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ラテン語古典ラテン語ガリア戦記ガリア戦記第5巻
ガリア戦記語彙集

サビヌスとコッタの最期、ローマ軍団の壊滅


Sabinus,
サビヌスは、

quos in praesentia tribunos militum circum se habebat, et primorum ordinum centuriones
目下、自分の周囲にいる軍団次官たちおよび上級百人隊長たちに、

se sequi iubet et,
自分に随行することを命じた。

cum propius Ambiorigem accessisset,
アンビオリクスのより近くに近づいたときに、

iussus arma abicere imperatum facit
武器を投げ捨てることを命ぜられて、命令されたことをして、

suisque, ut idem faciant imperat.
配下の者たちにも同様にせよ、と命令した。

Interim, dum de condicionibus inter se agunt
その間に、(降伏の)条件について互いに談判している間に、

longiorque consulto ab Ambiorige instituitur sermo,
アンビオリクスにより意図的に話がより長く行なわれて、

paulatim circumventus interficitur.
(サビヌスと配下の者たちは)しだいに取り巻かれて、殺害された。

Tum vero suo more victoriam conclamant atque ululatum tollunt
すると実に、(エブロネス勢は)自分たちの習慣で、勝利を叫んで、雄叫びを上げ、

impetuque in nostros facto ordines perturbant.
我が方(=ローマ勢)に突撃して、隊列を混乱に陥れた。

Ibi Lucius Cotta pugnans interficitur cum maxima parte militum.
そこでルキウス・コッタは戦っていたが、兵士たちの大半とともに殺戮された。

Reliqui se in castra recipiunt, unde erant egressi.
残りの者たち(=敗残兵)は、そこから出発して来たところの陣営に退却した。

Ex quibus Lucius Petrosidius aquilifer,
その者たちのうち、鷲章の旗手ルキウス・ペトロスィディウスは、

cum magna multitudine hostium premeretur,
敵の大勢によって圧迫されたときに、

aquilam intra vallum proiecit,
鷲章を防壁の内部に投げ込んで、

ipse pro castris fortissime pugnans occiditur.
自身は陣営の前でとても勇敢に戦って、斃された。

Illi aegre ad noctem oppugnationem sustinent;
彼ら(敗残兵たち)は辛うじて夜まで攻囲を持ちこたえたが、

noctu ad unum omnes desperata salute se ipsi interficiunt.
夜に、一人残らず身の安全に絶望して、自刃して果てた。

Pauci ex proelio lapsi
若干の者たちは、戦闘から抜け出して、

incertis itineribus per silvas
不確かな道筋を森を通って

ad Titum Labienum legatum in hiberna perveniunt
冬営にいる(副官)ティトゥス・ラビエヌスのところへ到着して、

atque eum de rebus gestis certiorem faciunt.
彼に、行なわれた事の次第を報告した。

訳注:アドゥアトゥカの戦いについて

このように、アンビオリクスはローマ1個軍団と5個歩兵大隊をまんまと冬営地からおびき出して殲滅した。
著者カエサルはこの一部始終を、若干の敗残兵(本節参照)および敵の捕虜(54節参照)から知ったと思われる。
しかしながら、サビヌスらの戦術会議での発言内容から投降までの実に詳細な経緯をいかにして知りえたのか?
また、ウネッリ族との戦役(第3巻17節〜19節)などでは冷静沈着な智将として描かれていた有能なサビヌスが、
このアドゥアトゥカの戦い(26節〜37節)では一転してコッタと対照的な愚将のように描かれているのはなぜか?
この敗戦はガリア戦争におけるローマ軍最大の敗北であり、当然ながら最高司令官であるカエサルの敗戦責任も
ローマ本国の政敵たち、とりわけ小カトーのような元老院派(オプティマテス)によって厳しく糾弾された。
カエサルは、ガリアにおける数々の戦闘での虐殺や捕虜売却、ドゥムノリクスの暗殺、および兵力配分の多寡など
この敗戦に結びつきうる自らの方策とは切り離して、この大きな敗戦責任を「愚将」サビヌス一人に負わせるべく、
脚色して筆を走らせたのかも知れない。)


ガリア戦記5-38へ続く)

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