ときの声があがる

まるで、竜の顎のような門が開かれる。
自分にとって、二年前までなら当然だったこと…でも、一年前からは、もうありえないかもしれないと思っていたこと
かって一度も外敵に開かれたことない門が、今、《外敵》として戻ってきた自分の前に開かれる。
それをしたのが自分だと言うことが、ささやかな歓喜と僅かな後ろめたい気持ちを湧き起こす。

だからだろうか、自分の足は門に向かって踏み出すことがない。

進まないといけない。立ち止まっていてはいけない。
全てではないけれど、ひとつの《終わり》の為にたどり着かなくてはいけないのに。
あの門の向こう、城の最奥で待っているであろう《家族》、父と兄にまみえなくてはならないのに。
今此処に自分が立つために、あの門を開く為に払われた多くの《代償》の為にも。
自分は決めたはずなのだ、なのに…
そう必死に動かない足を叱咤していた時――

「なにやってんだ、姫さん。いくぞ!」
怒声とともに自分の体が、動かなかった足がフワリと浮いた。
「えっ?!」と思った時には、もう自分の目線の前にあるのは輝く琥珀の瞳で。
最前線で剣を振るっていたはずの剣士。自分が望んだ、ただ一人の騎士。
その相手が、片手で自分を自らが駆る馬(エクスマキナなので厳密に馬とは言えないが)に抱えあげたのだと気づいた時には、また叱咤の声が降って来ていた。
「姫さんが行かなきゃこの戦いは終わらないだろうが!。なにボッとしてんだ!」
「ふえっ?!。ご、ごめんなさい!」
未だ飛び交う矢や魔法をさなか、最後方の自分の元まで戻ってきてくれた苛立たしげな相手の言葉に、思わず首を竦めて謝罪の言葉を返してしまう。
ま、また、またお説教なのだろうか?。こんな戦場の真ん中で?。さらに、みんなの前では流石に不味いのに…
そんな(ある意味)場違いな心配が一瞬頭をよぎらせて不安げな顔になった自分のためだろうか、ふっと表情を緩めた相手は、いくぶん気遣わしげな言葉をくれた。
「ま、姫さんの気持ちをわからないではないけどな」
「…アル」
「でも、ここで足を止めてるわけにはいかないだろ」
「…はい」
見渡す周りの世界はまだ戦いが続いている。血が流れている。
自分が決めて求めて起こした戦いだ。流した血だ。
彼にも共にと求めた戦いと血だ。
はじめたのが自分なら、自分が終わらせなくてはいけない。
「だから、前にも言ったろ。こんな時は、ごめんなさいじゃなくて、別の言葉をくれって」
「あっ…」
「俺は姫さんの騎士だからな」
「…はい」
そうだ。一人で進めないなら、動けないなら、進めてもらえばいいのだ。
自分が求める限り傍にいると、ともに進んでくれるといってくれた人がいるのだから。
「あたしを一緒に連れて行ってください!。あそこへ!」
そう指し示す、開かれた門の向こう。今共にたどり着くべき場所
終わらせるために。そして、今此処で戦っている人たちを、世界を守るために。
「よし、しっかり捕まってろ!」
応えの言葉と共に、二人を乗せた馬が一気に戦場を駆け抜け、門に向かう一軍の先頭に踊りでる。
そのまま神速で軍勢の中を駈け抜ける馬を駆る己の騎士に必死にしがみ付きながら、ふと思う。
かって今は亡き母の迷宮から脱出するときも、彼に手を引かれてたなと。

母へ、過去への想いに立ち止まってしまった自分を引っ張ってくれたのは、彼の手だ。
そして今、父の元へと続く未来に、手を引いて共に駆けてくれるのも、彼だ。

不思議な想いがこみ上げてきて、暖かさが心を満たし、頬が緩む。そして、思わず彼にしがみ付く腕に力がこもる。
勿論、自分の非力な腕にこもった力の違いなど、今の彼にはわからないだろうが。

そうして、自分は開かれた門をくぐり、かって追われた城に戻ってきた。
あの時と同じ、二人で薄暗い地下道から抜けた城に、今は光の中に同じ二人で…


―――了






やればシリアスもできるじゃん、私!というSSです(爆笑)
つか、ベネットに答えた「俺と姫さんは、ダロスTN−1に〜(ウンヌン)」の一文だけで、こんだけ妄想ができる私って、たいがい終わってるな。
でも、萌えじゃないですか、「戦場を駆ける馬に騎士と姫が相乗り」
相乗りだよ、相乗り。ついでに、ミニスカ相乗りだよ!!!(←マテイ?!)
うん、ダロスTN−1、美味しすぎるモビルホースだ(笑)

ちなみに、アルさんが問答無用で陛下を馬上に抱き上げてるのは、本編で王子が部長になんの相談もなく一緒に乗ってると宣言してるからです。
さらりと、素で・・・・・・そりゃもう問答無用にするしありません!(断言)




☆☆☆☆☆☆ちょっとだけ追加部分


ベネット「ところで、ダロスTN−1。あんた、たしかタクティクスガイドには『統一帝でも剣聖でも自分の乗り手として駄目出しした』ってあるでやんすが、アルならいいんでやんすか?」
ダロス「まあ、あの男もその剣聖の弟子だけあって悪くはないが…」
ベネット「ないが…?」
ダロス「私にとっては、あの男を背にのせる利点があったということよ。狼娘、かのガイドには我に関して他にも記述があったろう」
ベネット「…えーっと『騎士的性分をもち、特に年若い乙女の危機を放っておくことができない』でやんすな」
ダロス「ならわかろう。実際、軍師殿の言うとおり、アル・イーズデイルのおかげで念願が叶ったというもの」
ベネット「へ?!」
ダロス「背に乗せるなら、むくつけき野郎よりも、若く美しい乙女に限る。さらに清楚可憐・優雅にして高貴なら言うことはない」
ベネット「つまり、あんたの目当ては、アルが一緒に乗せるであろうピアニィ陛下だったと…」
ダロス「うむ。実によい気分で疾駆をさせてもらった。多少のオマケは気にならなかったぞ」
ベネット「う、う、う、馬―――――っっ!!!




私のシリアス成分は、1Pしか持たない模様
ちなみに、追加部分は感想書いてる時に思いつきました
ゴメン、馬(笑)
でも、このあたりはアルさんにチクってもいいよ、ベネ子さん

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