ラグライナ帝国は、皇帝
セルレディカの元団結し、圧倒的国力・兵力をもって
ガルデス共和国、
クレアムーンを滅亡寸前まで追い詰めていた。本来ならこのまま「巨大な帝国が周辺諸国を併合」の一言だけで済まされる時代で終わる筈であったが、その最終局面において、突如皇帝セルレディカが崩御する。(病の前兆はあったので、暗殺等ではない)
セルレディカには息子はおらず、
ルディ、
セリーナという二人の娘がいた。
ルディは長女だが、権力の地位につくには穢れを知らない聖女であり、逆にセリーナは次女であったが、父であるセルレディカの覇王としての血を受け継いでいた。
セリーナは、帝位に就くことに躊躇ったルディに失望し、自ら帝位の継承を宣言した。それに対して、秩序を重んじてルディこそ帝位に就くべきだと考える一派が、ルディを誘拐同然で連れ出し、彼女を説得、
神聖帝国を名乗った。
こうしてラグライナ帝国は真っ二つに別れ、内乱状態となる。
その隙に、息を吹き返したガルデス共和国、クレアムーンも加わり、四つの勢力の物語がはじまり、この時代が後世においてもなお「物語」として語り継がれることとなる。
覇王として君臨した
セルレディカは、人生において一つだけ大きなミスを犯した。それは、明確な後継者指名を行わなかったことである。確かに長女である「ルディ」を指名すると公言していたが、これはあくまでも口約束であり、はっきりと書状として残していなかった、このことからセリーナは遺言書を捏造、彼女の暴走を招いた一因を作ってしまった。こればかりは、彼が巨大すぎる自分の存在を過信し、口約束でも十分公文書と同じ束縛力を持っていると思い込んでいたミスである。
彼ほど巨大なカリスマにおいても、一度鬼籍に入ってしまえば、その言葉は捏造され、利用されてしまうという「例」を後世に残す結果となってしまった。