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▼2018年の珠海航空ショーで展示されたJRVG-1型76m装輪自走高射砲(著者撮影)



性能緒元(シャーシ)
重量32t
車体長 
全幅 
車体高 
エンジン 
最高速度
航続距離
センサー光学/電子ターレット×2
センサー捜索/追尾用レーダー×1
装甲均質圧延鋼板装甲
乗員  

性能緒元(兵装)
武装76.2mm対空砲×1
発射速度300発/分
俯仰角度 
砲口初速約900m/秒
有効射程6km(航空機)/4km(巡航ミサイル)/15km(地上目標)
有効射高

JRVG-1型76.2mm装輪自走高射砲は中国船舶重工集団公司(2019年に中国船舶工業集団との合併により中国船舶集団となる。)と中国北方工業集団公司(NORINCO)により共同開発された装輪式の自走高射砲で、艦艇に搭載されている76.2mm単装砲を車載化して開発された[1]。

中国船舶重工集団公司の中でも、第716研究所(江蘇自動化研究所)が総合設計を担当し、鄭州機電工程研究所と揚州船用電子設備研究所が開発に協力するという体制が採られた。これらはいずれも船舶や艦載装備の開発を主眼とする企業や研究所であり、NORINCOはグループ企業が得意とする装輪装甲車技術を提供して76.2mm艦載砲の搭載能力を有する装輪プラットフォーム開発を担当したと思われる。

【開発経緯】
JRVG-1の開発の目的は、陸上部隊の対空兵器における空白、則ち即応性に優れているが短射程の対空機関砲と、射程では優位ながら近距離での運用には制限が生じることが多い対空ミサイルの中間の領域をカバーして、防空網の重層性を高める兵器システムを実用化するというものであった[1]。

この分野では既にNORINCOがSA-2型76.2mm装輪自走高射砲を開発しており、2016年の珠海航空ショーでは技術実証車の展示も行われていた[1]。しかし、SA-2はコスト低減を旨として、野外機動性に劣る6輪トラックをシャーシに選択し、火砲の性能も艦載砲よりもスペックダウンするなど妥協が見られるため、JRVG-1では逆に対空砲としての能力追及を第一に置かれることとなった[1]。開発を主導する第716研究所は、艦載砲の開発で豊富な経験を有しており、それを土台としてさらなる新技術を盛り込むことで、原型以上の性能を達成することが目指された[1]。

【性能―シャーシ】
JRVG-1の主な仮想敵は、開発の経緯ゆえ当然ながら巡航ミサイル、空対地ミサイル、航空機、ヘリコプターなどの経空脅威を中心とするが、その大火力を生かして軽戦車、装甲車両、陣地、建築物といった地上目標への打撃制圧能力も備えている[1]。

JRVG-1は76.2mm艦載砲とサイズの近しい大型砲塔を搭載する必要から、10輪という大型装輪装甲車をシャーシとして用意した[1]。このサイズにより、同シャーシは8tを超える大砲塔でも余裕をもって搭載することが出来、先行するSA-2型装輪自走高射砲のように大型アウトリガーの油圧ジャッキで車体を安定化しなくても射撃プラットフォームとしての実力を発揮し得る安定性を確保した[1]。これは停車後に迅速に砲撃を開始することに繋がり、即応性を高め、運用における柔軟性を大きく増すものであると評価し得る。

JRVG-1の全備重量は32tであり、シャーシの重量だけでも20tを超えるものと推測されている[1]。シャーシの由来についての情報は乏しいが、その形状から08式装輪歩兵戦闘車「雪豹」(ZBL-08)あたりをベースに車体を大型化したのではないかと考えられる。エンジンは車体前方右側に配置され、その後方に砲塔を搭載、車体後部には横開き式ハッチが一箇所設けられており、乗員の乗降や砲弾の搭載に用いられる。ZBL-08は水上浮航性を有しているが、JRVG-1は大型化の代償かZBL-08にあった水上航行用スクリューは廃止されており、水上航行性能は有さないのではないかとみられる[1]。

JRVG-1は10輪式の装輪装甲車をシャーシとすることで、高い路上走行性能と良好な路外走行性能を両立しているとみられる。ただ、その全長の長さは旋回半径や運動性には悪影響をもたらさざる得ないと見られるが、それがどの程度に収まっているかは不明。その車体は相応の防御力を有することから、戦場での運用に幅を持たせることが出来ると見込まれる。

【火砲】
JRVG-1の主兵装である76.2mm高射砲は、中国海軍で広く用いられているH/PJ-26型76.2mm単装砲を基にして開発された[1][4]。H/PJ-26はロシアのAK-176M 60口径76.2mm単装砲の技術を基にして中国で国産化を図ったもので、054A型フリゲイトや056型コルベットなどの艦砲として、近年の中国海軍の艦載砲としては最も多く生産されている。

艦載化にあたって軽量化が施された結果、原型の11tという重量から8tにまで軽減することに成功している。しかし、軽量化に当たっては高い性能の確保と両立することが開発方針とされたことで、SA-2型自走高射砲ほどの重量軽減は行われなかった[1]。砲塔は無人化されており、砲の駆動や弾薬の装填などは完全自動化されている[1]。

開発陣が解決を求められたのは、余裕のある艦艇というプラットフォームに最適化された艦載砲を車載化するには、砲身の冷却方法を水冷から空冷に変更する必要が生じ、さらに弾薬搭載量が減少、砲の発射速度も低下しかねないなどの無視し得ないデメリットへの対処であった[1]。この情況下にもかかわらず、JRVG-1の開発においては、毎分120発の発射速度を2.5倍になる毎分300発に引き上げるという野心的な目標が設定された[1]。

これを解決するため、弾薬の給弾システムは根本的な設計変更が加えられ、砲尾に回転式弾倉を配して射速を上げるリボルバーカノン方式が採用されるにいたった[1]。この方法は、砲尾にリボルバー式の薬室を配置して、薬室が回転しながら装填−発火−排莢の一連のプロセスを並行して行うことで、ガトリング機関砲のように多銃身にすることなく発射速度を上げる機構であった[1]。リボルバーカノン方式を採用した副産物としては、複数の薬室を備えていることから、各薬室が間隔をあけて砲弾を発射するので、通常方式に比べて砲冷却の問題を解決する上での困難さは軽減されたとのこと[1]。

毎分300発という高い連射性能を獲得したJRVG-1であるが、それは必然的に射撃時の反動が膨大なものになることを意味していた[1]。これを解決するため、JRVG-1の76mm砲は砲身の下側に、砲身をはさむように巨大な駐退機を設置するとともに、砲口に多孔式マズルブレーキを装着して反動の低減に努めている[1]。また砲自体が動揺して命中精度が低下するのを抑制するため、砲身を包むようにトラス状のガイドで支えて振動を軽減する工夫が施されている[1]。これは、730型30mmCIWSなどで見られる方法であり、艦載砲由来の技術を応用したことも推測される。

その射程は、航空機に対しては有効射程6km、ミサイルの場合は4km、地上目標への攻撃の場合は間接射撃で15kmとされる[1]。初速900m/秒を超える高初速砲弾を連射できることから、その能力はマッハ2.5を超える超音速機や高速ミサイルの迎撃にも有効と見られている[1]、

JRVG-1はプラットフォームを大型化したとはいえ、車載化に伴い艦艇ほどの搭載弾数が確保できないのは明白。そのため、一発当たりの命中精度を高めることで効率的な射撃を可能とするべく、レーザー誘導砲弾、AHEAD砲弾などを用いて弾幕によらない単発での撃墜能力を高めているとみられる[1]。

AHEAD(Advanced Hit Efficiency And Destruction)弾とは、調整破片型ABM(Air Burst Munition)弾の一種であり、ABM弾とは従来の近接信管とは異なり、各弾丸の正確な空中での起爆位置を調整する事により目標付近に濃密な弾幕を形成する。これにより、目標打撃力を増すと共に付帯的被害を軽減する事を狙った先進砲弾の一種[2]。レーザー誘導砲弾は、砲塔正面右部の光学/電子ターレットに内蔵されているレーザー測遠装置を用いてレーザー照射を行って誘導する可能性が指摘されている[1]。このほかに、地上攻撃用の徹甲榴弾、通常の榴弾などもラインナップにあると見られている[1]。

自衛用装備としては、砲塔前面に4連装発煙弾発射機×2が用意されている。

【電子装備】
SA-2の射撃統制システムは、弾道計算機、砲口初速検知レーダー、信管調整装置、捜索用光学/電子ターレット、追尾用光学/電子ターレット、レーザー測遠装置などで構成されている[4]。具体的な記述は無いが、当然高度な情報システムやデータリンク能力を備えているのは間違いないであろう。

先行者たるSA-2がコスト削減のため電子装備を控えめなものに留めたのに対して、JRVG-1は最初から高度な各種センサーを搭載して高い独立戦闘能力を付与することが求められた[1]。

砲塔後部に捜索・追尾用レーダーを搭載し、これは航空機であれば20km以上の距離から、ミサイルであれば15km以上の距離から探知が可能[1]。追尾能力については、航空機であれば15km以上、ミサイルであれば12km以上から可能。

これとは別に、砲塔左正面に光学/電子ターレットを、捜索・追尾レーダー右側面にも形状の異なる光学/電子を備えており、捜索用と追尾用にそれぞれ別の光学/電子センサーを用意している[1]。こちらの赤外線暗視装置を用いた場合、航空機であれば12km以上の、ミサイルであれば6km以上の目標を探知可能[1]。このように、異なる複数の捜索センサーを併用することで、目標の補足能力を高め、相手側のEW戦に対する抗湛力向上につながる。

JRVG-1の反応速度は迅速であり、単独での作戦においても10秒以下で目標への攻撃を開始する能力を備えている[1]。これが、防空ネットワークの一部として運用された場合、その反応速度はさらに早くなり、5秒以下で迎撃を開始することが出来る[1]。

【今後の見通し】
JRVG-1は、装輪車両を中心に据えた中〜軽型合成旅における防空営/連(大隊/中隊に相当)に配備して野戦防空を担う運用や、統合防空システムの一つとして組み込まれて、防空作戦に従事するなどの運用に適しているとされる[1]。

76.2mm艦載砲を自走対空砲化するという構想はすでにイタリアにおいてOTOメララ社製76.2mm艦載砲を用いて、1980年代には戦車をシャーシとしてオトマティック(Otomatic)自走対空砲が、2000年代には八輪装輪装甲車をシャーシとしたドラコ(Draco)自走対空砲がそれぞれ開発され試作車が完成しているが、いずれも採用を得るには至らなかった[3][4]。

JRVG-1は、オトマティックやドラコと並ぶ、一部の性能ではそれ以上を狙ったハイエンド自走高射砲として開発された。これだけの能力を備えていれば、そのコストも相応に高騰すると見られ、どれだけ市場でニッチを見つけられるかは難しいところかもしれない。しかし、同車の開発は海陸の兵器技術を融合して、どれだけの性能を達成できるかが追及された技術実証的な側面も強いと思われ、その点からすれば開発体制、兵器技術、システムとして形にしたことで判明するノウハウの蓄積と、中国の防衛産業にとっての挑戦となったと見なすこともできるだろう。

【参考資料】
[1]吴钩「中船重工新型JRVG-1型76毫米自行防空火炮简析」『兵工科技-甦2018珠海航展专辑 』(兵工科技杂志社)156-159頁
[2]山下一郎「技術者解説 対地・対空機関砲/基本弾薬/先進砲弾/自衛火器 装甲車の火力技術」(『軍事研究2008年11月号別冊 新兵器最前線シリーズ7 陸戦の新主役ハイパー装輪装甲車』/ジャパン・ミリタリー・レビュー)32〜51ページ
[3]Military Today.com「Otomatic 76-mm self-propelled anti-aircraft gun」https://www.militarytoday.com/artillery/otomatic.h...
[4]Military Today.com「Draco 76 mm self-propelled anti-aircraft gun」https://www.militarytoday.com/artillery/draco.htm

中国陸軍]

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