俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

「はぁ……よりによって、か」
溜息と共に、落胆の声を漏らす。
説教を垂れた後、颯爽と町から抜け出したのがこうも裏目に出るとは。
こんなことなら村に留まって置けばよかったか。
いや、今更そんなことを考えても仕方がない。
全く、運命というのは厄介なものだ。
「どこまでも面倒な奴だな、てめェはよ……」
気だるそうに手櫛で髪をかきあげながら、京は少し離れた先にいる宿敵へと悪態をつく。
それに答えるように宿敵、八神庵も不気味な笑いを浮かべながら自分の宿敵へと答える。
「……こんなにも早く貴様を殺せるとはな」
殺し合いという空間に放り込まれ、ここがどこか分からない状況に置かれながらも、早々に宿敵に出会うことが出来た。
それは庵にとってはこの上ない幸運。
長きに渡る血の因縁、それと共に目の前の憎き男を殺すことが出来る。
それを考えるだけで血が沸き、心が躍り出す。
逆に京にとってはこの上ない不運。
この殺し合いを生き抜き、完全者ミュカレを倒すと志している彼にとって、なりふり構わず襲ってくる八神庵は面倒この上ない存在だった。
出会えば戦闘になることは必至、体力の消耗を余儀なくされる。
可能な限り体力の消耗を押さえようと考えていた矢先の登場。
正直、不運以外の何者でもなかった。

話が通じる相手ならばいい。
完全者ミュカレを倒すまで協力してくれ、なんて台詞が通用する相手ならばどれだけ楽だったか。
現実はそうはいかない、なぜなら目の前の男……八神庵という男は。
「ククク……京、ここに貴様の骸で墓を作ってやろう!」
自分を殺すことに、異常なまで執着している人間。
宿敵の言葉に耳を貸すはずもなく、ただ目の前の命を狩らんと迫ってきていた。

先手は庵、手から紫の炎が放たれる。
ありとあらゆる闇を払う紫炎が、地を駆け面を焦がしながら京へと向かう。
それを打ち消すように、京も手から炎を放つ。
庵の紫の炎の対をなす闇を払う赤の炎が、地を駆け面を焦がしながら紫の炎へと向かう。
ぶつかり合う炎が混ざりながら空気へと融けだしていく。
それが開戦の合図と言わんばかりに大きく地面を蹴り、相手へと飛びかかっていく。
京は拳を、庵は平手を、上から下に大きく降り抜き、空気を裂きながら炎を生み出す。
生み出された炎と炎の力に怯むことなく、両者は攻撃を続けていく。
京の拳が庵の胴を捕らえ、庵の爪が京の胴を捕らえ、一撃一撃が交差するようにお互いの体を傷つけていく。
決定的な一打が与えられないまま殴り合っていた両者が、同じタイミングで後ろへと退く。
「どうした、京。そんなことではこの俺は倒せんぞ?」
「テメーに全力出して構ってられるほど、こんな状況じゃ余裕もねえよ」
互いに余裕をぶつけあい、不敵な笑みを浮かべ直す。
今ここで京を倒すことに全力の庵に対して、京は今後に向けて体力を温存するように動いている。
全力ではないのに余裕の笑みを浮かべる京に、庵は改めて苛立ちを覚える。
「フン、そんなに死にたいのならばこの俺がここで引導を渡してやる」
「そうも行かねぇよッ……!」
真っ直ぐに駆けだしてきた庵を迎撃するように、京は地を蹴り空へと飛び上がる。
斧のように振り下ろす両足が、的確に庵の頭へと叩きつけられていく。
それを迎撃するように庵も飛び上がりながら炎をまき散らす。
お互い、一歩も引くことはない。
ぶつかり合う闘志が、戦いの場で大きく舞い上がる。
「チッ、相変わらずめんどくせえな! そろそろ寝てろよ!」
「フン、そういう貴様も息が上がっているぞ? 死ぬ前に辞世の句でも考えた方が良いのではないか?」
お互いに呪詛のような言葉を吐きながら、再び地を蹴りだして行く。
両者が狙うのは最大の一撃、この戦いの幕を引くにふさわしい一撃。
"遊びは終わりだ"と、告げるように。
京は拳を、庵は平手を。
この戦いで一番大きな弧を描き、渾身の一撃を叩き込んだ。



その対象は、空気。
紫と赤の炎が焦がすのは人体ではなく、数発の鉛の弾だった。
「あァ? 何だテメぇら殺し合ってんじゃねぇのかァ?」
赤いコートにサングラスの乱入者、トリガーは銃を向けながらつまらなそうに言い放つ。
だが対象の両者はトリガーの事など気にも止めないまま、お互いを横目で睨みつける。
「……どういうつもりだ八神」
「何がだ」
「今の銃弾の狙いは俺だった。
 テメぇは俺に一撃を叩き込む事ができた、だがテメぇはしなかった。
 それどころか俺を助けるってのは、一体何が狙いだ?」
「そんなくだらん事か」
数発の銃弾が襲いかかる先は京の頭だけだった。
低姿勢の庵より狙いやすかったのだろう、トリガーは数発の連射を京に向けて放った。
京もなんとかその銃弾に反応することはできたものの、溶かすことができたのはそのうちの一発。
庵の援護がなければ残りの数発によって致命傷を負っていだろう。
そんな中、よもや自分が死ぬことが望みのはずの庵が助けに入った。
何故か、と問えば庵は鼻を鳴らしながら京に言い放った。
「いいか京、貴様の命を奪うのはこの俺だ。それだけは何人たりとも邪魔はさせん」
「そりゃどーも」
京は即座に認識を改める。
この八神庵という男は、自分、草薙京がただ死ぬだけでは満足できない。
自分の両の手で、草薙京という一つの命を狩り取らなければ気が済まないということだ。
正直言って嬉しくない回答に、二つ返事で答える。
「ウヒャヒャヒャ!! いいねいいねェ!! おホモだち同士で仲が宜しいようで!
 甘酸っぱい友情ってか!? 甘くて胃もたれしてゲロ吐きそうだぜ!!」
乱入者、いや第三者からみれば妙な友情を持ったムサ苦しい男の集いに見えるだろう。
「お前を殺すのは俺だ」という言葉は、組み替えれば愛情表現にも取られかねない。
病んでると言うより、クレイジーの領域に入っているそれへの指摘に、特に返す言葉も見つからない。
一つため息をついた後、京は横目で見つめ直して庵へと合図を送る。
「いくぜ八神、アレを黙らせるぞ」
「貴様に言われなくとも、この俺の邪魔をする奴は殺すだけだ」
面倒なのを説教したと思えば、この世でもっとも面倒な人物に出会い、さらにそれを上回る面倒な人物に出会った。
正直頭を抱えたくなるが、どうやらそんな暇もないらしい。
全くこの殺し合いというのは、そして待ち受ける運命というモノは面倒だなと感じる。
「ああ来いよ! 俺が全身に穴あけてその甘ったるいシロップ抜き出してやっからよぉ! ケケッ、せいぜい足掻きな!!」
ウダウダと頭の中で思考を張り巡らせているうちに、赤いコートの男、トリガーはこちらに銃を向けている。
そして自分よりも先に庵が相手へと駆けだしている。

両者ともに、容赦という単語はない。

そしてここには、殺人という行為に嫌悪感を隠し切れていない自分がいる。
いつか、この気持ちの所為で足元を掬われることがあるかもしれない。
「だったら、燃やしてやるぜ……!」
ならば、殺人を厭わないようになればいい。
あの少女の言うようになるのは癪だが、あの少女の所為で自分が死ぬのはもっと癪だ。
あの少女をブン殴るまでに不必要なモノは、ここで捨てていけばいい。
だから、決心のための"戦い"へと京は向かっていく。

生き残るための道へと。

【C-2/北部平原/1日目・午前】
【トリガー@堕落天使】
[状態]:上機嫌
[装備]:パイファー ツェリスカ(5/5、予備15発)@現実
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)、トレバーの不明支給品(1〜3、武器ではない)
[思考・状況]
基本:殺して生き残る

【八神庵@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:草薙京を最優先的に殺す。
1:邪魔者を始末し、京を殺す。

【草薙京@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らないが、襲い掛かるやつには容赦しない。
1:基本を固めるため、トリガーに対処。
2:庵は……
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026:『ローズのために、がんばってね、お兄様』
時系列順
029:始まりの前、立つべき場所
027:彼は誰かに、詩唄う。
投下順
001:Trigger
トリガー
041:少女には思想を与えられず
010:火星人以下の意思疎通能力
八神庵
042:ただ殺すだけでは満足できないから
011:ある一般人の苦悩
草薙京

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