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乙一や滝本竜彦のような小説が好きで、青春小説が読みたいけど、ちょっとオドロオドロしい変わった青春小説が読みたい。

そんな方には大槻ケンヂ著「新興宗教オモイデ教」をオススメしたい。



そうあのアダルトゲーム業界に多大な影響を与えたビジュアルノベル「雫」の下敷きとなった作品である。
(余談であるが、「雫」を出したLeafでシナリオライターをしていた原田宇陀児が本書の外伝を執筆している)

今画面の前の人は、宗教もの? 全然青春小説じゃねぇじゃねーか! 死ね! ハゲ! とか思っているかもしれませんが、違うのです。それは大いなる誤解なのです。タイトルに新興宗教等と入っていますが、これはれっきとした青春小説なのです。乙一の小説や滝本竜彦のような非常に読みやすく読了後になんとも言えないカタルシスに浸れる名作なのです。

そもそも青春小説を読みたいという人はキラ☆キラした十代少年少女による「夢」や「恋愛」等を題材としたものを読みたいと思っていて「宗教」なんて泥臭いものを題材にするべきでない、と考えている人も多いかもしれません。
しかしそれは間違いなのです。本書が教えてくれます。
この小説には青臭い青春に「宗教」という暗い色彩を加わえた、まさに灰色の青春が詰まっているのです。
ちょっと本の裏に載っているあらすじを読んでみましょう。

一ヶ月前に学校から消えたなつみさんは、新興宗教オモイデ教の信者になって再び僕の前に現れた。彼らは人間を発狂させるメグマ祈呪術を使い、恐るべき行為をくりかえしていた――。狂気に満ちた殺劇の世界に巻き込まれてゆく僕の恋の行方は?オドロオドロしき青春を描く、著者初の長編小説。


と書いてあります。序文に「メグマ祈呪術」やら「狂気に満ちた殺劇の世界」なんて言葉が出てきていますが、ちゃんと青春小説と銘打ってあります。

ほう、そうか、ハハ、ちゃんと青春しとるんか、なら安心やなぁ、今度本屋で見かけたらちょっとペラペラ捲ってやりまひょ、とあなたは思い、ふとしたことに本屋に出向き「新興宗教オモイデ教」を運良く見つけ、ちょいとペラペラタイムとしゃれこみますか? なんて思い捲って飛び込んだ目次タイトルに。

『誘流メグマ祈呪術』
『神猟塚聖陽心霊治療塾』
『僕の爆弾』

なる青春とは全くかけ離れた奇怪な文字の羅列に「こんなん読めるかぁーーーー! 死ね! 死ね! クソがぁ!」とか叫びながら店員の目も気にせず床に叩き落してトイレ等に出向いた靴で本書を踏みたくなる衝動に駆られるかもしれませんが、そこは抑えて! もう少し辛抱して本書を読んでみて! 目次なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ!
貴方は頭痛がしてくるのを抑えて最初の一ページ目を捲ります。
するとどうでしょう?
最初の目に飛び込んでくる文字は、

「ねぇ、あなたはどうやら筆記用具をどうやらみんなおうちに忘れてきちゃったみたいねぇ、どうするつもり? 先生ももうじき黒板を消しちゃうよ。試験範囲だってよ、絶対出るってよ。私、シャーペン貸さないよ。だって返ってこなさそうなんだもん。なあに、ノートも持ってきてないの。どうするの? 書くもの何もなくて。フフフ……そうだ。私、ボンナイフ持ってる。貸して上げようか。ノートのかわりがあんたの腕で、シャーペンがわりはボンナイフ。ギリギリギリギリ刻みなさいよ。そうすりゃあんたぐらいボーっとした人でも絶対忘れないでしょう」

等と初っ端から電波受信しそうな台詞が出てくるではないですか!
ここまできたらもう貴方はなつみさんの虜。貴方はなつみさんと八尾君の甘酸っぱい青春物語を目撃せずにはいられなくなっている筈です。確証は全くないですが。現に僕は「ハハ、困ったツンデレやなぁ〜、よござんすよござんす。ハハ、読み進めてみたら数学の前川センセと付き合っとるんか。多分主人公を振る向かせる為に先生と交際したんやなぁ、いやぁ〜、主人公を振り向かす為にここまで身体張るとは、ホンマ健気な娘やでぇ〜」等と思ったものです。
そう長い話でもないので最後まで一気に読んでしまえるでしょう。そしてあなたはこの二人の関係のもどかしさに青春を感じ、これぞ正当な青春小説だ! と思うことでしょう。
導入部分はアレでしたが、これはちゃんとした王道青春ものなのです。せつない気持ちでいっぱいにさせてくれます。
是非一度読んでみてください。

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