PINKちゃんねる-エロパロ&文章創作板「依存スレッド」まとめページです since2009/05/10

作者:◆ou.3Y1vhqc氏

凪の手を離し、うずくまっている姉に走って近づく。
背中に手を置くと小刻みに震えているのがわかる。
「姉ちゃんどうしたの!!?怪我はない!?」
なんで道路で倒れてるのかわからない、なにか事件に巻き込まれたのかと嫌な考えが頭によぎる。
「ユウ・・・・・・ゆう?・・・・え!?勇!!」
いきなり抱きつかれ姉の全体重が胸にのしかかってくる、
「ちょッ!!姉ちゃん?、どうしたのこんなとこで?心臓とまるかと思ったよ・・・」
「勇が怒って出ていったから探しにいったんでしょ!?」
(怒った?俺が?)

勇を離すまいとしがみついてるので、無意識の内に背中に回している手の爪が、服を通り越して皮膚に食い込む。

「痛ッ!!ちょっと!背中に爪が食い込んでるよ!!」
「やッ!嫌だッ!!」
離そうとするが姉は混乱して全く離れようとしない、それどころか、しがみつく力が増してきた。
「ッ!!・・・姉ちゃん、大丈夫だからね?早く家に行こうね?風邪引くから」
髪を撫でながら小さい子を宥めるように、優しく言う。
「・・・・・・」
「まだご飯食べてないんだよね〜、お腹空いたから早く家に帰ろうよ」
なるべくいつもの会話みたいに、違和感の無いように話しかける。



「・・・・・・なに食べたいの?」

背中から痛みが和らいでいく。

「う〜ん、部活で身体動かしたからさ、ものすごくお腹へってるんだよね、肉が食べたいかな」
「うん・・・それじゃいっぱい料理作るよ」
背中から手が離れていく、その手が勇の左腕に移動する
「それじゃ早く帰ろう。」
左腕に姉がしがみついるから歩きにくいが、拒んだらまたややこしくなりそうなので、そのまま歩こうとすると。


「あの・・・・・・お兄ちゃん・・・」

忘れてた・・・・・・
「凪ちゃんごめん、こっちにおいで」
凪が泣きそうな顔でこっちを見ている。
左腕は姉で埋まっているので右手で凪を手招きする。
子供が2人いきなりできた気分だ。
小さな女の子と女性に挟まれて歩く光景は周りから見たら微笑ましく写るかもしれない。

しかし勇は息苦しくて仕方がなかった。
勇の頭の中は寝ることでいっぱいだ、
(早く帰って寝よう、今日はイロイロなことがありすぎた・・・)

疲れはてた身体で考えることは難しく、姉との週に一度の約束も忘れてしまっていた。

「ただいま〜」
玄関を開けて誰もいない家に声をかける
「おかえりなさい」
一緒に入ってきた姉が小さな声で答える。
少し後に続いて凪がおじゃましますと家の中に入ってくる。
玄関で立ち止まってても仕方ないので、靴を脱ぎ凪を連れてリビングに入る。
姉は靴を履いてないので先にリビングに入ってくれてよかったのだが
何故か靴を脱いでリビングに入るまで、玄関を離れなかった。

ふぅ、やっと落ち着ける。
ソファーに腰をかけため息を吐くと、凪はオドオドしながら部屋の中を見渡している。
「凪ちゃん、こっちに座りな」
隣をポンポンと叩くと、凪はそれに従ってソファーに座った。
姉を見るとチラチラとこちらを意識しているが、なにも言わず冷蔵庫を覗いている。
「お腹へってるから早く食べたい」
「うん・・・それじゃ簡単な物にするね?」

正直早く寝たい・・・
欠伸をしながら目を擦る。
凪を見ると下を向いたまま動かない。
寝てるのかな?と思い顔をのぞき込むと、目は開いている。
目線をたどると俺の手を見ている。
少し凪の顔を眺めていると、やっと顔をのぞき込まれてることに気づいたのか、凪がヒャァッと変な声をあげて飛び上がった。
「手になにかついている?」

「・・・・・・お父さんみたいに優しい手してる」
勇の手を握り小さく呟く。

お父さん亡くなったんだったな・・・そりゃ寂しいよな。
「そっか、お父さん優しかったんだね」
凪はポロポロと涙を流しながら勇にしがみつき、小さな声で泣き出した。
俺からはなにも言えないよな・・・
自分の無力さにイラッとするが、どうしようもない。
明日はちゃんと家に帰さなきゃ、親が絶対に心配してるはず、でも今日だけはこの子の父親でいてあげよう。


この子は一年前の俺だ・・・父に依存していた俺は父が死んだ時一瞬で自分の世界が崩壊した。

父が死んだ後、依存する対象が姉しかおらず、父から姉に移った。
結果俺は立ち直ったが、その「代償」は大きく、俺の心の隙間が姉の心に伝染したのだ。

その隙間が大きな亀裂となり家族を失う恐怖と、一人になる寂しさから、姉は俺を離さなくなった。
今の姉はしていることは違えど「あの人」を思い出す、
「暴力」でしか愛せない。唯一歪んだ愛を俺にむけた人・・・
もう誰もいない夫婦部屋に目を向ける。


「2人には広い家だな・・・・・・」
姉も凪にも聞こえない小さな声で呟いた。



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