日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼CM21A1



▼銃眼の形状が異なるタイプ。

▼改良型のCM21A2。

▼フランスGIAT社製のドラガー砲塔(一人用、25mm機関砲装備)を搭載した武装強化型。試作のみ。


性能緒元(CM21/CM21A1)
重量11.6トン
全長5.18m
全幅2.82m
全高2.20m
エンジンデトロイト・ディーゼル6V-53液冷ディーゼル(試作車輌) 215hp
パーキンスTV-8-640(量産型CM21A1) 215hp
最高速度68km/h(浮航時5.8km/h)
航続距離483km
武装12.7mm重機関銃×1(2,000発)、もしくは40mm擲弾発射機×1
装甲防弾アルミ装甲+中空装甲
乗員2名
兵員6〜8名(最大11名)

【開発経緯】
CM21装甲兵員輸送車は、台湾の戦車発展研究中心(1981年に陸軍兵工整備発展中心に改組)がM113装甲兵員輸送車を基にして開発した車両である。制式名称であるCM21のほかにAIFV(Armoured Infantry Fighting Vehicle)の名称も使用されている。

台湾は、1970年代後半から国産装甲兵員輸送車の開発を開始した。この車輌の開発では、アメリカのFMC社が1960年代末から米軍向けに開発したAIFV(Armoured Infantry Fighting Vehicle)が大きな影響を与えている。AIFVは、M113をベースにして開発された歩兵戦闘車で、ヴェトナム戦争の戦訓を取り入れて搭載火力を強化し、銃眼を設ける事で搭乗歩兵による乗車戦闘を可能にする等の改良が加えられている。AIFVは、米軍での採用は逃したがFMC社の自社資金による開発が継続され、比較的安価で費用対効果の高い歩兵戦闘車としてオランダ、ベルギー、フィリピン、韓国、トルコ、エジプトなど各国で採用され、オランダ、ベルギー、韓国、トルコではライセンス生産も行われた。

CM21の開発では、AIFVの設計コンセプトが大きな影響を与えており、車両の名称としても同じ「AIFV」が使用されたが、CM21の設計作業自体は台湾が行なっており、細部の設計ではAIFVとは異なる箇所も少なくない。CM21の最初の試作車両は1979年に完成し、台湾軍での試験を経て1982年に配備が開始された。CM21の量産型にはCM21A1の名称が付与されている。

【性能】
CM21の開発の基礎となったのは、アメリカのM113であるが、M113の各種タイプの中でもM113A2とM113A3の特徴が多く引き継がれている。車体の基本的な構造はM113を踏襲しており、車体前方左側が操縦席、右側が動力部、車体後方が兵員室となっている。ただし、車体側面を傾斜させたこともあり、車内容積はM113よりも狭くなっている。CM21の車体サイズは以下の通り。重量11.6トン、全長5.18m、全幅2.82m、全高2.20m。CM21の乗員の配置は、車体前方左部に操縦手、その後方に車長、兵員室に歩兵6〜8名(最大11名の乗車が可能)が搭乗する。搭乗歩兵の座席は、前半分がM113と同じ対面式になっているが、後部の4名分は背中合わせ式に変更されている、これは、4名が銃眼を使用して乗車戦闘を行うための配置である。搭乗歩兵は、車体後部ランプに取り付けられたドアを開くか、ランプ全体を倒して降車を行う。また、車体上部にもハッチが取り付けられており、必要に応じて開閉が可能。

エンジンは、試作車両では米デトロイト・ディーゼル6V-53液冷ディーゼル(215hp)が搭載されたが、量産型CM21A1では英パーキンス社製TV8.640ディーゼルエンジン(215hp)に変更されている[註]。TV8.640エンジンは台湾でアッセンブリー生産が行われた。変速装置は台湾国産。サスペンションはトーションバー方式を採用しており、足回りは上部転輪なしの5つの転輪から構成されている。路上最高速度は、68km/h、最大航続距離は483km。M113と同じく水上航行能力を有しており、その際の最高速度は5.8km/h。

CM21の車体はM113と同じアルミ合金製であるが、車体側面に付加装甲が装着された事もあって、外観はM113とはかなり異なる物になっている。付加装甲は均質鋼板製の箱のなかにポリウレタンを詰め込んだ物で、浮力を確保して水上航行能力を維持しつつ抗堪性(特にHEAT弾攻撃に対する)を向上させる狙いがあった。ただし、兵員室側面上部は乗車戦闘用の銃眼とペリスコープが配置されたため付加装甲は装備されていない。この部分は対弾性向上のため、装甲に傾斜が取り入れられている。付加装甲や銃眼の配置についてはAIFVを参照しているが、設計に関しては台湾で行われたため、AIFVの装備とは形状が異なる物になっている。AIFVの付加装甲は足回り上部までを覆っているが、CM21では付加装甲は車体側面の装着に留まっており、足回り上部はM113と同じゴム製のサイドスカートで覆われている。AIFVでは車体全面下部と車体後部にも付加装甲が装着されているが、CM21では未装着。車体後面の兵員乗降ハッチの両側には装甲燃料タンクが装備されている。これはM113A2でも採用された装備であり、燃料区画を車外に出すことで被弾時の車内火災の危険性を減らす狙いがある。間接的な防御設備としては、車体全面に4連装発煙弾発射機×2基が装備されている他、被弾時の二次被害軽減のため車内には自動消火装置が設置されている。ただし、NBC防護装置は搭載されておらず、NBC状況下での運用には問題がある。

CM21の武装は、予算面での制約もあって12.7mm重機関銃一挺とM113と同じものに留まったが、前述の通り、搭乗歩兵による乗車戦闘を行う事が可能になっている。銃眼は、車体側面に4基、車体後部に1基の合計5基が用意されている。車長用キューポラに搭載された12.7mm重機関銃には、必要に応じて防盾が装着される。また、12.7mm重機関銃に換えて40mm擲弾発射機を装備した車輌も登場している。

【発展型と派生型】
CM21を開発した戦車発展研究中心では、1982年にCM21A1の量産が開始された後も、引き続きCM21の改良型と各種派生型の開発を継続した。

まず行われたのが、機動力と防御能力のさらなる向上であった。1996年にその存在が明らかになったこの改良型にはCM21A2と命名された。CM21A2では、付加装甲に関する改良が行われ、車体前面や車体後部にも付加装甲が装着された。特に車体側面の付加装甲は、表面に網目状に細かな穴の開いたものに変更され、取り付け箇所もサイドスカートの部分まで拡大された。この新型付加装甲は、HEAT弾だけでなく運動エネルギー弾に対する防御能力も有する物で、14.5mm重機関銃に対する抗堪性を確保している。網目状になっているのは、重量軽減が目的である。車体側面の付加装甲の変更が行われたが、銃眼は残されており、乗車戦闘能力は維持されている。付加装甲の変更により重量は11.6トンから12.9トンに増加したが、エンジン出力を300hpに強化して出力重量比を改善し、自動変速機を採用したことも相まって野外走行能力はCM21A1に比べて大きく向上することになった。路上最高速度は65km/h。

CM21A2の開発では、12.7mm重機関銃一挺というM113と代わり映えのしない火力強化に関する研究も行われた。フランスGIAT社(現ネクスター社)製ドラガー砲塔(一人用、25mm機関砲装備)を搭載した試作車量が製造され運用試験を行ったが、最終的には不採用に終わっている。また、戦車発展研究中心が開発した12.7mm重機関銃と40mm擲弾発射機を搭載した無人砲塔を装備した車両も試作されたが、こちらも採用されることは無かった。

CM21の各種タイプについては以下を参照されたし。
CM21M113をベースに開発。付加装甲による防御力強化が図られ、乗車戦闘能力が付与されている。エンジンは米デトロイト・ディーゼル6V-53液冷ディーゼル(215hp)を搭載。
CM21A1CM21の量産型。エンジンは英パーキンス社製TV8.640ディーゼルエンジン(215hp)に変更されている。
CM21A2CM21A1の発展型。付加装甲の改良とエンジン出力強化が図られている。
ドラガー砲塔搭載型フランスGIAT社製ドラガー砲塔を搭載。試作のみ。
台湾製無人砲塔搭載12.7mm重機関銃と40mm擲弾発射機を装備した無人砲塔を搭載。試作のみ。
CM22 107mm自走迫撃砲T62 107mm迫撃砲を搭載した火力支援車両。車体形状はM113を踏襲。
CM22A1 120mm自走迫撃砲T86 120mm迫撃砲を搭載した火力支援車輌。
CM23 81mm自走迫撃砲T75 81mm迫撃砲を搭載した火力支援車輌。
CM24装甲弾薬運搬車旧式化した米軍供与の弾薬運搬車の後継として開発。車体重量20トン、155mm砲弾90発、もしくは203mm砲弾42発を搭載。出力不足や各種不具合から、改良型CM24A1が開発される。
CM24A1装甲弾薬運搬車CM24の改良型。シャーシ形状を変更、エンジン出力を強化(210hp→325hp)、給弾システムの改良を行う。出力強化により榴弾砲の牽引も可能となった。
CM25戦車駆逐車TOW対戦車ミサイル単装発射機×1を搭載。CM21と同じく車体側面に付加装甲が装着されているが、銃眼は廃止されている。発煙弾発射機は4連装2基から3連装2基に変更。
「昆吾」対戦車ミサイル搭載型制式名称不明。「昆吾」対戦車ミサイル発射機を搭載した対戦車駆逐車型
「工蜂4型」自走多連装ロケットM113、もしくはCM21の車体に126mm40連装ロケット砲「工蜂4型」発射機を搭載した自走多連装ロケット。既に退役した模様。
CM26コマンドポストアメリカのM577コマンドポストの台湾版。M577との外見上の区別は困難。
CM27高速牽引車CM24A1弾薬運搬車をベースに開発された野砲牽引車。

【総括】
CM21は、台湾で多数が就役しているM113をベースに開発されたため、既存のM113の整備インフラを使用でき、兵員の訓練においても有利であった。CM21と各種派生型の生産は2006年まで行われた。生産数については諸説あるが、Global Securityでは台湾軍に就役しているCM21は225両としており[1]、Jane's Armour and Artillery 2006-2007では200両から300両の間との数字を挙げている[2]。一方、中国の「坦克装甲車両」誌ネット版の記事では、各種派生型を合計すると1,000両近くが生産されたとしている[3]。

CM21は、台湾軍にとって初の国産装甲兵員輸送車であり、台湾軍ではCM21をベースに各種派生型を開発して装甲車両部隊の近代化を行う事に成功した。この点で、CM21の生産成功は、アメリカからの装備供給に依存していた台湾陸軍が、国際環境の変化に伴い装甲戦闘車両の自給国産化に転換したことを示す、1つの画期であると見なす事ができるであろう。

[註]CM21のエンジンについては、資料によって異なる記述がある。ここではJane's Armour and Artillery 2006-2007の記述と、SIPRI公式サイトの国際兵器取引データベースの情報を基にして上記の記述を構成した。

【参考資料】
Jane's Armour and Artillery 2006-2007「Armoured Infantry Fighting Vehicle (AIFV) CM-21」[2]
世界の装軌装甲車カタログ(日本兵器研究会編/2001年/アリアドネ企画)
PANZER 1990年12月号「AIFVの構造とバリエーション」(真光寺清彦/サンデーアート社)

Global Security「Army Equipment - Taiwan」[1]
SIPRI公式サイト「SIPRI Arms Transfers Database」
国軍歴史文物館
華夏經緯網「台灣陸軍武器裝備一覽」(2004年9月2日)
新浪網-《坦克装甲車両》ネット版「台湾陸軍装甲装備研発基地掲秘(組図)」(2005年11月29日)[3]
中国武器大全
坦克與装甲車両「中国台湾省CM21履帯式装甲歩兵戦車」
Yahoo!奇摩部落格- la chat -「CM-21裝甲車家族」

CM21装甲兵員輸送車の派生型
台湾陸軍

amazon

▼特集:自衛隊機vs中国機▼


▼特集:中国の海軍力▼


▼特集:中国海軍▼


▼中国巡航ミサイル▼


























































メンバーのみ編集できます