最終更新:ID:ZolE4Pbh2w 2020年04月04日(土) 17:03:10履歴
現代日本。 長崎県壱岐馬である不思議な現象が起きた。
この年。 島の南海岸にある砂浜が、数カ月の間に大きく拡大した。
植物は枯れ、土は崩れ、粒子の細かい白い砂と化した。
その変化は緩やかで、風に乗って砂が運ばれたのか、温暖化による影響か___
ともあれ、現地の人々にも「こういうこともあるのか」と捉えられ、
大きく話題に上ることはなかった。
さすがにおかしい、と気付いたときには...最早ちょっとした砂丘ほどの広さになっていた。
探索者は、この砂丘の調査を目的とする。
砂丘の近くには海洋研究所がある。
この研究所は海に面した山間の高台にあり、砂丘は丁度、裏から森を抜けた方向にある。
普段使う道ではなく、職員達も気付くのが遅れた。
だが、あらためてこの事態の異常さに気付いたのも、この研究所の職員達だ。
すぐさま研究所内ではプロジェクトチームが発足し、砂丘調査の拠点となった。
常識的な範囲でこの調査に関わる者であれば、職業に制限はない。
砂漠化を調査するために呼ばれた地質調査員、海への影響を調べる海洋調査員、
学生、バイト、物見遊山のスポンサー...
壱岐に集まり、一路研究所を目指すことになる。
この年。 島の南海岸にある砂浜が、数カ月の間に大きく拡大した。
植物は枯れ、土は崩れ、粒子の細かい白い砂と化した。
その変化は緩やかで、風に乗って砂が運ばれたのか、温暖化による影響か___
ともあれ、現地の人々にも「こういうこともあるのか」と捉えられ、
大きく話題に上ることはなかった。
さすがにおかしい、と気付いたときには...最早ちょっとした砂丘ほどの広さになっていた。
探索者は、この砂丘の調査を目的とする。
砂丘の近くには海洋研究所がある。
この研究所は海に面した山間の高台にあり、砂丘は丁度、裏から森を抜けた方向にある。
普段使う道ではなく、職員達も気付くのが遅れた。
だが、あらためてこの事態の異常さに気付いたのも、この研究所の職員達だ。
すぐさま研究所内ではプロジェクトチームが発足し、砂丘調査の拠点となった。
常識的な範囲でこの調査に関わる者であれば、職業に制限はない。
砂漠化を調査するために呼ばれた地質調査員、海への影響を調べる海洋調査員、
学生、バイト、物見遊山のスポンサー...
壱岐に集まり、一路研究所を目指すことになる。
PC後日談
PLより
秋元啓吾は定位置である崖の淵に腰掛けた。
眼前に広がるは満月の空と、月明かりを柔らかく反射し、穏やかに波打つ海だった。
背後の木には大五郎という名前の馬がくくりつけられている。
寛容な気質のこの栗毛は、ふたつきりの目を持ち、月見酒に付き添うだけの度量を持ち合わせる、秋元の愛馬である。
あの後、行方不明者の帰還は喜びを持って迎えられた。
失踪の言い訳に苦心しつつ、幸いなことに職を失う危機は何とか回避できた。
肋骨が折れていたことが判明し入院・強制禁酒生活を余儀なくされたが、特に後遺症もなく退院することが出来た。
…ただ一つを除いて。
ポン、と小気味いい音が静かな夜に響く。
今日携えてきたのは「菊正宗」。
辛口やや淡麗。口当たりがやさしく飲みやすい、香り高く芳醇な日本酒だった。
元々好んでよく飲んでいたが、秋元にはこの酒に思い入れがあった。
つい、と一口含み、ふっと笑う。
「…いい酒だけど、”オルフェ”や”ベガ”と並べるとやっぱミスマッチだったな」
気ままな手酌で飲み進めながら、頭に浮かぶのはあの子のことだった。
あの日スキットルに入れていた酒は何だっただろうか。
確か、アルコール度数の高い酒を入れていた気がする。
保存の観点からすればよかったかもしれない。
あの子が大人になって、スキットルを開ける日は来るのだろうか。
秋元に確かめるすべはなかった。
「…あ」
ぱたぱた、と盃に水滴が落ち、波紋を作る。
ただ一つの後遺症は、こうして酒を飲み、月を眺め、シンの歌を歌い、感傷に浸る度に目から涙が溢れることだった。
元々明るく楽しく酔うことをモットーとしていたが、この場所に来るとどうにも感傷的になってだめだった。
「あー…情けないなぁ」
自嘲して笑い、ず、と鼻をすする。
秋元は、シンのような勇者にはならなかった。
昼は旅人を案内し、夜は酒を飲む。
そうして、この島で生きていく。
眼前に広がるは満月の空と、月明かりを柔らかく反射し、穏やかに波打つ海だった。
背後の木には大五郎という名前の馬がくくりつけられている。
寛容な気質のこの栗毛は、ふたつきりの目を持ち、月見酒に付き添うだけの度量を持ち合わせる、秋元の愛馬である。
あの後、行方不明者の帰還は喜びを持って迎えられた。
失踪の言い訳に苦心しつつ、幸いなことに職を失う危機は何とか回避できた。
肋骨が折れていたことが判明し入院・強制禁酒生活を余儀なくされたが、特に後遺症もなく退院することが出来た。
…ただ一つを除いて。
ポン、と小気味いい音が静かな夜に響く。
今日携えてきたのは「菊正宗」。
辛口やや淡麗。口当たりがやさしく飲みやすい、香り高く芳醇な日本酒だった。
元々好んでよく飲んでいたが、秋元にはこの酒に思い入れがあった。
つい、と一口含み、ふっと笑う。
「…いい酒だけど、”オルフェ”や”ベガ”と並べるとやっぱミスマッチだったな」
気ままな手酌で飲み進めながら、頭に浮かぶのはあの子のことだった。
あの日スキットルに入れていた酒は何だっただろうか。
確か、アルコール度数の高い酒を入れていた気がする。
保存の観点からすればよかったかもしれない。
あの子が大人になって、スキットルを開ける日は来るのだろうか。
秋元に確かめるすべはなかった。
「…あ」
ぱたぱた、と盃に水滴が落ち、波紋を作る。
ただ一つの後遺症は、こうして酒を飲み、月を眺め、シンの歌を歌い、感傷に浸る度に目から涙が溢れることだった。
元々明るく楽しく酔うことをモットーとしていたが、この場所に来るとどうにも感傷的になってだめだった。
「あー…情けないなぁ」
自嘲して笑い、ず、と鼻をすする。
秋元は、シンのような勇者にはならなかった。
昼は旅人を案内し、夜は酒を飲む。
そうして、この島で生きていく。
遅筆で最後に…というのもありますが、
やっと入手したBGMを聞き、ログと皆様の後日談を読みながらお酒を飲んでいたら出遅れました。
割とダメな感じのお兄さんで挑みましたが、振ったナビゲートは全てS。案内人としては割と優秀だった…?
RPで確保した酒入スキットルがラストで活きて驚きました。
古今東西色んなカワイイシンがいると思いますが、大きなジャケットを着てリボンをつけて、スキットル提げてキセキを歌うシンはうちのシンだけ。
羅列するとカオスですが最高に可愛いシンだと思います。
蒲谷さんは浪漫・日本刀の所作が渋くて好きでした。元ヤンキックといい、探索者の歴史が伺える技能が印象深く残っています。
空木さんは技能は仕事人・戦闘は更に「必殺」が付きそうなイメージで、堅実な職人さんでしたね。○ルタさんっぽいイメージが拭えません。かっこいいリケジョでした。
鬼頭さんはシンのことを大事に大事に、越路さんと違った観点で気にかけていた姿が思い出深いです。皆さんおっしゃっている葛藤のシーン、好きです。後日談…食うに困ったら島に来てね…
越路さんはもうひとりの先生として仲良くなれて嬉しかったです。旗は酒席でボッキリいきそうな気もしますが!
寝落ち3名・泣き上戸2名の酒盛りは、きっとどたばただけれど楽しい思い出になりそうです。
この素敵な世界へ誘ってくださったKPのがる様、PLの皆様、本当にありがとうございました。
Fチームの皆様のこれからのご活躍をお祈りしております。
お暇が出来たら壱岐で待つアル中とともに酒席を囲んでいただけると嬉しいです。
最後の一言はこれしかない。
「うちのシンが一番可愛い」
やっと入手したBGMを聞き、ログと皆様の後日談を読みながらお酒を飲んでいたら出遅れました。
割とダメな感じのお兄さんで挑みましたが、振ったナビゲートは全てS。案内人としては割と優秀だった…?
RPで確保した酒入スキットルがラストで活きて驚きました。
古今東西色んなカワイイシンがいると思いますが、大きなジャケットを着てリボンをつけて、スキットル提げてキセキを歌うシンはうちのシンだけ。
羅列するとカオスですが最高に可愛いシンだと思います。
蒲谷さんは浪漫・日本刀の所作が渋くて好きでした。元ヤンキックといい、探索者の歴史が伺える技能が印象深く残っています。
空木さんは技能は仕事人・戦闘は更に「必殺」が付きそうなイメージで、堅実な職人さんでしたね。○ルタさんっぽいイメージが拭えません。かっこいいリケジョでした。
鬼頭さんはシンのことを大事に大事に、越路さんと違った観点で気にかけていた姿が思い出深いです。皆さんおっしゃっている葛藤のシーン、好きです。後日談…食うに困ったら島に来てね…
越路さんはもうひとりの先生として仲良くなれて嬉しかったです。旗は酒席でボッキリいきそうな気もしますが!
寝落ち3名・泣き上戸2名の酒盛りは、きっとどたばただけれど楽しい思い出になりそうです。
この素敵な世界へ誘ってくださったKPのがる様、PLの皆様、本当にありがとうございました。
Fチームの皆様のこれからのご活躍をお祈りしております。
お暇が出来たら壱岐で待つアル中とともに酒席を囲んでいただけると嬉しいです。
最後の一言はこれしかない。
「うちのシンが一番可愛い」
PC後日談
PLより
そう言えばさ、あれ。
──あれ、とは?
ほら、君にこの前調査に参加してきて欲しいって頼んだじゃん?結局、原因?みたいなのが突然なくなっちゃったみたいで調査とかそれどころじゃなくなったらしいけど。
──ああ。それがどうかしましたか。
あれ、なんでああなっちゃったんだろうね。
──さあ。
ボクも突然調査が打ちきりにされちゃったもんだから、映画の方向性が完全に宙ぶらりんで困ってるんだよね。何か良い案ない?なんて。
──ファンタジー映画、なんてどうでしょう。
ほう?
──砂漠化の元凶は、世界を憎み砂に還そうとする悪魔。偶然の巡り合わせで出会った5人の若者が、唯一そいつを倒す力を持ったヒロインと共に真実を探り、世界を救うべく悪魔に立ち向かう…とか。
キミらしくない発想だね…。居なくなってた間、一体何があったんだい?
──あくまでも思い付いた事を言った迄です。別に、特に何もありませんでしたよ。
ふうん…?
──付け加えるとするなら。その5人は殆ど戦闘はアマチュアなんです。それでも、ラストシーンでは、皆ヒロインを守り抜くべく必死に戦うし、ヒロインも、皆を、そして世界を守るべく戦うんです。皆、何処かに弱さや脆さを抱えながらも、次第に強くなって、頼れる存在になるんです。
……っふふ。
──どうしたんですか。
いやあ、成る程ね?そういう展開のファンタジーものって割とよくある話だけど、案外その方向性も悪くないかもな、ってね。そうだな、君の案にひとつ付け加えるとするなら…
──するなら?
その5人は全員戦闘に関してはアマチュアだとは言ったけど、一人ぐらい、武道の心得があるキャラクターがいてもいいかもね。例えば…元不良の現道場師範代、とか。
──それ…。
はっはっは。他のキャラだって“彼”に負けない位キャラ立たせるつもりだよ?と、言うわけでもっと君の案を聞かせて欲しいな。勿論、聞かせてもらっただけのお礼はするよ。
──監督、からかっていませんか。
おっと、そんな怖い顔をしないでくれ。ストーリー案を話している時の君の顔が珍しく生き生きしていたものだから、つい、ね。
──……。
君は居なくなってた間何もなかったとは言うけど、そんな事はないよね。これでもボク、知り合いに君みたいな経験をしてきた人が多いんだ。さ、思い出話を聞かせておくれ。それだけ映画に厚みも増す。
──全く、監督は腹の読めない人だ。
よく言われるさ。
──あれ、とは?
ほら、君にこの前調査に参加してきて欲しいって頼んだじゃん?結局、原因?みたいなのが突然なくなっちゃったみたいで調査とかそれどころじゃなくなったらしいけど。
──ああ。それがどうかしましたか。
あれ、なんでああなっちゃったんだろうね。
──さあ。
ボクも突然調査が打ちきりにされちゃったもんだから、映画の方向性が完全に宙ぶらりんで困ってるんだよね。何か良い案ない?なんて。
──ファンタジー映画、なんてどうでしょう。
ほう?
──砂漠化の元凶は、世界を憎み砂に還そうとする悪魔。偶然の巡り合わせで出会った5人の若者が、唯一そいつを倒す力を持ったヒロインと共に真実を探り、世界を救うべく悪魔に立ち向かう…とか。
キミらしくない発想だね…。居なくなってた間、一体何があったんだい?
──あくまでも思い付いた事を言った迄です。別に、特に何もありませんでしたよ。
ふうん…?
──付け加えるとするなら。その5人は殆ど戦闘はアマチュアなんです。それでも、ラストシーンでは、皆ヒロインを守り抜くべく必死に戦うし、ヒロインも、皆を、そして世界を守るべく戦うんです。皆、何処かに弱さや脆さを抱えながらも、次第に強くなって、頼れる存在になるんです。
……っふふ。
──どうしたんですか。
いやあ、成る程ね?そういう展開のファンタジーものって割とよくある話だけど、案外その方向性も悪くないかもな、ってね。そうだな、君の案にひとつ付け加えるとするなら…
──するなら?
その5人は全員戦闘に関してはアマチュアだとは言ったけど、一人ぐらい、武道の心得があるキャラクターがいてもいいかもね。例えば…元不良の現道場師範代、とか。
──それ…。
はっはっは。他のキャラだって“彼”に負けない位キャラ立たせるつもりだよ?と、言うわけでもっと君の案を聞かせて欲しいな。勿論、聞かせてもらっただけのお礼はするよ。
──監督、からかっていませんか。
おっと、そんな怖い顔をしないでくれ。ストーリー案を話している時の君の顔が珍しく生き生きしていたものだから、つい、ね。
──……。
君は居なくなってた間何もなかったとは言うけど、そんな事はないよね。これでもボク、知り合いに君みたいな経験をしてきた人が多いんだ。さ、思い出話を聞かせておくれ。それだけ映画に厚みも増す。
──全く、監督は腹の読めない人だ。
よく言われるさ。
やっと後日談が書き終わりました。
これだけ日にちが経っていても、未だに記憶に強く残る『白夜の歌』…シナリオと、KPさんと、PLの皆様が組み合わさってのこの素晴らしいセッションだったのだと思います。
全て印象に残っているシーンばかりでしたので、特にこれ、というシーンを挙げるのは難しいですが…強いて挙げるとすれば、ラストバトルでしょうか。圧倒的な強大さを持ち、心を折らんとする相手に立ち向かうシンと探索者達。その構図が凄くドキドキして、とても楽しかったです。
秋元さんはオルフェに酒の名前をつけていましたね(笑)。あのブレない酒好きキャラが好きでしたし、シンの事を「最初で最後の自分の生徒」と呼んでいたことにグッときました。
空木さんは精神的にも肉体的にも(!?)強い子でしたね。技能面でも活躍して下さった場面が多かったですね。ラストシーン、リケジョ強し。
鬼頭さんはソロRPが素敵でしたね。シンを想うが故のあの葛藤ぶり、見ていてとても胸に来ました。ラストでは他のPCも庇ってた筈なのに、やけに鬼頭さんの庇いは格好良く見えてしまったのはその補正故か。
越路さんは流石先生、シンとの関係性が見ていてとてもほのぼのしていました。
蒲谷は個人的には受け身取れて欲しかったしダメージがMAキック>>日本刀だったのでおい本職と思ってしまいました。4d6+1d4ってどこの銃火器なのだろうか。
多分彼も判然としない思いはあったと思います。おそらくまた鍛練を積み直すことでしょう。
蒲谷としてはまず間違いなく、他探索者さん達やシンの事を「精神的にも強い人達」と思っている事と思います。恐らく初期は「武道経験者少ねぇな?」位の感覚だったと思うので。皆で今度飲みに行って泣き上戸×2とぶっ倒れ×2を出来上がらせてNPCを困らせに行きましょう。絶対絵面が面白い。
それでは、ここらへんで筆を置くことにしましょう。皆様、ありがとうございました。
最後の一言は…十つ目かわいいよ十つ目。
これだけ日にちが経っていても、未だに記憶に強く残る『白夜の歌』…シナリオと、KPさんと、PLの皆様が組み合わさってのこの素晴らしいセッションだったのだと思います。
全て印象に残っているシーンばかりでしたので、特にこれ、というシーンを挙げるのは難しいですが…強いて挙げるとすれば、ラストバトルでしょうか。圧倒的な強大さを持ち、心を折らんとする相手に立ち向かうシンと探索者達。その構図が凄くドキドキして、とても楽しかったです。
秋元さんはオルフェに酒の名前をつけていましたね(笑)。あのブレない酒好きキャラが好きでしたし、シンの事を「最初で最後の自分の生徒」と呼んでいたことにグッときました。
空木さんは精神的にも肉体的にも(!?)強い子でしたね。技能面でも活躍して下さった場面が多かったですね。ラストシーン、リケジョ強し。
鬼頭さんはソロRPが素敵でしたね。シンを想うが故のあの葛藤ぶり、見ていてとても胸に来ました。ラストでは他のPCも庇ってた筈なのに、やけに鬼頭さんの庇いは格好良く見えてしまったのはその補正故か。
越路さんは流石先生、シンとの関係性が見ていてとてもほのぼのしていました。
蒲谷は個人的には受け身取れて欲しかったしダメージがMAキック>>日本刀だったのでおい本職と思ってしまいました。4d6+1d4ってどこの銃火器なのだろうか。
多分彼も判然としない思いはあったと思います。おそらくまた鍛練を積み直すことでしょう。
蒲谷としてはまず間違いなく、他探索者さん達やシンの事を「精神的にも強い人達」と思っている事と思います。恐らく初期は「武道経験者少ねぇな?」位の感覚だったと思うので。皆で今度飲みに行って泣き上戸×2とぶっ倒れ×2を出来上がらせてNPCを困らせに行きましょう。絶対絵面が面白い。
それでは、ここらへんで筆を置くことにしましょう。皆様、ありがとうございました。
最後の一言は…十つ目かわいいよ十つ目。
PC後日談
PLより
「呉羽ちゃん、リボンどうしたの?」
長崎県壱岐島から日常に戻って来た後、先輩にお土産を渡した後の第一声がそれだった。
わたしはちょっと苦笑する。砂漠化現象について聞かれるのだろうと身構えていたから、ちょっと出鼻をくじかれた気分になった。
「お友達に渡してきたんです」
「でもそれ、お母さんの形見って言ってなかったっけ?」
妙なことを覚えているものだ。レポートの締め切りはよく忘れていたように思うのだけれど。
「そうでしたっけ」
曖昧に笑ってその場を取り繕う。言葉を尽くしても経験した出来事の1割すら語ることができないかもしれない、と思ったのだ。
先輩はだいぶ怪訝そうだったけれど、お土産の椿油が大層お気に召したのか包装の中身を開けてからはリボンのことについて重ねて訊いてくることはなかった。
スマートフォンを出して、お土産を渡す人のリストを開く前に壁紙を見る。
島を出る前にFチームの5人と佐古博士で撮った写真がそこに映し出されていた。
飲み会のことはひとまず記憶から都合良く消しておくとして、その写真を見ればチームの他の4人や「彼女」と過ごしたほんのひと時が、優しい時間が想起されて、胸の内が暖かくなるような、それでいて何だか寂しいような気分になる。
数分放心していたらしく、人とぶつかって我に返った。
思い出したようにリストの先輩の名前の横にチェックマークを付けて、スマートフォンをしまう。
「彼女」の写真を撮れなかったのはもしかしたら良かったのかもしれない、と少しだけ思った。
長崎県壱岐島から日常に戻って来た後、先輩にお土産を渡した後の第一声がそれだった。
わたしはちょっと苦笑する。砂漠化現象について聞かれるのだろうと身構えていたから、ちょっと出鼻をくじかれた気分になった。
「お友達に渡してきたんです」
「でもそれ、お母さんの形見って言ってなかったっけ?」
妙なことを覚えているものだ。レポートの締め切りはよく忘れていたように思うのだけれど。
「そうでしたっけ」
曖昧に笑ってその場を取り繕う。言葉を尽くしても経験した出来事の1割すら語ることができないかもしれない、と思ったのだ。
先輩はだいぶ怪訝そうだったけれど、お土産の椿油が大層お気に召したのか包装の中身を開けてからはリボンのことについて重ねて訊いてくることはなかった。
スマートフォンを出して、お土産を渡す人のリストを開く前に壁紙を見る。
島を出る前にFチームの5人と佐古博士で撮った写真がそこに映し出されていた。
飲み会のことはひとまず記憶から都合良く消しておくとして、その写真を見ればチームの他の4人や「彼女」と過ごしたほんのひと時が、優しい時間が想起されて、胸の内が暖かくなるような、それでいて何だか寂しいような気分になる。
数分放心していたらしく、人とぶつかって我に返った。
思い出したようにリストの先輩の名前の横にチェックマークを付けて、スマートフォンをしまう。
「彼女」の写真を撮れなかったのはもしかしたら良かったのかもしれない、と少しだけ思った。
PC後日談
鬼頭 拓 後日談
都会の汚れた空にあっても、月は人々を見下ろして空に浮かんでいる。
鬼頭は空に浮かぶ月を見るたびに、否応なしに思い出すのだ。
全ての命を呪って、死という名の祝福を振り撒いた無貌の死神と、呪詛を一身に受けながら希望の歌を世界に届けた愛すべき少女のことを。
そして、少女に降りかかる火の粉を払った5人の旅人たちを。
世界を救う旅が終わってから、既に一年の月日が過ぎようとしていた。
鬼頭のその後の生活は決して楽なものではなかった。
当時勤めていた派遣バイトは数ヶ月の無断欠勤でクビになっていた。住処にしていたアパートの一室は当然の如く新しい住人が入居してしまっていた上に、家財の一切を捨てられてしまっていたので、生きていくためには新しい仕事と家が必要だった。
そう多くはない方々の知り合いに頭を下げ、どうにか貰えた仕事はビルの建設の下請け業者のさらに下請けの仕事だった。
鬼頭は今日も今日とて、名前すら知らない大柄な現場監督と、声だけは立派な先輩作業員に罵倒にも似た檄を飛ばされながら、数十キロはくだらない資材を担いでは運び、担いでは運んでいく。まだ若いとは言え、単純作業ではあるが長時間の運搬はかなりの重労働だった。
いつも仕事が終わる頃には、日もとっぷりと暮れてしまって、心身ともに疲れ切ってしまって体が鉛か鉄のようになっていた。
そうして電車に揺られ、今の住処であるボロのアパートに辿り着く頃には何もする気が湧いてこない。近頃の鬼頭の日常における少ない楽しみは、駅からの帰り道にある小さな弁当屋の安いが美味い弁当と、弁当の付け合わせの妙に美味いポテトサラダ、そして、不器用なのか釣銭を返すときに手を握って渡す若い女性店員だけだった。
「今日もからあげ弁当か……。チクショウ……デラックスにすればよかった」
金がないのもあって、鬼頭は日頃から倹約を心がけているため、弁当屋のメニューの中でも一番リーズナブルな値段のからあげ弁当しか頼んだことはない。しかし、ふとひもじさや寂しさを感じると、こうした軽口で自身を慰めるのが癖になってしまっていた。
熱いシャワーでベタつく汗を流すと、あっという間に弁当をかき込んで、コップ一杯の麦茶をぐっと飲み干す。火照った頭が冷えた麦茶でツンと痛んだ。
鬼頭はごみ捨てと洗い物もそこそこに、作業着を脱ぐことも忘れ、万年床になっている薄い布団に倒れこむ。すると、自然と目線が下がってちゃぶ台に置かれたカレンダーが目に入った。
「明日は、二週間ぶりの休みか……」
小さなカレンダーの明日の日付には、絶対に忘れないように赤い丸が何重にも書き込まれていた。
鬼頭はふと気づくと、知らない砂漠に立っている。
ぼんやりとした思考とは逆に、体は意志を持ったように強く砂を踏みしめて進んでいく。時折、砂丘の真ん中にただ一人ぽつんと立ち止まると、その度に懐から取り出したボロボロのコンパスと汚れた地図を見比べては、重い荷物を背負い直して、知らない何処かへと、しかし目的を持った足取りでゆっくりと歩みを進めていく。
そのうちに砂漠は次第に姿を変え、穏やかな潮騒を奏でる海辺と広い砂浜になった。その砂浜の先に見える大きな河口から流れに逆らって進み、陽の光を受けて輝く清らかな川辺と、むせ返りそうなほど緑豊かな木々の中を踏み分けて進んでいく。
歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて―――。
どれだけ歩いたのかすらわからなくなるほどに歩いた頃、鬼頭の目は揺らめく陽炎の先に朧げな白い姿を捉えた。ゆっくりと歩む奇妙なラクダのような生き物の背に乗り、その首元には銀色のスキットルをぶら下げ、伸びた白い髪を淡い黄色のリボンで束ねた少女だ。少女は何処かで聞いた希望の歌を口ずさみ、その身には幾分か体に合ってきた緑色のジャケットを羽織った少女だった。
鬼頭はその姿を認めると、一も二もなく走り出す。背負っていた荷物も何もかもをその場に投げ捨てて、その陽炎の先に夢中で手を伸ばして叫ぶ。
「シン、待ってくれ! オレも連れていってくれ―――」
ぐんぐんと迫るその影が、鬼頭の声に反応したのか、こちらをゆっくりと振り返ろうとしている。その赤い瞳が鬼頭を捉え―――。
鬼頭が目を覚ますと、布団の上に寝転んだまま、天井に向かって夢中で手を伸ばしている。傍らには開いたままの携帯電話が転がっていて、状況から察するに、どうやらメールをチェックしている間に寝落ちしてしまっていたらしい。
鬼頭は言いようのない空しさに胸を詰まらせながら、重い体を起こすと、立ち上がって窓辺へ向かう。そして、小さな窓をからからと開いて外の景色をぼんやりと眺めた。
窓の外は今も夜の帳が落ちている。街は白い月に照らされて、穏やかな眠りについているようだった。
時計をちらりと見ると、時刻は午前3時を回った頃。夜が明けるにはまだ早い。
鬼頭は窓辺から夜空に浮かぶ月を見つめると、ゆっくりと月を雲が覆っていった。
静かに目を伏せると、先ほど見た夢の内容を反芻するように思い返す。見知らぬ土地を旅して、シンに再会する夢。もう幾夜も繰り返し見た夢だった。
「どうして、オレはあのときシンについていかなかったんだ……。シンがやりたいことをするときは、嫌って言ってもついて行くって、そう言ったはずなのに……」
鬼頭はシンと別れて現世に戻るとき、彼女と共に行かなかったことを後悔し続けていた。その拭いきれない後悔が後ろ髪を引くように、あの夢を見せているのだろうと、頭では理解してはいるが、だからと言って割り切れるものではなかった。
鬼頭には、世界の価値がわからない。報道番組で流れるのはいつも暗いニュースだけだ。
今日もどこかで善人面の悪人が弱者から全てを奪い、国を追われた難民が飢えに苦しみ、伐採で住処を失った動物が山から降りて撃ち殺される。
シンを失って取り戻したはずの現世を、鬼頭は心のどこかで汚いものと拒み続けている。
世界を救った旅から一年が経った今も、鬼頭拓という小さな男の心は白夜の世界に留まったまま、後悔という袋小路の奥底でゆっくりと死んでいた。
『いの……生きたい、生きたい、生きたいと、願ってた―――』
「……? この声は、まさか」
鬼頭が振り返ると、彼の持ち物の中でも唯一の高級品である音楽プレイヤーが勝手に起動し、録音された音楽を再生していた。
旅の後、佐古の好意でICレコーダーに残っていたシンの歌をダビングしたものを貰っていたが、その他には何も音楽プレーヤーには入っていない。
つまりそれはシンの歌のはずだった。しかし、それはシンの声ではあるようだが、聞き覚えのない曲だ。旅の途中で聞いたシンの歌であれば、鬼頭は全て覚えている。
混乱し、その場に立ち尽くす鬼頭を余所に、音楽プレーヤーは聞き覚えのないシンの歌声を再生し続ける。
それが奇跡なのか、はたまた偶然の産物なのかはわからない。しかし、鬼頭はその歌声は確かにシンのものであると、心で確信できた。
あれから時が経ちさらに成長したのか、幾分落ち着いた様子のシンの歌声が夜の冷たい空気にゆっくりと広がると、夜風で冷えた鬼頭の体に、芯から温まるような感覚を与える。
そして、別れへの後悔、現世への拒絶、そしてゆっくり死んでいた心がだんだんと薄れていき、その開いた穴に、『生きたい』という希望が芽生えていく。
それは、あの白夜にツクヨミを消し去った奇跡のリフレインのようだった。
数分間流れ続けたその歌声は、曲が終わってしまうと唐突に音もなく途切れてしまった。
音楽プレイヤーは、今までのことが夢であったように、黙り込んでしまっている。
しかし、鬼頭の心は先ほどまでとは見違えるように、真っ直ぐに前を向いていた。
「また、助けられちまったんだな……」
思い返せば、シンを助けた数よりも、シンに助けられた数の方が多かった。廃墟での最初の出会いも、『叫び』に苦しんでいた時も、中央演算室で多くの怪物に囲まれた時も、彼女はいつも、彼女自身の望みでみんなを助けようとしていた。
もしも、奇跡が起こって、いつの日にか遥か先の未来で彼女と再会した時にこのままの体たらくでは、あまりにも格好がつかない。
鬼頭は、胸に湧き出てくるような生への希望を、せめて自分の手が届く範囲に広めていきたい、そう考えるようになっていた。
明日の休みは、数ヶ月ぶりにあの時のメンバーに加えて、シンの父親である佐古さんも交えた懇親会が開かれる予定だ。戦友との再会の直前に、思わぬ土産話ができてしまった。けれど、この奇跡だけは、誰にも言わずに心の奥にしまっておくのも悪くはない。そんなことを考えながら、鬼頭は再び床に着く。
いつの間にか、雲間の晴れた夜空には、白い月が街に生きる人々を見守るように浮かんでいる。
いつも、いつまでも。
PLより
鬼頭 拓 後日談
都会の汚れた空にあっても、月は人々を見下ろして空に浮かんでいる。
鬼頭は空に浮かぶ月を見るたびに、否応なしに思い出すのだ。
全ての命を呪って、死という名の祝福を振り撒いた無貌の死神と、呪詛を一身に受けながら希望の歌を世界に届けた愛すべき少女のことを。
そして、少女に降りかかる火の粉を払った5人の旅人たちを。
世界を救う旅が終わってから、既に一年の月日が過ぎようとしていた。
鬼頭のその後の生活は決して楽なものではなかった。
当時勤めていた派遣バイトは数ヶ月の無断欠勤でクビになっていた。住処にしていたアパートの一室は当然の如く新しい住人が入居してしまっていた上に、家財の一切を捨てられてしまっていたので、生きていくためには新しい仕事と家が必要だった。
そう多くはない方々の知り合いに頭を下げ、どうにか貰えた仕事はビルの建設の下請け業者のさらに下請けの仕事だった。
鬼頭は今日も今日とて、名前すら知らない大柄な現場監督と、声だけは立派な先輩作業員に罵倒にも似た檄を飛ばされながら、数十キロはくだらない資材を担いでは運び、担いでは運んでいく。まだ若いとは言え、単純作業ではあるが長時間の運搬はかなりの重労働だった。
いつも仕事が終わる頃には、日もとっぷりと暮れてしまって、心身ともに疲れ切ってしまって体が鉛か鉄のようになっていた。
そうして電車に揺られ、今の住処であるボロのアパートに辿り着く頃には何もする気が湧いてこない。近頃の鬼頭の日常における少ない楽しみは、駅からの帰り道にある小さな弁当屋の安いが美味い弁当と、弁当の付け合わせの妙に美味いポテトサラダ、そして、不器用なのか釣銭を返すときに手を握って渡す若い女性店員だけだった。
「今日もからあげ弁当か……。チクショウ……デラックスにすればよかった」
金がないのもあって、鬼頭は日頃から倹約を心がけているため、弁当屋のメニューの中でも一番リーズナブルな値段のからあげ弁当しか頼んだことはない。しかし、ふとひもじさや寂しさを感じると、こうした軽口で自身を慰めるのが癖になってしまっていた。
熱いシャワーでベタつく汗を流すと、あっという間に弁当をかき込んで、コップ一杯の麦茶をぐっと飲み干す。火照った頭が冷えた麦茶でツンと痛んだ。
鬼頭はごみ捨てと洗い物もそこそこに、作業着を脱ぐことも忘れ、万年床になっている薄い布団に倒れこむ。すると、自然と目線が下がってちゃぶ台に置かれたカレンダーが目に入った。
「明日は、二週間ぶりの休みか……」
小さなカレンダーの明日の日付には、絶対に忘れないように赤い丸が何重にも書き込まれていた。
鬼頭はふと気づくと、知らない砂漠に立っている。
ぼんやりとした思考とは逆に、体は意志を持ったように強く砂を踏みしめて進んでいく。時折、砂丘の真ん中にただ一人ぽつんと立ち止まると、その度に懐から取り出したボロボロのコンパスと汚れた地図を見比べては、重い荷物を背負い直して、知らない何処かへと、しかし目的を持った足取りでゆっくりと歩みを進めていく。
そのうちに砂漠は次第に姿を変え、穏やかな潮騒を奏でる海辺と広い砂浜になった。その砂浜の先に見える大きな河口から流れに逆らって進み、陽の光を受けて輝く清らかな川辺と、むせ返りそうなほど緑豊かな木々の中を踏み分けて進んでいく。
歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて―――。
どれだけ歩いたのかすらわからなくなるほどに歩いた頃、鬼頭の目は揺らめく陽炎の先に朧げな白い姿を捉えた。ゆっくりと歩む奇妙なラクダのような生き物の背に乗り、その首元には銀色のスキットルをぶら下げ、伸びた白い髪を淡い黄色のリボンで束ねた少女だ。少女は何処かで聞いた希望の歌を口ずさみ、その身には幾分か体に合ってきた緑色のジャケットを羽織った少女だった。
鬼頭はその姿を認めると、一も二もなく走り出す。背負っていた荷物も何もかもをその場に投げ捨てて、その陽炎の先に夢中で手を伸ばして叫ぶ。
「シン、待ってくれ! オレも連れていってくれ―――」
ぐんぐんと迫るその影が、鬼頭の声に反応したのか、こちらをゆっくりと振り返ろうとしている。その赤い瞳が鬼頭を捉え―――。
鬼頭が目を覚ますと、布団の上に寝転んだまま、天井に向かって夢中で手を伸ばしている。傍らには開いたままの携帯電話が転がっていて、状況から察するに、どうやらメールをチェックしている間に寝落ちしてしまっていたらしい。
鬼頭は言いようのない空しさに胸を詰まらせながら、重い体を起こすと、立ち上がって窓辺へ向かう。そして、小さな窓をからからと開いて外の景色をぼんやりと眺めた。
窓の外は今も夜の帳が落ちている。街は白い月に照らされて、穏やかな眠りについているようだった。
時計をちらりと見ると、時刻は午前3時を回った頃。夜が明けるにはまだ早い。
鬼頭は窓辺から夜空に浮かぶ月を見つめると、ゆっくりと月を雲が覆っていった。
静かに目を伏せると、先ほど見た夢の内容を反芻するように思い返す。見知らぬ土地を旅して、シンに再会する夢。もう幾夜も繰り返し見た夢だった。
「どうして、オレはあのときシンについていかなかったんだ……。シンがやりたいことをするときは、嫌って言ってもついて行くって、そう言ったはずなのに……」
鬼頭はシンと別れて現世に戻るとき、彼女と共に行かなかったことを後悔し続けていた。その拭いきれない後悔が後ろ髪を引くように、あの夢を見せているのだろうと、頭では理解してはいるが、だからと言って割り切れるものではなかった。
鬼頭には、世界の価値がわからない。報道番組で流れるのはいつも暗いニュースだけだ。
今日もどこかで善人面の悪人が弱者から全てを奪い、国を追われた難民が飢えに苦しみ、伐採で住処を失った動物が山から降りて撃ち殺される。
シンを失って取り戻したはずの現世を、鬼頭は心のどこかで汚いものと拒み続けている。
世界を救った旅から一年が経った今も、鬼頭拓という小さな男の心は白夜の世界に留まったまま、後悔という袋小路の奥底でゆっくりと死んでいた。
『いの……生きたい、生きたい、生きたいと、願ってた―――』
「……? この声は、まさか」
鬼頭が振り返ると、彼の持ち物の中でも唯一の高級品である音楽プレイヤーが勝手に起動し、録音された音楽を再生していた。
旅の後、佐古の好意でICレコーダーに残っていたシンの歌をダビングしたものを貰っていたが、その他には何も音楽プレーヤーには入っていない。
つまりそれはシンの歌のはずだった。しかし、それはシンの声ではあるようだが、聞き覚えのない曲だ。旅の途中で聞いたシンの歌であれば、鬼頭は全て覚えている。
混乱し、その場に立ち尽くす鬼頭を余所に、音楽プレーヤーは聞き覚えのないシンの歌声を再生し続ける。
それが奇跡なのか、はたまた偶然の産物なのかはわからない。しかし、鬼頭はその歌声は確かにシンのものであると、心で確信できた。
あれから時が経ちさらに成長したのか、幾分落ち着いた様子のシンの歌声が夜の冷たい空気にゆっくりと広がると、夜風で冷えた鬼頭の体に、芯から温まるような感覚を与える。
そして、別れへの後悔、現世への拒絶、そしてゆっくり死んでいた心がだんだんと薄れていき、その開いた穴に、『生きたい』という希望が芽生えていく。
それは、あの白夜にツクヨミを消し去った奇跡のリフレインのようだった。
数分間流れ続けたその歌声は、曲が終わってしまうと唐突に音もなく途切れてしまった。
音楽プレイヤーは、今までのことが夢であったように、黙り込んでしまっている。
しかし、鬼頭の心は先ほどまでとは見違えるように、真っ直ぐに前を向いていた。
「また、助けられちまったんだな……」
思い返せば、シンを助けた数よりも、シンに助けられた数の方が多かった。廃墟での最初の出会いも、『叫び』に苦しんでいた時も、中央演算室で多くの怪物に囲まれた時も、彼女はいつも、彼女自身の望みでみんなを助けようとしていた。
もしも、奇跡が起こって、いつの日にか遥か先の未来で彼女と再会した時にこのままの体たらくでは、あまりにも格好がつかない。
鬼頭は、胸に湧き出てくるような生への希望を、せめて自分の手が届く範囲に広めていきたい、そう考えるようになっていた。
明日の休みは、数ヶ月ぶりにあの時のメンバーに加えて、シンの父親である佐古さんも交えた懇親会が開かれる予定だ。戦友との再会の直前に、思わぬ土産話ができてしまった。けれど、この奇跡だけは、誰にも言わずに心の奥にしまっておくのも悪くはない。そんなことを考えながら、鬼頭は再び床に着く。
いつの間にか、雲間の晴れた夜空には、白い月が街に生きる人々を見守るように浮かんでいる。
いつも、いつまでも。
KP並びにPLの皆さん、そして見学に来てくださったお二方、本当に二日間ありがとうございました。
セッションの経験はあれども長時間のテキストセッションは初めての参加だったので、わからないことや不慣れなところで多々ご迷惑をおかけしましたが、なんとか無事に完走することができ、感無量です。
シナリオの内容を露ほども知らなかったため、RPのしやすさも考えてネタキャラの走ろうかとも悩みましたが、まとも(?)なキャラで挑んで大正解でした。
いつでも優しく、常に周囲に気を配りながら皆を導いてくれた案内役の秋元さん(PL花瀬様)、無口なナイスガイ、とにかく戦闘時の日本刀がかっこよすぎた大人代表蒲谷さん(PL彼岸花様)、
意志が強く、やさしさと強さ(物理)を兼ね備えた完璧系リケジョの空木さん(PL Ar様)、シンをいつでも気遣い、母親のようなやさしさと土壇場での大活躍を見せてくれた大先生越路さん(PL倉秋様)、
このメンバーでなければ、あのエンディングは迎えられなかったと思います。重ねて、ありがとうございました。
最後に一言「うちのシンが一番かわいい」
セッションの経験はあれども長時間のテキストセッションは初めての参加だったので、わからないことや不慣れなところで多々ご迷惑をおかけしましたが、なんとか無事に完走することができ、感無量です。
シナリオの内容を露ほども知らなかったため、RPのしやすさも考えてネタキャラの走ろうかとも悩みましたが、まとも(?)なキャラで挑んで大正解でした。
いつでも優しく、常に周囲に気を配りながら皆を導いてくれた案内役の秋元さん(PL花瀬様)、無口なナイスガイ、とにかく戦闘時の日本刀がかっこよすぎた大人代表蒲谷さん(PL彼岸花様)、
意志が強く、やさしさと強さ(物理)を兼ね備えた完璧系リケジョの空木さん(PL Ar様)、シンをいつでも気遣い、母親のようなやさしさと土壇場での大活躍を見せてくれた大先生越路さん(PL倉秋様)、
このメンバーでなければ、あのエンディングは迎えられなかったと思います。重ねて、ありがとうございました。
最後に一言「うちのシンが一番かわいい」
PC後日談
PLより
島から帰ってすぐに教育実習で、ドタバタとした日常をすごしていた。
「〜♪」
その忙しさの中、気が付くと彼女の歌を口ずさんでいる私がいた。
「せんせー、それなんて歌ー?」
「うーん…私のね、初めての生徒さんの歌なんだけど…曲名あるのかな…」
生徒の子達に言われて『彼女の歌』としか浮かばずに愕然とする。
「(…大事な歌なのに曲名がわからないのは寂しいな…)」
「曲名は分かったら教えてあげるね。それよりも一緒に歌ってみない?」
えー という声が上がるのに苦笑しつつ、彼女の歌を口ずさむ。
『もしかしたら彼女も今歌っているのかもしれない。』そう思うと、自然と笑みが浮かぶ。
帰ったら『彼女の先生』を一緒にしたあの人とお話しよう。
きっと、この気持ちを共有できると思うから。
そして一緒にあの歌を歌うのだ。大きな奇跡は起こせずとも、私達も頑張っているよ…そう彼女へ伝わればいいなと願いながら
「何度も何度も何度も君の名前を呼ぶよ、また巡り会うために」再会を願う歌を歌いつつ、空を見上げる。
「…私は『なりたい』を叶えるよ。もしもまた会えたなら…先生として胸を張っていられるように…」
「〜♪」
その忙しさの中、気が付くと彼女の歌を口ずさんでいる私がいた。
「せんせー、それなんて歌ー?」
「うーん…私のね、初めての生徒さんの歌なんだけど…曲名あるのかな…」
生徒の子達に言われて『彼女の歌』としか浮かばずに愕然とする。
「(…大事な歌なのに曲名がわからないのは寂しいな…)」
「曲名は分かったら教えてあげるね。それよりも一緒に歌ってみない?」
えー という声が上がるのに苦笑しつつ、彼女の歌を口ずさむ。
『もしかしたら彼女も今歌っているのかもしれない。』そう思うと、自然と笑みが浮かぶ。
帰ったら『彼女の先生』を一緒にしたあの人とお話しよう。
きっと、この気持ちを共有できると思うから。
そして一緒にあの歌を歌うのだ。大きな奇跡は起こせずとも、私達も頑張っているよ…そう彼女へ伝わればいいなと願いながら
「何度も何度も何度も君の名前を呼ぶよ、また巡り会うために」再会を願う歌を歌いつつ、空を見上げる。
「…私は『なりたい』を叶えるよ。もしもまた会えたなら…先生として胸を張っていられるように…」
だいぶ経ってしまいましたが、読み返すと未だに心が揺さぶられるものがありました。
やっぱりほんわか難しい事は考えないあの子で行ってよかった。
落ち着いた性格に浪漫を搭載して日本刀と格闘で暴れる蒲谷さん。
特に、日本刀が手に入ってから時折入る動作がカッコよかったです。
技術職人っぽくクールでカッコよく、戦闘でもすごく輝いていた空木さん。
シーンを書き加えて超人みたいにしてごめんなさい!
彼女の事を考えるが故に葛藤してて、意見が分かれるっていうあのシーンの鬼頭さんが特に好きでした。
そして最後の庇うのに繋がるのが特に…PT内では彼女の父親のように見ていた部分があります。
うちの子と一緒に先生をしたお酒好きで子煩悩属性持ってそうな秋元さん。
PTを引っ張って行ってくれてすごく頼りになりました。旗を立てたので、『先生仲間』として懐いて突撃させようと思います。
皆カッコよくて本当に素敵なPTでした。
飲みに行き、彼女の事について話ながら酔い潰れ、NPCに迷惑を掛ける…
最後のネタロールでそんな笑える未来が見えてるのが素敵でした。
この思い出をいつか彼女も加えて話すことが出来たら…そう考えると今でもフワフワした気持ちになります。
2日間本当にありがとうございました。
最後に…うちのシンが一番かわいい!
やっぱりほんわか難しい事は考えないあの子で行ってよかった。
落ち着いた性格に浪漫を搭載して日本刀と格闘で暴れる蒲谷さん。
特に、日本刀が手に入ってから時折入る動作がカッコよかったです。
技術職人っぽくクールでカッコよく、戦闘でもすごく輝いていた空木さん。
シーンを書き加えて超人みたいにしてごめんなさい!
彼女の事を考えるが故に葛藤してて、意見が分かれるっていうあのシーンの鬼頭さんが特に好きでした。
そして最後の庇うのに繋がるのが特に…PT内では彼女の父親のように見ていた部分があります。
うちの子と一緒に先生をしたお酒好きで子煩悩属性持ってそうな秋元さん。
PTを引っ張って行ってくれてすごく頼りになりました。旗を立てたので、『先生仲間』として懐いて突撃させようと思います。
皆カッコよくて本当に素敵なPTでした。
飲みに行き、彼女の事について話ながら酔い潰れ、NPCに迷惑を掛ける…
最後のネタロールでそんな笑える未来が見えてるのが素敵でした。
この思い出をいつか彼女も加えて話すことが出来たら…そう考えると今でもフワフワした気持ちになります。
2日間本当にありがとうございました。
最後に…うちのシンが一番かわいい!
あの二日間から早二週間が経ちました、早いものです(汗
改めまして、皆様本当にお疲れ様でした。
開始前までは約1年ぶりの白夜で緊張やら不安やら多くありました。
ですが結果皆様に楽しんで頂けたようで「あぁ白夜回して良かったな」と安堵しております。
何より、シナリオに、そしてシンに真剣に向き合ってくれてKPとして感謝しかありません。
今回の白夜の歌の物語は間違いなく皆様の手によって作られました。
皆様が出会ったシンは皆様が出会ったシンだけの思い出と想いを受け取り旅に出た事でしょう。
もう一人の「先生」としてシンを導きシンが大人になった時への贈り物を渡してくれた秋元さん。
彼女はいつの日かその贈り物を飲む日がきっと来るでしょう。
『私も、"大人"になれたかな』
そう想いながら。
Fチーム年長者として最後の戦いで見事な抜刀一閃、そして強烈な蹴りをウロ達に叩き込んだ蒲谷さん。
あの戦いの中彼女もその雄姿を目に収め長い旅の途中その姿を時折思い返すでしょう。
自分が「家」にいた頃、おとうさまが読み聞かせてくれた絵本に出てくる「ヒーロー」の姿と重ねて。
随所随所で理工学部としての技能が光り、シンに優しく接してくれた空木さん。
あの時くれた『ぶどう』という味の「グミ」の事を思い返し、そしてあれから少しだけ伸びてきた髪を束ねたリボン見て柔らかな笑みを見せるでしょう。
シンの事を大切に思い、葛藤してくれた鬼頭さん。
彼女はあれから少しだけ身体に合ってきたジャケット見て思い返すでしょう。
最後の戦いで自分を守ってくれたあの大きな身体を。
シンの「先生」として歌を始め、美しい世界の事、彼女の『なりたい事』を教え。
彼女と、オルフェを何よりも大切に想ってくれていた越路さん。
彼女はいつかまた皆に出会い、そして「ちあき先生」に自慢できるようにこちらの世界を癒し続けていくでしょう。
そして、彼女は貴方に抱きしめられた時の暖かな温もり、そして別れの前に教えてくれた「歌」を最期までずっと忘れないでしょう。
以上、皆様本当にありがとうございました。
KPとしてもあの二日間は忘れられないセッションの一つとなりました。
もしまたどこかでご一緒した時はまたよろしくお願いします。
残りのNPC後日談についてはくどいですが気長にお待ちください(汗
それでは、長くなりましたが最後にこの言葉で締めくくらせて頂きます。
「白夜の歌は、いいぞ」
改めまして、皆様本当にお疲れ様でした。
開始前までは約1年ぶりの白夜で緊張やら不安やら多くありました。
ですが結果皆様に楽しんで頂けたようで「あぁ白夜回して良かったな」と安堵しております。
何より、シナリオに、そしてシンに真剣に向き合ってくれてKPとして感謝しかありません。
今回の白夜の歌の物語は間違いなく皆様の手によって作られました。
皆様が出会ったシンは皆様が出会ったシンだけの思い出と想いを受け取り旅に出た事でしょう。
もう一人の「先生」としてシンを導きシンが大人になった時への贈り物を渡してくれた秋元さん。
彼女はいつの日かその贈り物を飲む日がきっと来るでしょう。
『私も、"大人"になれたかな』
そう想いながら。
Fチーム年長者として最後の戦いで見事な抜刀一閃、そして強烈な蹴りをウロ達に叩き込んだ蒲谷さん。
あの戦いの中彼女もその雄姿を目に収め長い旅の途中その姿を時折思い返すでしょう。
自分が「家」にいた頃、おとうさまが読み聞かせてくれた絵本に出てくる「ヒーロー」の姿と重ねて。
随所随所で理工学部としての技能が光り、シンに優しく接してくれた空木さん。
あの時くれた『ぶどう』という味の「グミ」の事を思い返し、そしてあれから少しだけ伸びてきた髪を束ねたリボン見て柔らかな笑みを見せるでしょう。
シンの事を大切に思い、葛藤してくれた鬼頭さん。
彼女はあれから少しだけ身体に合ってきたジャケット見て思い返すでしょう。
最後の戦いで自分を守ってくれたあの大きな身体を。
シンの「先生」として歌を始め、美しい世界の事、彼女の『なりたい事』を教え。
彼女と、オルフェを何よりも大切に想ってくれていた越路さん。
彼女はいつかまた皆に出会い、そして「ちあき先生」に自慢できるようにこちらの世界を癒し続けていくでしょう。
そして、彼女は貴方に抱きしめられた時の暖かな温もり、そして別れの前に教えてくれた「歌」を最期までずっと忘れないでしょう。
以上、皆様本当にありがとうございました。
KPとしてもあの二日間は忘れられないセッションの一つとなりました。
もしまたどこかでご一緒した時はまたよろしくお願いします。
残りのNPC後日談についてはくどいですが気長にお待ちください(汗
それでは、長くなりましたが最後にこの言葉で締めくくらせて頂きます。
「白夜の歌は、いいぞ」
コメントをかく