日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




▼「捷羚」自走近距離地対空ミサイルとT92。いずれも空軍基地の防空用装備。


性能緒元
重量6.0トン
全長 
全幅
全高 
武装AOS(ボフォース) 70口径40mm機関砲×1
有効射高4,000m(対空)、10,000m(対地)
発射速度330発/分(101発)
上下射角-4〜+80度
左右射角360度
旋回速度85度/秒
俯仰速度45度/秒
砲員通常3名(緊急時には1名での操作が可能)

T92 40mm対空機関砲は台湾がシンガポールのAOS社と共同開発した牽引式対空機関砲である。T92の名称は採用年次の民国92年(2003年)に由来する。

【開発経緯】
台湾の大口径対空機関砲は、アメリカより供与されたM1A1 40亠ヾ慄ぁM42 40mm自走機関砲「ダスター」、そしてスイスから輸入したGDF002 35mm連装機関砲があるが、最も新しい35mm対空機関砲も購入から20年が過ぎ、代替は急務となっていた。

台湾国防部では1982年から後継対空機関砲の自主開発を検討したが、当時は充分な開発力が無いとの検討結果を受け、自主開発は棚上げとなった[1]。一方、台湾海軍では1988年からシンガポールのAOS社製 40mm/L70対空機関砲(ボフォース40mm/L70対空機関砲のライセンス製品)を購入し、成功級フリゲイト(オリヴァー・ハザード・ペリー級)康定級フリゲイト(ラファイエット級)などの艦艇に搭載していた。ここで得たAOS社との関係を生かして次期対空機関砲をAOS社と共同開発するための交渉が1996年から開始され、両者は1998年7月に開発契約を調印するに至った[1]。AOS社は40mm機関砲を供給、台湾側は40mm/L70の運用経験を有する海軍と聯勤総部202廠(兵器装備整備センター)、中山科学研究院が協力して砲架、射撃統制システムなどを開発することとなった[1]。

新型40mm対空機関砲の開発作業は1999年から開始され、「天鏢專案」の計画名称が付与された。2003年12月に4門の試作砲が完成、うち1門が部隊での試験運用に供された[1]。当初の計画では、開発は2005年度までに完了して量産を開始、76門を調達して2個防空大隊に配備して飛行場などの要地防空を行う[1][5]。また海軍ではT92をステルス・シールド型砲塔に搭載して艦載機関砲とすることを計画していた[1]。

【性能】
T92は陸海空三軍での運用を前提として開発され、省力化と操作の簡易化に務めている[1]。砲身はボフォース40mm/L70対空機関砲と同じもので、有効射程は4,000m(対空)/10,000m(対地)、発射速度330発/分[1]。40mm砲弾101発入りの弾倉を搭載、弾倉交換に要する時間は5分。薬莢は砲架の前方に排莢される。砲身は角型カバーで保護され、太陽光や気温変化による砲身への影響を防いでいる。砲座の後部には発電機が設置され、俯仰角/旋回用動力・射撃統制装置への電源供給源になっている。砲の俯仰角/旋回は油気圧駆動方式だが、電源停止時などには手動での俯仰角/旋回も可能。発射可能な砲弾は通常のHE弾のほか、640個の鉄球を装着した近接信管付き榴弾、XTC96 APDS弾、XTC97 APFSDS弾、TC74曳光被冒付き榴弾、TC93曳光被冒付き徹甲弾などがある。特に近接信管付き榴弾は目標から4〜6mの地点で炸裂し、640個の鉄球と砲弾外殻を合わせて2,100個以上の弾片となって飛散する仕組みで、命中・撃墜率を大幅に向上させている。T92は各種システムの自動化を進めており、陣地に移動後自動的に砲座を展開し5分で射撃が可能となる。通常編成の場合3名で操作を行うが、非常時には1名での操砲も可能。移動は車両による牽引が一般的で、その際の最大速度は60km/hとなっている。全備重量は6tでCH-47SD輸送ヘリコプター「チヌーク」(1門)やC-130H輸送機(2門)による空輸も可能。

T92は4門で1個小隊を編成し、「捷羚」近距離地対空ミサイル(天剣1型/TC-1)と連携して中・低空域の防空を担当することが想定されていた[6]。両者を管制するのは中山科学研究院が「天勇専案」のプロジェクト名で開発したCS/MPQ-78低層防空射撃統制レーダー・システムである。CS/MPQ-78はT92 4門と「捷羚」近距離地対空ミサイル(天剣1型/TC-1)搭載車9両を同時に統制する能力を有している。

CS/MPQ-78は、20km範囲の移動目標を探知し同時に20目標の追尾が可能で、4.5秒以内に目標への攻撃を行うことが出来る[1]。([3]によると最大探知距離45km、同時に64目標を追尾することができるとされる)。CS/MPQ-78によるレーダー統制射撃のほかに、各砲が独立して砲架右部に搭載されたOFCS(Optronic Fire Control System:光学射撃統制システム)のレーザー/赤外線/光学照準用サイトで目標の照準、射撃を行うことも可能。本システムは最大探知距離10km、射撃距離7kmの能力を有する。システムの操作は砲左部の砲手席にある液晶パネルによって行われる。このほか砲手席前方にも光学サイトが設置され、OFCSの故障や緊急時にはこの光学サイトを用いた射撃も可能。

【開発の難航と配備遅延、調達見送りへ】
T92は、2005年の量産化を予定していたが、実際には配備は見送られてしまった。

開発において問題となったのは、まず機関砲弾の威力不足であった。40mm/L70対空機関砲の開発メーカーであるスウェーデンのボフォース社では巡航ミサイルや攻撃ヘリなど多用な脅威に対抗可能な新型砲弾を開発していたが、この技術は台湾やシンガポールには引き渡されておらず、T-92に用意された40mm砲弾は従来型の近接信管付き榴弾であった[3]。確かに以前の40mm機関砲弾に比べると威力は向上していたが、対艦ミサイルや巡航ミサイルの迎撃には不十分な威力に留まった[3]。

中山科学研究院が開発したCS/MPQ-78レーダーについても当初の目標性能を達成することが出来ずに、改良型のCS/MPQ-561型射撃統制レーダーが開発されることになった。CS/MPQ-561の具体的な性能は不明であるが、反応速度や追尾精度、電子妨害に対する抗堪性が向上しているものと推測される[3]。ただし、スイスから購入した35mm機関砲とスパロー地対空ミサイルから構成される「スカイガード」ガン・ミサイル複合防空システムに比べると、対空砲と対空ミサイルの統合管制の面で遜色があるとされる[3]。開発の困難に加えて、2008年にはドイツからの輸入に頼っていたT92の重要部品が、輸出許可を得ることが出来ずに量産が出来ない状態に陥っていると報じられた[5]。

台湾空軍では、2000年に35mm機関砲の近代化案を提示していたが、民進党政府になって35mm機関砲の近代化ではなくT92によって代替することに決定していたため、35mm機関砲の近代化案は中止されていた[5]。しかし、この状況を受けて台湾空軍では、既存の35mm機関砲の近代化案を再度検討するに至っており、T92の配備が実現するかは不透明な状況になっていた[4]。

最終的に台湾空軍は2009年度予算において、既存の「スカイガード」システムのアップグレード改修計画を推進することを決定し、T92の配備は見送られてしまった[6]。35mm機関砲の近代化が選択された理由としては、新型砲弾であるAHEAD(Advanced Hit Efficiency And Destruction)の採用により打撃力を向上できる点が評価されたと見られており、その点で従来型の砲弾であったT92に対して優位に立ったと言えよう[6]。最終的にT92は、空軍、海軍、陸軍のいずれからも採用を勝ち得ることは叶わなかった。

【派生型〜自走対空砲型の開発】
台湾軍での配備は実現しなかったT92であるが、2017年に台北で開催された「2017台北國際航太暨國防工業展」では、台湾国防部軍備局が新しい防空システムとして、フェイズド・アレイ・レーダーを搭載した射撃統制&指揮車両、「天剣2型」中距離地対空ミサイル(TC-2)の4連装発射機をトラックに搭載した自走対空ミサイル車両と組み合わせる形で、T92を6×6トラックの荷台に搭載して自走対空砲化した車両を公開した[7]。

このシステムは、対空ミサイルと機関砲を組み合わせて相互の利点を生かしたガン・ミサイル複合防空システムとして開発された。システムを構成する自走対空砲型は、トラックの荷台後方にT92を搭載、荷台中央のコンテナにFCSを収納、その上部に対空レーダーを収納したレドームを搭載[7]。これにより目標のレーダー照準および、必要に際して車両単体での対空捜索を可能としている。

台湾陸軍は、本システムを「野戰防空武器系統(野戦防空兵器システム)」と命名、同システムを合計29セット、そして246発の「天剣2型」地対空ミサイルの調達を決定[8]。ただし、自走対空砲型は調達には含まれず、T92自走対空砲型の採用は今回も見送られる結果となった[8]。

【参考資料】
[1]国際展望-全球熱点追跡 総第514期、2005年4月「天(金+票)専案-台軍T-92 40仗祁森睨し賄」(苗鶴青)
[2]『戦術兵器図解』
[3]Yahoo!奇摩部落格−中華台灣福爾摩沙國防軍「遲遲無法量產的T92四○公厘-L70快砲 2008/8/31」(2012年5月3日)
[4]Yahoo!奇摩部落格−中華台灣福爾摩沙國防軍「獨家/立委杯葛擋關 軍方「天鏢專案」面臨夭折(2002年的舊文)」(2012年5月3日)
[5]聨合新聞網「軍備問題>>研発40防砲 層層卡関」(聨合晩報/高凌雲/2008年9月2日)
[6]ihao論壇-軍事武器介紹「T-92 40毫米快砲」(2013年5月21日)https://www.ihao.org/dz5/viewthread.php?tid=616203
[7]痞客邦-60砲的部落格「2017航太展(1)」(2017年8月21日)https://a2928796.pixnet.net/blog/post/460027405
[8]自由時報電子報「台海軍情》陸射劍二飛彈車僅配4枚飛彈 火力略嫌薄弱有強化空間」(2021年10月8日) https://news.ltn.com.tw/news/politics/breakingnews...

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