日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼RT-2000自走ロケット発射機の試製車輌。米オシュコシュ社製M977 HEMTTをシャーシに使用。


▼RT-2000自走ロケット発射機の量産型。シャーシは韓国のKANGLIM社がノックダウン生産する独MAN社製TGA 8×8重トラックに変更された。



性能緒元(自走ロケット発射機/量産型)
重量15トン(シャーシのみの重量)
全長
全幅
全高
エンジンディーゼルエンジン
最高速度
航続距離
武装ロケット発射機×1基
搭載弾数MK15 117mmロケット弾(20連装ロケットコンテナ・モジュール)×3基(計60発)
MK30 182mmロケット弾(9連装ロケットコンテナ・モジュール)×3基(計27発)
MK45 227mmロケット弾(6連装ロケットコンテナ・モジュール)×2基(計12発)
乗員3名

性能緒元(ロケット弾)
MK15MK30MK45
口径117mm182mm227mm
全長2,166cm1,690cm1,725cm
重量42.64kg87kg175kg
射程15km30km45km
弾頭対人榴弾クラスター弾頭(対人/車輌)クラスター弾頭(対人/車輌)

RT2000自走ロケット砲「雷霆」は、旧式化した117mm45連装自走ロケット砲「工蜂6型」の後継として開発された自走多連装ロケット・システム。試製車輌は1997年6月に行われた漢光13号演習において初公開された。

【開発経緯】
RT-2000は中山科学研究院(CSIST:Chung-Shan Institute of Science and Technology)のミサイル&ロケット・システム研究部により開発された。試製車輌は台湾で大量に使用されているアメリカのオシュコシ・トラック社製M997シリーズHEMTT(Heavy Expanded Mobility Tactical Truck:8輪駆動高機動戦術重トラック)が使われている[1]。RT-2000が野外走行能力の劣る装輪車輌をシャーシに採用したのは、装軌車輌に比べて高い路上速度を生かして台湾の充実した道路網を利用して緊急展開を可能とする目的があった。これは、対岸の中国軍による着上陸作戦が行われた際には、上陸部隊が海岸に展開中に迅速に展開・制圧する必要のある台湾軍のニーズに合致した要求であった。また、装軌式車輌よりも整備費用や運用コストが安く、兵員の訓練も簡単な点も国防費の節約に有効と判断された[1]。RT2000の調達コストは、装軌式車輌をシャーシとして開発されたアメリカのMLRS多連装ロケット・システムの30%に押さえられているとされる。

台湾陸軍では、まず3個連隊分のRT-2000を調達する計画を立案した。2000年12月に決定したRT-2000整備計画では144億5240万新台湾ドルの調達費用が計上された。この計画では、3個連隊分のRT-2000は2002年から2012年にかけて生産され、部隊配備は2004年から開始される予定であった[1]。

しかし、この計画は予想外の事態により頓挫を余儀なくされる。RT-2000のシャーシとして採用されたM977 HEMTTのメーカーであるオシュコシュ社は、米軍向けの生産が完了したこともあり台湾向けにM977を新規生産するには生産ラインの再立ち上げが必要になるとして、シャーシの強度強化の改修費用も合わせて、台湾向けM977 HEMTTの価格は原型の2.5倍になるとの見積もりを提示した[1]。台湾陸軍では価格面での折り合いが付かなかったため最終的にオシュコシュ社のM977 HEMTTの使用を断念した。台湾陸軍では、RT-2000のシャーシに関する国際入札を実施。入札では、自走ロケット発射機57輌と弾薬輸送車54輌の計111輌が発注され、シャーシとなる車両は8輪式で足回りに独立懸架システムを備えることが求められた[1]。各国の企業から17の提案が提出されたが、価格面の問題や台湾への輸出許可が下りないなど様々な問題が発生して決定には長期間を要することになる。さらに2005年には、ロケット発射機のターンテーブルの旋回系統の生産に問題が発生した。CSISTでは命中精度を高めるために旋回系統の歯車に高い精度の製品を使用していたが、実際に生産を行ってみると、要求される高精度を満たす歯車の生産は困難であるとの事態が明らかになった。最終的に、旋回系統の歯車機構については台湾企業が受注したが、実際にはアメリカの会社に生産を委託して、台湾の業者はそれを輸入して軍に納入するという解決策が取られるに至った[1]。

RT-2000のシャーシの選定作業は、2008年初めに韓国のKANGLIM社の提案が採用、自走ロケット発射機用に合計54輌が発注され、1輌当たりの価格は約1,800万新台湾ドルとされた[1]。ただし、KANGLIM社は8輪トラックの開発は行っておらず、実際にはドイツのMAN社製の民生用トラックであるTGA 8×8重トラックをKANGLIM社がノックダウン生産を行って台湾に輸出するという形が取られていた。ドイツは軍用装備の台湾への輸出を認めていなかったため、KANGLIM社による迂回輸出という形式を採ったのである。ただし、MANからの直接購入ではないため、長期的な部品供給の保障に関する懸念が存在すると指摘されている[1]。

台湾軍の評価では、TGA 8×8重トラックは車重10tのM977よりも5t程重いため、射撃用プラットホームとしては安定性が高いと評価された[1]。また、車重が重いにも拘らず、燃費はM977よりも良好であった[1]。ただし、民生用車輌であるため、野外走行能力は軍用車輌として設計されたM977にはかなり遜色があった。民生車輌のため、当然燃料タンクには防弾措置は施されておらず、被弾の際の危険性はM977よりも高い[1]。また、一部のケーブルは車外に設置されており、ロケット弾発射に伴う爆風を受ければ容易に損傷する危険性が存在した[1]。

2009年7月には、弾薬補給車のシャーシに関する入札の結果、韓国のKIAの提案が採用され、契約総額1億9000万新台湾ドルで57輌の車輌を納入する契約が結ばれた[1]。KIAが供給する弾薬補給車のシャーシは、旧ユーゴスラビア製のFAP3232BDST/AVに酷似したものであり、おそらく東欧諸国から調達して韓国でノックダウン生産されたものと推測されている[1]。

価格面を優先した入札の結果、自走発射機と弾薬補給車のシャーシが別々の車輌になってしまった件については、部隊での相互運用性の観点からは不利になると思われる[1]。

2010年、台湾陸軍は防衛予算案にRT-2000の第一バッヂ分の生産と第二、第三バッヂ分の生産準備に関する14億台湾ドルの費用を盛り込んだ[1]。同年11月5日、RT-2000の量産計画が正式に承認。翌2011年末から陸軍への供給を開始して、2012年には57セットの自走ロケット・システムの生産を完了させることが決定した。開発開始から量産化までに長期間を要したことから、採用を予定していた電子装備の中には旧式化したものも出ていたので、RT-2000量産型では射撃統制システムのCPUなどを新型に変更し、新たにフランスのサジェム(Sagem)社製航法システムを装備するなどの近代化が施されている。

【性能】
RT-2000の自走ロケット発射機は、前述の通りに試製車輌ではオシュコシュ社製M977 HEMTTが使用されていたが、量産型ではKANGLIM社がノックダウン生産するMAN TGA 8×8重トラックに変更された。キャビンの前方ウインドには折りたたみ式の防護板が設置されており、ロケット発射の際に展開して爆風から窓を保護する役割を果たす。キャビン内部には、ロケットの発射・管制用の発射管制パネルが装備されている。キャビン内のシステムの構成要素は電子機器、姿勢・高度決定システム、管制ボックス、サーボ・モーター、増幅器、通信プロセッサー、航法システム(GPS/INS)等である。RT-2000の発射管制パネルの表示は中国語で行われるようになっており、外国語で表示される外国製装備よりも転換訓練が容易なのも特徴[2]。

RT-2000の全てのシステムはモジュール化されており、故障の際には迅速な交換が可能なように設計されている。また、整備性を向上させるため自己診断システムが装備されており、迅速に故障箇所を発見して対処する体制が整えられている[1]。

シャーシ中央には、ロケット弾の再装填作業の際に使用するクレーンが装備されている。シャーシ中央部と後部には計4基の駐鋤が設置されており、射撃の際には地面に設置させて車体を安定化させる。試製車輌では、車体の4箇所に油気圧式ジャッキを備えており、射撃前に自動的に展開して車体を安定化させていたが、量産型に装備された駐鋤は乗員が人力で展開作業を行う必要がある[1]。

RT-2000は、口径の異なる三種類のロケット弾の運用が可能。それぞれのロケット弾は、ロケット発射機のサイズに合わせてコンテナ・モジュール化されている。ロケットを発射した後は、コンテナごと取り外して、新たなコンテナ・モジュールを再装填することで、迅速な再装填を可能としているのが特徴。

RT-2000はMk15 117mmロケット弾(射程15km/60連装)、Mk30 180mmロケット弾(射程30km/27連装)、Mk45 230mmロケット弾(射程45km/12連装)の3種の固体推進・無誘導ロケット弾を発射する。一斉発射に要する時間は、MK15(60発)が30秒、MK30(27発)が54秒、Mk45(12発)が48秒[1]。

Mk15の弾頭は高性能炸薬(HE)で、着弾の際には6,400個の弾片を発生させる。これは117mm45連装自走ロケット砲「工蜂6型」の117mmロケット弾の改良型である[1]。MK30とMk45は、それぞれ、高性能炸薬(HE)と対人/対装甲クラスター弾頭の2種類の弾頭を用意している。MK30は、着弾の際に直径8mmの弾丸を18,300発散布する。弾丸の初速は1,000〜1,600m/sであり、4.75mmの装甲板を貫通する能力を有している。ロケット弾一発あたりの対人殺傷半径は100m。対人/対装甲クラスター弾頭は、100個の子弾を内蔵しており、ロケットが終末弾道コースに入ると、螺旋コースを描きながら子弾を散布、子弾が空中で炸裂して大量の弾片を発生させて敵陣を制圧する[1]。この弾片は、8〜10mmの装甲を貫通する能力を有しており、軽装甲車輌や揚陸艇などに対して高い制圧能力を有している。MK45の高性能榴弾は、着弾時にMK30よりも多い25,000発の弾丸を発生させる。対人/対装甲クラスター弾頭にはMk30の五倍以上の合計518発もの子弾を内蔵しており、口径の大きなMK45の方がロケット弾一発あたりの制圧面積が広いことが分かる[1]。

RT-2000は、射撃の際には下記のような一連の行動を行う。各自装ロケット発射機は陣地に展開後、速やかに自車の位置と方向を測定、ロケット砲連(中隊に相当)は陣地展開を完了後、データリンクにより上級部隊から目標情報、作戦指令、気象条件などの提供を受けて、中隊の指揮車輌はそれを元に中隊の射撃諸元を算出して、各自装ロケット発射機に伝達して目標を攻撃する[1]。各自走ロケット発射機では、発射管制パネルを使って諸元を入力すると、弾道計算機の指示の元でロケット発射機が自動的に旋回・俯仰動作を行い発射準備を整える[1]。RT-2000の射撃統制システムは自動化が進んでおり、3名で全ての操作を行う。陣地展開後3分で射撃が可能となり、ロケットの発射後には、対砲兵射撃を避けるために迅速に陣地を移動する[1]。

【配備計画】
2009年11月12日の台湾国防部の立法院への報告によると、2010年から2012年にかけて、3個連隊分のRT-2000を調達し、第6、8、10軍団と外島地域の部隊への配備を行い、既存の117mm45連装自走ロケット砲「工蜂6型」を更新することが計画された[3]。その後、2011年1月には中国の関係改善や外島部隊の縮小に伴って、RT-2000の配備を台湾本島のみに留める決定がなされたとの報道が行われた[4]。

2011年7月には、台湾軍の第3、4、5作戦区所属の多連装ロケット連隊においてRT-2000への転換訓練が実施されており、戦力化に向けた配備と訓練が進められていることが明らかにされた[2]。「工蜂6型」では砲長、副砲長、操縦手、射撃手、照準手と合計6名が操作に当たっており、中隊本部からの目標諸元をもとに砲長等が射撃データを計算した上で、手動でロケット発射機を操作しなければならず、射撃開始までに17分30秒を要していた。RT-2000では、射撃データの算出から発射機操作までの一連の過程が自動化されており、3名の操作要員で7分以内に射撃を開始できるようになったとされる[2]。

【発展型】
開発元のCSISTでは、上記のロケット弾以外に陸軍の要求を受けて、最大射程を75kmに延伸した長射程型の開発も進めている[1]。射程の延伸に伴い、命中精度を確保するために衛星位置測定システム(GPS)を組み込む誘導システムを搭載する予定であるが、台湾では米軍などが使用している精度の高い軍用GPSへのアクセス権は有しておらず、より低い精度の民生用GPSを使用することを想定している。ただし、最近ではGPSの機能を妨害する装置が各国で実用化されており、民生用GPSは容易に妨害を受けてしまう懸念が存在するとされる[1]。

【参考資料】
[1]MDC軍武狂人夢「雷霆-2000模組化車載多管火箭系統」
[2]Yahoo!奇摩部落格 中華台灣福爾摩沙國防軍「陸軍換裝雷霆2000 反登陸戰力大瓠廖2011年7月21日)
[3]中華民國國防部公式サイト「國防部立法院專案報告-新型多管火箭」(2009年11月11日)
[4]Yahoo!奇摩部落格 中華台灣福爾摩沙國防軍「兩岸和緩雷霆2000撤守本島 國軍戰略大轉變 不以向對岸發動第一擊為考量 改採守勢 攻擊性火箭回防 部署於反登陸作戰」(2011年1月3日)

台湾陸軍

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