PINKちゃんねる-エロパロ&文章創作板「依存スレッド」まとめページです since2009/05/10

作者:◆MkmoheL0Rc氏

ざくり、ざくり。
靴の中に砂が入らないよう、気を使いながら歩く。
「はぁ・・・何で僕はこんな島にいるんだろう」
僕は夜中の浜辺で一人、深く溜息をついた。

何でこんな所に引っ越してしまったのか。
事は2週間前に遡る。


「優歌、引っ越すぞ」
夜中の2時過ぎ。
自室で黙々とエロゲをやっていた僕に、義父が突然そう告げた。
義父は民俗学の学者をしていて、研究の為にあちこち引っ越すことが多い。
だから僕はさして驚かず、画面から目も離さずに聞いた。
「どこですか。あんまり遠くは嫌なんすけど」
「安心しろ。一応東京都内だ」
「なんだ、都内か。じゃあどこでもいいです」
「お、そうか。じゃあ1週間後引っ越すから、準備しとけ」

ーーーーーーーー

それから1週間後。
準備を整え、僕らはタクシーに乗るところだった。
義父が運転手に言う。
「成田までお願いします」
・・・・・!?
「え・・・ちょっと。なんで空港へ行くんですか」
「ああ、まあフェリーで行けないこともないが・・・石垣島までは飛行機で行けるからな。使わない手は無い」
「そうじゃなくて・・・・どうして都内にある場所に向かうのに飛行機を使うんですか?」
「いや・・・行き先は東京都に属してはいるが、島だぞ。飛行機や船を使わないと移動は厳しいだろう」
島・・・・。
そりゃ、都内ではあるけどさ・・・。
「・・・てっきり僕はここら辺の近くだと・・・」
「お前の勉強不足だな。東京都にも島はあると覚えとけ」
確かにそれは事実だ。
「はぁ・・・改めて聞きますが、どこに行くんですか?」
「白夜島という島だ。これと言った観光スポットもないから、ほとんど自然や民俗文化がそのまま保存されている」
「・・・要するにド田舎、と」
「まあそうだ」
義父はあっさり肯定した。
しかし僕はそう簡単に現実を認められない。
「電気は?」
「大丈夫、自家発電装置を持参している」
「・・・・ガスはありますよね?」
「無いだろうな」
「フェリーは何日ごとに来ますか?」
「・・・1ヶ月に1回、天候が良ければ来るらしい」
「何ですかそれ・・・・・」
・・・とりあえずその島に何も無いということは分かった。
がっくりとうなだれると、慰めるように義父が言った。
「まあまあ、その島は美人が多いらしいぞ?」
「そんなのに釣られるか!」
「・・・島ではずいぶんと過疎が進んでてな、若い男の子は歓迎されるぞ・・・色々な意味で」
「・・・え・・・本当ですか?」


ということがあって、僕ーーー深山優歌(15歳)は白夜島という島に来ている。
幸いにも島民の方は皆親切そうだった。
悪天候による遅延もあり、島に着いた頃には夜がずいぶんと更けていたのだが、何人かの島民が嬉々とした表情で出迎えてくれた。
明日はきちんとした歓迎会をするらしい。
「歓迎会、か・・・・」
幼い頃から転校と移住を繰り返して来たが、そんな経験は初めてだ。
まあ、どうせ僕は馴染めないのだろうけど、それでも嬉しい。

「はぁ・・・」
ふと辺りを見渡す。
何も無い。
ただ白い砂浜と、限りなく黒に近い群青色の海がどこまでも広がっているだけだ。
波が浜辺に打ち寄せる音を聞きながら、僕はやけに淋しくなって、そのまま立ち尽くしていた。


どれほど時が経っただろうか。
「・・・帰るか。あのボロい民宿に」
そう呟いて踵を返すと、一人の少女が目に入った。
少女ーーーと言っても僕よりは年上のようで、不適切な表現かもしれないが。
後ろ姿がやけに哀愁を漂わせていた。
僕自身、寂漠とした気分だったので、
「こんばんは」
と、声をかけてみた。
彼女はやや驚いたように、びくり、と肩を震わせて、こちらを振り向いた。
アージエンスのCMに出れそうな長い黒髪。
無機質なように思えるほどの白い肌。
すらりとした体型。
黒いガラスのような瞳。
美少女。
そしてーーー盲いているようだ。
盲目の美少女。
ふむ、なかなか個性的じゃないか。
と思っていると、恐る恐るといった感じで訊ねられた。
「だ・・・誰ですか?」
僕はスマートに挨拶する。
「今日この島に引っ越してきた、深山 優歌、です」
「みやま、ゆうか・・・」
彼女は味わうようにゆっくりと呟き、それから、
「白峰雪灯(ゆかり)です」
と自己紹介した。
「白峰さん、か。高校生かな?」
「あ・・・16歳ですけど、学校は通っていないです」
「そっか。変なこと聞いてごめんね」
「いえっ・・・全然そんなことないです。それより・・・その・・・」
「ん?」
ファスナーが開いてます、とか言われたらショックだなあと一瞬思ったが、彼女は盲目だから分かるはずがない。
「と・・・友達になっていただけますか?」
友達?
予想外だ。
「別にいいけど、そn「ありがとうございますっ!」
そんなにいいものでもないよ、と言おうと思ったのだが、彼女の歓声に遮られた。
「そんなに嬉しかった?」
「はい、すごく!そこらじゅうを駆け回りたいくらい!」
「ちょ・・・夜中だから自重して」
本当にどこかに飛んでいきそうな白峰さんの袖を掴みながら言う。
「家はどこかな?送っていくよ」
「え・・・あ、ありがとうございます」
「そんな・・・”友達”なんだからお礼なんて言わなくていいよ」
僕は照れる振りをしながら言う。
「は・・・はい」
白峰さんは頬を赤らめた。
・・・よし。
これで島民は1人攻略した。
って、そんな訳がないけど、少なくとも好感を持たれたことは間違い無い。
そのまま彼女を家に送りーーーやたらと大きな家だったーーー僕も民宿に帰った。





そして今。
僕は自室で机に向かっていた。
いつものように便箋を取り出し、今日の出来事を綴る。
ーーー日記ではない。
「彼女」への、手紙だ。
届くあてなど無い。
それでも、僕は書かなければならない。
贖罪が終わるまで。



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