レクイエム・フォー・ドリーム

麻薬問題をテーマとした映画はたくさんあるが実際に麻薬の怖さを唱えているものは結構少ないと思う。その点をしっかり押さえているのが「レクイエム・フォー・ドリーム」で、そういう意味では文部科学省推薦としてもいいんじゃないでしょうか。

母親、一人息子と恋人、友人、とみんな間近にいるのに満たされない関係。それぞれが夢を持ち、自分がジャンキーになるなんてことは絶対にないと思い込んでいる。もちろんそんなことはあり得ない。息子と友人はヤクの売人として一儲けをしようと計画する、決して自分たちは中毒にならないように「味見」程度にクスリを使用することにするという信念を持って。最初はそう思っていても、しだいに何をするにも注射をする。母親のプレゼントを買いにいくときも、母親に会いにいくときもクスリの力を借りなければ事を起こせないのだ。

中でも始末の悪いジャンキーになってしまったのは息子の彼女で、クスリが手に入らなくなった末に恋人にさんざん罵倒したあげく体を売ってしまう。これを観ると女性の方が依存性が強いのではないかと思ってしまう。映画の前半で、息子が彼女に対して「君ならぼくを立ち直らせてくれる」という。それは彼女がクスリに手を出さなければ成立するかもしれないが、同じようにやっていればそうはいかない。男性よりも覚悟を決めるというか、とことんいってしまうのではと感じてしまう。

主人公4人の破滅で唯一かわいそうなのが母親で、ダイエットのために医者から処方された薬を覚醒剤だと知らずに服用してしまう。夫に先立たれ、息子は滅多にやってこない。孤独のなかでクスリ漬けになり廃人となってしまうのだ。麻薬とは無縁と思っている主婦にまで麻薬が浸透してしまうのだから本当に恐ろしい。
映画は「summer」「autumn」「winter」と3部に構成されていて春はやってこないまま終わる。
2005年12月21日(水) 07:07:27 Modified by miu511




スマートフォン版で見る