San Valentino //ジョゼ、エッタ
        // ID:LDfuPV9hP // Romance // バレンタイン //2012/02/03


San Valentino

Buon San Valentino !!!
ここ数年は2月に入ると、街中でバレンタインを祝う看板を随分沢山見かけるようになった。
昔はそんなでもなかったと思うんだが、まあ、あまり気にかけていなかっただけなのかも知れない。
ヘンリエッタはアルファロメオのシートからそんな2月のローマの街の景色を眺めている。

「あの、ジョゼさん…」

ほら来た。
喜ぶべき事ではあるんだが、あまり影響されやすすぎるのもちょっと…

「何だい?ヘンリエッタ」

「バレンタインデーの起源は、ローマなんですよね。」

「え?ああ、そうだよ、よく知ってるね。」

ヘンリエッタの頬がほんのり赤くなる。2月の冷たい風のせいではないらしい。

「クラエスに、教えてもらったんですけど、詳しいお話を忘れちゃったんです…」

こういう時のヘンリエッタは本当に悲しそうな顔をする。
長くて緩やかな崩壊、やがて訪れる暗闇、
まだ普通ならそんな重荷を背負う年齢じゃない。

「ああ、そうだな。
バレンタイン司教のお話の前に、こんな話もあるんだ。
今から2千年以上も前、女神ユノーを祝うルペルカリア祭というお祭が、
2月にあったんだ。その頃のローマ帝国は男性と女性は別々に
暮らしていたんだが、このお祭のときにだけ男女がめぐり合う事が
許されていたんだ。」

「別々に、ですか?好きな人とも1年に1回しか会えない…
私、そんなの、嫌です!!」

ヘンリエッタは感受性が強い。すぐに何でも自分の事に置き換えてしまう。

その事が恐らく、ヘンリエッタの不安定さの根元にあると思う。
だから、条件付けだけではない「魔法」を
常にかけてあげないといけない。

「今は、愛する男女が一緒に過ごす日なんだよ。」

ヘンリエッタの表情から霧が晴れ、可憐な白い薔薇のような微笑みが現れる。
これでいい。こうやってヘンリエッタと過ごして行く事が、
自分の選んだ道なんだ。


「ジョゼさんって、何でも知っているんですね…私の事も。」

「ああ、そうだよ、ヘンリエッタ。」

だすえんで




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