時計じかけのオレンジ

不条理で悪質な暴力に乱れたセックス、利己主義で反社会的な若者たち。しかしその反面ずるがしこい彼らは、権力のあるあ大人に対して表面では服従してみせます。このへんはとても鋭くついていると思います。昔の硬派なワルではなく、非常にたちの悪い残酷な若者が脅威になると予想したんでしょうね。
不良グループのリーダーである主人公アレックスは、ちょっとしたことがきっかけで仲間から不信感を抱かれ罠にはめられてしまいます。

罠にはまったアレックスは一人だけ逮捕されて、そのときに起こした事件で殺人罪として14年の刑を言い渡されます。

そして、ここから先は「悪」が入れ替わってしまいます。無知で残酷な若者はちょこっと脳に細工を施され、悪いことができない人間に改造されました。これはまあ、いわゆる実験ですね。社会を立て直し、安全の保障が得られる生活を送れるように気を利かせた「政府」が行った人間に対する虚勢です。

しかし「ここから先は聞くも涙、語るも涙……」と軽い調子でアレックスに語らせ、見るものに対し嫌悪感を与えます。この効果はアレックスを腐りきった根っからのワルに仕立てて、悪党には同情の余地を与えさせないというしっかりとした作りになっています。そしてこれが、この映画の良いところだと思います。現在の犯罪もので、悪いことをしてきた人間を意図も簡単に悲劇の主人公にしてしまう作品がありますが、あれってどうなんでしょうか。わたしはどうも好きになれません。

ところで、ラストに政府のお偉いさんとアレックスが握手をしてカメラのフラッシュを浴びているシーンがありますが、それを見て「お互いワルだね」という意味にとったのはわたしだけでしょうか?
2005年12月21日(水) 06:24:01 Modified by miu511




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