日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼動画:军事头条「10马赫!鹰击21高超音速反舰导弹首次公开!美国的航母还敢来南海吗?除了鹰击21,还有一个神秘飞行器在研制中!」(2023年2月7日)。YJ-21の紹介動画。


性能緒元(現状では不明点が多いことに注意)
全長8.3m
直径850mm以下
推進装置固体燃料ロケットモーター
最大射程1,500km
誘導システム(終末段階)アクティブ・レーダー誘導
速度マッハ4〜10(諸説あり)
弾頭重量

YJ-21艦対艦弾道ミサイルは、2022年4月20日に中国海軍が公開した動画でその存在が明らかになったばかりの新型兵器[1][2]。中国海軍への配備が行われているだけでなく、同年11月に開催された珠海航空ショーでは早くもその輸出版であるYJ-21Eが公開されている[1]。

中国では戦略軍であるロケット軍がDF-21DやDF-26といったASBM(anti-ship ballistic missile:対艦弾道ミサイル)を既に運用しているが、これらは準中距離・中距離弾道ミサイルにカテゴライズされる大型ミサイルであり、通常の水上艦艇への搭載は困難。これに対してYJ-21は055型駆逐艦のVLS(Vertical Launch System:垂直発射システム)に搭載できるサイズに纏められながらも、その射程は1,500kmとDF-21Dの1,700kmに近い性能を確保している[3]。なお、艦艇から発射されるASBMについてはShLBM(Ship Launched Ballistic Missile: 艦船発射型弾道ミサイル)と呼称される[4]。

【性能】
YJ-21の全長は8.3mあり、直径については不明であるが055型駆逐艦のVLSが直径850mmまでのミサイルを搭載できることを考えると850mm以下であることは間違いない[5]。055型駆逐艦のVLSは大中小の三種類があるが、8.3mのYJ-21を搭載できるのは最大9mまでのミサイルに対応している大のみとなる。

その形状は、先端部の絞りの角度が段階的に変化する二段円錐構造のノーズコーンを採用した極超音速ミサイルで、極超音速で滑空することを想定した設計が施されている[1][3]。ミサイルは二段構造となっており、一段目は大型ブースターで、二段目が極超音速飛翔体として機能する[3]。YJ-21の先端のノーズコーン内には目標探知・追尾用のフェイズド・アレイ・レーダーが内蔵されているとみられるが、これは終末段階での目標捕捉用であり、外部センサーからの情報提供により既に当たりを付けている目標に対して最終段階での突入を可能とするために用いられる[6]。

YJ-21の速度は巡航時にマッハ6、終末段階ではマッハ10に対するとされ、既存の艦対空ミサイル・システムによる迎撃を困難にすると見られている[1]。ただしこの節には異論もあり、マッハ10は最高速度であり終末段階の速度ではない可能性も指摘されている[6]。確実なのはYJ-21の速度がマッハ4を超えているのは間違いないだろうとされている[6]。ミサイルは打ち上げ後、弾道飛翔を描いて急上昇、頂点に達すると急降下に移り、一定高度まで下降すると水平飛行コースに移り、意図的に上下動を繰り返す変則的な軌道を描きながら目標に接近し、終末段階に入ると目標直上から急降下して目標を打撃する[3][6]

055型駆逐艦のVLSに搭載されたYJ-21はコールドローンチ方式で射出された後で、ブースターに点火して飛翔を開始する[1]。前述した通り、その最大射程は1,500kmに達し、中国海軍で最長射程の対艦ミサイルであるYJ-18の540kmの三倍近い射程を確保している[3]。

YJ-21の設計については先行する二つのShLBM/ASBMが影響を与えているとの見解がある。一つは輸出向けに開発されたCM-401対艦弾道ミサイルで、この技術を基にしながら、その能力を大幅に向上させたと推測する見解である[3]。もう一つは、中国海軍の出版物によるもので、こちらではYJ-21はDF-21Dから派生したものであると示唆されているとのこと[3]。この二説については、極超音速性能やその射程から見て、CM-401よりもDF-21Dとの類似性の方が高いとするのが妥当だと思われ、CM-410との関連性はそのサイズやVLSへの搭載といった点にあるとみられる。

中国の軍事アナリストの宋忠平は、中国海軍にとってYJ-21は初となる極超音速ミサイルであり、対艦・対地攻撃手段として、中国本土から遠く離れた海域において「切り札」となるべき長射程攻撃能力を付与するものであるとする[1]。また中国軍の戦略支援部隊の公式微博でも、YJ-21は、艦艇から発射されることで、中国海軍の接近距離/領域拒否能力とその範囲を大きく向上させることが指摘されている[1]。

【目標探知手段について】
中国海軍はYJ-21の導入により、すでにASBMを保有するロケット軍や空中発射ASBMを保有する空軍に続いてShLBMを配備することが出来た。しかし、対艦弾道ミサイルを運用するには、これまで中国が営々と構築に努力して、現在では戦略支援部隊が管轄する人工衛星群による広域・遠距離探知能力の存在も忘れることは出来ない[1]。ほかならぬ、戦車支援部隊の公式微博においてYJ-21について告知を行ったことも、戦略支援部隊がYJ-21と関わっている事実を傍証していると見られている[6]。

ASBM/ShLBMは、地上の固定目標を攻撃するのとは異なり、広大な海洋を移動する空母艦隊が目標となるため。その攻撃には、空母の概略の位置情報を入手して、目標が確実に空母であるかを識別し、追尾することが必要である[4]。そもそも空母の位置が分からなければ、発射方向を定めることもできない[4]。つまり、ASBMのセンサーが空母を捕捉できるように発射する必要があり、そのためには、ミサイル本体とは別に ISR(Intelligence, Surveillance and Reconnaissance:情報、監視、偵察)センサーを必要とする[4]。

空母の電波を探知して概略位置を提供するエリント衛星、全天候性能を有する合成開口レーダー(SAR)衛星、SAR衛星より鮮明な画像を撮影可能な光学画像衛星などが活用される。地上配置レーダーとしては覆域1,000〜4,000kmのOTH-Bが活用されるとみられるが、こちらは空母と他の艦艇の識別や情報の補正が難しいという特性があり、衛星など他のISRセンサーとの連携が必須となる[4]。

戦略支援部隊のISRセンサーに加えて、空軍が保有するWZ-8無人偵察機も詳細な目標情報の収集に活用され、探知情報の確定に生かされる [2] [4][6]。WZ-8はロケット推進による高速飛行が可能な無人偵察機であり、H-6N爆撃機に搭載されて、外洋まで進出後に母機と切り離されて偵察任務に従事する[2]。

海軍が保有する艦艇や艦載ヘリコプターの目標探知距離は、艦載ヘリで200〜300kmまで、一部の艦艇が搭載するOHTレーダーを用いても理論上は300〜400km、実際には200km程度に留まっており、YJ-21の1,500kmの射程を生かすには他の行為機探知能力の活用が不可欠となる[6]。それを担うのが、戦略支援部隊が管轄する人工衛星群や地上配置のOHTレーダー網、空軍の無人偵察機の存在となる[6]。これらのISRセンサー群の存在により、YJ-21の射撃と目標への命中が保証され、その長射程と高い打撃能力を最大限に発揮することが可能となる[6]。このほかに、自己位置の測定に用いる「北斗」衛星位置測定システム、通信衛星による広域データリンクシステムなどもYJ-21の能力発揮において重要な役割を果たす。

これらのIRSセンサー群は南シナ海を含む中国近海では平時においてアメリカ空母打撃群の動向を常時・継続的に探知可能な能力を有すると判断されている[7]。ロケット軍のDF-21D(1,500km以上)やDF-26(射程3,000〜4,000km)といったASBMの存在を考慮すると、米軍基地のあるグァム島周辺海域までを含む西太平洋までを探知圏内に含めることが出来ているだろう。課題としては、中国海軍がこれより遠方の海域、インド洋や東太平洋などに進出した場合は、衛星群以外での目標探知手段は活用が困難になるため、どのように遠洋における目標探知手段を確保していくかは今後の課題になると思われる。

【輸出型YJ-21E】
2022年11月に開催された珠海航空ショーではYJ-21の輸出版であるYJ-21Eの模型が展示された[1]。展示模型を見ると、本国版のYJ-21にはあった第一段ブースターが無くなっているが、会場で流された動画では第一段ブースターが装着された状態の模型が映っており相違が見られる[2]。後者については装備を紹介するパネルに「空面导弹武器系統」と記述されていることから「空面=air-to-surface=空対地ミサイル兵器システム」であることが分かる[10]。二段式のタイプは射出時にブースターが必要となる艦対艦もしくは地対艦型であると判断し得る。

YJ-21Eの最大射程は原型より大幅に短縮された290kmに留まっている[6]。これは輸出版が搭載能力500kg以上、射程300km以上のミサイルの輸出を厳しく制限するMTCR(Missile Technology Control Regime:ミサイル技術管理レジーム)を前提として射程を抑えていることに起因するとみられる[8][9]。

【参考資料】
[1]凤凰网「解放军罕见曝光“鹰击-21”高超反舰导弹性能参数!还透露一个重要消息」(李岩/2023年2月3日)https://news.ifeng.com/c/8N8YKAR9ZfY
[2]MDC軍武狂人夢「中國反艦彈道導彈/鄰近空間高超聲速反艦導彈」http://www.mdc.idv.tw/mdc/navy/china/china-asbm.ht...
[3]CHINA DEFENCE「YJ-21 missile」https://www.militarydrones.org.cn/yj-21-missile-p0...
[4]山下奈々「【研究ノート】中国の ASBM の開発動向― DF-21D を中心に ―」『海幹校戦略研究特別号』(通巻第 19 号) (海上自衛隊幹部学校 [編] /2020年4月)116〜135頁 https://www.mod.go.jp/msdf/navcol/assets/pdf/ssg20...
[5]捜狐「值得期待!中国052DE驱逐舰模型亮相珠海航展,这也要卖吗?」(2022年11月4日/《军武次位面》作者:路芷) https://www.sohu.com/a/602584516_120542825
[6]捜狐「全程6倍音速、末段10倍!中国YJ-21型高超音速反舰导弹首次公开」(军武次位面/2023年2月1日)https://www.sohu.com/a/636126438_120542825
[7]山形大介「実戦配備進む中国の極超音速兵器」『軍事研究2022年月号別冊−現代の戦略攻撃兵器』(Japan Military Review)44〜51頁
[8]远林「珠海航展中国对地打击体系」(『兵器知识2011 1A』/《兵器知识》杂志社/36-37頁)
[9]外務省公式サイト「ミサイル技術管理レジーム(MTCR:Missile Technology Control Regime、大量破壊兵器の運搬手段であるミサイル及び関連汎用品・技術の輸出管理体制)」
[10]Youtube「10马赫!鹰击21高超音速反舰导弹首次公开!美国的航母还敢来南海吗?除了鹰击21,还有一个神秘飞行器在研制中!」(军事头条/ 2023年2月7日)https://www.youtube.com/watch?v=9_QrAYJw94k

【関連事項】
055型駆逐艦

中国海軍

amazon

▼特集:自衛隊機vs中国機▼


▼特集:中国の海軍力▼


▼特集:中国海軍▼


▼中国巡航ミサイル▼


























































メンバーのみ編集できます