「ふぅ…これだけ夜勤が続くとお肌に悪いわねん」
 愚痴をこぼしながらエクセレンは自室に向かっていた。誰もいないシャワールームで汗を落とし、艦の居住エリアの廊下を歩んでいる彼女の足がふと止まった。
「…ラキちゃん?」
 自室の扉に見慣れぬ女性がもたれかかっていたのだ。水色がかった髪に、全てを凍りつかせるような表情。半年前にジョシュア・ラドクリフが連れ帰ってきた、元々自分たちの敵だった女性の姿だった。当初は部隊の人間と幾度となく揉め、その度にジョシュアが周囲をたしなめていたものだ。そんな彼女も、今では表情も随分と柔らかくなり、部隊に馴染んでいる。
「ブロウニング少尉…」
「どうしたの、こんな遅くに。ジョシュア君は?」
「ジョシュアならもう寝ている」
 片手で身体を抱え、部屋の扉にもたれかかりながらグラキエースが答えた。近づいてよくみると、顔がいつもに比べて随分と赤くなっていた。心なしか、汗もかいているようだ。
「気分が悪いの?」
「…そうだ、その事で相談が…ある」
 淡々と答えているように聞こえるが、明らかに様子が変だ。最近、彼女とジョシュアは偵察任務中に機体の機動を乱すことが多くなっている。先日の戦闘訓練中ではミスを連発し、キョウスケが本気で二人を説教したという顛末があったことをエクセレンは思い出した。
「詳しい事はあたしの部屋で聞いてあげるわ。さ、はいったはいった」
 自室のロックを解除し、エクセレンはグラキエースの手を引いて部屋に入った。

「きたない部屋でごめんねぇ」
 グラキエースを椅子に座らせ、エクセレンはベッドに腰をかけた。自動販売機で買った缶コーヒーの蓋を開け、少し飲んでから深呼吸をする。
「ナンブ中尉はどうしたのだ」
「ダーリンはあたしと入れ替わりで哨戒任務にいっちゃったわん…最近、夜のおつき合いもご無沙汰なのよねぇ」
「夜のおつき合いとはなんだ?」
「あら、ラキちゃんってジョシュア君とそういう仲じゃなかったの?」
「そういう仲…というのもよくわからない。第一、夜は睡眠をとるものではないのか?何をどうつきあうのか…?」
 グラキエースの問答を聞き、エクセレンは自分の脳内でチャイムが聡明に鳴ったような気がした。自分の妄…いや、想像が正しければ…。
「ラキちゃん、ここに来てからジョシュア君と仲いいわよね」
「私とジョシュアは…シュンパティアを通じて、相手の様子がわかる」
「相手の様子がわかるのはいいけど…その、どういったらいいのかな…」
 あまり遠回しの言い方をすると、余計にこんがらかってしまう答えしか帰ってこない。そう考えたエクセレンは、ストレートに話を進めることにした。
「ジョシュア君と、キスはした?」
「きす、とはなんだ?」
「互いの唇を重ね合わせる行為のことよん」
「ああ、ブロウニング少尉とナンブ中尉が時々隠れてやっていることだな…私達は、ああいった行為はしていない」
 口に含みかけていたコーヒーを吹きそうになったエクセレン。陰に隠れてやっているのは、かなりディープなキスだ。
「げほっげほっ…そ、そう…キスもまだなの」
「どうしたのだ?」
「いや、なんでも…」
 ティッシュペーパーで口元をふきながらグラキエースを見つめるエクセレン。端正の取れた線の細い顔つきだが、誰が見ても美人であることを否定はしないだろう。むしろ、こんな女性が側にいるのに放っておく男性の方が珍しい。
(ジョシュア君、奥手なのかな…それとも単なる朴念仁?)
「それで、相談なのだが」
「そうそう、それよ」
「実は最近、私の身体が異常をきたしているようなのだ」
「それは…見ればわかるわよん」
 今のグラキエースの表情は、「上気」という言葉がぴったりだ。微妙に苦悶が浮かんでいるようにも見えるが、理由は次の質問の答えを聞けば判る筈だ。
「ラキちゃん、”性欲処理”って判る?」
「せいよく…とはなんだ?」
 全く予想通りの答えを聞き、エクセレンは苦笑した。同じ部屋で寝食を共にしているグラキエースがこうでは、ジョシュアの方がどうなっているか手に取るように判るというものだ。
「ジョシュア君、夜はずっと寝てるの?」
「その筈だが…ああ、そういえば」
「そういえば?」
「時々、私が寝入る前にトイレへ入って、30分程出てこない時がある」
「…」
「ジョシュアがトイレから出てくる数分前になると、身体の異常が最高潮に達するのだ」
「身体がどうなるの?」
「…身体の芯が熱くなる。特に下腹部の内部が」
 グラキエースは目を閉じ、右手で下腹部をそっと押えた。
「とても…疼いて…なんともいえない気分に…なる」
 彼女の表情が変化したことを、エクセレンは見逃さなかった。
「ラキちゃん、貴女の身体は異常をきたしている訳ではないわ」
「え…?」
 グラキエースが目を開けると、眼前にエクセレンの優しい顔があった。普段のおちゃらけ振りからは想像できない、力強い表情だ。
「身体の力を抜いて」
「あ…」
 グラキエースの背後にまわったエクセレンは椅子の調整ノブを引き、リクライニングを最大に効かせた。半ば寝ているような体勢になったグラキエースの太股にそっと手を沿わせる。
「ん…っ!」
 びくんと身体を奮わせるグラキエース。
「ラキちゃん、人間の女の身体ってね…好きな人を迎え入れるために、色々と準備をするのよ」
「好きな…人…」
 エクセレンの手が太股を遡り、和風のコスチュームの隙間からグラキエースの秘所へと浸入した。
「はぁ…ぁ…んんっ!」
 背もたれから跳ね上がるようにグラキエースが身体を反らせた。彼女の秘所はショーツの上からでも判るぐらいに濡れており、割れ目の形がエクセレンの指先にはっきりと伝わってくる。
「全く、ジョシュア君も罪な男の子ね…」
 エクセレンは一気に呼吸が荒くなったグラキエースの正面に回り、固く閉じられている太股に両手をかけた。
「ブロウニング…少尉…」
 じっとりと汗ばんだ太股が、時々小刻みに震えている。
「エクセレン…エクセ姉様と呼びなさい…もっと力を抜いて…」
 少しずつだが、グラキエースの太股から力が抜けていくのが判る。
「エクセ姉…様…」
「私を信じて…そう、その感じよん」
 力が抜け切った事を確認し、エクセレンはグラキエースの太股をゆっくりと開いた。ストッキングも着けていない艶めかしいラインの太股の奥に、真っ白なショーツが秘所を覆っているのが見える。
「さて、と」
「あ…エクセ姉様…何を…」
「ちょっと腰を浮かせて…そうそう、これでOKっと」
 グラキエースが腰を浮かせた瞬間、エクセレンは彼女のショーツを剥ぎ取るようにずり下ろした。

 エクセレンはショーツをグラキエースの足から抜き取った。袴のようなスカートをめくり上げ、膝に手を掛けてゆっくりと彼女の両足を開いていく。
「うわぁ…」
 グラキエースの足がM字形に開き切った時、エクセレンは思わず息を飲んだ。
(同じ女でも、ここまで違うとはねぇ…)
 そこにあったのは、見紛う事無き女性器。バージンのそれが放つ独特のオーラに魅かれ、エクセレンの視線が釘付になってしまう。
「エクセ姉…様」
「あ…ごめんね」
 困惑したような表情を浮かべているグラキエースを見て、エクセレンは我に返った。グラキエースの割れ目は既に愛液で満たされ、彼女の吐息に合わせるかのようにひくひくと蠢いている。それはまるで、来たるべき者を今か、今かと言わんばかりにを待ちかまえているかのようだった。
「…ラキちゃん、怖いの?」
「よく…わからない」
 未体験の事態を理解できないという困惑、そしてこれから何が起こるのかという恐怖感。グラキエースの表情はこれらの感情をストレートに現しているのだろう…目は潤み、今にも泣き出しそうだ。
「大丈夫、大丈夫よ…」
「エクセ…んっ…」
 グラキエースの唇に柔らかい感触が伝わった。
(キョウスケの子供を産んだら…きっとこんな感じなのね)
 それは恋人に対する接吻ではなかった。近い将来授かることになるであろう、自分の子供と接するようなイメージ。
(暖か…い…)
 恐怖に凍りつきかけていた、グラキエースの感情が徐々に溶けていく。心と心が直接触れ合っている、ジョシュアとのやりとりとは違う種類のコミニュケーション…グラキエースの瞳から涙がとめどなく溢れていた。
「…っ…あぁ…」
「もう大丈夫ね?」
 唇を解いたエクセレンが優しい笑みを浮かべ、グラキエースに問い掛けた。
「うん…大丈夫…でも」
「でも?」
「身体がおかしい…今までにないぐらい…疼いて疼いて…たまらない」
 その訴えに答えるかのように、エクセレンはグラキエースの下腹部をゆっくりと撫で始めた。
「っ! ぁあんっ!」
「力んじゃだめよん…力を抜いて…その感覚を拒んじゃだめ」
「そんなこと…言われても…んん゛っ!! んぁあっ!」
 蜜をたたえた壺の縁を拭きとるかのごとく、エクセレンの指が動いている。
「ん…んん…ああ…気分が…変だ…んぁ!」
「気持ちいいでしょ?」
「これが…気持ち…いぃっ!?」
 エクセレンの指が、グラキエースの一番敏感な部分に触れた。小さいが、固くなってしっかりと自己主張をしている陰核をくりくりと玩ぶ。
「うぁっ!! ふぅぁ! あんっ!! ひぃ!!」
 指先の動きに忠実に反応するグラキエースの服に手をかけ、器用にコスチュームの前身ごろをはだけさせていく。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
 はだけたコスチュームから、エクセレンより小振りだが形の良い乳房がこぼれた。グラキエースの呼吸に合わせて上下している乳房の頂きは奇麗な桃色に染り、天井をツンと仰いでいる。それはまるで、エクセレンを挑発しているように見えた。ごくりと唾を飲み込むエクセレン。
(っと、ここで私が攻めてばっかりじゃ意味がないのよね…それに…)
 実は先程からエクセレンも、身体が疼いているのを自覚していた。グラキエースの喘ぎ声を聞くたび、熱いたぎりが下着を濡らしていくのが判るほどだ。
「あたしも、ね…」
 エクセレンは立ち上がってスカートのホックを外し、ジッパーを下げる。上着はそのままでスカートを脱ぎ、手をショーツの中へ乱暴に突っ込んでみた。
「んくっ…んん…」
 自分以外の喘ぎ声に気付き、ふと顔を上げたグラキエース。彼女の目に飛び込んできたのは、前かがみになって苦悶しているエクセレンの姿だった。
「エクセ姉様…一体…」
「っ…だ、大丈夫だから…」
 身体を起こそうとしたグラキエースを押えるエクセレン。体勢を整えると、今度は自分のショーツをするりと下ろした。
「触って、ラキちゃん」
「エクセ姉様の…」
 グラキエースがエクセレンの割れ目に指を差し入れた。じゅぷっと小さな音をたて、人さし指が第2関節のあたりまで割れ目の中に滑り込む。
「あん゛っ!! んんっ!!」
 聞いた事のないような声をあげ、悶えるエクセレンに驚いたグラキエースは思わず指を抜き取った。エクセレンの割れ目から愛液が糸を引きながらほとばしり、ぱたたっと乾いた音を立てて部屋の床に滴り落ちていく。
「駄目よぉ…もっと優しくしないと…」
「す、すまない」
「でも、わかったでしょ…あたしの身体もラキちゃんの身体も、同じものなのよん」
「同じ…私が…人間と…」
 彼女が最初に話していた事を、エクセレンは思い出した…『自分は作られしものだ、破滅の王の人形なのだ』と。
「そうよ、貴女は人形なんかじゃない…あたし達のかけがえのない友人だもの…それに、ジョシュア君に愛されてるじゃない」
「あい、とは…なんだ?」
「それは、あたしが今ここで教えることじゃないわね…それはジョシュア君に教えてもらうのが一番だから」
「ジョシュアに…」
「でも、その思いが成就するまでは…自分を慰めることを覚えなくちゃ、ね」
「自分を…慰める?」
 話を続けながら、エクセレンは下着姿になった。黒を貴重としたブラにガータベルト、ストッキングを身に付けた彼女はベッドに腰をかける。
「女に限らないことなんだけど…ここまで身体が熱くなったら、それを沈める必要があるの」
「沈める…どうやって?」
「本当はキョウスケ…ラキちゃんならジョシュア君がその役割を果たすんだけどね」
 少し寂しそうな笑みを浮かべ、エクセレンが足をゆっくりと開いた。ショーツをつけていな下半身が、グラキエースの眼前に晒される。グラキエースより濃いめの草叢に覆われているが、その隙間にはグラキエースと同じ花園が顔を覗かせていた。
「エクセ姉様…?」
「あたしと同じようにするの…こうやって…」

 右手で乳房を揉みしだきながら、左手で割れ目の周囲をゆっくりと愛撫する。時折爪を軽く立てて、割れ目を掻くように刺激を与えていく。
「うあ…んっ…くぅ」
「そう…ゆっくりと…」
 自分の手の動きを忠実にトレースするグラキエースを見ながら、エクセレンも快楽を嗜んでいる。右手の指先で固くなった乳首を摘み、捻りあげてみた。
「んんっ!!」
「あっ…んぁ!!」
 エクセレンより激しく身体を捩らせ、喘ぎ声を上げるグラキエース。自らの意識と関係なく、刺激を加えるごとにまるで別人のような声が出る。そんな自分自身に驚きながらも、エクセレンの手の動きを真似ることは忘れない。
「エクセ姉様…熱い…身体の芯が…溶けそう…だ」
「ふふ…そろそろいいかな」
 エクセレンは左手の中指を真っすぐ伸ばし、指の腹を割れ目にそって擦り付け始めた。
「んっ…あ…っ! うぅん…あんっ」
「あん…ぁんん…あっ…んっ!」
 指の関節が陰核に当たる度、彼女達の下半身に快楽が燃え上がる。炎から迸る光が背筋から頭の頂きを貫き、その光の影に想い人の顔が見え隠れしていた。
「キョウ…スケ…寂しいよぉ…んっ…あたしを…ぁんっ…抱いてぇ…」
「ジョシュア…んっ…私は…お前が…っ」
 最早エクセレンの導きは必要なかった。無意識の内に、割れ目に添わせていた筈の指がその中心へ出入りしていたのだ。部屋の中に、二人の花園が蠢く淫らな音がひびきわたる。
「ぁ…っ…んんっ…はぁん…」
「あう…んぁ…ああんっ…」
 二人の手の動きが、申し合わせたかのようにシンクロしながらどんどん早くなっていく。エクセレンは乳房を弄っていた手を股間に添え、赤く腫上った陰核を指で摘む。それを見ていたグラキエースも同じように陰核を探し当てる。
「ん゛くぅ…ラキ…ちゃん…」
「エク…セ姉…様…ぁあんっ!」
 顔を上げ、互いに視線を合わせた二人…もう言葉は要らなかった。快楽が沸騰寸前まで高まった瞬間、二人は己の陰核をしごき上げるように強く摘み上げる。
「っ…あ、あ、あああああああんんっ!!!」
「うぁ…んんんんんあああ゛あ゛っ!!!!!
 絶叫した二人の身体と心が同時に弾け、白い膜に包まれていった。
「…部屋を汚してしまった…すまない…んっ」
「全然問題ないわよん…それにしても、こんなに潮を噴くとは…やるわね」
「なんだか…複雑な気分だ…」
 顔を赤らめたグラキエースは、股間をエクセレンにタオルで拭かれている。
「服も汚れちゃったわね、着替えなきゃ…って、そういえばジョシュア君は?」
「ジョシュアなら、今晩はずっと眠っている」
「昼間、キョウスケにこってり絞られてたもんねぇ…」
 まるでお風呂上がりの赤子のように、エクセレンのなすがままになっているグラキエース。恍惚とした笑みを浮かべた表情には、かつての氷を思わせる残虐な印象はない。
「さて、と」
 下腹部を拭かれていたタオルが取り払われた瞬間、彼女の表情が曇った。
「…? どうしたの?」
「あの…もっと」
「もっと?」
「もっと、して…欲しい…ん…ぁ」
 グラキエースの下腹部に目を移すと、割れ目が両手で押し広げられていた。割れ目の奥には、桃色の花びらがエクセレンを欲するようにひくついている。
「…まったく、しようのない子ねぇ」
「すまな…んむぅ!」
 謝罪の言葉が不意に遮られた。重ね合わされた唇の隙間から、何か柔らかいものが押し入ってくる…最初は歯をくいしばって拒んでいたが、柔らかいものはグラキエースの口唇の裏を執拗に刺激してくる。
「ん…んんっ!」
 力が抜け、くいしばっていた歯の檻が徐々に開いていく。充分な隙間ができると、柔らかいものは更に彼女を求めてくる。やがて二人は舌を絡め合い、濃厚な接吻を楽しむようになっていた。
「ん…ふ…んん…」
「…っ…んっ」
 唇を解き、エクセレンが顔を上げる。
「ふぅ…ラキちゃん、物事には順番ってものがあるのよ」
「…何をどうすればいいのか、私にはわからない」
「それを今から教えてあげる」
「頼…ああんっ!」
 エクセレンはグラキエースの乳首を甘噛みし、そのまま軽く引っ張りあげた。
(とりあえず…ジョシュア君のリード無しでもある程度は出来るようにしてあげなくっちゃね)
 グラキエースとジョシュア、そして自分は明日非番であることを思い出したエクセレン。今日の夜は長くなりそうだと思った。

(おわり)


・・・ちなみにその次の朝、密かに一人でパンツを洗っているジョシュアの姿があったそうな。

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