依存症//ヘンリエッタ,ジョゼ
  //EDLIN ◆0rYZFUk5QM//Snippet/,Romance/ 5933Byte /Text //2006-03-21


依存症


ジョゼ「おや?紅茶に砂糖はいいのかい?」

ヘンリエッタ「今日はこれだから、お砂糖はいいの。

  ホットケーキに、メープルシロップか蜂蜜か悩めるなんて素晴らしいわ。

  最近は、新しいお薬のせいか調子がいいの。」

ジ「あっ、そんなに!」

ヘ「え?」

ジ「いや、いいんだ。その…新しい薬はビアンキ先生が言ってたのかい。」

ヘ「はい。新しいお薬になってから、お砂糖の味がちゃんとわかるようになったし

  日記に書いてあるのに私が覚えていない事がずっと減ったんですよ。

  ビアンキ先生は、もっと副作用の少ないお薬も、もうすぐできるから、

  それまで頑張れって言ってました。」

ジ「ああ。」

ヘ「あの、ジョゼさん。」

ジ「何だい、ヘンリエッタ。」

ヘ「忘れないうちに言っておきたい事があるんです。

  前のお薬を使っていた頃の話なんですけど、

  あの頃は、いつも胸のあたりが暖かいような甘いような幸せな感じがあって、

  ジョゼさんの事しか考えられなかったんです。

  けがを治してもらったり、定期交換の後には特にそんな感じが強くて。

  でも、この前の定期交換から、そんな感じがしなくなって、

  ジョゼさんの事が私の中から消えて行くような気がしてとても不安になったんです。

  ビアンキ先生に聞いたら、体に負担の少ないお薬に変えたって言われて…

  それで、私は前のお薬に戻してください、って言ったんですけど、

  しばらく様子をみて、どうしても駄目なら元のに戻そうって言われました。

  お薬のせいだとわかったから、恐い感じはもうないし、

  そのおかげでもっと長い間ジョゼさんといられるのもわかるんです。

  でもジョゼさんを想う気持が無くなってしまった気がして…

  ジョゼさんが前のお薬の方が良いと言うなら、私もそうして欲しいです。」

ジ「いや、…。僕も、ビアンキ先生の言う通りだと思うよ。」

ヘ「はい、わかりました。

  でも、お薬が変わって前のような気持は無くなったはずなのに、ジョゼさんの

  ためにやらなきゃ、っていうのとは違う、前のような暖かいような感じが少しだけ

  する時があるんです。

  ジョゼさんと過ごした事を思い出したり、こうして話していると、感じるんです。

  なぜかはわからないけれど。

  でも、この気持もいつかは忘れて消えてしまうかもしれないし。

  そうだったらさみしいなと思って…

  ジョゼさんの事だけを想っていたあの頃の私はとても幸せだったの。

  これだけを言いたくて。」

ジ「ああ、忘れないよ。」

ヘ「それから、ジョゼさんがいつもしてくれていた星のお話も、あの頃の私には

  天上の音楽のように響いて、聞いているだけで幸せだったの。

  でもあの日から急につまらなくなって、悲しかったわ」

ジ「これは、手きびしいな。」

ヘ「でも近ごろは、なんとなくだけどジョゼさんが星のどんな所が好きなのか

  わかって来たような気がします。」

ジ「うーん。ヘンリエッタは他にはどんな話がいいのかな?」

ヘ「あの…、私から、お話をしてもいいかしら。」

ジ「聞かせて欲しいな。」

ヘ「先週クラエスが菜園に植えた、えっとカモミール…」



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