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前→お笑い論 5.展開（３）「共感の笑い」
次→お笑い論 5.展開（５）天然ボケ
（４）フラ
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（４）フラ 
フラとは、業界用語らしいですが、「笑いを喚起するような外見や雰囲気の特性」のことです。語源は、「フラワー」（＝華）だとも「フラフラしている」だとも言われますが、よくは分かりません。
「笑いを喚起するような外見や雰囲気の特性」というのは、色々例がありますが、前項（１）で挙げたチビ・デブ・ハゲ・ブスは代表的なところです。これらが複合的に帯有されている場合もあります。「チビ」のフラを持っている代表格は、ナインティナインの岡村さんです。「デブ」はたくさんいますが、バナナマンの日村さんを挙げておきましょう。ハゲは、海原はるか師匠や歌丸師匠、エガちゃんなどを思い浮かべてください。「ブス」（ブサイク）もたくさんいますが、やっぱり日村さんでしょうか。これらの明確な属性がないのにもかかわらず、全体としてフラを持っている人というのもいます。たけしさんが代表的なところです。ただあくまで外見上読み取れる特性でないといけないので、性格や性的嗜好などの内面的な部分は、一般的に馬鹿にされるようなものであっても、フラにはなりません。もっとも、外見からこれらの内面的な部分が読み取れる場合もあります。
フラを持っている人は、笑いにおいて有利です。フラ自体がズレであって笑いがとれるという面はもちろんありますが、このズレは外見に常に出ているものなので、早晩飽きられます。より重要なのは、フラを持っていることで、その人が作出するズレの程度に対する受け手の許容度が上がる、何かをやるだけでズレになるといった、副次的な効果が期待できることです。
尾籠な例になりますが、岡村さんや日村さんが「うんこ〜」と言っている場面を想像してみてください。その後に、誰でもいいですが、イケメンや美女が同じことを言っている絵面を想像してみましょう。イケメンの例はセンスが試されるのであまり挙げたくないですが、向井理や速水もこみちがいいでしょう。分からない人はキムタクでいいです。こういったイケメンが先のような発言をしていると、ひいてしまう人の方が多いのではないでしょうか。他方で、岡村さんや日村さんのようなフラを持っている人が言っている場合は、笑えるかどうかはともかく、ひく人は少ないと思います。
この思考実験を通して分かったと思いますが、まず、フラを持っている人は、大きなズレを作出した場合でも、適切なズレとして許容される可能性が高いです。つまり、「イケメンなのに公衆の面前で『うんこ〜』と言っている」というズレは、笑いを妨げるような程度の大きすぎるズレであるのに対して、「フラを持っている人が公衆の面前なのに『うんこ〜』と言っている」というのは、適切なズレなのです。これはなぜかといえば、やはり、前項で説明した通りのヒューリスティクスによる判断が無意識に為されているからだと考えられます。つまり、「チビやデブやブスはイケメンよりもおかしなことをいうものだ」という観念が人々の意識の底にあり、これがあるからこそ、チビやデブやブスがおかしなことをいう場合、「チビやデブやブスだからある程度おかしなことを言ってもおかしくない」となって、基準状態がせり上がるのです。これによって、より大きなズレが適切なズレとして許容されることになるわけです。
もうひとつの例として、岡村さんや日村さんがスーツを着てタップダンスを踊っている絵面を想像してみましょう。その後に、イケメンが同じことをやっている絵面を想像してみてください。
この例から分かることは、フラを持っている人は、何かをやるだけでズレになり得るということです。要は「チビやデブやブスのくせに○○をやっている」というズレが、笑いを喚起するほどのズレだということです。これがズレになるのは、やはりヒューリスティクスによる判断が為されているからでしょう。「チビやデブやブスなら○○はしない」という判断があるからこそ、それをやること自体がズレになるのです。「○○」に入るものは、色々あり得ますが、先に挙げたタップダンスのほか、「プロポーズ」「懸垂」「書き初め」等も入ると思われます。いずれも岡村さんや日村さんがやっている画を想像してみてください。まあ、フラにも強い弱いがあり、岡村さんや日村さんは芸人の中でも相当強いフラを持っているので、この２人をばかり例に出すのはある意味で卑怯なのですが。
まとめると、フラを持っている人は、以下のような点で笑いにおいて有利だということです。
�，茲蠡腓�なズレが適切なズレとして許容される
��何かをやるだけで笑いを喚起するようなズレになる場合がある
では、フラを持っていない人はどうしましょう。
普段は馬鹿にされるようなチビ・デブ・ハゲ・ブスといった特性が笑いの場面においては強力な武器になりますが、この人たちは、前項で考察した通り、笑い以外の実生活の局面では陰に陽に相当の不利益を受けていると考えられるため、無理に漁場を荒らさないというのはひとつの考え方です。彼らも、自分の特性を活かせる世界でチャレンジをしようと自律的な決定をして、お笑いの世界に飛び込んで来たのです。イケメンが中途半端にサムいことをして邪魔するべきではありません。
まあ、ひとつの対処法は、ツッコミ専門になるなど、ボケを捨てて補助的な役割に徹するということです。特にボケが持っているフラが強いと、フラを持っていないまともな外見の人がこれをツッコむことで、ボケのズレがより際立つという効果が期待できます。この典型例がナインティナインの矢部さんです。コンビ結成当初は矢部さんがボケをしていたところ、ＮＳＣの先生に言われて役割を入れ換えたそうです。これは、その先生が岡村さんの持っているフラを見抜いたということでしょう。
もうひとつの対処は、ハゲヅラをかぶったり老けメイクをしたりして、外見にフラを加えることです。イケメンや美女がこういうことをやると、フラを獲得できるというメリット以外に、これ自体がズレとなるという効果もあります。これは、実務の場面でもよく行われていると思います。フラを持っている人がそのフラをより強めるために行う場合もあります。ただまあ、フラを発現させる属性はチビ・デブ・ハゲ・ブスなど結構限られているので、あまりこればかりに頼っていると受け手に飽きられてしまいます。結局は本流のボケの方を工夫しないとダメだということです。フラも、補助的な手段の一つに過ぎません。
もうひとつは、何も対処をしないまま「ひかれるようなことを敢えてやる（そしてすべる）」といったメタなズレを提供する方法があり得ますが、これは受け手によほど共感力がないと本当にただすべるだけで終わる危険性が高いです。
だから、「ＡＫＢのコント番組」とか、最初から大きなハンデを抱えているわけです。わかるでしょう。
あと、最近特に漫画やアニメで、カワイイ見た目（＝フラを持っていない）のキャラにボケをやらせるものが多い気がしますが、あれは何を志しているのでしょうか。カワイイキャラが敢えてボケまくるのがおもしろいと思っているのであれば、それは確実にそんなことはないのでやめた方がいいです。やはり、笑いで強いのはこまわりくんのような強烈なフラ持ちなのであります。カワイイキャラなのにボケるというギャップ萌えを楽しみたいのであれば、別に止めはしません。
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フラを持っている人は、笑いにおいて有利です。フラ自体がズレであって笑いがとれるという面はもちろんありますが、このズレは外見に常に出ているものなので、早晩飽きられます。より重要なのは、フラを持っていることで、その人が作出するズレの程度に対する受け手の許容度が上がる、何かをやるだけでズレになるといった、副次的な効果が期待できることです。
尾籠な例になりますが、岡村さんや日村さんが「うんこ〜」と言っている場面を想像してみてください。その後に、誰でもいいですが、イケメンや美女が同じことを言っている絵面を想像してみましょう。イケメンの例はセンスが試されるのであまり挙げたくないですが、向井理や速水もこみちがいいでしょう。分からない人はキムタクでいいです。こういったイケメンが先のような発言をしていると、ひいてしまう人の方が多いのではないでしょうか。他方で、岡村さんや日村さんのようなフラを持っている人が言っている場合は、笑えるかどうかはともかく、ひく人は少ないと思います。
この思考実験を通して分かったと思いますが、まず、フラを持っている人は、大きなズレを作出した場合でも、適切なズレとして許容される可能性が高いです。つまり、「イケメンなのに公衆の面前で『うんこ〜』と言っている」というズレは、笑いを妨げるような程度の大きすぎるズレであるのに対して、「フラを持っている人が公衆の面前なのに『うんこ〜』と言っている」というのは、適切なズレなのです。これはなぜかといえば、やはり、前項で説明した通りのヒューリスティクスによる判断が無意識に為されているからだと考えられます。つまり、「チビやデブやブスはイケメンよりもおかしなことをいうものだ」という観念が人々の意識の底にあり、これがあるからこそ、チビやデブやブスがおかしなことをいう場合、「チビやデブやブスだからある程度おかしなことを言ってもおかしくない」となって、基準状態がせり上がるのです。これによって、より大きなズレが適切なズレとして許容されることになるわけです。
もうひとつの例として、岡村さんや日村さんがスーツを着てタップダンスを踊っている絵面を想像してみましょう。その後に、イケメンが同じことをやっている絵面を想像してみてください。
この例から分かることは、フラを持っている人は、何かをやるだけでズレになり得るということです。要は「チビやデブやブスのくせに○○をやっている」というズレが、笑いを喚起するほどのズレだということです。これがズレになるのは、やはりヒューリスティクスによる判断が為されているからでしょう。「チビやデブやブスなら○○はしない」という判断があるからこそ、それをやること自体がズレになるのです。「○○」に入るものは、色々あり得ますが、先に挙げたタップダンスのほか、「プロポーズ」「懸垂」「書き初め」等も入ると思われます。いずれも岡村さんや日村さんがやっている画を想像してみてください。まあ、フラにも強い弱いがあり、岡村さんや日村さんは芸人の中でも相当強いフラを持っているので、この２人をばかり例に出すのはある意味で卑怯なのですが。
まとめると、フラを持っている人は、以下のような点で笑いにおいて有利だということです。
�，茲蠡腓�なズレが適切なズレとして許容される
��何かをやるだけで笑いを喚起するようなズレになる場合がある
では、フラを持っていない人はどうしましょう。
普段は馬鹿にされるようなチビ・デブ・ハゲ・ブスといった特性が笑いの場面においては強力な武器になりますが、この人たちは、前項で考察した通り、笑い以外の実生活の局面では陰に陽に相当の不利益を受けていると考えられるため、無理に漁場を荒らさないというのはひとつの考え方です。彼らも、自分の特性を活かせる世界でチャレンジをしようと自律的な決定をして、お笑いの世界に飛び込んで来たのです。イケメンが中途半端にサムいことをして邪魔するべきではありません。
まあ、ひとつの対処法は、ツッコミ専門になるなど、ボケを捨てて補助的な役割に徹するということです。特にボケが持っているフラが強いと、フラを持っていないまともな外見の人がこれをツッコむことで、ボケのズレがより際立つという効果が期待できます。この典型例がナインティナインの矢部さんです。コンビ結成当初は矢部さんがボケをしていたところ、ＮＳＣの先生に言われて役割を入れ換えたそうです。これは、その先生が岡村さんの持っているフラを見抜いたということでしょう。
もうひとつの対処は、ハゲヅラをかぶったり老けメイクをしたりして、外見にフラを加えることです。イケメンや美女がこういうことをやると、フラを獲得できるというメリット以外に、これ自体がズレとなるという効果もあります。これは、実務の場面でもよく行われていると思います。フラを持っている人がそのフラをより強めるために行う場合もあります。ただまあ、フラを発現させる属性はチビ・デブ・ハゲ・ブスなど結構限られているので、あまりこればかりに頼っていると受け手に飽きられてしまいます。結局は本流のボケの方を工夫しないとダメだということです。フラも、補助的な手段の一つに過ぎません。
もうひとつは、何も対処をしないまま「ひかれるようなことを敢えてやる（そしてすべる）」といったメタなズレを提供する方法があり得ますが、これは受け手によほど共感力がないと本当にただすべるだけで終わる危険性が高いです。
だから、「ＡＫＢのコント番組」とか、最初から大きなハンデを抱えているわけです。わかるでしょう。
あと、最近特に漫画やアニメで、カワイイ見た目（＝フラを持っていない）のキャラにボケをやらせるものが多い気がしますが、あれは何を志しているのでしょうか。カワイイキャラが敢えてボケまくるのがおもしろいと思っているのであれば、それは確実にそんなことはないのでやめた方がいいです。やはり、笑いで強いのはこまわりくんのような強烈なフラ持ちなのであります。カワイイキャラなのにボケるというギャップ萌えを楽しみたいのであれば、別に止めはしません。
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