過去に書いた小説のまとめと新しく書ければ書いてみたいなと。

銅鑼えもんは光速船が投げ売りされている過去にまで遡って
一個一万円で大量に購入し秋葉原にある
店内が狭くて臭くて店員の態度が悪いことで有名な
中古ゲーム店に持ち込んで店員を困らせ、せしめた金で
どら焼きを買い込んでウハウハしている夢を見ている時に
のび太にゆり起こされたため非常に機嫌が悪かった。
そろそろ交代の時間だそうだ。
二人は謎春菜の帰りを待っていた。
どちらかが起きていなくてはいけないのは、彼女の仕様的に
ユーザーを起こしたり仕事の邪魔をしたり
出来ないようになっているためだ。
設定で変えられないのかと聞くと
AIの根幹に関わるものなのでだめだと言う。
そういった役目はう゛にゅうに一任されているらしい。
謎春菜によればPC革命はう゛にゅうが仕掛けた事に
間違いないようだ。
ショートカットのリンク先は転送URLになっており、
その転送サービスはすでに登録を解除されてしまっていた。
恐らくその先のサーバにCGIとして
ブラウザから起動が出来るように設置されていたのであろう。
そんな事が出来るのはう゛にゅうだけだ。

タイムプロキシがインストールしてあるマシンが
ここにあるので、未来からのハッキングも予想されたが
状況的にはヴにゅうが一番怪しいであろう。
しかし一体なぜそんな事を?
ジャイアンの一件だけが意図的でその後の二人は
偶発的に起こってしまった事件なのだろうか?
謎は深まるばかりだ。
とにかくう゛にゅうの居場所がわかれば
全てがわかるに違いない。そこへ謎春菜が帰ってきた。
「見つかった!?」
どらえもんは開口一番尋ねたが謎春菜はただ首を横に振った。
「ダメですぅ。
 元々私の権限では捜索できる範囲が狭いんですよぉ。
 ただの便利ツールですからねぇ。」
ため息をつきながら説明する。
AIが自分自信を卑下することは滅多にないことだ。
人間や他の生物と違って
プログラムには自己進化能力を与えられているものの
自己の複製を作成して種族保存を図る能力は
与えられていない。それが与えられているのは
一部の違法ソフト、そうウィルスだけだ。
ウィルスを見ていればわかるようにそこいら中が
そのプログラムで埋め尽くされてしまうからだ。

その代わり防御能力や自己保存能力は
必要以上に装備されている。
自己をデータで理論武装し存在意義を確認する作業が
子孫繁栄と言った目的・命題のない人工知能には
最優先の自己安定措置なのだ。
もちろん反省や自嘲も自己を進化成長させる
大切なファクターだ。だが自分のアイデンティティ
に関わることは極力触れない様に気を使う。
俺も『役立たずのロボット』と自分を卑下することはある。
だが『どうせ子育てロボット』などと言う
自分の根本に関わることは言えない。
成長に限界を観てはいけないのだ。
そんな事を口にしてしまう謎春菜は自分の無力さに
苛立ち焦っても居るのであろう。
相方とはいえRead meを読めばう゛にゅうはいわば半身だ。
人間に置き変えて言えば
『就寝中に夢遊病で勝手に悪さをした。』とか
『二重人格が現れて悪さをした』とか
『ドッペルゲンガーが自分の預かり知らぬ所で殺人を犯した』
ぐらいの意味を持つにちがいない。

「転送サービスが置いてあるサ−バを探って
 過去のリンク先を探るのも権限外なのかい?」
「あそこは重点的に調べてみたのですが
 ここ最近に登録したユーザのログは
 削除されていますねぇ。
 これもヴにゅうの仕業に違いないでしょうけど。」
「万事窮すかー」
「ただ…」
「ただ?」
「pc革命が置けるほどのマシンはそう無いでしょうし、
 しかもオンラインで動作させるとなると
 よほどのパフォーマンスが要求されると思うんですよ。
 回線の太さも尋常じゃないでしょうし。
 ここ最近で大きなデータのやり取りがあった所を
 調べているんですけどねこれが意外に多くて。」
「人間一人分なんてデータ相当な大きさだろう?
 そんな物をインターネットでやり取りしているサーバなんて
 そうはないだろう?」
「ところがそうでもないんですよ。
 どちらにしろパケットに分割してのやり取りでしょうし
 連続した大きなデータだけを探すだけではダメな様でして…」
「一体みんな何をそんなに?」
「違法ファイルや動画データが多いようですねぇ」
「またしてもWarezかー」

「ソフト一本とかなら見分けもつくんですけど
 一遍に何本もやり取りされると
 内容を観てみないとわからないですぅ。
 調べに行くと大抵FTPサーバなので
 またかって思うのですけどCGIとして稼動させて
 データだけFTPかもしれませんし。」
「困ったねぇ」
「困りましたねぇ。でももうちょっと探ってみますね。」
「休まなくて大丈夫なの?」
「リミッターを解除するパッチを見つけてきて
 あてましたんで大丈夫ですよ。」
「ええ?そんな事して大丈夫なの?」
「あんまり長時間はまずいでしょうけど、
 パッチ当てる前のバックアップもとりましたし。」
「けど自分の改造やアップデートは勝手にやると
 まずいんじゃなかった?
 それより自分に自分でパッチ当てたり出来るの?」
「のび太さんの許可を頂いてパッチ当ても
 バックアップもして貰いました。」

「何のことだかわかってた?
 それよりもバックアップちゃんと取れているの?」
「今よりも強くなるって説明したら
 納得してくださいましたよ。バックアップも確認しました。
 ちゃんと取れていましたよ。
 一度終了された状態にならなければ
 いけないので不安でしたが。
 のび太さんはどらえもんさんが考えているより
 ずっと賢いですよ。」
「え〜?」
「人より理解するのに時間がかかるだけなんですよ。
 でもきちんと理解できればその分皆より忘れないでしょうし
 理解も深いはずですよ。」
「そ、そうなのかなぁ?買いかぶりじゃないかな?」
「あせらずに…ってそれは私もですね。」
「うん。頼りにしているよ。」
「では寝ていてください、パッチを当てたおかげで
 ユーザを起こす権限も貰えましたし。」
「そっか。じゃあお言葉に甘えて。」
謎春菜はデスクトップの奥へと消えていった。
頼りにしていると言われたときの嬉しそうな顔が
ひどくどらえもんの心に残った。

俺もこの時代に来て
のび太に最初に頼りにしていると言われたときは嬉しかった。
何時の間にか慣れっこになってしまい
そのうちにウザくなった。
あまりの成長の無さにいらついたりもした。
だが俺のほうにも問題があったのではなかろうか?
そんな事を考えながらのび太の方を見ると
のび太は起きていた。
「さっきの話し聞いてたの?」
「うん。途中から。」
「そっか。」
「謎春菜さん、大丈夫かな?」
「無理はしていないと思うよ。
 AIは自分を傷つけるようには出来ていないから。」
「早く皆を見つけて助け出さなきゃね。」
「うん。」
今まで気がつかなかったけどこいつは成長していたんだな。
思いやりと言う面では誰よりも。
「さあ、せっかく寝る時間を用意してくれたんだ。
 探し当てたら長い作業になるから体力を温存して置こう。」

昼寝ともなれば3秒で眠りにつく特技を持つ
のび太であったがなかなか寝付けなかった。
銅鑼えもんはさっさと寝てしまっている。
ロボットならではのドライさであろうか?
静ちゃんやスネ夫やジャイアンを発見したとして
果たして五体満足に救出出来るのだろうか?
どうやって救出するのだろう?
あれこれ怖い想像をしていると
PCのスクリーンセーバが途切れ謎春奈が顔を出した。
「あら、起きてたんですか?」
「うん、どうも寝付けなくてね。
 せっかく時間作ってくれたのにゴメン。」
そう答えたのはのび太ではなく銅鑼えもんの方だった。
のび太は少し反省した。

「見つけられなかったわけです。
 パッチ当てた私にも権限外、つまりセキュリティ
 ブロックされている場所からの
 アクセスだったみたいです。」
「見つけたの!?」
「ええ、確認できては居ませんが
 おそらく間違いないでしょう。」
「君の権限外って…」
「TCPじゃなくてUDPが使われていたのが盲点でした。
 回線の連続性に信頼があるからって
 人体データに無茶な事してます。」
「一体どこなの?」
「エシュロン…ってご存じですか?」

「エ、エシュロン〜!?」
「な、何なの?教えて?」
「私が説明するよりNET上にも怪文書の類を含めて
 沢山の資料が有りますから読んでみてください。」
「こんな時代になってもまだ活動していたのか?」
「そのようですね。サーバおよび本部施設は
 太平洋上の小島に極秘裏に建設されているようです。
 回線は衛生、静止衛星、成層圏静止飛行船による
 成層圏プラットフォーム、海底ケーブルの
 4回線を使っています。
 小型の原子力発電システムまで洋上に浮かべて
 大規模な情報都市を形作っています。
 衛生に対するステルス施設もあるようで
 静止衛星からはマイクロウェーブまで
 発射されているみたいですね。
 あ、これはこの島を設計したと思われる
 マイクロソフトの子会社から調べました〜。」
「そんな所…手出しできないじゃないか!」
「そうですよね。困りましたねぇ。
 でも一つだけ方法があります。」
「それしかないかな?」
「銅鑼えもんさんの道具を使って
 直接施設に乗り込むことは出来ますが
 命の保証は出来ませんよぉ」
「物理的危害が加わらないだけ
 あっちの方がマシか…」

「ねぇ!いったい何の話なの?」
のび太はエシュロンについての文献を読み漁った物の
殆ど理解が出来ずにいた所で
銅鑼えもんたちが深刻そうに話をしているので
検索作業を打ち切った。
解説文から読みとれたのはエシュロンが怪しげで
悪い組織だと言うことぐらいだった。
「みんなを助けるためには僕らもデータ化されないと
 ダメなんだよ、って話。」
「何だ。難しく言わないで最初からそう言ってよ〜
 …って僕らもPC革命を使うって事!?」
「そう言うこと。」
「だって、と〜っても危険なんじゃないの?」
「だから俺だけで良いよ。」
「へ?」
「俺は元々ロボットなんだからdate化は
 当たり前の事だし。慣れてるからね。」
「でも、銅鑼えもんさんのプログラム言語は
 第4世代超高級言語ですからそのままでは
 PCに載りませんよ?」
「分かってる。PC革命を使うよ。」
「そしたら銅鑼えもんだってあぶないだろ?」
「でも慣れてるし。俺にも責任有るしね。」
「………僕も行く。」
「へ?」

「僕も行くよ!元はと言えば僕がPC出してくれって
 言ったのが原因だし。僕も行く!」
「PCの中がどれだけ危険かについては話したよね?」
「PC革命がどれだけ危険かも聞いたさ!」
「それでも行くの?」
「それでも行く!」
「そっか。それじゃ偽春奈、道案内頼めるかな?」
「はいっ!」
「あ、それとPC革命用意できるかな?」
「もうご用意してあります〜」
「用意が良いね。」
「安心してください。
 皆さん絶対無事に元に戻して見せます。」
「じゃあのび太君から先に逝きな。説明してあげるから。」
「イヤな言い方するなよ。」
「そのアイコンをクリックして…そのダイアログはYES…
 あ、それはNOね。生年月日とかは適当で良いよ。
 うん。それはIDだからかぶらないように…
 nobiだとかぶるみたいだね。…そのフォームは半角で。
 本当にデータ化してよろしいですか?って聞いてるけど。
 OKならOKのボタンを…後はマウスを通して
 勝手に読みとってくれるから、それが売りだからね。
 …じ…おれも…すぐ…に…い………

何かが通り過ぎていくのを感じる。
それも、傍らを、ではなく
自分の体の中を通り過ぎていく。
その正体を確かめようとしたが目を開けられない。
いや、それは正確な描写ではないだろう。
今、自分の中には「暗闇」すら存在しない。
視覚が無いのだ。
それがどんな状態であるのかを説明するのは
恐らく盲目の者にも無理であろう。
体がカーブを切った。
それもGを感じて思った事ではなく
自らを通り過ぎる「何か」のスピードや角度、
そして翻弄される体を通じて確認しただけだ。
こんな状態に陥ってから
一体どれぐらいの時間がたつのだろう?
体を突き抜ける「それ」から
かなりのスピードで進んでいる事が予想出来る。
進んでいる?本当に進んでいるのだろうか?
自分は一定の場所に留まっていて
「何か」が動いているのかもしれない。
そう考えだしたらとても怖くなってきた。
のび太は叫びそうになったがそれも出来なかった。
口も耳も、何より音そのものが無かったからだ。

パニックになってもがいてみるが
もがくための手足も存在しない。
いつか見た事がある夢の様に
手足の感覚はまるで答えてくれないのだ。
だがその刹那にのび太は暗闇を発見した。
視覚を取り戻したのだ。
ただの暗闇だがどれほど懐かしく感じたであろう。
暗闇はだんだんと瞼の裏へ変わっていった。
残像の様な物を見つける事も出来た。
懐かしさと安堵感にそれを注視していると
ため息が漏れた。
ため息!試しに深呼吸をしてみる。
出来る。口が開き、横隔膜が動き肺が蠕動する。
だか喉や気管を通るいつもの乾いた気体の感覚は
まるで無い。だがそれが当然かの様に苦しくはない。
ゆっくりといつもの要領で喉を震わせてみる。
声は出せるのだろうか?
喉は震え、その振動は確かに首や胸に感じる。
だが耳を通してその音は聞き取れなかった。
しかし脳が直接震えるようにして自分の声が聞こえた。

その聞き慣れない声に驚いていると
瞼の裏が次第に白くなってきた。
光だ。
気が付いてみると自分を絶えず貫き続けていた
「何か」が途絶えていた。
もう移動していないのだろうか?
瞼の裏の白さは一定の光量まで行って止まった。
再び感覚のない穴蔵に放り込まれたような
恐怖を感じたが先ほどの無感覚とは違い
無音、無臭、無味、無重を感じる。
目を開けても良いのだろうか?
かくれんぼをした時のように誰かに尋ねたかった。
「もう良いかい?」
誰も答えてくれなかったら?
ひょっとしたら自分の頭の中にだけ響いて
外には響いていないのかも。
一番良いのは目を開けてみる事だ。
学校の教科書で読んだ事がある「杜子春」の
話を思い出す。
片目だけ、恐る恐る薄目を開けてみる。
すると対面には銅鑼えもんと謎春奈が
不思議そうな顔をしてのび太の顔をのぞき込んでいた。
「何してんの?もう行くよ?」

銅鑼-7-

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