歯科治療前の説明
- 歯科治療は、麻酔などを頻回に利用します。そのような行為によって、医療ミスでないにもかかわらず、いろいろなトラブルがおこることがあります。そのため、当科では、そのような問題(偶発症(ぐうはつしょう)と言います)を十分に知ってもらい、それらを理解した上で治療を安心して受けていただくことを願っています。
- しかし、歯科治療などで麻酔をするなどの場合、毎回の治療の度に、毎回同意書に記入していただくなどのことは現実的でなく、実際に日本の歯科医院で行われてはいません。
- そのため当科では、診察・治療に先立ち、本日そのような治療をしない方も含めたすべての方に、本パンフレットをお読みいただいております。このような文書を読まれて、不安が増すという方も多いですが、現在の社会情勢より必要だと考えております。
- これは、明らかな医療ミスの場合を除く、一般的な治療行為での場合の偶発症を対象としています。
(1)顔面の重要な解剖学的な問題点を理解について
上顎(じょうがく)洞(どう)(蓄膿の時に膿がたまる空洞)
下顎(かがく)神経(しんけい)(下口唇の触った感じの神経)
(2)おこりうる偶発症と、その経過・治療について
- 上の歯の治療:歯の根の治療・抜歯・麻酔によって、上顎洞に穴が開くことがあります(事前のX線写真では不明です)。多くの方が、1ヶ月ほどで自然に治癒しますが、手術で閉鎖させる必要があります。
- 下の歯の治療:歯の根の治療・抜歯・麻酔によって、下口唇にしびれが生じることがあります。ほとんどの方が、6ヶ月以内で自然に治癒しますが、治らない方もみえます。歯科の医療訴訟の多くが、この下口唇のしびれの問題であります。すなわち、医療ミスと違っても、神経が歯の根に接していた、歯の炎症が神経まで波及していた(事前の検査でわかりません)場合など、上記の解剖学的な位置関係より、避けられない場合も多く、普通の治療行為でもおこりうることがあります。その他に、舌神経・頬神経の障害の可能性も否定できません。
- 抜歯・切開・縫合・麻酔などの治療を行った場合、その行為によって、治療前より、痛みが増加したり、感染したり、現在の感染が悪化することがあります。その場合、新たな処置が必要となります。
- むし歯が神経に近い場合、細菌の感染が神経に行っているかどうかは肉眼では不明ですし、その後に詰める材質は、どれだけ良いものでも天然の歯よりは質が落ちます。よって、治療前は痛くなかったのに後で、痛い・しみるなどの症状が出ることがあります(歯医者に行ったらかえって痛くなった、など)。
- 痛い部位が明確でない場合(複数の歯が同時に痛いなど)や所見がない場合、診断が不可能なことがあります。特に、経過を見なければ診断できない場合、ある程度痛みを我慢してもらうことになります。
- どんな薬剤(麻酔剤)にも、アレルギーがあることがあります。
- 治療中に、顔や舌を動かすと、治療以外のところが傷つくことがあります。特に、痛みに関しては、100%効果がある局所の麻酔がないため、痛くても動かずに手をあげて教えてください。また、むし歯が歯肉の下まで進行していると、歯を削る時に、歯肉の一部も取ることになります。
- 治療の結果、痛みなどの症状がゼロにならなくても、日常の生活で問題がない程度を目指す病気も多いです。たとえば、顎関節症や根の治療などです。根の治療の場合、神経を切り、根の中を消毒するため、神経を切った後の傷の痛み(古傷が痛むような感じ)や、体の中に使うので、すべての細菌を殺すような強烈な消毒剤を使うことができません。
- 治療の多くが、患者さんの努力による病気もあります。知覚過敏症は、冷たいものを避けることが重要な治療ですし、歯周病は、歯ブラシをしないと、歯科医院で歯石を取ってもなおりません。
- 簡単に説明できない病気や治療もあります。たとえば、歯周病や歯の根にあるむし歯などの、歯ブラシについて、数分での説明は無理です(その程度の説明で良いのなら歯科医師はいりませんから)。よって、説明だけのために、診察の予約をしてもらいます。
- 検査や経過観察の結果がでないと説明できない病気や治療の場合、「もし、○○だったら・・・」という仮定の説明は、返って不安感を増すことが多いので、行っておりません。説明は、次回の診察時になりますので、ご了承ください。
2008年09月20日(土) 07:04:33 Modified by mxe05064