最終更新: gunsringergirl_ss2 2009年11月22日(日) 23:43:45履歴
彼の人は触れた//トリエラ,エルザ,ラウーロ
//,Snippet/,General /5398Byte /Text// 2006-01-28
彼の人は触れた
エルザ・デ・シーカの髪は、いつも器用に編みこんであった。
私が結い上げるのより、時間も手間も掛かっていただろう。
そして彼女の瞳は、担当官以外を極力映さないようにしていた。
まるで、世界はそれだけしかないかのように…。
それが私の知る限りの彼女だった。
彼の人は触れたSite Index/Contents Index/Search/Dictionary.
エルザ・デ・シーカの髪は、いつも器用に編みこんであった。
私が結い上げるのより、時間も手間も掛かっていただろう。
そして彼女の瞳は、担当官以外を極力映さないようにしていた。
まるで、世界はそれだけしかないかのように…。
それが私の知る限りの彼女だった。
「エルザ、いつも綺麗に編んでるね」
授業が終わり、足早に教室を去るエルザを、私は廊下で呼び止めた。
怪訝な顔で振り向いたエルザの目の前に、ノートにはさんでおいた書類を差し出す。
「…今度の作戦の?」
表情を崩さないまま、エルザはそっと受け取った。
彼女が顔を傾げるたびに、二本の三つ編みは揺れる。尻尾のようだ。
「うん、ラウーロさんから頼まれて」
空気が、ピンと張り詰めた。
「そう。ラウーロさんから」
エルザは目を細めて呟くと、踵を返し去っていった。尻尾の先が、弧を描いた。
「ラウーロさん、お仕事早くに終わったんですね」
ヒルシャーさんを探しに立ち寄った二課で、ラウーロさんを見掛けた。
仕事が長引きそうだから、とエルザへの伝達を頼まれたのに。
「ん?ああ、届けてくれたのか。悪かったな、トリエラ」
だるそうに紡がれる言葉に、
「いいえ、たいした事じゃありませんから」
一応きちんとした返事をする。
ラウーロさんは、エルザに関心がないようだった。
別に、私があれこれ思うことじゃないけれど、せめて負担にならない程度に向き合えば
いいのになと感じていた。エルザは、細い線の上でバランスを取っていたから。
ヒルシャーさんが見当たらないので、別の場所に行こうとした瞬間だった。
「トリエラ、髪引っつかまれるとやっぱり痛い?」
ラウーロさんが、不意に妙な質問を投げかけてきた。
「引っつかまれる?掴んで引っ張られるという意味ですか?それは痛いですけど」
力加減にもよります…と返事をすると、
「ふぅ〜ん、そっか」
と頷いている。
「それがどうかしたんですか?」
「いや、先週任務中にエルザがバランス崩してさ。とっさに髪掴んで引き倒しちまって」
やっぱ痛いよな〜と、ラウーロさんは1人で納得している。
「エルザの髪、掴んだんですか?」
「ああ、前は邪魔にならないかと思ってたけどさ。まあ、死ななくくて良かったよ」
そう言ったラウーロさんは、柔らかく笑っているようにも見えた。
エルザの髪が解かれた姿は、ついに見ることがなかった。
これは私の想像だけど、洗い流した髪を乾かし、丁寧に梳き、編みこむ。
これらはエルザの儀式だったのかも知れない。
了
//,Snippet/,General /5398Byte /Text// 2006-01-28
彼の人は触れた
エルザ・デ・シーカの髪は、いつも器用に編みこんであった。
私が結い上げるのより、時間も手間も掛かっていただろう。
そして彼女の瞳は、担当官以外を極力映さないようにしていた。
まるで、世界はそれだけしかないかのように…。
それが私の知る限りの彼女だった。
彼の人は触れたSite Index/Contents Index/Search/Dictionary.
エルザ・デ・シーカの髪は、いつも器用に編みこんであった。
私が結い上げるのより、時間も手間も掛かっていただろう。
そして彼女の瞳は、担当官以外を極力映さないようにしていた。
まるで、世界はそれだけしかないかのように…。
それが私の知る限りの彼女だった。
「エルザ、いつも綺麗に編んでるね」
授業が終わり、足早に教室を去るエルザを、私は廊下で呼び止めた。
怪訝な顔で振り向いたエルザの目の前に、ノートにはさんでおいた書類を差し出す。
「…今度の作戦の?」
表情を崩さないまま、エルザはそっと受け取った。
彼女が顔を傾げるたびに、二本の三つ編みは揺れる。尻尾のようだ。
「うん、ラウーロさんから頼まれて」
空気が、ピンと張り詰めた。
「そう。ラウーロさんから」
エルザは目を細めて呟くと、踵を返し去っていった。尻尾の先が、弧を描いた。
「ラウーロさん、お仕事早くに終わったんですね」
ヒルシャーさんを探しに立ち寄った二課で、ラウーロさんを見掛けた。
仕事が長引きそうだから、とエルザへの伝達を頼まれたのに。
「ん?ああ、届けてくれたのか。悪かったな、トリエラ」
だるそうに紡がれる言葉に、
「いいえ、たいした事じゃありませんから」
一応きちんとした返事をする。
ラウーロさんは、エルザに関心がないようだった。
別に、私があれこれ思うことじゃないけれど、せめて負担にならない程度に向き合えば
いいのになと感じていた。エルザは、細い線の上でバランスを取っていたから。
ヒルシャーさんが見当たらないので、別の場所に行こうとした瞬間だった。
「トリエラ、髪引っつかまれるとやっぱり痛い?」
ラウーロさんが、不意に妙な質問を投げかけてきた。
「引っつかまれる?掴んで引っ張られるという意味ですか?それは痛いですけど」
力加減にもよります…と返事をすると、
「ふぅ〜ん、そっか」
と頷いている。
「それがどうかしたんですか?」
「いや、先週任務中にエルザがバランス崩してさ。とっさに髪掴んで引き倒しちまって」
やっぱ痛いよな〜と、ラウーロさんは1人で納得している。
「エルザの髪、掴んだんですか?」
「ああ、前は邪魔にならないかと思ってたけどさ。まあ、死ななくくて良かったよ」
そう言ったラウーロさんは、柔らかく笑っているようにも見えた。
エルザの髪が解かれた姿は、ついに見ることがなかった。
これは私の想像だけど、洗い流した髪を乾かし、丁寧に梳き、編みこむ。
これらはエルザの儀式だったのかも知れない。
了
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