トリエラのドレス2 トリエラ,ヒルシャー,
 //トリエラのドレス/ Vignette/,Romance/ 8552Byte /Text //2005-11-08



トリエラのドレス2



ありえない展開かもしれないが、

次回の作戦行動は教会で行われることになった。



このところの二課の主要任務は、VIPの護衛兼それを狙って近づくパダーニャの一掃である。

しかしもともと、警戒をしていたVIPは、外出を極端に控えているので、

パダーニャもそう簡単には近づいてこないようだ。



プリシッラの発案で、餌をまいておびき寄せることになった。

VIPの近縁者ということにして、偽装の結婚式を大々的に行うことになったのだ。



 結婚式には、当然のごとく主役である花婿と花嫁が必要だ。

その話を聞いたヘンリエッタは、ぽっと頬をそめつつ、

「あ、あの。私とジョゼさんを・・・。」

と立候補したのだが、どうやっても幼い子供にしか見えないという理由で却下されてしまった。

(その後24時間ベッドに突っ伏して彼女は泣いていた。)



 2課の作戦会議では結局トリエラが花嫁候補として指名された。

花婿候補はそのパートナーということで、ヒルシャーが勤めることになった。





作戦当日。



教会のチャペルでは聖歌隊が祝祭歌を歌い上げている。

純白のドレスに身を包んだトリエラに、ヘンリエッタとリコが付き従いトリエラがチャペルに入ってきた。



薄化粧を施したトリエラは薄いベールでやや顔を隠していたが清楚で可憐。



花婿役で待っていたヒルシャーが息を呑むほどの美しさだった。



トリエラが一歩一歩祭壇へ歩み寄ってくる。



手前でヒルシャーはややぎごちなく彼女の腕を取り、二人して、司祭の前へ進んだ。



トリエラは、自ら感動して涙ぐんでいるようだ。



まるで作戦のための芝居ということを忘れているかのようだった。



(・・・中略・・・)

祝福の祈祷が終わり、いよいよ、誓いのとき。

礼拝堂の中は静まり返った。



教会の牧師の前に二人して立つ、ヒルシャーとトリエラ。



司祭の言葉が響く。

「新郎ヴィクトル、汝《なんじ》病める時も健やかなる時も、死が二人を分かつまで妻を愛し続けることを誓いますか?」

「誓います」

ヒルシャーの力強い言葉が場内に響いた。



「新婦トリエラ、汝《なんじ》病める時も健やかなる時も、死が二人を分かつまで夫を愛し続けることを誓いますか?」

「・・・誓いま・・・」

ここで、言葉に詰まるトリエラ。立会いの人々から小さくざわめきが起きる。

俯いていたトリエラが、顔を上げ、ベールを脱ぎ去った。

そして、はっきりと宣言する。

「いいえ! いいえ、私はたとえ死んでもヒルシャーさんを愛し続けます」



ヒルシャーは感動しかけたが、はっとして動揺している自分に気づく。



(おいおい、トリエラ、何で本気モードになってるんだ。これは芝居だぞ)

(いいえ、私は本気です。この結婚式は私にとっては本物の結婚式です!)

(それは、本当に私と結婚したいということなのかい?)

(当たり前じゃないですか、この感情が薬で公社に強要されたものだとしても

 私にとっては、今の自分の気持ちが、本当の気持ちなんです。)





司祭が二人を促す。

「さあ、ここで、誓いのキスをどうぞ」



「えっ。」

ますます、動揺するヒルシャー。

トリエラはヒルシャーに向かってあごを上げ、目を薄く閉じた。

ポッと頬を染めている。



(ちょっとまて、キスまでするのかい。)

(ヒルシャーさん、私に口付けを下さい。一生の思い出にします。)

(いくら、教会の司祭の前で誓ったといっても・・・)

(ここで、躊躇するなんて男のすることじゃないでしょうヒルシャーさん)



観念して、トリエラにそっと口付けるヒルシャー。

それを見ていたヘンリエッタやプリシッラからは小さい歓声があがった。



(トリエラ、作戦のためだとはいえ済まない)

(なに謝ってるんですかヒルシャーさん、責任とって貰いますからね)

(責任って、これは偽装だってば)

(ヒルシャーさん、もう私から逃げられませんよ、ふふふ)

(おいおい、担当官を脅さないでくれ)





(・・・またまた中略・・・)

二人はそろってチャペルを出た。そしてライスシャワーを浴びる。

そして、トリエラはブーケを投じた。それをつかんだのはエッタだった。



みなの祝福を浴びながら二人は車に乗って教会を後にした。



「ふぅー。やっと終わったな」

「ええ、式は終わりましたけど、でもこれが私たちの新婚生活の始まりです」

「本気で言ってるのかい」

「こんなこと冗談で言えるものじゃありません。ヒルシャーさんしっかりしてください」

「いいかげんにからかうのは止めてくれ。でも、結局五共和国派《パダーニャ》の襲撃はなかったな」

「当たり前じゃないですか。公社の関係者の結婚式を妨害するほど彼らも野暮ではないですよ」

「じゃあ、これは作戦ではなかったのか?」

「だから言ってるじゃないですか、私たちの結婚式だって」



「・・・とりあえず、公社に戻るぞ」

「違います、ヒルシャーさんの自宅へ行って下さい」

「おいおい、本当に二人で結婚生活を送るつもりなのか?」

「ええ、私の持ち物はすでにヒルシャーさんのアパルトマンに運んであります」

「えっ、そうなのか・・・」

「さっきも言いましたけど、もう、私から逃げられませんよ。覚悟してください」

「覚悟って、未成年と結婚するのは犯罪になるのでは?」

「私たちはアウトローです。義体に法律は関係ありません」

「トリエラは覚悟できているのか? 結婚するって事は・・・」

「当然覚悟してます。私は身も心もヒルシャーさんに捧げるのですから」

「うーむ。」

「今日、こ、このドレスを脱がせてくれるのは貴方です。貴方じゃないとだめなんです」

「・・・わかった。君の気持ちが嬉しいよ・・・」





・・・かくして二人は結婚した(?)



ずっとやきもきしてたプリシッラもようやく一安心。

ヘンリエッタは、少し恨みに思ったようでしたがね。



<了>

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