これまでの動から、一転して静の戦いが始まる。
山頂に陣を構えた
ロードレア国軍は、完全に守りの体勢をとり、
カルディスも容易に手が出せなくなった。
そんな中、山頂から出陣の合図である鬨の声が上がり、これに対して
ロー・レアルス国軍はすぐさま迎撃の準備をとる。
しかし、一向に
ロードレア国軍は動かず、鬨の声の発生位置を探ろうにも、山々に木霊した声はどこから発せられているのか見当もつかず、結局
ロー・レアルス国軍は姿の見えない敵を警戒したまま時間だけが過ぎる。
こんなことが三日三晩続き、山頂から見下ろされた
ロー・レアルス国軍は徐々に疲労を蓄積していった。
将兵の疲れに決戦を焦った
カルディスは、自ら敵陣を視察するが、山の地形を見事に利用した布陣から、正面からの攻撃を断念すると、ローザメナス山脈の名前の由来ともなっているローザメナス山に目をつけた。
8月27日、篝火、キャンプ、旗を残したまま、全軍を3ルートにわけ、闇夜に乗じて密かに移動した
カルディスだが、見渡しのいい高地に到着した
カルディスは、そこで信じられないものを見せられる事となる。
大木を使って作られた「墓」であり、そこには
カルディスの名が刻まれていた。
この時、すべては自分をここにおびき寄せる策だったと
カルディスは悟ったが、次の瞬間には草むらから次々と姿を現す伏兵が、一斉に火矢を放った。
8月27日深夜、
カルディスはこの地で完全包囲され、炎の中で壮絶な戦死を遂げる。
カルディスの戦死によって全軍崩壊した
ロー・レアルス国軍。
ロードレア本陣を目指していた
ザウグも討たれ、殿軍となった
ワイヴァは
バイアラスによって討たれた。
後方の予備部隊として控えていた
レザリアは、敗残部隊と合流すると、本国には敗戦の姿を見せないように、無傷の自軍を全軍の周囲に配置して堂々と帰国した。
レザベリアスの戦いの特徴は、両軍あわせて数十万という大合戦だったにも関わらず、
ヴェリアは袋の中の石からたった一つの玉を掴むかの様に、
カルディス本隊だけを最初からターゲットとしていた。
ロー・レアルス国は
カルディス個人の強烈な個性によって保たれた部分がある。
彼さえ討てば、あとは
ロー・レアルス国は内紛を起こし弱体するというのが
ヴェリアの狙いであった。
巨大な国を正面から討つより、分裂させて各個撃破するという、次の段階を見据えた
ヴェリアの策であったが、この策だけは、もう一人の「先を見据えた男」
メファイザスによって実現を妨げられる事となる。