5-857 メリーさん

「私メリーさん。今貴方の家の前にいるの」

ついにここまで来てしまった。
最初に電話がかかってきたときは悪戯だと思っていたが、
告げられる位置が駅前から家まで近づいてくるにつれ、どうしようもなく恐ろしくなってきた。
今や俺の心臓は早鐘を打つように激しいリズムを刻んでいる。

そしてついに…

プルルルル…
(来た…!)
恐る恐る受話器をとる。
「もしもし…」
『私メリーさん。今貴方の後ろにいるの』
「!!!」

俺は、混乱していたのだろう、馬鹿正直にも後ろに振り向いてしまった…!


死を覚悟した次の瞬間…

もふん…
「…もふん?」
何やらもこもこした感触のものがぶつかってきた。
視線を下ろすとそこには大きな羊が…ひつじぃ…?

『やっとむぎゅってできたよ!はぅ…しぁわせぇ…』
羊が喋った!?いや、よくみるとそれは羊の着ぐるみで、中からは金髪碧眼の美少女の顔がのぞいていた。

「えっと…メリー…さん?」
『そーだよ!』
羊が満面の笑みで答える。
…頭が痛い。
『街で見かけてからずっと甘えたかったんだっ!』
はあ、さいで。


「あの…俺を殺したりとかは…」
『するわけないじゃん!心外だなぁ!
メリーさんは甘えるのが仕事なんだよっ!』
「甘える?」
『そーだよっ!こうやってむぎゅーってしたり』むぎゅー
『すりすりしたり』すりすり
『くんかくんかしたり』くんくん
『あとねあとね!貴方からもぎゅってしてちゅってしてなでなでしてもらったりするの!
はぅ…想像したら我慢できなくなっちゃった…』
そういってまたむぎゅむぎゅすりすりしまくるメリーさん。
…正直、たまりません。


「えーっと…ちなみにいつごろお帰りいただけるので?」
『なに?私に甘えられるの…迷惑…?』うるうる
「いいいいえいえ全然!」
とはいうものの、帰る気なし、ってか。
『ずーっと一緒にいようねっ!』

輝く笑顔の羊にひっつかれ、食費大丈夫かな…とか思う俺であった。
2009年06月19日(金) 22:02:52 Modified by amae_girl




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