10式120mm自走迫撃砲(PLZ-10）
最終更新：
rglc85tj8h 2021年12月26日(日) 10:49:45履歴
▼トランスポーターで輸送中の10式120mm自走迫撃砲（PLZ-10）
■性能緒元
| 重量 | 20トン前後 |
| 全長 | 7.2m前後 |
| 全幅 | 3.2m前後 |
| 全高 | 2.5m前後 |
| エンジン | BF6M1015C型V6ターボチャージド水冷ディーゼルエンジン（450馬力） |
| 最高速度 | |
| 浮航速度 | 6〜8km/h |
| 航続距離 | 500km |
| 武装 | 120mm迫撃砲×1 |
| 12.7mm重機関銃×1 | |
| 装甲 | 圧延鋼板装甲 |
| 乗員 | 4〜5名 |
10式120mm自走迫撃砲は、89A式装甲兵員輸送車のシャーシを利用して開発された中国軍の新型自走迫撃砲。当初、制式名称は05A式(PLZ-05A)ではないかと見られていたが、中国革命軍事博物館で開催された人民解放軍建軍80周年記念展覧会において同自走砲の制式名が「10式120mm自行迫榴炮」であることが明らかになった[1]。軍が付与した武器型号（兵器コード名）はPLZ-10と伝えられている[2]。
【性能】
PLZ-10は、新型の89A式装甲兵員輸送車のシャーシに120mm迫撃砲を搭載した旋回式砲塔を搭載している。車内配置は、前部右側が動力系統、前部左側が操縦手席、中央部は砲塔を配置、車体後部には砲弾ラックを配置して弾薬を搭載している[1]。
シャーシは圧延溶接装甲で製造されており、全周からの7.62mm機関銃弾、前方からの12.7〜14.5mm重機関銃弾の直撃に抗堪する防御力を備えている[3]。間接防御システムとしてNBC防護装置と自動消火システムを備えている[3]。
初期の試作車輌では車体前面に86式歩兵戦闘車（BMP-1）などで見られる波切り板が装備されていたが、量産型では波切り板は廃止されている。車体配置は、車体前方右部が動力部、前方左部に操縦席、車体中央から少し後ろの箇所に砲塔を搭載。車体後部には右開き式のハッチが装備されており、乗員の乗降や砲弾搭載に使用する。乗員は、車長、砲手、装填手、操縦手の4名[3]。
パワーパックは、ドイツのDeutz AG社製のエンジンを基にして中国で製造したBF6M1015C型V6ターボチャージド水冷ディーゼルエンジン（331kW）とCH300型トランスミッションから構成されている[4](参考資料[1]ではトランスミッションはCH400となっている)。PLZ-05Aは水上浮航能力を備えており、浮遊時には履帯の回転により推進力を得る。水上航行時の速力は6〜8km/h[1]。
【武装】
砲塔は05式120mm装輪自走迫撃砲（PLL-05）のものに類似しており、おそらく同車の砲塔システムを転用しているものと思われる。参考として05式120mm装輪自走迫撃砲のスペックを以下に記載する[5][6]。
| 口径 | 120mm（ライフル砲） |
| 装弾方法 | 後装式 |
| 俯仰角 | -4〜＋80度 |
| 旋回角度 | 360度 |
| 射程 | 8,500m（大仰角の迫撃砲モード） |
| 9,500m（榴弾砲モード） | |
| 1,200m（HEAT直射） | |
| 12.8km（RAP弾） | |
| 使用砲弾 | HE弾、HEAT弾、ロケット補助推進弾、クラスター砲弾、レーザー誘導砲弾など（36発搭載） |
| 発射速度 | 8発（榴弾砲モード） |
| 10発（迫撃砲モード） | |
| 4〜6発（HEAT直射） |
PLZ-10の120mm砲は後装式で装填補助装置により毎分4〜10発の発射速度を有する[1]。通常の迫撃砲のように間接射撃を行うだけでなく、目標に対して直射を行う事も可能[1]。使用可能な砲弾は、HE弾、HEAT弾、ロケット補助推進弾、クラスター砲弾、レーザー誘導砲弾などが存在し、合計36発を搭載する[7]。
PLZ-10の120mm砲は、装填補助装置付きで、装填手の負担軽減と高い発射速度の発揮を実現している[7]。発射速度は、最大射程9500mの榴弾の場合は毎分6〜8発、同8500mの迫撃砲弾の場合は毎分10発、射程1500mのHEAT弾の場合は毎分4〜6発とされている[7]。120mm迫撃砲弾は、榴弾に比べて低圧で発射されるので、その分だけ弾殻の厚みを減らすことができ、口径が似通った122mm榴弾砲の榴弾に比べて1.5kg多い炸薬の封入が可能であり、その分だけ破壊力を増すことができる[8]。HEAT弾の場合h、600mmの鋼板を貫通する能力を有しており、第三世代戦車以外のAFVの大半を正面から撃破しうる[8]。クラスター弾は、終末誘導可能な合計30発の対人/対装甲子弾が内蔵されており、対装甲目標に対しては90mmの装甲貫徹能力を備えており、トップアタックにより第三世代戦車の撃破も可能[8]。
照準-射撃までの手順は、自動・半自動・手動の三モードが用意されており、スタビライザー付き射撃統制システムと暗視装置を用いることで、全天候下で運動目標に対する一定の速度での行進間射撃が可能[1][7]。指揮通信システム、射撃統制システム、照準システムはいずれもデジタル化されており、諸元の算出と砲の操作は自動化されており、高い命中精度と素早い反応速度を実現している[1]。
120mm迫撃砲のほかに、自衛用火器として砲塔上部のキューポラに85式12.7mm重機関銃1挺を、砲塔側面に3連装発煙弾発射機2基を装備している
【総評】
10式は「迫榴砲」の名称の通り、従来の迫撃砲と榴弾砲の両方の性能を兼ね備えた装備と見なされており、曲射と直射の双方で火力支援が可能であり、迫撃砲弾と榴弾、各種誘導砲弾などさまざまな砲弾の運用能力を有しており、強力な火力と高い発射速度を備えた自走火砲としての能力を備えている。砲システムを一定の防御力を備えた装軌式シャーシに搭載することにより、高い生存性と路外機動性を両立していると評価されている[7]。
中国軍では、92式装輪装甲車（ZLS-92）の車体に後装式120mm迫撃砲を搭載した05式120mm装輪自走迫撃砲（PLL-05）を装輪AFV中心に編成された緊急展開部隊向けに配備しているが、装軌式シャーシを使用するPLZ10は主に装軌式AFVが主力を占める重型装甲機械化旅所属の合成営（営は大隊に相当）に配備され火力支援を提供するために開発された[1]。
重型合成旅では、PLZ-10は、99A式戦車や04A式歩兵戦闘車などに随伴して、随時火力支援を行い、合成営レベルでの作戦において縦深攻撃を行う際に活躍するものと見られている[8]。一個合成営所属の4両のPLZ-10は、一分間に40発に砲弾の発射が可能であり、目標の面制圧のみならず、誘導砲弾による点目標の打撃、AFVへの攻撃など、多様な火力支援を行う能力を備えており、有力な火力支援車両としての地位を得ていると評価し得る[8]。
▼大仰角での射撃を行うPLZ-10
【参考資料】
[1]每日头条「解放军新自行迫榴炮堪称快速曲射神兵 信息化战中出尽了风头」（谷火平/2018年1月1日）https://kknews.cc/military/peveooz.html」
[2]每日头条「我军PLZ10自榴炮 还不错」（长缨在手束苍龙/2018年4月5日）https://kknews.cc/news/3zvooe8.html）
[3]Military-Today「PLZ-05A 120-mm self-propelled mortar system」http://www.military-today.com/artillery/plz_05a.ht...
[4]CareerEngine | 北美生活引�押�89改履带式装甲侦察车侦查设备亮相，引导05式自行火炮打击」(星火观察/2020年12月10日) https://posts.careerengine.us/p/5fd1901b7ea9f024c9...
[5]Chinese Defence Today「PLL05 120mm Self-Propelled Mortar-Howitzer」
[6]Army Guide「PLL05, Self-propelled howitzer」http://www.army-guide.com/eng/product4158.html
[7]网易「我国10式自行迫榴炮内部空间亮相，站下3-4个战士没有问题」（记录之眼/2020年12月8日）https://www.163.com/dy/article/FTAHGT910535OX5P.ht... (注：こちらの記事ではPLZ-10のシャーシは、04A式IFVであるとしていますが、本稿では89A式APC説を採用しています。)
[8]腾讯网-腾讯新闻「一分钟落下10发炮弹：中国迫榴炮能打步兵能打坦克，曾踢馆俄军」(2021年11月7日)https://new.qq.com/omn/20211107/20211107A02V0A00.h...
【関連項目】
89A式装甲兵員輸送車
中国陸軍