ、正規軍PF隊をこれに巻き込んだことを後悔するがいいわ」
決意の一言と共に、彼女は再び歩きだした。



黒い翼が舞う。
どんな所においても、彼の自由は誰にも侵すことはできない。
あのEDENの中で仕事をしているときでも、何をしているときでも彼の自由は絶対だった。
今、この場で黒い翼を振るわせているときも、彼は"自由"なのだ。
たった一点の要素を除けば。
「……チッ」
首に手を当てれば、冷たい感触が手から伝わってくる。
どこにいても自由な彼を縛る唯一の存在。
この殺し合いに招かれし者が平等につけられている存在。
自分の命を、簡単に奪い去っていく存在。
無機質なそれを引きちぎって、一刻も早く自由を手に入れなければいけない。
この枷をはめたあの少女だけは、絶対に許すわけにはいかない。

黒い翼が舞う。
自由を求め、無機質な枷を砕き、あの少女を打ちのめすために。
誰かと群れるわけでもなく、彼は彼なりのやり方で。
この殺し合いを転覆させようとしていた。



青い炎が舞う。
この殺し合いの場でも、彼が望むことはただひとつ。
宿敵の抹殺、たったそれだけである。
しかし、ここは「殺し合いの場」である。
彼が追い求める宿敵が、いつどこで何者かに襲われるとも限らないのだ。
「待っていろ、京」
来る日も来る日も憎み続け、その手で息の根を止めることだけを考え。
毎日を貪るように、生き続けた。
「貴様は、この俺が殺す」
その相手を、誰かに奪われるなど絶対にあってはいけないのだ。
人生の中で最も憎み続けた相手が、誰かの手によって殺される。
それだけは避けなければいけない。

殺しが認められた場で、ある人物をその手で殺す為に。
彼もまた彼なりに、動き出す。



【D-2/中央部/1日目・朝】
【エリ=カサモト@メタルスラッグ】
[状態]:健康
[装備]:ツァスタバ CZ99(15+1/15、予備弾30)@現実、ソードブレイカー@現実
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)
[思考・状況]
基本:殺し合いの転覆、PF隊を優先的に仲間を募る。

【クール@堕落天使】
[状態]:健康
[装備]:クールのダーツ(残り本数不明)@堕落天使
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:自由を取り戻すため、首輪を解除し少女を殺す。

【八神庵@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:草薙京を最優先的に殺す。
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009:日常とミステイク
時系列順
011:ある一般人の苦悩
投下順
始動
エリ=カサモト
034:は?
クール
035:Going to the Freedom
八神庵
028:お前の態度が気に食わない

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