過去に書いた小説のまとめと新しく書ければ書いてみたいなと。

2,3日の間はジャイアンが登校してこなくても居ない方が静かで良いと
安心していたのだが4日目になってさすがにのび太も不安になった。
まさか本当に首つって死んでるのでは?
銅鑼えもんに相談してみると
「そんなにショックだったのかなぁ?ジャイアン意外と
 繊細というかデリケートな部分があるからな。」
などと言って余計にのび太を不安がらせる。
謎春奈までもが
「ジャイアンさんあれ以来PCに触ってないみたいですねぇ…」
と意味ありげに言うので更に不安は蓄積される。
「じゃあ、僕お見舞いに行って来るよ!」
「そうだね。責任の一端は僕らにもある様だし。ん?あるかな?」
「ジャイアンさんの家に着いたらPCをNETに繋げてくださいよ。
 あたしもお見舞いに行きますから。」
「謎春奈さんは優しいんだね。」
「あたしにも責任あるようですし。」
う゛にゅうが居なくなってから謎春奈の挙動が心配されたが
これと言って不具合は見られなかった。
だが、暇を見つけてはう゛にゅうを探している様である。
のび太はその事を知っていたがジャイアンにPCの事で
難題を振りかけられた時に居てくれると心強いので
是非、謎春奈には来てもらいたいと思った。

ジャイアンの家に行くと、年中無休のはずの店は閉まっていた。
「あれえ?どうしたんだろう。」
「勝手口に回って見よう。」
勝手口に回ってジャイアーンと呼びかけてみたが返事がない。
留守なのだろうか。しかししばらくするとドアが開いた。
「のび太君かい…」
出てきたのはジャイアンの母であった。
だがいつもの威勢の良さがまるでない。
「おばさん、どうしたんですか?」
その質問には答えず、ジャイアンの母は大声で泣き始めた。
「剛が!タケシがー!」

おばさんを落ち着かせ話を聞いてみるとあの事があった朝、
ジャイアンを起こそうとしたがなかなか起きないので
腹を立てて頬を張ってみたが反応がない。
それ以来ジャイアンは布団の中で意識が戻らないらしい。
医者には診てもらったが別に異常はないらしい。
のび太と銅鑼えもんは驚いた。そんなにショックだったのか…

ジャイアンの部屋に通してもらい、
横になっているジャイアンを見ると
ただ寝ているようにしか見えなかった。
だが奇妙な感じがした。気配がまるでないのだ。

のび太はいつもジャイアンを恐れているため
小動物が危険を察知するがごとく、間近にいるとジャイアンの気配を
ビリビリ感じた物だ。だがそれが全く感じられない。
そこで寝ているのは、まるで抜け殻の様だ。
「これ寝てるんじゃないな。」
銅鑼えもんもそれを感じていたらしくジャイアンの傍らに座って
しげしげと観察している。
「どうしちゃったんだろうね?」
「この状態どこかで見た事があるんだよな、う〜ん。」
そう言ってのび太の顔をじろじろと見つめる。
「…そうだ!これタマシイムマシン使った時の状態だ。」
「ええ?魂だけ昔に返しちゃうあれ?」
「君は自分が行っちゃったから分からないだろうけど
 確かにこんな状態だった。その人の雰囲気が
 まるで無くなっちゃうんだ。君の場合は目を離せないなって言う
 危うさがストンと消え失せたよ。」
「じゃあ誰かがジャイアンの魂を過去へ送っちゃったの?」
「いやタマシイムマシンを使った状態に似ているのであって
 そうじゃないと思うんだ。たぶん魂が抜けてる状態だね。」
「ええ!じゃあ死んでるの?」
そうのび太が叫んだ瞬間、部屋の入り口からガチャン!と何かを
落とした音がした。
「馬鹿。大声でそんな事言うな!」
ドアの外でドタドタと誰かが走り去る足音がした。

「とにかくどうしてこんな事になったか調べてみよう。」
「タイムマシンで過去に戻るの?」
「いや、面倒だからタイムテレビを使おう。」
銅鑼えもんはポケットから14インチ液晶テレビほどの大きさの
モニタを出した。
「メモリを4日前にあわせて…」
「な、なんだか怖いね。」
「どうして?」
「お化けとか写ってたらどうする?貞子みたいな?」
「イヤな事言うなよ。」
「それでさ、ジャイアンの魂抜いた後でこっち見て言うんだよ。
 カメラ目線でさぁ。『次はお前だぞ!』って。うぎゃー!」
「自分でビックリするなよ!」
4日前の映像を見るとジャイアンはノートパソコンに向かっていた。
怒り顔でブツブツつぶやきながら一心不乱にキーを叩いている。
「こ、こ、このモニタから出てくるんだよ。手が。ウギャー!」
「氏ね!」
だがそんな物は出てこずにジャイアンの手がはたと止まった。
そしてモニタに向かって何かわめいている。
「? 何言ってるんだろ?」
「あ、サウンドカード調子悪くて音でないんだった。」
「ダメじゃん!」
と、その瞬間モニタ内のジャイアンはバタッと倒れた。

何度かアングルを変えて見てみたがモニタに何が写っているのかは
判明しなかった。ちょうどジャイアンのでかい背中がじゃまなのだ。
「一体どうしたんだろう?」
「だから出たんだよー!あのノートパソコンに。」
「馬鹿な事言うなよ!」
「呪われてるんだって。それでジャイアンは…」
「じゃああのパソコン調べてみれば良いんだ。」
「や、やめなよ〜!」
「そんな呪いとかお化けとか非科学的な…」
銅鑼えもんがノートパソコンを開けた時ドアが開いた。
「ウギャー!」
「やあ、スネ夫。君もお見舞いかい?」
「なんだ。スネ夫かー。」

「ジャイアンのお母さんに聞いたよ。意識不明なんだって?」
「そうなんだよ。それでこのノートパソコンが…」
「そうそう。意識がないなら必要ないもんね。返して貰おう。」
「いや、やめた方がいいよ!絶対やめな!」
「何でだよ?」
「ノ・ロ・ワ・レ・テ・ル・ン・ダ」
「こいつヴァカ?」
スネ夫が銅鑼えもんに尋ねたが銅鑼えもんはそれを否定出来なかった。

次の日からスネ夫が学校に来なかった。

「絶対呪われてるんだって!」
「う〜ん。」
スネ夫の家に様子を見に行った帰り道での会話である。
スネ夫の状態はまるっきりジャイアンと一緒。
違いは母親がジャイアンの家より取り乱していたぐらいだ。
銅鑼えもんは今日こそはあのノートパソコンを
調べてやろうと思っていたのだが
何故かスネ夫の部屋やアトリエには存在しなかった。
鍵はあのパソコンに有るに違いないのだが。
のび太のわめき声を無視しつつ思案を重ねていると
出来杉に出会った。
「捜していたんだよ!静ちゃんが大変なんだ!」

話を聞いてみると静ちゃんが突然倒れたらしい。
母親が不在なので病院に電話しようと思ったが
病気ではない様なので銅鑼えもんに相談したかったのだそうだ。

静ちゃんの家に行くとジャイアンやスネ夫と同じ症状。
ベットに寝かせてあるがこれは出来杉の判断だろう。
ふと机の上を見るとスネ夫のノートパソコンが置いてある。
「なんでこんな所にスネ夫の…」
「静ちゃんのお父さんが百科事典のCDROMをお土産に買ってきて
 くれたそうなんだけどWin用だったから借りてきたんだ。」
「じゃあこのパソコンをいじっている時に静ちゃんは?」
「そうなんだ。」
「やっぱり呪われてるんだよー!」

そんな事を話している時に静ちゃんの母親が帰宅した。
出来杉が事の次第を説明してとりあえず医者を呼ぶ事になったので
一行は帰る事にした。
「このパソコン借りていって良いかな?」
「スネ夫君も意識不明な事だし調べて貰えるかな?」
「うん。」
のび太はそんなパソコンを家に持って帰るのはイヤだったが
静ちゃんの事を考えると調べないわけにも行かない。
家に帰って徹底的に調べさせよう。銅鑼えもんに。と思った。

銅鑼えもんはそれこそHDDの隅から隅まで探し回ってみたが
何も怪しい所は見つけられなかった。
「おかしいなぁ別に怪しい事無いぞ?」
「何処か見逃してるんじゃないの〜?
 絶対書いてあるはずだよ!
『このファイルを開いたら何人かに同じファイルコピーして
 開かせないと死ぬるぞ!』とかさあ。」
何故こいつにはこんなに危機感がないのだろう?
楽しんでいるとしか見えないのだが。
いつも俺が助けているから自分が危機に見舞われる事は無いとか
甘い事でも考えているのだろうか?
それなら一度原子分解銃で殺してみるのも良いか?
少し過去に戻ればこいつは存在してるんだし。
死ぬ時の感覚・記憶だけを保存して置いて後で植え付ければ…
フフフ…ヒヒヒャハウヒヒヒ

「わあ!銅鑼えもんが呪われた!」
「はぁ?」
「だって画面見ながら突然笑い出すんだもん。
 こんな時に不謹慎だぞ!」
オイオイ不謹慎なのはどっちだよ。
やっぱりこいつは一回殺して、死ぬ時の記憶を…記憶を…
「保存だ!」
「え?え?なに?なに?」
そうか!未来で一時期こんな症状が流行った事があった。
何故忘れていたのだろう?ひどい所では町中の子供が
みんなこんな風になったっけ。
銅鑼えもんはまたノートパソコンをいじり始めた。
何処かにショートカットがあるはずだ。どこだ?
銅鑼えもんが捜していたショートカットは
ダイヤルアップネットワークの中に隠してあった。
見た目には普通のアイコンにしか見えない。
だがリンク先は…

「やっぱりだ。」
「何か見つけたの?」
「これだよ。『PC革命バーチャルk』」
「何なのそれ?」

「このソフトはね。当初人間の記憶をバックアップするために
 作成された物だったんだ。
 ところがバックアップを取ると本人が意識を失ってしまう。
 だからコピーじゃなかったんだな。
 どうしてそんな事になるのかは謎だけど、
 あるシステムエンジニアが言うには
 『このソフトは記憶だけではなく魂に干渉してしまうために
 本体、つまりハード側が抜け殻になってしまう。
 BIOSを抜き取られている様な物だ。
 コピーを取る様に設計されている筈だが
 どうやってもうまく行かない。
 きっと魂という物は同じ次元に2つ存在しては
 いけない物なのだろう』
 などと言っていた。その当時は気の利いたジョークとしか
 取られなかった様だけどね。
 このソフトを元に色々な物が発明された。
 でもそれはもっと先の話なんだ。制御しきれなかったんだね。
 22世紀にはクローンに魂を移し替える事も可能になったけど。
 
 発明発表されてすぐにコピー品が出回った。
 殺人に利用されてしまったりするから
 厳しく取り締まられたけど恐ろしいクローンが出回ったんだ。」

「クローンって?」
「勝手に改造したソフトさ。バーチャルk。このソフトだよ。
 『場茶毛』って隠語で日本でも大流行した。
 でもこのソフトは不完全だったんだ。いや…
 完璧すぎたのかな?」
「一体なんなのさ?さっぱり分からないよ!」
「魂を取り出してね、PCに取り込んでPC内で活動できる。
 それが魅力だったのさ。ゲームの中に自分自身として
 登場して遊べる。スキルのない奴でも自由にネットワークを
 歩き回ってハッキングだって出来る。」
「面白そうじゃない!」
「うん。最初の内はみんな大人しくゲームしたり
 人のPC覗いたりしていたんだ。そのうちに
 これ専用のネットワークゲームもいくつか出来た。
 これも市販のゲームの改造とかが殆どだったけど。
 でもこのソフトは重大な欠陥を抱えていたんだよ。」
「何?」
「まず、入り込んだPCに不具合が出ると帰ってこられなくなる。
 元はクラックソフトなんだ、かなりの確立で不具合が出たよ。
 しかもフリーズしたりするとそれだけでダメになっちゃう。」
「ダメになっちゃうって?」
「人間は細胞が常に入れ替わる様に感情とか記憶とか
 そう言った部分も常に累積・消去を繰り返して居るんだ。
 寝ている時だって夢を見て立ち止まらない様にしている。
 只のデータじゃないんだよ。生きて居るんだ。
 だから活動を停止しちゃうと魂が死んじゃう。」

「ええ!?」
「もし復旧させて救助する事が出来たとしても
 あまり長い時間、体に魂がないと帰れなくなっちゃう。
 体は寝ているのと同じ状態なんだ。
 つまり細胞とかは入れ替わっている。
 うまくリンク出来なくなっちゃうんだよ。
 点滴とかで体を持たせていてもダメなんだ。
 仮死状態にする事も試されたけどうまく行かなかった。
 これらが解決されたのはだいぶ後の事だよ。」
「じゃあ、ジャイアンやスネ夫や静ちゃんは…」
「タイムリミットがある。個人差があるけどあんまり長くは…」
「そ、そんなぁ!」
「それにPCの中で大人しくして居ればいいけど
 もし怪我でもしていたら…」
「…していたら?」
「上手く体に帰れたとしても障害者になるよ。」
「そ、それは大けがだろ?」
「違うんだ。それがこのソフトが完璧すぎたって言われる
 もう一つの理由なんだけど、怪我をするとね
 本当に怪我をした様に書き換えられちゃう。
 しかもそれを神経系のDNAに書き込んじゃう物だから、
 怪我した部分が直らない。一生そのまま。
 見た目には最初何ともないんだけどとても痛い。
 その内患部が壊死してくる。腐っちゃうんだよ。
 ただ上書きされた状態だから組織は治ろうとしない。」

「でも、でも、コンピューターの中なんて安全だろ?」
「不良クラスタの崖。灼熱のファイアーウォール。
 立ち寄ったPCがハングして凍り付くかも知れない。
 突然上書きされて押しつぶされるかも知れない。
 一番怖いのはウィルスさ。かかったらもうお終い。
 突然電源切られただけでもアウトなんだよ!」
「それじゃあ」
「ゲームなんか見つけて気軽に参戦して見ろ。
 ダメージは本当のダメージになって体に降りかかる。」
「このパソコン電源切っちゃってるじゃないか!」
「いや、ここには居ないみたいだよ。」
「じゃあ一体どこに〜?」
「このショートカットの先にさ。」
「?」
「誰かがこのPCに仕掛けたんだよ。おそらくジャイアンが
 ネットしている時にだろうね。
 次回からはネットに繋いだ瞬間に起動する様になっていたよ。」
「でもスネ夫はこれをいじっている時じゃ…」
「そこは謎なんだけどね。」
「静ちゃんは?」
「百科事典ソフトを見てみたら常に最新情報をネットで
 公開するサービスがついてた。
 おそらくそれをいじったんだろうね。」
「一体誰がこんな!」
その時のび太のPCが起動した。
「それやったの、う゛にゅうに間違いないみたいです〜」
謎春奈が半泣きしながら言った。

銅鑼-6-

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